魔法使いアルル

かのん

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第百九十四話

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 廊下を通り抜け、キースは内緒だと言いながら北の塔の階段まで進んできた。

 なんでも、北の塔は一番高い城の塔らしく、上まで登れば魔術の国が見渡せると楽しそうにキースが言っていた。

 だが、高いだけあって階段が長い。

「はぁ、、、はぁ、、、きつい。」

「うん、、、、はぁ、、長い。」

「俺も、、、久しぶりに上るな、、、きついな。」

 三人は額から流れる汗をぬぐいながら、一度止まると大きく息を吐いた。

 上を見上げればまだ光が見えるのは遥か彼方である。

 まだまだ螺旋状の階段が続いており、三人はそれをげんなりした表情で見上げていた。

 実際の所方法はあるのだ。

 箒に乗って飛んでしまえば一瞬である。

 だがしかし、それをやってしまうと上に登りきった時の感動が何ともうすれてしまうような気がして三人は魔法と魔術をあえて使わないようにして登り続けていた。

 足を見れば微かに震えていて、筋肉が悲鳴を上げているように感じた。

 だが、しかし、ここまで来たのだから最後まで頑張りたい。

 三人は顔を見合わせると、お互いに励ますように笑い合ってから階段をまた一段、一段とゆっくり登って行った。

「あー、、、ねぇ、遊びながら行かない?」

 アルルがそう言うと、レオも同意した。

「それなら頑張れそう。」

「そうだな。グリコでもするか。」

「グリコ?」

「小さな頃はよく遊んだものだ。」

 キースはそう言うと、アルルとレオにグリコのルールを教えた。

 じゃんけんをして、グーで勝ったらグ・リ・コの文字分三歩、チョキで勝ったらチ・ョ・コ・レ・ー・トの文字分六歩、パーで勝ったらパ・イ・ナ・ッ・プ・ルの文字分六歩階段を登れると言うルールらしい。

 簡単なルールであったのでアルルもレオもすぐに乗り気になると、一番上まで最初についた人に何か商品を出そうと考えた。

 キースはニコリと笑うと言った。

「なら、一位になった人は願い事を叶えてもらえると言うのはどうだ?」

 その言葉にアルルもレオもうなずいた。

「あ、でも、出来ない事はなしだよ?」

 アルルが言うとキースもうなずいた。

「出来る範囲でだな。」

「まぁ、それならいいよ。」

 三人はそうと決まれば真剣な表情に変わる。

 遊びではあるが、真剣勝負でもある。

『最初はグー、じゃんけんポン!』

 三人の気合の入った声が北の塔の階段に響き渡ったのであった。

 そして、かなり時間はかかったものの、一番最初に上にたどり着いたのはキースであった。

「やったぁぁぁ!」

 キースは地面に座り込むと共にガッツポーズを決めた。

 二番目はレオ。

 床に両手をつきながら大きく息を吐くと言った。

「あー。後ちょっとだったのになぁ。」

 最後はアルルである。

 その場に伸びるようにして寝っころがるが、その表情には達成感があった。

「負けたー。でも、登りきったぁ!」

 三人は顔を見合わせて笑いあうと立ち上がり、北の塔の淵に手を乗せてそこからの光景に歓声を上げた。

「すごい!すごい!良い眺めだね!」

 アルルが興奮してそう言うと、レオも同意するようにうなずいた。

「あぁ!本当だね!すごいや。」

 そんな二人に自慢気にキースは言った。

「あっちの虹色の峰から、反対側の渓谷までずっと魔術の国だ。空を見て、うっすらとキラキラと光って見えるだろう?あれは、魔術の国を守る役割を果たしているんだ。」

 空を見上げれば、確かに青い空に交じってキラキラと光る部分がところどころに見られた。

 魔術の国は、それはそれは美しい国であった。

 空は青く澄み渡り、町々はレンガ造りのカラフルな家が立ち並ぶ。

 空中には魔術で操っているのだと言う飛行船が飛んでおり、にぎやかで豊かな国であることを物語っていた。

「綺麗な国だね。」

「本当にだね。」

 その言葉を聞き、キースは息を吐くと視線を落とした。

「あぁ、綺麗な国だ。」

 少し落ち込んだような口調に、アルルとレオは首を傾げた。

 キースはそんな二人に真っ直ぐに視線を返すと、はっきりとした口調で言った。

「でも、、、この綺麗な国を、、、俺の父は、、、もしかしたら壊すかもしれない。」

「え?」

「それは、どういう意味?」

 キースは意を決したかのように、アルルとレオに願い出た。

「お願いがある。俺と一緒に、俺の父を止めてほしい。」

 グリコで勝った”願い事”がそんなにも大きな願いだとは二人は思ってもみなかった。


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