【完結】ヒロインは暗黒龍と共に、悪役令嬢の恋を応援します!

かのん

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第一章

 冬の季節 48

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 クリスマスパーティ当日はとても慌ただしく準備が進んでいく。



 舞台の準備は着々と進み、会場には多くの人が集まっていた。

 人々の一番の目的は、特別クラスによる劇『ホワイトナイト』である。

 なんとこの劇は第二王子であるハロルドが脚本を手がけたと言う事もあってチケットは見事に 完売していた。



 またヒロインにシェーラ、ヒーローにシオンということも相まって話題生も抜群である。



 舞台のワインレッドの緞帳が、開演の合図と共にゆっくりと登っていく。



 舞台はとある雪の王国。

 そこには、とてもとても見目麗しい王女がいた。



 シェーラが舞台の上に登り、手をかざすと雪の結晶が美しく会場を舞った。

 会場からは感嘆の声が漏れる。



「あぁ、今年の冬もこの国は美しいわ。」



 しかし、この冬の国の幸福には恐ろしい闇があった。それは、王国に産まれた王女が15の歳になった時、魔女にその身を捧げなければならないというもの。

 そうしなければ、魔女にこの国を滅ぼすと呪いをかけられていた。



 国王はこれを嘆き、勇者に助けを求める。



 会場にシオンが魔法で作った氷の馬に跨り現れると、溢れんばかりの黄色い歓声が上がった。



「この国の王女を守るため、私は剣を振るいましょう!」



 勇者は氷の馬と共に恐ろしい闇の王城へと辿り着く。



 闇の騎士が現れ、恐ろしい声が響く。



「ここは我が主の屋敷。何者もここは通さない。」



「通してもらおう。姫のために、私はここを行かねばならないのだ。」



 2人は剣を構える。



 闇の騎士は黒い闇を纏いし剣を振り上げる。勇者はそれを氷の剣で受け、弾くと剣を振る。

 体をひねってかわすと、一旦後方へと引き、剣を構え直す。



「我が主に何の用だ?」



「雪の国にかけし呪いをとき、王女を開放してもらうのだ!」



「なんだと?」



「その為に私は負けられない!」



 勇者が剣を振るうと、氷の刃が闇の騎士を襲う。闇の騎士は氷に囚われ身動きが取れなくなった。



「貴様に我が主が止められるか?」



「止めてみせよう。」



 その言葉に、闇の騎士は項垂れると言った。



「ならば、我も手を貸そう。我もあの人を止めたいと願っていた。だが、我一人では叶わなかったのだ。」



 闇の騎士の話を勇者は聞き、愕然となった。



 昔、雪の国と魔女とで婚姻の約束がなされていた。しかし、雪の国の王は町娘に心を奪われ魔女に汚名を着せ国を追放した。

 魔女は怒り、憎しみ、呪いをかけた。

 王と町娘の間に産まれた愛らしい娘が憎くてたまらずに。





 勇者と闇の騎士は共に魔女の元を訪れる。



 この、悲しき呪いを打ち破るために。





 舞台が暗転し、突然静寂が訪れる。



 青白い冷気が辺りを包み込んでいく。



 悲しい、悲しい声の歌が響く。

 歌詞はなく、嘆くような声の歌。

 悲しみと憎しみが重なり合う歌。



 観客の頬に涙が伝う。



 愛していた。



 信じていた。



 どうして裏切ったの?



 私を嫌いになったの?



 言ってくれたなら、貴方の為なら身を引いた。



 なのにどうして?



 わからない。わからない。



 苦しいの。ずっとずっと。



 体が闇に飲まれていく。





 舞台の城にライトが当てられ、階段の上に美しい闇をまとった美女が現れる。

 黒い髪に黒い瞳、そして血をなめたように赤い唇が、弧を描くように笑みを浮かべる。





「あれが、、、フィリア孃か?」

 舞台裏も見ているものが信じられずに息を呑む。

「だれがウィッグをつけたんだ?」

「あんなに、、、綺麗な人、、初めて見た。」





 観客席は、誰も何も言えずに見入っていた。



 城の階段からゆっくりと魔女が言った。



「私を止めてくれるの?」



 勇者と闇の騎士は剣を構える。



「ああ。」



「主様。もう止めましょう。」



「そう。なら力ずくで頑張って。」



 次の瞬間、舞台の足元を闇が覆い、雷鳴が轟く。



 魔女が手を伸ばして合図をすると雷が舞台におち、勇者と闇の騎士は踊るようにそれを避ける。



「さぁ踊れ!あはははははははっ!」



 魔女の笑い声はぞっとするほど、美しかった。



 勇者と闇の騎士は魔法を使い雷と闇を払いながら戦う。



 ついに魔女も剣をとり、階段から飛び降りると二人同時に相手をしていく。



「その程度で私を倒せるとでも思うのか!?」



 その時であった。氷の馬にまたがった雪の国の王女が現れる。



「魔女様!どうかお怒りをお納め下さいませ!」



 魔女は勇者と、闇の騎士を闇の牢屋に捕え、動きを止めた。



 そして、王女を見つめる。



 王女は懇願するように膝をついた。



「わたくしは、逃げも隠れもいたしません。父の勝手な行動、お許しください。」



「ほう。ならば、その身を差し出すか?」



 王女は魔女を見上げ、微笑みを浮かべた。



「はい。わたくしの命は産まれた時より魔女様のものでございます。」



 その微笑みに、魔女の闇の牢屋が揺らいだ。



 勇者は牢屋をやぶり、王女を庇うようにして立った。



「なりません!王女様がいなくなれば、国民は嘆き悲しむでしょう!」



「いいえ!、、、私は王家の身のもの。覚悟はできています。」



 勇者の前に一歩出た王女は魔女と向かい合う。



 魔女は手を伸ばし、王女に問うた。



「もし、そなたが愛を裏切られたら、どうするのが正解だと思う?」



 王女はその問に笑みを浮かべて答えた。



「裏切ったものは、見る目のないものであったと、次の愛に生きますわ。」



「なんと、真実の愛だと思っていてもか?」



「はい。」



「そうか。そうか、、、私は愛ゆえに道を間違えたのだろうな。王女よ、私はもう疲れた。そなたが私と約束してくれるならば、呪いをとこう。」



「約束とは?」



「そなたは、愛に溺れず、真実の愛を貫いてくれ。」



「約束いたします。」



「約束だぞ。」



 雷鳴が轟き、闇が消えていく。

 魔女はゆっくりとその場に倒れた。



「主様!、、、、お嬢様!」

 闇の騎士は魔女を抱きしめる。

「すまないな。もう眠るとしよう。」

「はい。お嬢様。夢の中へもご一緒いたします。」



 そういうと魔女と闇の騎士は光に包まれてきえていった。



 勇者と王女は城に歓喜のもとに迎えられ、魔女との約束どおり、愛に溺れず真実の愛を貫いた。







 緞帳が降りると同時に溢れんばかりの拍手と歓声が上がった。

 役者達は皆がカーテンコールに出て挨拶をしていく。



 そして舞台は終わった。



 皆がクリスマスパーティ会場に移り、誰もいなくなった時、舞台の上に、魔女が立つ。





「満足したか?なら、フィリアを返せ。」





 魔女は細笑、闇の騎士は怒りに震えた。



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