【完結】ヒロインは暗黒龍と共に、悪役令嬢の恋を応援します!

かのん

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第一章

 捜索開始 72

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 応接室には、重たい空気が流れていた。



 グリードが消えてからまる2日、捜索は続いているが手がかりはなく、時間だけが過ぎていく。



 フィリアは、一言も口をきかず、うつむいている。



 ハロルドはそんなフィリアに寄り添い、励ましている。



「大丈夫だ。きっと見つかる。」



 そう言いながらも、皆が、絶望を感じていた。



 その時、フィリアは顔を上げると立ち上がった。



 そして、ユーリ、カイン、ロイ、シオンに頭を下げた。



 4人が目を丸くすると、フィリアから思いがけない事を願われた。



「四大貴族の証である指輪を貸してください。」



 だが、その願いはやすやす受け入れられるものではない。



 指輪は後継者の証であり、四大貴族の地位を示すもの。貸し借り出来る物ではない。



「それがあれば、グリードを助けに行けるの。お願いします。」



 頭を下げるフィリアに、4人は理由も聞かず無言で指にはめていた指輪をはずし、差し出した。



「貸すだけだよ。」

「絶対返せよ。」

「ちゃんと管理して下さいね。」

「無くしたら罰金ね。」



 フィリアは瞳を潤ませて小さな添えで「ありがとう」と呟いた。



「何をするつもり?」



 ハロルドの問に、フィリアははっきりと答えた。



「グリードを取り戻すわ。」



「どういう事?犯人が分かったの?」



 フィリアは首を横に振った。



「分からない。でも、可能性のある場所がある。そこへ行ってくるわ。」



「まさか一人で?無謀だ。」



「大丈夫、止めないで。」



 はっきりとした拒絶に、それ以上ハロルドは何も言えなくなった。

 こういう時に、自分の立場が嫌になる。



「フィリア。女性一人で何が出来るの?」

 エマは心配し、他の令嬢らも頷いている。しかし、フィリアは微笑みを浮かべると首を横に振った。



「私、グリードがいなかったら生きていけませんの。」



 その言葉に皆が言葉を失う。



「無理だと判断しましたら、すぐに帰ってきますわ。だから、行かせて下さい。」



 止めても無駄なことが分かり、ただ、皆が静かに頷いた。



「では、皆様、行ってまいります。」



 そういうとフィリアはその場を後にした。



 まず、目指すは聖なる丘。



 あの忌まわしい山の麓にある小さな丘だ。



 そこでアイテム『四大貴族の指輪』を使い、4つの試練に挑戦する。1つクリアする毎に歌のかけらを入手する事が出来る。



 全てのかけらを集めると、聖なる道が開き、聖なるモノから称号『聖なる歌い手』を入手しグリードを開放する事が出来る。というのがゲーム二周目の本来の流れ。



 今回は歌はもう知っているが、それでは聖なる道は開かない。



 フィリアは考え、考え、考え抜いて一つの答えにたどり着いた。



 あの光、グリードを捉えられる力を持つものなど限られている。



 フィリアは決意を胸に、馬にまたがり、聖なる丘を目指し駆けた。

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