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第二百三十九話
しおりを挟む「レオ!お父さん!」
「アルル!」
「アルル無事じゃったか!」
二人に抱きしめられ、アルルはぎゅっと抱きしめ返すとほっと息を吐いた。
二人の温かさに、ほっと心が落ち着く。
「良かった。」
レオとアロンもうなずいた。
そしてアルルの周りにいる者達に視線を向けると、アロンは眉間にしわを寄せる。
「この者達は?」
これまでのことをアロンに伝えると、アロンは眉間にしわを寄せ、しばらくの間黙り込んだ。
レオは近くにいる子に声をかけ、話を聞いている。
「なるほど…この国にはそんな秘密があったのか。」
アロンはそう言うと、頭を掻いた。
「国によってさまざまな問題はあるが…音楽の民の秘密がこんな事になっているとは…。」
アルルも悲しげに言った。
「うん。だって、好きな事が違う事は悪い事じゃないのに…。」
レオもアルルの言葉にうなずくとアロンに言った。
「ここに住んでいる子たちは学校とかにもいけないと言っていました。アロン先生、このままでいいのでしょうか。」
「うーむ…。」
これは違う国の問題である。
手を出して国同士の争いに発展しては問題である。
アロンはどうしたものかと考えると、アルルが言った。
「ねぇ、音楽の民の皆は、音楽は自由だって言っていたでしょう?なのに…好きな事は自由じゃないなんておかしいよ。」
その言葉に、数名の者の瞳が揺れる。
「おかしい?」
「おかしいのは、僕たちの方なんじゃないの?」
「音楽が一番に出来ない…僕たちがおかしいのでは、ないの?」
その言葉にアルルは目を丸くした。
「どうして? さっきも言ったけれど、好きな事があるのは素敵なことだよ!」
その言葉に周りに集まってきていた見捨てられた民らが動揺する。
おかしいのは自分たち。
悪いのも自分たち。
だから、今のこの状況は仕方がないこと。
そう思って生きて来たのに、アルルの言葉によってまわりにざわめきが生まれる。
「私たちは…悪くないの?」
「なら…悪いのは…誰なの?」
その言葉にアルルは口をつぐみ、そして悲しげに顔を歪ませると首を横に振った。
「ダメだよ。」
「え?」
「誰が悪いとか…そういうんじゃないと思う。だって、音楽を好きな事も、それ以外を好きな事も素敵なことなのに…悪者を作っちゃったら、ぜんぜん素敵じゃなくなっちゃう。」
「アルル。」
レオはその言葉にアルルの背にそっと手を回して撫でた。
アロンは優しく微笑むと言った。
「とにかく、これは大変な問題であることは間違いない。わしらに、おぬしらの話をもっと詳しく聞かせてくれ。出来る限りの力は貸そう。」
アロンの言葉にアルルもレオもうなずくのであった。
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