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七話 いざ学園へ
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舞踏会からしばらく経ち、私は今日からお兄様と一緒に学園へと通う事となった。
あのアベルに似た雰囲気を持つ少年の事は結局何も手がかりが得られないままであり、私は内心かなり焦っていた。
出来ることならば早々に魔法を使ってあの少年の居場所を特定したかったのだが、ヒスラリア王国では、学園に通っていない子どもの魔法は使用が認められていない。その事をお兄様から聞き、魔法を使う前で良かったと内心安堵した。
家族に迷惑がかかってはいけないので、学園に入学したらすぐにあの少年について調べようと思っている。手がかりは、少年の落としていったハンカチだけだが、ないよりはましである。
「ルティ?大丈夫?」
馬車の中で意気込んでいた私を、お兄様は首を傾げて見つめてくる。
「大丈夫です。学園に入学するのが楽しみで、わくわくしているんです。」
「そっか。困ったことがあったら何でも僕に相談するんだよ?」
「はい!お兄様。」
「ほら、学園が見えてきたよ。」
ヒスラリア王立学園を馬車の小窓から見つめる。
街道沿いには桜の木が植えられており、美しく花を咲かせている。ひらひらと舞い落ちる桜の花びらは、まるで学園に向かう者達を歓迎しているようであった。
レンガ造りの学園は広大な広さを有しており、まるで城のような作りである。そんな学園に続く道を進んでいると、途中で馬車が止まり、首を傾げてしまう。
「あら、どうしたのかしら?」
何かがあったのだろうかと心配すると、お兄様が小さくため息をついて言った。
「学園に続く道はいくつかあるんだけれど、よく渋滞が起こるんだ。」
「そうなんですか?」
「あぁ。貴族同士だとどうしてもねぇ・・私が先だ、僕が先だっていう面倒なやつがいるんだよ。」
「へぇ。」
貴族というのは大変な生き物なのだなと改めて思う。前世では平民で、魔法は師匠に一対一で教えてもらっていたので学園なんてものにかよったことはない。
だからこそ、全てが新鮮に思えた。
その時、懐かしい声が聞こえ、思わず目を丸くしてしまう。
「この・・・声・・・」
馬車の小窓から顔をのぞかせて外を見ると、言い争っているのは二人の男子学生で、その仲裁に一人の背の高い男性が入っているのが見えた。
糸目で、ひょろりとした男性は、笑顔で二人の男子学生の間にはいっており、雰囲気は少しずつ彼のおかげで和やかなものへと変わっていく。
浅葱色の髪と瞳を持ったその男性を私はよく知っていた。そして出来ることならば、あまり関わり合いになりたくない。
彼の名前はセオ・ルドルフォ。
十年前と変わらず優しそうな雰囲気を持つ彼だが、その外見に騙されてはいけない男である。
彼は国王の盾と鉾、両方の側面を持つ男であり、様々な場所に入り込んでは国に有益な情報をもたらす潜入捜査の達人である。そんな男が何故このような場にいるのか。
ちらりと、セオと目があった気がして、慌てて顔を引っ込める。
しばらくしてから馬車が動き始め、私はほっと息をついた。
「良かったね。意外と早く進んだ。」
「あ・・はい。」
セオがこの学園にいる理由はすぐに分かった。
お兄様と別れ、学園の入学式に参加した私はすぐにその姿を見つけた。そして彼が今、どこに潜入しているのかもすぐに分かった。
壇上では、学園長が挨拶を述べた後に、新入生代表として一人の少年が舞台に上がった。
彼の名前はハンス・オル・アルバートル。隣国であるアルバートル帝国の第二王子である。隣国とは現在良好な関係が築けており、その証としてハンス王子がヒスラリア王国に留学してきたのである。
そして、セオはそんなハンスの執事として傍に控えていた。
つまり、ヒスラリア王国はアルバートル帝国のハンスの動向を探るためにセオを潜入させているのだ。
魔獣がいなくなった事で平和になったかと思ったが、隣国と戦争になれば平和も終わってしまう。それを防ぐために、セオは潜入しているのであろう。
私は出来るだけセオには近づかないでおこうと心に決めた。
そう。心に決めたはずだったのに、どうしてこうなった。
「・・・お前は何者だ?」
私は今、セオに押さえつけられている。どうしてこうなったのかは、少しだけ時を遡る。
あのアベルに似た雰囲気を持つ少年の事は結局何も手がかりが得られないままであり、私は内心かなり焦っていた。
出来ることならば早々に魔法を使ってあの少年の居場所を特定したかったのだが、ヒスラリア王国では、学園に通っていない子どもの魔法は使用が認められていない。その事をお兄様から聞き、魔法を使う前で良かったと内心安堵した。
家族に迷惑がかかってはいけないので、学園に入学したらすぐにあの少年について調べようと思っている。手がかりは、少年の落としていったハンカチだけだが、ないよりはましである。
「ルティ?大丈夫?」
馬車の中で意気込んでいた私を、お兄様は首を傾げて見つめてくる。
「大丈夫です。学園に入学するのが楽しみで、わくわくしているんです。」
「そっか。困ったことがあったら何でも僕に相談するんだよ?」
「はい!お兄様。」
「ほら、学園が見えてきたよ。」
ヒスラリア王立学園を馬車の小窓から見つめる。
街道沿いには桜の木が植えられており、美しく花を咲かせている。ひらひらと舞い落ちる桜の花びらは、まるで学園に向かう者達を歓迎しているようであった。
レンガ造りの学園は広大な広さを有しており、まるで城のような作りである。そんな学園に続く道を進んでいると、途中で馬車が止まり、首を傾げてしまう。
「あら、どうしたのかしら?」
何かがあったのだろうかと心配すると、お兄様が小さくため息をついて言った。
「学園に続く道はいくつかあるんだけれど、よく渋滞が起こるんだ。」
「そうなんですか?」
「あぁ。貴族同士だとどうしてもねぇ・・私が先だ、僕が先だっていう面倒なやつがいるんだよ。」
「へぇ。」
貴族というのは大変な生き物なのだなと改めて思う。前世では平民で、魔法は師匠に一対一で教えてもらっていたので学園なんてものにかよったことはない。
だからこそ、全てが新鮮に思えた。
その時、懐かしい声が聞こえ、思わず目を丸くしてしまう。
「この・・・声・・・」
馬車の小窓から顔をのぞかせて外を見ると、言い争っているのは二人の男子学生で、その仲裁に一人の背の高い男性が入っているのが見えた。
糸目で、ひょろりとした男性は、笑顔で二人の男子学生の間にはいっており、雰囲気は少しずつ彼のおかげで和やかなものへと変わっていく。
浅葱色の髪と瞳を持ったその男性を私はよく知っていた。そして出来ることならば、あまり関わり合いになりたくない。
彼の名前はセオ・ルドルフォ。
十年前と変わらず優しそうな雰囲気を持つ彼だが、その外見に騙されてはいけない男である。
彼は国王の盾と鉾、両方の側面を持つ男であり、様々な場所に入り込んでは国に有益な情報をもたらす潜入捜査の達人である。そんな男が何故このような場にいるのか。
ちらりと、セオと目があった気がして、慌てて顔を引っ込める。
しばらくしてから馬車が動き始め、私はほっと息をついた。
「良かったね。意外と早く進んだ。」
「あ・・はい。」
セオがこの学園にいる理由はすぐに分かった。
お兄様と別れ、学園の入学式に参加した私はすぐにその姿を見つけた。そして彼が今、どこに潜入しているのかもすぐに分かった。
壇上では、学園長が挨拶を述べた後に、新入生代表として一人の少年が舞台に上がった。
彼の名前はハンス・オル・アルバートル。隣国であるアルバートル帝国の第二王子である。隣国とは現在良好な関係が築けており、その証としてハンス王子がヒスラリア王国に留学してきたのである。
そして、セオはそんなハンスの執事として傍に控えていた。
つまり、ヒスラリア王国はアルバートル帝国のハンスの動向を探るためにセオを潜入させているのだ。
魔獣がいなくなった事で平和になったかと思ったが、隣国と戦争になれば平和も終わってしまう。それを防ぐために、セオは潜入しているのであろう。
私は出来るだけセオには近づかないでおこうと心に決めた。
そう。心に決めたはずだったのに、どうしてこうなった。
「・・・お前は何者だ?」
私は今、セオに押さえつけられている。どうしてこうなったのかは、少しだけ時を遡る。
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