【完結】もう貴方とは離縁させていただきます!

かのん

文字の大きさ
4 / 17

四話 暴力の日々

しおりを挟む

 貴方が初めて暴力を振るった日から、貴方は私に容赦がなくなりました。

 嫌な事が会った時には、私に苛立ちをぶつけにやってくるようになりましたね。私は貴方がいつやってくるのかとびくびくと生活をするようになりました。

 貴方は昼でも、夜でも、苛立った時には私の所にやってきました。

 私は眠れなくなり、体がどんどんとやせ細っていくのを感じました。もうすぐ自分は死ぬのではないかと思いながら日々を暮らしていました。

「お願いします・・・もう・・やめて下さい・・・・」

「お前はそんな事を言える立場か?お前には何もない。家族も、愛も、家庭も!俺が居なければ、お前などとっくの昔に死んでいたのだぞ!」

「ごめんなさい。ごめんなさい。許して。お願い。許して・・・・」

 何度も何度も、繰り返して言われる言葉が頭の中でぐるぐるとめぐるようになりました。

 私には、家族がいた。

 愛してくれていた。

 貴方と結婚してから連絡が取れなくなっただけ。

 毎日そう自分に言い聞かせていた。

「お前が手紙を出したところで、助けてくれるとでも?ははは!お前の両親は、お前からの連絡がなくて清々している事さ!」

「許して・・・お願いします・・・」

「お前がいなくなって、お前の父も母も喜んでいたぞ!俺はお前のようなやっかいものを押し付けられたんだ!」

 繰り返しそう言われることで、私は、私を愛してくれていた両親が、私の事を憎んでいたのだと思うようになりました。

 私はいらなかったのだ。

 荷物だったのだ。

 悲しくて、苦しくて、毎日死を願うようになりました。

「もう・・もう殺して下さい・・・お願いします。殺して・・・」

 何度も貴方になぐられて、貴方におられた指は上手く曲げられなくなりました。昔は貴方に綺麗に刺繍をしてあげようと、練習を何度もして上達したのに、もう詩集を刺す事も出来ません。

「死にたければ自分で死ね!」

 最低限の食事と、最低限の睡眠。

 ぎりぎりの状態がどのくらい続いたのかは分かりません。

 覚えていません。

 ただ、ただ、時間だけが恐ろしいほどに早く過ぎていきました。

 太陽が昇って、日の日差しを浴びても、何も感じなくなりました。

 食べ物を食べても、味がしなくなりました。

 綺麗な花の香りさえ、もうどういったものか分からなくなりました。

 私が求めるものは、安らかな死だけになりました。

 早く、早くと思うのに、貴方は私を殺す気がないのか、私が死にそうになると食事を与え、休息を与え、安らかな死さえ与えてくれません。

 そんな時でしたね。貴方の子どもが、ミリアーナ様との間に産まれたのは。



しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

伯爵令嬢の婚約解消理由

七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。 婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。 そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。 しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。 一体何があったのかというと、それは…… これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。 *本編は8話+番外編を載せる予定です。 *小説家になろうに同時掲載しております。 *なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。

【完結】2人の幼馴染が私を離しません

ユユ
恋愛
優しい幼馴染とは婚約出来なかった。 私に残されたのは幼馴染という立場だけ。 代わりにもう一人の幼馴染は 相変わらず私のことが大嫌いなくせに 付き纏う。 八つ当たりからの大人の関係に 困惑する令嬢の話。 * 作り話です * 大人の表現は最小限 * 執筆中のため、文字数は定まらず  念のため長編設定にします * 暇つぶしにどうぞ

私を見下していた婚約者が破滅する未来が見えましたので、静かに離縁いたします

ほーみ
恋愛
 その日、私は十六歳の誕生日を迎えた。  そして目を覚ました瞬間――未来の記憶を手に入れていた。  冷たい床に倒れ込んでいる私の姿。  誰にも手を差し伸べられることなく、泥水をすするように生きる未来。  それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。  だが、彼の言葉は、決定的だった。 「――君のような役立たずが、僕の婚約者だったことが恥ずかしい」

皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]

風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが 王命により皇太子の元に嫁ぎ 無能と言われた夫を支えていた ある日突然 皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を 第2夫人迎えたのだった マルティナは初恋の人である 第2皇子であった彼を新皇帝にするべく 動き出したのだった マルティナは時間をかけながら じっくりと王家を牛耳り 自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け 理想の人生を作り上げていく

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

いつも隣にいる

はなおくら
恋愛
心の感情を出すのが苦手なリチアには、婚約者がいた。婚約者には幼馴染がおり常にリチアの婚約者の後を追う幼馴染の姿を見ても羨ましいとは思えなかった。しかし次第に婚約者の気持ちを聞くうちに変わる自分がいたのだった。

処理中です...