【完結】もう貴方とは離縁させていただきます！

七話 家族との再会

　目が覚めた時、私は柔らかなベッドの感触に一瞬自分がどこにいるのかが分からなくなり、怖くなって飛び起きました。

　けれど、温かな太陽の日差しが、カーテンから差し込む様子を見て、ほっとしました。

　ここは、もうあの地獄ではないのだ。

　そう思った瞬間に、また涙が溢れました。

　朝の支度に来てくれた侍女達は、とても優しくて、身支度を手伝ってもらってからユージーン様に挨拶をしてほっとしました。

「君の家族が会いに来ているよ。」

　そう言われて怖くなった私をユージーン様は支えてくださいました。

「君がリックから言われたことは、全て嘘だ。君の家族は、君を愛しているし、君を大切に思っている。だから大丈夫だよ。」

　震える私の元に、お母様が、お父様が、お兄様が会いに来てくださいました。

「ラナ！！！」

　お父様もお母様もお兄様も、私の姿を見た途端に駆け寄り抱き締めてくれました。

　久しぶりの家族の姿に、震えながらも私は、私がどれだけ愛されて育ったのかを思い出しました。

「お父様・・お母様・・お兄様！！！」

「もう大丈夫だ。」

「ラナ・・ラナ！！！」

「くそっ！こんなになるまで・・こんなことになるならば、やはり無理矢理にでも屋敷に会いに行くべきだった！！！」

　ちゃんと愛されていた。

　私の家族はここにいる。

　そう思うと、体の震えも止まりました。

　苦しくて、辛いだけの日々。

　もう、我慢しなくていいのだ。

　もう、痛い思いなどしなくていいのだ。

　もう、毎日不安を感じずにベッドに入らなくてもいいのだ。

　怖かった。

　寂しかった。

　辛かった。

「あぁぁ・・私、私は、怖かった。お願いです。もう、もう彼処へは帰りたくない。」

　涙を流す私にお父様は怒りに燃える瞳で誓って下さいました。

「帰すわけがない！お前のことを大切にすると言ったから嫁がせたのだ！それなのに、この仕打ち！！お前を守ってやれなかった私を許してくれ。」

　その後、私は初めて私の家から、子爵家に支援金が支払われている事実を知りました。

　なんでも私との結婚前にかなりの借金が貴方の子爵家にはあったそうですね。

　そこでやっと私は何故貴方が私と結婚するしかなかったのかを知ったのです。

　お金が必要だったのですね。

　お父様も、お母様も、お兄様も、貴方の外面に騙されていたことに憤り、そして何度も私に謝ってくれました。

　謝る必要などないのです。私が貴方にいつかは愛されると勘違いをして、結婚を受け入れたのですから。

　それに、過去のことよりも、今、両親とお兄様がいて、ユージーン様がいて、安心できる場所があることに私は感謝しました。

　もう死にたいとは思いませんでした。

　私はやっと、自分を取り戻せた気がしました。

　ユージーン様は私の身を案じて、子爵家の本邸に帰るのではなく、公爵家ですごしてほしいと提案してくれて、私はそれに甘えることにしました。

　公爵家にいたほうが安全だと、私の両親もユージーン様に感謝しました。

　ユージーン様は毎日私とお茶をしてくれたり、散歩をしてくれたり、穏やかな生活を私にくれました。

「ラナ。リックとの話し合いの日が決まったよ。」

　私は、心も体も、家族とユージーン様のおかげで癒され、貴方に立ち向かう決意をしたのです。

　もう、泣いているだけの私ではありません。

　もう、殴られているだけの私ではありません。

　私は自分の足でしっかりと立ち、貴方に向かい合うことを決めたのです。