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第一章
シオンの悪巧み 68
しおりを挟むフィリアは早々に、攻略キャラ達の逆襲だと悟った。
以前はまったく絡んでこなかった4人だが、事あるごとにフィリアに構い、そして、さりげなく指先や頬などに触れてくるのである。
フィリアはこれには慣れず、毎回顔を赤くしてしまう。
なかでもひどいのはシオンである。
フィリアはシオンが近づいてくるたびに一歩後ずさるようになった。
「フィリア嬢。お昼一緒に食べようね。」
今まではお昼のミニイベントだと、積極的に攻略キャラ達を誘っていたフィリアであったが、シオンが相手だと一歩引いてしまう。
「も、、もちろんですわ。」
だが、ここで断れば精霊王との勝負に負けの判定をもらいそうでどうにか踏みとどまって誘いを受ける。
2人は、食堂に並んで歩いていくが、それもシオンがフィリアをエスコートしている。これにもどぎまぎしてしまう。
食事を注文し、席につくとシオンは甘い笑顔でフィリアの顔を見つめてくる。
フィリアはそれに耐えながら、料理が運ばれてくると静かに食べ始めた。
シオンのお昼のミニイベントはいくつかあるが、今日のメニューはシオンの嫌いなにんじんが添えてあった。
シオンは少し子どもっぽく顔をしかめ、料理を食べ始めるがにんじんには手が伸びない。
フィリアはにんじんが嫌いなシオンを応援して、にんじんを食べさせるというミニイベントのスチルを見ようと声をかけた。
「シオン様はにんじんが嫌いですの?」
「よく分かったね。そう。嫌いなんだぁ。」
「ふふ。シオン様頑張って下さいませ。にんじんが泣いてますよ。」
ヒロインがそう言うと、ゲームではシオンがにんじんを頑張って食べるはずであった。
「えー。んー、、あ、フィリア嬢?はい、あーん。」
「え?」
「にんじんが泣いてるよ?はい、あーん。」
フィリアは硬直した。
これは、食べろと言う事ですか?
え、、、でも、、、。
フィリアは迷っていたかシオンのフォークに刺さったにんじんがフィリアの口元に運ばれてくる。
フィリアは、しかたないと、目をつむって口を開けた。
ぱく。
ゆっくり目を開けると、シオンの腕をグリードがとり、そのにんじんをグリードが咀嚼して食べていた。
「ぐ、、グリード。」
「にんじんが食べたかったんだ。」
それにシオンは笑いを堪えており、なんとも言えない空気になった。
「シオン。あんまりフィリアをからかうな。」
「え?からかってないよ。僕は僕なりにフィリア嬢に真剣に付き合っているだけさ。それに、今は僕の番なんだから、グリードさんは邪魔しちゃ駄目だよ?」
グリードにもひるまずにそう言えるシオンに、陰ながらユーリ、ロイ、カインは拍手を送っていた。
フィリアは、小さく息を吐くと言った。
「グリード大丈夫だから、また後でね。」
そう言って無理やり話を終わらせようとしたフィリアであったが、グリードはフィリアの隣に腰を下ろした。
「あの、、グリード?」
「邪魔はしない。だが、シオン。あまり調子に乗るなよ。」
「わあ。怖いな。じゃあフィリア嬢、お昼食べよう。」
「は、はい。」
こんなに居心地の悪い昼食は久しぶりであった。
フィリアは、大きく息を吐くとこっそりとハロルドと合流し、寒いが暖かな格好をして庭のベンチで話をしていた。
「4人が私に仕掛けてくるなんて思わなかったわ。」
ハロルドはくすくすと笑いながら話を聞いていたが、ふいにフィリアの鼻を人差し指で押してきた。
「な、、なに?」
「鼻が真っ赤。ここは冷えるね。でもフィリア。私はフィリアは演技がうまいと思っていたが、迫るのは良くても迫られるのは苦手なんだね。」
「当たり前よ。そんなの苦手じゃない人いるの?」
「うーん。私はフィリアにだったら迫られたら嬉しい。」
フィリアは冷たい瞳をハロルドに向けた。
「他人事だと思って、、はぁ。どうしたらいいかしら?」
思っても見なかった攻略キャラからの反撃に、ハロルドと対策を練るフィリアであった。
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