【完結】もう貴方とは離縁させていただきます!

かのん

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十三話 狂気に染まった男

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 暗い路地裏に一人の薄汚れた男が居た。

 かつての立派な衣服は汚れ、その顔は泥にまみれている。

「絶対に・・・あの女を・・・殺してやる・・」

 何度も何度もつぶやきながら、男は路地裏を歩き、そして一つの店で足を止めると、にやにやと笑いながら扉を開けた。

 店の店主は苦笑を浮かべると男に言った。

「あんたも落ちたもんだな。」

「ふふふ。今だけさ。今に、返り咲く。」

「そうなるといいなぁ。」

 家名失くしたリックは、店主の前に違法に手に入れた袋を差し出すと、それと引き換えに金貨をもらい、店を後にする。

「まいどありー。」

 店主は煙草をふかしながら男の背を見送ると、袋の中を見てニコリと笑った。

「さぁ、どうなることやらなぁ。」

 リックは、馬にまたがると、愛しい女性の待つ家へと向かった。

 森を抜けた先にある小さな小屋。リックは笑みを浮かべると小屋の鍵を開けて中へと入った。

「ただいま。ミリアーナ。」

 小屋の中には鉄格子がはめられており、その中に、かつては美しいと言われた女性が哀れな様子で震えながらリックを見上げた。

「お・・・おかえりなさい・・・リック。」

「あぁただいま。愛しいミリアーナ。」

 ミリアーナのお腹の子はすでに生まれ、実家へと預けられている。

「あぁそうそう。君をたぶらかそうとしていた商人の男だけれど、酷いやつでねぇ。だから俺が成敗してあげたから、君は安心して。」

 狂ったような瞳に愛おしげに見つめられたミリアーナは、悲鳴をどうにか飲み込むと、こくこくと頷いた。

「あ・・・ああ・あ・・・ありがとう。貴方のおかげで、私は助かったのね。」

「そうさ。ふふふ・・・でも君が商人の後妻になるって聞いた時は腸が煮えくり返ったよ。君を無理やり後妻にしようとした男は、もうこの世にはいないから安心して。ほら、これが証拠だよ。」

 格子の中に投げられた小さな袋に、ミリアーナは悲鳴を上げると、後ろへと後ずさった。

「あれ?気に入らない?ふふふ。ごめんごめん。君には刺激が強かったかな。」

 赤いしみのついた袋を見ないようにミリアーナは両手で顔を覆った。

 ミリアーナは、リックを裏切り、商人の後妻になる予定だった。お金がある生活になれていたミリアーナにとってはお金のない生活など考えられず、だからこそリックとの愛よりもお金をとったのだ。だが、後妻の所へと向かったその当日、寝所にリックが現れ、ミリアーナを攫った。

 ミリアーナはリックに裏切ったことを罵られ、そしてこの鉄格子の中に幽閉される日々が始まった。

「リック・・・お願い・・お願いだから・・・許して。」

「ん?もちろん君の事は許しているさ。大丈夫。二人で幸せになろう。」

 ミリアーナはがたがたと震えながら、鉄格子の鍵をあけ、中に入ってくるリックを見上げた。

「お・・・お願い・・・許して・・・」

「ん?だから許しているって言っているだろう?煩いなぁ・・泣くな。」

 頬をミリアーナは殴りつけられ、ベッドへと押さえつけられる。そして、優しい手で頭を撫でられた。

「大丈夫。もうすぐ、計画が形になる。俺と君をこんな生活に追い込んだあの女を、殺してやろうね。そしたら俺達はもっと幸せになれる。」

「お・・おねがい・・・おねがい・・・ごめんなさい。ごめんなさい・・」

 ミリアーナの頭を優しくリックは撫で、にやりと笑った。

「大丈夫だよ。」

 その瞳は狂気に満ちていた。
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