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第十二話
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青い空にキラキラと雪の結晶が輝き、そして、太陽の光を反射しながら山の大地へと次々と降り注ぎ始める。
神は楽しげに宙で結晶を次々に作り上げては地上へと降らし、そして、次の瞬間にっこりと笑みを浮かべると、勢いよくその両手をパチン!と合わせて鳴らした。
小さな音が、まるで爆音のように大きく変わる。
その音が山に反響して響き渡り、山びこのように至るところから音が返ってくる。
その時だ。
空気が変わったのを玉枝は感じとると身構えた。
地鳴りが始まり、雪に覆われた大地がぐらつき始める。
「これ、は。」
玉枝はその光景に目を丸くする。
山々の白く降り積もっていた雪が砕け落ちるように、至るところから雪崩となって崩れていく。
雪が舞い上がり、白い波のようにして落ちていく様は恐ろしくも美しい光景であり、玉枝はその様子をじっと見つめた。
だがしかし、目を見開くことになるのは、雪崩が終わったそれからが本番であった。
「すごい。」
雪がキラメキ、太陽の暖かな光によって溶け始めると緑の息吹が、広がり始める。
白く覆われた大地に、緑の風が吹き抜け、そこには命が芽生えていく。
玉枝は言葉を失いその美しい様子をじっと見つめていた時、先程まで冷たさを感じていた山の空気も変わり出したことに、視線を雪玉の姿をした神へと向けた。
神の身体は溶け、雪の中から真白な蝶々が現れると、玉枝の腕にとまった。
『久しぶりにこの雪に覆われた土地も暖かな年となるよ。われは春を告げに飛んでいこう。玉枝、思い出させてくれてありがとうよ。』
玉枝は笑みを浮かべると小さく頷いた。
蝶々の姿に形を変えた神は風に誘われるように山の山頂から飛び立った。
太陽に照らされて飛んでいく姿を玉枝は見送りながらその場に座り、しばらく緑に覆われた大地を見つめた。
「綺麗ですねぇ?」
「本当にだなぁ。」
雫と焔は玉枝の肩の上に乗りそう呟く。
「うん。そうだね。でも、本当に神様っていう存在は気まぐれで、忘れやすくて、美しいね。」
くすくすと笑いながら玉枝はそう言うと大きく背伸びをして、先程までは雪で覆われていた地面に触れた。
緑の柔らかな葉に指先が触れると、何とも心地の良い気分を感じる。
顔を上げれば、美しい緑の山々が目に映る。
山に吹き込んだ春の風を玉枝は胸いっぱいに吸い込むと遠くに煌めく、真白な羽に手を振った。
神は楽しげに宙で結晶を次々に作り上げては地上へと降らし、そして、次の瞬間にっこりと笑みを浮かべると、勢いよくその両手をパチン!と合わせて鳴らした。
小さな音が、まるで爆音のように大きく変わる。
その音が山に反響して響き渡り、山びこのように至るところから音が返ってくる。
その時だ。
空気が変わったのを玉枝は感じとると身構えた。
地鳴りが始まり、雪に覆われた大地がぐらつき始める。
「これ、は。」
玉枝はその光景に目を丸くする。
山々の白く降り積もっていた雪が砕け落ちるように、至るところから雪崩となって崩れていく。
雪が舞い上がり、白い波のようにして落ちていく様は恐ろしくも美しい光景であり、玉枝はその様子をじっと見つめた。
だがしかし、目を見開くことになるのは、雪崩が終わったそれからが本番であった。
「すごい。」
雪がキラメキ、太陽の暖かな光によって溶け始めると緑の息吹が、広がり始める。
白く覆われた大地に、緑の風が吹き抜け、そこには命が芽生えていく。
玉枝は言葉を失いその美しい様子をじっと見つめていた時、先程まで冷たさを感じていた山の空気も変わり出したことに、視線を雪玉の姿をした神へと向けた。
神の身体は溶け、雪の中から真白な蝶々が現れると、玉枝の腕にとまった。
『久しぶりにこの雪に覆われた土地も暖かな年となるよ。われは春を告げに飛んでいこう。玉枝、思い出させてくれてありがとうよ。』
玉枝は笑みを浮かべると小さく頷いた。
蝶々の姿に形を変えた神は風に誘われるように山の山頂から飛び立った。
太陽に照らされて飛んでいく姿を玉枝は見送りながらその場に座り、しばらく緑に覆われた大地を見つめた。
「綺麗ですねぇ?」
「本当にだなぁ。」
雫と焔は玉枝の肩の上に乗りそう呟く。
「うん。そうだね。でも、本当に神様っていう存在は気まぐれで、忘れやすくて、美しいね。」
くすくすと笑いながら玉枝はそう言うと大きく背伸びをして、先程までは雪で覆われていた地面に触れた。
緑の柔らかな葉に指先が触れると、何とも心地の良い気分を感じる。
顔を上げれば、美しい緑の山々が目に映る。
山に吹き込んだ春の風を玉枝は胸いっぱいに吸い込むと遠くに煌めく、真白な羽に手を振った。
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