魔法使いアルル

かのん

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第二百三十六話

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 次に見えてきたのはなんとガラクタだらけの山であった。

 そこにあるのは壊れたコップに壊れた箒、壊れたバケツに壊れたフライパン。全て壊れているものばかりで、音楽には何の関係もない。

 数人の子どもたちがそこにいるが、子どもたちも戸惑っている様子であり、看板を見て首を傾げている。

「次は何だろう。」

 アルルは看板を見て、他の子どもと同じように首を傾げた。

【音はどこからでも生まれるもの。生まれた音を楽しんで。】

 レオとアロンも辺りを見回して、そして三人は顔を見合わせた。

「どういう意味かのぉ?」

「うーん。音を、鳴らせってことですよねぇ。」

 アルルはガラクタの方へと歩いていくと、ガラクタの山の下にはガラス瓶の破片がたくさん落ちており、踏むと、じゃりじゃりと音が鳴った。

「あ、面白い。」

 アルルはにこにこ笑いながら、レオとアロンを呼んだ。

「見て見て。ほら、じゃり、じゃり、じゃりー。面白いよ。」

「ん?本当だね。ふふ。僕もやる。」

「おぉ。面白そうじゃの。わしもやるぞー。」

 三人はじゃりじゃり音を鳴らしながら、アロンは軽やかにステップを踏み、そして近くにフライパンを見つけると、魔法の杖でリズミカルに叩いた。

「ほらほら、こっちもいい音じゃ!」

「先生。魔法の杖・・・。」

 レオは呆れ顔でアロンを見たが、アルルはすぐにそれに笑い声を上げると、自分は落ちていたガラスの瓶に、落ちている破片を入れて、しゃらしゃらとマラカスのように振った。

 二人が楽しそうに鳴らしながら踊りだすものだから、レオも笑いを堪えきれずに声を立てると、落ちていたドラム缶を壊れたデッキブラシで叩いたりこすったりして音を鳴らす。

「はは!これだねアルル!多分、これが正解だ。」

 レオがにっこりと笑って言った時、アルルとアロンは踊りながらリズムを刻むことに夢中になっていて聞いていない様子であった。

 三人がリズムを刻み、そして他の子どもたちも真似するように音が奏でられる。

 どの子も笑い、そしてガラクタが楽器になって楽しいリズムを刻んでいく。

 音楽という物はどこからでも生まれるものなのだなと、アルルは知り笑い声を上げながら皆との音楽を楽しんだ。

 その瞬間に音楽の民の歓声が響いた。

「さすがだな!」

「音のないところからよく音を見つけたな!」

「音楽は自由!」

「音楽はどこでも生まれる!」

「おめでとう!通過していいぞー!」

 アルルはその声にきょとんとすると、少し名残惜しそうにガラクタを見つめた。

「もうちょっと鳴らしていたかったな。」

「わしもじゃ。もうちょっとだけ鳴らしていくか?」

 アルルとアロンが名残惜しそうにする中、レオは小さくため息をつくと言った。

「また後からしましょう? ね? とにかく今はすすまなきゃ。」

 レオに諭されてアルルとアロンはしぶしぶと言った様子で走り出した。

 二人からもっと楽しみたかったなぁという雰囲気がじとーっとかもしだされていた。

「屋敷に帰ったら、ルビーも入れて皆で遊びましょうね?」

「そうじゃな。そうしよう。」

「やったぁ。ふふふ。レオ。いい考えだね。」

 どちらが子どもでどちらが大人か分からない会話であった。





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