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第百八十七話
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グラスに注いだ飲み物を、揺らしながらシュリレは笑みを浮かべた。
偉大なる大魔法使いとその弟子がもうすぐつくであろう。
自分の横に控えさせているアルルは人形のようにただじっと立っている。
ふふふっとシュリレは笑い声を漏らした。
この小娘がそもそも魔術の国の王子であるキースの関心を引いたりするのが悪いのである。
自分だってまだ声をかけてもらったことのない王子に、町で声を掛けられるなどあってはならないことだ。
その時、屋敷の中に鐘の音が鳴り響き、客人の訪れを告げた。
シュリレはにやにやとした笑みを浮かべるとアルルに言った。
「ふふふ。覚えているといいわね。」
操られる少年に案内され、部屋の中に正装を身に纏ったアロンとレオが現れる。
その姿を見た瞬間にアルルの心の中は喜びであふれた。
『お父さん!レオ!』
心の中で叫び声を上げると、アロンとレオは真っ直ぐにこちらへと歩いてい来る。
アルルの心臓がどきりと大きく跳ねた。
大丈夫、きっとお父さんもレオも自分の事を覚えていてくれるはずである。
大丈夫。
アルルは何度も繰り返し心の中でそう呟き、そしてアロンとレオに視線を送る。
だが、二人の視線は一向に自分の方に向くことがない。
アルルは背筋が冷えていくのを感じた。
アロンとレオの視線はアルルと交わることはなく、淡々とシュリレとあいさつを交わしていく。
シュリレはそれを見ておかしそうに笑みを一層深めると、アロンとレオに言った。
「お客人方、この娘に見覚えなどありませんか?」
わざとらしく、突然アルルの事をシュリレは会話の中に入れ、そしてにやにやとアロンとレオの姿を見つめている。
アルルはアロンとレオをじっと見つめた。
視線が重なり合った瞬間、アルルの心は悲鳴を上げた。
ウソだ。
絶対にお父さんとレオは私の事を忘れたりしない。
私の事を、忘れたりなんて、しない!
シュリレはアロンとレオが何も言わなかった様子を見て、面白そうに笑みを深めるとアルルに言った。
「今だけ、魔術を解いてあげる。ふふふふ。さぁ、思う存分、話しかけてみなさいな!」
お前の事など忘れているだろうから、自分で問うてみよとシュリレは悪趣味な方法を取った。
アルルの絶望に染まる顔が見たい。
親と友に拒絶され、覚えていないと言われ、絶望を感じる姿を見たい。
シュリレは腹の底から笑いを堪えて、魔術を解いた。
それは、ほんの一瞬の出来事であった。
アルルの体が自由を取り戻し、瞳から涙が流れ落ちてアロンとレオに手を伸ばしたその、ほんの一瞬。
レオはアルルを抱き寄せて自身の周りに張っていた守護魔法と防御魔法の中に入れた。
アロンがその瞬間に炎の竜を作り上げると部屋の中にあるランタンを全て壊した。
アルルはそれを見て声をあげる。
「お父さん!悪魔はシュリレのはめている腕輪についているの!後、人を操る魔術の魔方陣が肖像画に描かれているの!」
「でかした!」
その声にアロンはすぐさま反応すると魔法を放った。
偉大なる大魔法使いとその弟子がもうすぐつくであろう。
自分の横に控えさせているアルルは人形のようにただじっと立っている。
ふふふっとシュリレは笑い声を漏らした。
この小娘がそもそも魔術の国の王子であるキースの関心を引いたりするのが悪いのである。
自分だってまだ声をかけてもらったことのない王子に、町で声を掛けられるなどあってはならないことだ。
その時、屋敷の中に鐘の音が鳴り響き、客人の訪れを告げた。
シュリレはにやにやとした笑みを浮かべるとアルルに言った。
「ふふふ。覚えているといいわね。」
操られる少年に案内され、部屋の中に正装を身に纏ったアロンとレオが現れる。
その姿を見た瞬間にアルルの心の中は喜びであふれた。
『お父さん!レオ!』
心の中で叫び声を上げると、アロンとレオは真っ直ぐにこちらへと歩いてい来る。
アルルの心臓がどきりと大きく跳ねた。
大丈夫、きっとお父さんもレオも自分の事を覚えていてくれるはずである。
大丈夫。
アルルは何度も繰り返し心の中でそう呟き、そしてアロンとレオに視線を送る。
だが、二人の視線は一向に自分の方に向くことがない。
アルルは背筋が冷えていくのを感じた。
アロンとレオの視線はアルルと交わることはなく、淡々とシュリレとあいさつを交わしていく。
シュリレはそれを見ておかしそうに笑みを一層深めると、アロンとレオに言った。
「お客人方、この娘に見覚えなどありませんか?」
わざとらしく、突然アルルの事をシュリレは会話の中に入れ、そしてにやにやとアロンとレオの姿を見つめている。
アルルはアロンとレオをじっと見つめた。
視線が重なり合った瞬間、アルルの心は悲鳴を上げた。
ウソだ。
絶対にお父さんとレオは私の事を忘れたりしない。
私の事を、忘れたりなんて、しない!
シュリレはアロンとレオが何も言わなかった様子を見て、面白そうに笑みを深めるとアルルに言った。
「今だけ、魔術を解いてあげる。ふふふふ。さぁ、思う存分、話しかけてみなさいな!」
お前の事など忘れているだろうから、自分で問うてみよとシュリレは悪趣味な方法を取った。
アルルの絶望に染まる顔が見たい。
親と友に拒絶され、覚えていないと言われ、絶望を感じる姿を見たい。
シュリレは腹の底から笑いを堪えて、魔術を解いた。
それは、ほんの一瞬の出来事であった。
アルルの体が自由を取り戻し、瞳から涙が流れ落ちてアロンとレオに手を伸ばしたその、ほんの一瞬。
レオはアルルを抱き寄せて自身の周りに張っていた守護魔法と防御魔法の中に入れた。
アロンがその瞬間に炎の竜を作り上げると部屋の中にあるランタンを全て壊した。
アルルはそれを見て声をあげる。
「お父さん!悪魔はシュリレのはめている腕輪についているの!後、人を操る魔術の魔方陣が肖像画に描かれているの!」
「でかした!」
その声にアロンはすぐさま反応すると魔法を放った。
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