【完結】もう貴方とは離縁させていただきます!

かのん

文字の大きさ
2 / 17

二話 愛されると思っていた

しおりを挟む
 結婚式は卒業後すぐに開かれました。

 貴方は全くと言っていいほどに手伝ってはくれなくて、準備はそれはそれは大変でした。

 ドレスを選ぶ時、貴方にも見てほしくて一緒にウェディングドレスを選んでほしいとお願いしましたね。

「あの、ウェディングドレスはどんなものがいいか悩んでしまいまして、今度のお休みに、一緒にお願いでしませんか?」

「・・・・あぁ。」

 貴方はお仕事の書類を見ていて生返事だったのに、私は貴方が一緒に選んでくれるのだと心の中でとても喜んだのを覚えています。

 でも、当日貴方はいなくて、私、情けないけれどウェディングドレスを試着しながら必死で涙を堪えたんです。

「今日は旦那様になる方も来られるのではなかったの?」

「あー。なんか、来れなくなったみたいよ。」

「まぁ、可愛そうにねぇ。」

 小さな囁き声が、大きく聞こえて、私はぐっと奥歯を噛んで堪えていました。

「まぁ政略結婚らしいからねぇ。」

「あら、不運ね。愛されていないのだわ。」

「可愛そうにねぇ。」

 言われていることは全てが事実で、当たっていたからこそ辛くて。

 でも、貴方がいずれは私を愛してくれると思っていたから堪えられた。

 大丈夫だって、そう自分に言い聞かせた。

 でも、結婚式の当日に、貴方の愛するミリアーナ様に言われたの。

「貴方、ウェディングドレス、一人で選んだのですってねぇ。ふふ。」

 何で男爵家の結婚式に呼んでもいない人にそんなことを言われないといけないのだろうと、その時の私は思ったわ。

 そして、彼女から、真実を聞いて、私は心に亀裂が入るような痛みを感じたの。

「だって、その時、彼と私はベッドの中で愛し合っていたのだもの。」

 まだまだ子どもだった私は、その言葉を聞いて気持ちが悪くて、結婚式の幸せな時のはずなのに、この世の中で一番不幸な気分を味わったわ。

 その後の式の内容はほとんど覚えていないの。

 そして、屋敷に案内されて、初夜、私は気持ちが悪くてどうしたらいいのか分からなくて、一睡も出来なかった。

 太陽が昇るのを見て、貴方が訪れなかった事を安堵する自分に驚いたけれど、それよりも次の日に貴方から告げられた言葉の方が驚いたわ。

「お前を愛することはない。屋敷の敷地内にもう1つ屋敷を建て、別の部屋を用意してある。そちらへ移れ。」

「え?」

 では、整えられたあのごてごてしい寝室は一人で使うのかと思ったわ。

 ミリアーナ様が現れるまでは。

 当たり前のように貴方の横に立ち、けだるげな笑みを浮かべて、大きく胸の開いた服をわざと着て来て、貴方の愛の証のキスマークを見せつけられて、私がどんな気分だったのか分からないでしょうね。

「悪いが俺は彼女を愛している。あぁ、君の生活は保証する。だが、女主人として振る舞っていいのか君じゃない。」

 では何故彼女と結婚しなかったのですか。

 そう訪ねたかったのに、その時はあまりに衝撃的すぎて何も言えず、何も出来ず、私は言われるがままになるしかなかった。



 
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

伯爵令嬢の婚約解消理由

七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。 婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。 そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。 しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。 一体何があったのかというと、それは…… これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。 *本編は8話+番外編を載せる予定です。 *小説家になろうに同時掲載しております。 *なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。

【完結】2人の幼馴染が私を離しません

ユユ
恋愛
優しい幼馴染とは婚約出来なかった。 私に残されたのは幼馴染という立場だけ。 代わりにもう一人の幼馴染は 相変わらず私のことが大嫌いなくせに 付き纏う。 八つ当たりからの大人の関係に 困惑する令嬢の話。 * 作り話です * 大人の表現は最小限 * 執筆中のため、文字数は定まらず  念のため長編設定にします * 暇つぶしにどうぞ

私を見下していた婚約者が破滅する未来が見えましたので、静かに離縁いたします

ほーみ
恋愛
 その日、私は十六歳の誕生日を迎えた。  そして目を覚ました瞬間――未来の記憶を手に入れていた。  冷たい床に倒れ込んでいる私の姿。  誰にも手を差し伸べられることなく、泥水をすするように生きる未来。  それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。  だが、彼の言葉は、決定的だった。 「――君のような役立たずが、僕の婚約者だったことが恥ずかしい」

皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]

風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが 王命により皇太子の元に嫁ぎ 無能と言われた夫を支えていた ある日突然 皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を 第2夫人迎えたのだった マルティナは初恋の人である 第2皇子であった彼を新皇帝にするべく 動き出したのだった マルティナは時間をかけながら じっくりと王家を牛耳り 自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け 理想の人生を作り上げていく

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

いつも隣にいる

はなおくら
恋愛
心の感情を出すのが苦手なリチアには、婚約者がいた。婚約者には幼馴染がおり常にリチアの婚約者の後を追う幼馴染の姿を見ても羨ましいとは思えなかった。しかし次第に婚約者の気持ちを聞くうちに変わる自分がいたのだった。

処理中です...