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第一章
秋の季節42
しおりを挟むロイとマリアはやっと自分たちが道に迷ったことに気が付いたようで、何か話し合っている様子が見て取れた。
だが、何やら次第に口論のような言い合いが始まった。
今までにない様子に、フィリアは焦りを感じた。
「あれ、何を言い合っているのかしら?」
「背負う、背負わないを口論しているようだ。」
その言葉にフィリアはマリアの足元に目をやった。
本来のゲームなら岩でフィリアが足を怪我してしまい、ロイに背負われて助けられるはずだが。
どうやらマリアは足をくじいているようだが、ロイに背負われることを拒否しているようだ。
「歩けると言っております。」
「だが痛そうではないか。背負うと言っている。」
「ロイ様、私の話を聞いていましたか?私は大丈夫と言っているのです!」
「、、、可愛くない人だな!背負うと言っている!」
その言葉に、マリアは目を丸くすると、瞳いっぱいに涙をためた。
「ロイ様なんて、、、。」
「ま、マリア嬢。今のは、、、」
「ロイ様なんて大嫌い!もういいです。知りません!だいっきらい!」
そういうと泣きながらマリアはうずくまってしまい、ロイはオロオロと慌ててしゃがみ込んだ。
「ま、マリア嬢?」
「触らないで!話しかけないで!どこかへ行って!」
マリアの怒鳴り声など聞いた事のなかったフィリアは驚いていた。
しばらく様子を見ていたが辺りが暗くなる一方で2人の間は進展しない。
夜になれば魔物も出る可能性がある。
フィリアは痺れを切らし、グリードと目を合わせると頷きあった。
「ロイ様!マリア様?」
2人はこちらを勢いよく向き、マリアは涙いっぱいの瞳でフィリアに手を伸ばしてきた。
フィリアはマリアに駆け寄り、抱きしめた。
「マリア様、もうすぐ夜になりますわ。山を降りましょう。」
小さくマリアが頷いたのを確認し、肩を貸しながら山を降りた。
ロイは心配そうにマリアを見つめていたがマリアがロイの方を見る事はなかった。
宿泊予定のペンションに帰ると、マリアは手当を受け、そして部屋へと移動をした。
部屋に入ると、エマやクロエラ、シェーラが心配そうな顔を見せた。
「無事で良かったよぉ。」
エマの言葉に、マリアはまたポタポタと涙を流し始めた。
フィリアはお茶を入れ、マリアが落ち着くのを待った。
マリアは少しずつ落ち着きを取り戻し、小さな声で話し始めた。
「私、足をくじいてしまって、、ロイ様は背負って下さるって言ったの。でも、、、私、、今日は、、、月の日なの、、」
その言葉だけで、4人にはマリアの気持ちがすごくよく分かった。
「それは、、背負われたくないですね。」
「えぇ。だから何度も何度も嫌だと言いましたのに、全く聞いて下さらなくて、その上、、可愛くない人って言われてしまいました、、、。そして私も、、、大嫌いって言ってしまいました。」
そんなマリアの背をゆっくりと撫でながらフィリアは言った。
「明日謝りましょう。そうすれば、許してくれますよ。」
マリアは静かに頷いたのであった。
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