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第一章
第三の試練 75
しおりを挟む空間がぐにゃりと歪み、そして、世界が色を変えていく。
少しずつ輪郭がはっきりとしだし、そこにはたくさんの本で埋め尽くされた空間が現れた。
「第三の試練にいらっしゃい。こちらへどうぞ。」
そこには、ロイにそっくりなものがいた。
フィリアは、大きく息を吐くと、言われたとおりに近寄った。
机と椅子があり、机には湯気の上がる紅茶とクッキーが準備してある。
「どうぞ召し上がれ。第二の試練で疲れただろう?」
フィリアは促されるままに座ると、紅茶を一口飲んだ。
「美味しい。」
「それは良かった。第三の試練は第二の試練のように体は使わないからね。この試練では、私の質問に答えてくれればいい。」
フィリアは何も言わずにそれを聞いている。
「準備はいいかい?」
「いつでもどうぞ。」
「では、第三の試練だ。まず、君はどうしてここに?」
「グリードを助けに来たの。」
「何故ここにいると?」
「あの光は聖なるものだった。そんな光を扱えるのは同じく聖なるものだけだわ。」
「どうしてここが試練の場所だと知っているの?」
「以前読んだ文献の中で、聖なる乙女はこの地で道を開いたと乗っていたわ。だからよ。」
「自分が聖なる乙女だと?」
「さあ。でも、聖魔法は使えるわ。」
「ほう。だから、試練も楽勝?」
「いいえ。そんなわけはないわ。」
「もし、この試練の先にグリードがいるとして、本当に助けていいのか?」
「え?」
「今やグリードは災いそのもの。いつ、災いに心を乗っ取られてもおかしくない。」
「そんな事ないわ。」
「どうしてそう言える?」
「だって、グリードだもの。私を残して、おかしくなるなんて、有り得ないわ。」
「変な自信だな。だが、ちゃんと現実と向き合え。お前はお前の友達を犠牲にしてもいいのか?」
「そうはならないわ。それに、もしなったとしても大丈夫よ。」
「何故?」
「私は聖なる乙女の力を得るわ。だから、グリードが暴れる前に、グリードを美しい聖龍へと戻してみせる。」
「その自信はどこからくる?」
「自信ではないわ。ただ、そうなるだけ。」
「だが、もしあれが聖龍に戻ったとしても行く場所はない。あれはもう聖龍には、受け入れられないだろう。」
それを聞いたフィリアは、目を輝かけた。
「本当に?」
「おい、何故そこで喜ぶ。」
「え?、、、あの、ほら。」
「お前、、まさか何かを企んでいるのか?」
「あ、、う。」
「ここでは嘘偽りは通用せぬぞ。」
フィリアは顔を両手で隠して言った。
「だって、それなら私の所から居なくならないって事でしょう?」
「は?」
「ずっと心配はだったの。グリードは、、、戻りたいだろうなって。あ、でも、グリードは戻りたいかしら。それは、、、グリードが、、悲しむわね。もしグリードが戻りたいって言ったら、、、ちゃんと方法を考えなきゃ。」
「おい。だから戻れないと言っている。」
フィリアはきょとんとした表情で言った。
「ええ。今はそうかもしれないわね、でも、先のことは分からないでしょう?」
その言葉に思わず息を止めてしまう。
「そうだな。」
「私はずっとグリードと一緒に居たいから、もしグリードが聖龍達と一緒に暮らしたいって言ったら頑張って認めてもらわなきゃ。」
「おい。おい。お前まさか、グリードだけでも無理だと言っているのに、お前まで付いてくるつもりか?」
「え?ええ。あ、ちゃんと認めてもらえるように努力するわ!」
その言葉にロイの姿をした者は大声で笑った。
「おもしろい!よし、ならば最後の質問だ。もし、グリードと世界のどちらかを選ばなければならなくなれば、どちらを選ぶ?」
「選ばないわ。私はどちらも救えるように動き続ける。」
「なるほど、お前の心に、嘘偽りなし。第三の試練合格だ。」
「ふふ。良かった。さぁ、最後の試練!」
「あぁ。心を強くもて。」
ロイの姿は消え、空間は闇の中へと暗転した。
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