【完結】婚約破棄され処刑された私は人生をやり直す ～女狐に騙される男共を強制的に矯正してやる～

二十四話 旅立ち

　シャルロッテは、眼下に広がる雲海を見つめながら、吹き抜ける風の心地よさに目を閉じた。

　服装は、藍色の簡素なワンピース。

　靴は動きやすいものを履き、髪の毛は一つにゆっている。

「シャルロッテ」

　名前を呼ばれたシャルロッテは振り替えると、リラトは真っ赤な果物を投げて渡した。

　受け取ったシャルロッテは、岩に腰かけるとそれを一口かじる。

　リラトも隣に座ると、同じようにかじる。

　朝日がゆっくりと昇っていくのを二人は見つめた。

　貴族の令嬢であった頃は、外で果物をそのままかじることなど言語道断であった。

　しかし、今のシャルロッテは自由だ。

「シャルロッテ、本当によかったのかい？」

　リラトの言葉にシャルロッテは、何度も伝えた言葉を繰り返す。

「もちろん。私はもう、あの人達と一緒にはいたくないし、こうやって貴方と旅する方が楽しいもの」

　魔法使いは、様々な国を旅する。

　二人は今、国を出て、違う場所へと移動中である。

　リラトは、小さく息を吐く。

「わかった。じゃあ僕は君が幸せをつかむまで、一緒にいて、君を守るよ」

　自分はシャルロッテを幸せにする資格はない。

　その言葉にシャルロッテはくすくすと笑ながら言った。

「貴方がそんな考えだと、ずっと一緒にいるだけになるわよ？」

「え？」

　シャルロッテはリラトの頬へと指をぷにっとさすと言った。

「私、最初に貴方に出会った時、自分はなんて不幸なのかと思ったの」

「それは、どうして？」

「魔法使いとは、結婚できないと思っていたからよ」

　シャルロッテはそういって立ち上がると大きく背伸びをした。

「さぁ行きましょう！」

「え？あ、うん」

　シャルロッテとリラトは旅立つ。

　シャルロッテの視線は真っ直ぐ前を向き、これから進む道に期待を抱く。

　自由とはどんなものなのか、シャルロッテはそれをまだまだ知らない。

　だからこそ、瞳は希望に輝く。


　二人の元へ、とある国のお伽噺が届くまでにはしばらくの時を要する。

　王子の愛する乙女は
　魔法使いに拐われる
　王子は魂を抜かれ、王位は弟へと譲られた
　乙女を守れなかった騎士は姿を消し
　乙女の兄は今でも妹の帰りを待ち望む

　吟遊詩人は歌を歌い、他国へと歌は語り継がれたという。


⭐⭐⭐⭐
最後まで読んでくださった皆様に感謝です！！
ありがとうございました！
.+:｡ ヾ(◎´∀｀◎)ﾉ ｡:+.

【婚約破棄され捨てられた令嬢は、魔物の森で毛玉を洗う】の新連載始めました。
　よろしければ、読んでいただけたら幸いです！

　作者　かのん