【完結】もう貴方とは離縁させていただきます！

三話 子ども

　私はほぼ幽閉されるような形で、屋敷の一部に建てられた小さな家に押し込められた。貴方は屋敷って言っていたけれど、あれを屋敷と言っていいのか私には分からないわ。

　家族に助けを求めようにも、貴方は私の家の前に見張りをつけて外へは出してくれず、手紙すら届けてはくれなかった。

　心の中がどんどんと削られていくのが分かったわ。

　私は何のために生きているのか分からなくて、何のために結婚をしたのかも分からなくて、どうしてこんな思いをしてまで貴方と結婚しなければならなかったのか、毎日考えるようになったわ。

　家族に相談したかった。

　誰かに相談したかった。

　なのに、貴方は最低限のメイドを私に与えるだけ、最低限の食事を与えるだけ、最低限の生活をさせるだけ。

　私は、ただ、生かされていただけ。

　なのに、突然私の所にやってきて、貴方は言ったわね。

「俺の両親が来る。もしおかしなことを言ったら、殺すぞ。」

　意味が分からなかったわ。どうして、貴方の両親を私がもてなさなければならないの？

　貴方が愛するミリアーナ様に相手をしてもらえばいいのに。

「・・・何故です？ミリアーナ様にしてもらえばいいではないですか。」

「口答えをする気か？」

　貴方は冷たい瞳で私を睨みつけた後に、私に剣をつきたてましたね。殺気など向けられた事のなかった私は、どうしてそんなに貴方が私を憎々しげに見てくるのか分かりませんでした。

「私が何をしたと言うのです！」

「お前はいいから、両親の相手をすればいいだけだ。次反抗的な態度をすれば、痛い思いをすると思え。」

　意味が分かりませんでした。ですが、私は体が震えて、とにかく頷くしかありませんでした。

　そして久しぶりに綺麗な新しい服を着て、久しぶりに屋敷に足を踏み入れ、貴方の両親をもてなした時に、貴方が両親に何も話をしていないのだと気づきました。

「もう結婚してしばらく経つでしょう？そろそろ、子どもの方はどうかと思って。」

「え？」

　私は意味が分かりませんでした。お義父様もお義母様も少しいらだった様子でした。

「あのねぇ、貴方、結婚したら子どもを授かるのは夫婦の務めでしょう？」

「いつになったら世継ぎが産まれるんだ？」

　どう答えたらいいのかが分からず、私が呆然としていると、お義母様は大きなため息をついてがっかりしたように言いました。

「ほら、あの子は奥手でしょう？だから、貴方がしっかりと誘って、子を授かれるように頑張らないでどうするの。」

「え・・・？」

　子どもも何も、貴方とは白い結婚で、私の頭はパニックになりました。

「もしかして貴方・・・その、夜の方が、得意ではないのかしら？」

　下世話な話題に、私は顔が熱くなるのを感じ、お義父様も話に入ってくるものですから、気分が悪くなりました。

「まぁねぇ・・まだまだ若いんだから、楽しみたいって気持ちも分かるがねぇ。」

　にやにやとするお義父様が気持ちが悪くって、私は震えそうになるのを必死に堪えました。

　それからしばらくの間お義母様は子どもが出来ないのは私の責任だとずっと言い続けられました。私は次第に本当に私のせいなのかと錯覚していきます。

　屋敷を初めて訪問してから、毎週のようにお義母様から子どもの最速の手紙が届くようになりました。一か月に一度は必ず貴方の両親が私の所に来ては、子どもはまだかと言うようになりました。

　私は、どうしたらいいのか、分かりませんでした。

「・・お義父様とお義母様から・・・子どもはまだかと言われるのです・・・ミリアーナ様とは・・どうなのですか？」

　そう尋ねると、貴方は顔を真っ赤にして私の頬を打ちました。

　人に叩かれた事などなかった私の体は飛び、ソファに頭をぶつけて口の中は切れてしまいました。血の味が広がる感覚は今でもよく覚えています。

「お前は・・・俺にそんな事を言える立場だと思っているのか！」

　その日から貴方は私の事をよく叩いたり蹴るようになりましたね。

　私はもう、自分がどうなるのか分からなくなり、早く死にたいと願うようになりました。