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七話 父からの手紙
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ルチアーナへ父であるアゼフから手紙が届いたのは、その日の昼間の事であった。
朝食を一緒にとった二人ではあったが、食事中にぺらぺらとおしゃべりが進められるわけもなく、ジークは仕事もあるということで、あまり話をする時間はなかった。
夕方には時間が取れるとジークの言っていた言葉を信じて、ルチアーナは自室で、本を読んだりして過ごしていたのだが、そこへ父アゼフからの手紙が届いたのだ。
何が書いてあるのだろうかと、ルチアーナは手が震えそうになりながら、部屋に一人にさせてもらうと、ゆっくりとその封を切った。
書いてあった内容は昨日は楽しんだかなどと言う下世話な言葉と、そしてルチアーナの予想していなかった言葉であった。
「・・・何これ・・・」
手紙には、ルチアーナにジークを誘惑するように書かれており、そして出来るだけたくさんの宝石やお金を実家へと送るようにと指示がされていた。
もし指示に従わない場合には、実家に置いてある実母セシリアの形見を処分すると書かれていた。
ルチアーナにとってセシリアの形見や遺品は思い出の品であり、自分の心の支えのようなものであった。
「そんな・・でも・・誘惑だなんて・・・」
一体どうしたらいいのだろうかとルチアーナは顔を青ざめさせるが、唇を噛むと、ぎゅっと拳を握りしめた。
どうせ、ジークも自分の事を物としか思っていないような男である。ならば、母が言っていたように、利用してやればいいのだ。
そう思うが、朝のジークの姿が頭をよぎる。
本当にジークは自分が思っているような男なのか。
ルチアーナは頭を振ると、自分に言い聞かせるように呟いた。
「男なんて大嫌い。・・・心を許してはダメ。悪女になるのよ。ルチアーナ。」
何度も小さな声でそう呟き、ルチアーナはジークを利用するのだと心に決めると、父からの手紙を引き出しの中へと片付けた。
時を少し遡り、ジークはジャンからルチアーナ宛の手紙の内容の報告を受けていた。本来ならば他人の手紙を読むなど言語道断なのだが、ジークはルチアーナに非難されようとも、把握しておくべきだと判断し、内容を事前に把握するように、ジャンへと伝えていた。
そしてその内容を聞いたジークは額に手を当てると、大きくため息をついた。
「外道だな。・・ルチアーナ嬢に知らせたくないくらいの内容だが、もし手紙を隠ぺいしていたことが後に発覚して彼女の信頼を失うのも嫌だしな・・・。はぁ。」
仕事の書類を読む手を止めると、ジークはまたため息をついた。
「さて、どうしたものか。」
そんな悩む主に、ジャンは楽しそうに言った。
「ちょうど良かったではないですか。ルチアーナ嬢を誘って、街に買い物に行ってはどうです?そこで、たくさんプレゼントすればいいじゃないですか。」
「ん?」
ジャンはにこにこと楽しそうに言葉を続けた。
「ドレスも足りませんし、宝石だって足りません。奥様にぴったりの物を、旦那様は選ばなくては。」
「だ、だが、それが外道に渡るのは・・・」
「プレゼントしたくないんですか?」
「ん?いや、それは・・・」
「自分色に染めたくはないんですか?」
「それは・・・」
ジークはもごもごと口を動かし、ジャンはにっこりとほほ笑みを浮かべた。
「奥様がジーク様をどう誘惑するのか、楽しみですね。」
「それはっ!?・・・ふむ・・・うん・・・」
耳まで真っ赤にするジークの姿にジャンは笑顔で頷く。
「素直ですね。まぁでも、ジーク様が選んでくれたものを、奥様は実家に送れないと思います。純粋そうな女性ですしね。実家に送れそうなものもジーク様が適当に選んで買ってしまってもいいですけどね。ジーク様の戦での報奨金でこの公爵家はかなり潤っていますので、奥様一人の散財でつぶれることはありません。」
ジャンの肝の据わった言葉に、ジークは苦笑を浮かべると頷いた。
「そうか。それもそうだな。」
「はい。なので、デートに向かう為の休みを手に入れる為に、お仕事頑張りましょうね。」
机の上にもう一山書類の山をジャンに作られ、ジークはいつ仕事が終わるのだろうかと小さくため息をついた。
朝食を一緒にとった二人ではあったが、食事中にぺらぺらとおしゃべりが進められるわけもなく、ジークは仕事もあるということで、あまり話をする時間はなかった。
夕方には時間が取れるとジークの言っていた言葉を信じて、ルチアーナは自室で、本を読んだりして過ごしていたのだが、そこへ父アゼフからの手紙が届いたのだ。
何が書いてあるのだろうかと、ルチアーナは手が震えそうになりながら、部屋に一人にさせてもらうと、ゆっくりとその封を切った。
書いてあった内容は昨日は楽しんだかなどと言う下世話な言葉と、そしてルチアーナの予想していなかった言葉であった。
「・・・何これ・・・」
手紙には、ルチアーナにジークを誘惑するように書かれており、そして出来るだけたくさんの宝石やお金を実家へと送るようにと指示がされていた。
もし指示に従わない場合には、実家に置いてある実母セシリアの形見を処分すると書かれていた。
ルチアーナにとってセシリアの形見や遺品は思い出の品であり、自分の心の支えのようなものであった。
「そんな・・でも・・誘惑だなんて・・・」
一体どうしたらいいのだろうかとルチアーナは顔を青ざめさせるが、唇を噛むと、ぎゅっと拳を握りしめた。
どうせ、ジークも自分の事を物としか思っていないような男である。ならば、母が言っていたように、利用してやればいいのだ。
そう思うが、朝のジークの姿が頭をよぎる。
本当にジークは自分が思っているような男なのか。
ルチアーナは頭を振ると、自分に言い聞かせるように呟いた。
「男なんて大嫌い。・・・心を許してはダメ。悪女になるのよ。ルチアーナ。」
何度も小さな声でそう呟き、ルチアーナはジークを利用するのだと心に決めると、父からの手紙を引き出しの中へと片付けた。
時を少し遡り、ジークはジャンからルチアーナ宛の手紙の内容の報告を受けていた。本来ならば他人の手紙を読むなど言語道断なのだが、ジークはルチアーナに非難されようとも、把握しておくべきだと判断し、内容を事前に把握するように、ジャンへと伝えていた。
そしてその内容を聞いたジークは額に手を当てると、大きくため息をついた。
「外道だな。・・ルチアーナ嬢に知らせたくないくらいの内容だが、もし手紙を隠ぺいしていたことが後に発覚して彼女の信頼を失うのも嫌だしな・・・。はぁ。」
仕事の書類を読む手を止めると、ジークはまたため息をついた。
「さて、どうしたものか。」
そんな悩む主に、ジャンは楽しそうに言った。
「ちょうど良かったではないですか。ルチアーナ嬢を誘って、街に買い物に行ってはどうです?そこで、たくさんプレゼントすればいいじゃないですか。」
「ん?」
ジャンはにこにこと楽しそうに言葉を続けた。
「ドレスも足りませんし、宝石だって足りません。奥様にぴったりの物を、旦那様は選ばなくては。」
「だ、だが、それが外道に渡るのは・・・」
「プレゼントしたくないんですか?」
「ん?いや、それは・・・」
「自分色に染めたくはないんですか?」
「それは・・・」
ジークはもごもごと口を動かし、ジャンはにっこりとほほ笑みを浮かべた。
「奥様がジーク様をどう誘惑するのか、楽しみですね。」
「それはっ!?・・・ふむ・・・うん・・・」
耳まで真っ赤にするジークの姿にジャンは笑顔で頷く。
「素直ですね。まぁでも、ジーク様が選んでくれたものを、奥様は実家に送れないと思います。純粋そうな女性ですしね。実家に送れそうなものもジーク様が適当に選んで買ってしまってもいいですけどね。ジーク様の戦での報奨金でこの公爵家はかなり潤っていますので、奥様一人の散財でつぶれることはありません。」
ジャンの肝の据わった言葉に、ジークは苦笑を浮かべると頷いた。
「そうか。それもそうだな。」
「はい。なので、デートに向かう為の休みを手に入れる為に、お仕事頑張りましょうね。」
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