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第二章
第十六話
しおりを挟む地面に落ちたイヤリングは、熱を帯び、地面を黒く焦がすと燃え上がった。
黒い炎の中に、瞳が見える。
【我が、対を、返せ。】
その声に、三人が目を丸くした時であった。
結界の外に、ヴィオレッタがこちらへと歩いてくるのが目に入る。
「こっちに来てはダメ!」
フィリアが叫ぶが、ヴィオレッタはほの暗い瞳を携え、ゆっくりとこちらへと歩いてくると、結界へと手を触れた。
結界はいともたやすく溶けて消えてしまうと、ヴィオレッタがイヤリングのもとへと進む。
フィリアがヴィオレッタの所へと駆け寄ろうとすると、それをグリードが止めた。
「少し、様子を見よう。」
「でも!」
「危険であればすぐに助けますから。」
フィリアは二フエルのその言葉に、唇を噛むとその様子を見つめた。
【会いたかった。】
「ええ。私も。」
そう言うと、呪われた宝珠とイヤリングは抱き合うように重なる。
イヤリングは、三人に視線を移すと言った。
【我もこの娘に着く。我と宝珠を決して引き離すな。もし離せばそなたらに呪いをかける。】
その言葉に、フィリアは声を上げた。
「ヴィオレッタはどうなるの!」
意思を乗っ取られ、操られているヴィオレッタの瞳から涙が零れ落ちる。
フィリアにはそれが助けを求めているのだという事が分かった。
だが、宝珠とイヤリングは離れようとはしない。
【意思は奪わぬ。だが我らには憑代が必要だ。】
「この娘は呪いの影響を受けぬ稀有な存在。」
【我らの呪いの力は人の体を病む。故に、一緒に対となり着けてもらえることはなかった。】
「だが、この娘ならばそれが可能だ。」
その言葉に、フィリアは言った。
「なら、まずヴィオレッタと話をするわ。そして、彼女が良いと言うか聞いてみるわ。話はそれからよ。」
宝珠とイヤリングはそれに同意するかのように頷くと、イヤリングはヴィオレッタの耳に収まり、ヴィオレッタが目を覚ます。
ヴィオレッタは体を震わせて、瞳を潤ませた。
「ふぃ、、、フィリア様。」
助けを求めるように腕を伸ばされたフィリアは、ヴィオレッタの体を抱きしめた。
「大丈夫よ。もう、大丈夫。」
「怖かった。うぅ。」
ヴィオレッタの背を優しくフィリアが撫でていると、いつのまにか二フエルはその場にお茶会の準備をしており、紅茶の良い匂いが辺りに広がった。
「まずは紅茶でもいかがです?ヴィオレッタ嬢も、どうぞ。」
フィリアはヴィオレッタを支えながら椅子に座らせると、その横に自分も座った。
グリードはため息をつきながらその向かい側に腰を下ろす。
二フエルは紅茶を皆にだし、そしてケーキも準備するとそれをフィリアとヴィオレッタの前へと置いた。
「甘いものも一緒にどうぞ。ヴィオレッタ嬢、いいですか?そこまで難しく考えなくていいのです。」
「え?」
「だって、令嬢とは、美しくいつも着飾るものでしょう?」
二フエルの言葉に、ヴィオレッタは大きな瞳をぱちくりと瞬かせた。
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