魔法使いアルル

かのん

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第百九十二話

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 魔術の国の王座で一人の王が腕を組む。

 瞳は仄暗く、どこを見据えているのかもわからぬほどに色を失っている。

 その前に膝をついているキースは、父である国王ヴィンセントの顔色をちらりと見てばれないように小さくため息をついた。

 いつからか、国王はその瞳の色を失い、何かに憑りつかれた様にして国を動かすようになった。

 それが何故なのかは、キース自身分かっている。

 亡き母を、父は今も追い求めているのである。

「して、シュリレは?」

 その言葉に、キースはシュリレを閉じ込めているランプを掲げた。

「こちらに。」

「そうか。、、、人の国と今は争う時ではない。シュリレには罰としてランプに禁固百年。キースよ。シュリレの悪魔は没収し、我が元へと送れ。」

「仰せのままに。」

 ヴィンセントはそこで立ち上がると、衣服を引きづりながら去って行った。

 おそらく、どこかにある研究室へとこもるのであろう。

 それをキースは見送って大きくため息をついた。

 本来ならば偉大なる大魔法使いアロンとその弟子はあの研究室について探りに来たのだろう。だが、アルルの事がありそちらを優先したと考える。

 キース自身、ヴィンセントが何を行っているのかは予想はついても本当には知らない。

 そして、出来れば知らぬままでいたいと思っていた。

 キースは亡き母に、男子たる者女性を平等に愛せと教えられて育てられた。この国では自分の好みの女性が居れば声をかけるのは当たり前だし、キース自身それが至極当然だと思っていた。

 だが、父は違った。

 父であるヴィンセントは亡き母を唯一として愛し、慈しみ、そして彼女を失った瞬間に狂った。

 キースは人の心の壊れる音を初めて聞いた。

 だが、表だっては国王としてヴィンセントは逸脱することはなく、国を支えている。

 だからこそキースは何も言わなかった。

 そして、自分はそうはなるまいと思った。

 ただ一人を唯一として愛するなんてことは馬鹿げている。

 たった一人と決めて愛するがゆえに狂うのだ。

 たくさんの女性を愛せば、その分たくさんの愛が返ってくる。そして自分の愛も分散することできっと一人の女性がために狂う事はないだろう。

 キースは立ち上がると、大きく背伸びをしてから指先でランプを弄んだ。

 以前からシュリレに好意を抱かれていたことは知っていたが、危険な女性には近づかない方がいい。そう思って放置していたのが悪かった。

 次期国王としてもっと自身の見る目と視野も広げていかなければなとキースは思った。

「百年の時、牢獄で反省せよ。」

 キースがそう呟いた瞬間、ランプは悪魔の口に飲み込まれて消えてしまった。

「たった一人に懸想するなど、馬鹿のすることだ。」

 小さなその呟きは、どこかへと消えた。



 

 
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