【完結】妹に婚約者を奪われた私は、悪女を目指します。ただ、悪女ってよくわかりません。

かのん

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十五話 ロドリコ侯爵家

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 侯爵家の馬車が公爵家へと到着したのは昼過ぎの事であった。

 馬車から降りてきたナタリア、アゼフ、ミランはその豪華な作りの屋敷に目を見開き、驚きながら執事に案内されると屋敷の中へと進んで行く。

 通された客間では、侍女に紅茶と菓子を出され、その味わいにさらに驚く。

「これ、中々手に入らないと言う、王宮御用達の紅茶だわ。」

 母であるミランの言葉に、ナタリアはお菓子を一口食べて言った。

「こっちのお菓子は、最近流行の高級洋菓子店のものよ。とっても美味しいわ。」

 にこにこと楽しげなナタリアは、頭の中でどうやってジークと二人きりになろうかと、わくわくとした気持ちでいた。

 お姉様が邪魔だから、さっさとお姉様には退場してもらいましょう。お茶でもかけちゃおうかしら。

 そんなことをナタリアは考えながら、お菓子へと手を伸ばす。

「それにしても、遅いな。」

 父であるアゼフの言葉に、ナタリアも確かにと思う。

「公爵はまだか?」

 執事にアゼフが声をかけると、執事は頭を下げて言った。

「奥様のご準備に時間がかかっているようです。申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください。」

「・・なんだと?」

 奥様、と言う言葉に三人の顔は歪んだ。

 公爵であるジークの為にならば待てるが、ルチアーナの準備が遅れているという事に三人は苛立ちを覚える。

 何様のつもりでいるのだろうかと、三人がそう思った時であった。

「旦那様と奥様がいらっしゃいます。」

 侍女があらわれ、扉を開く。

 ルチアーナに待たせるとはどういうことだと文句を言おうと思っていた三人は、開けた口を、そのまま、開け広げたままになる。

「待たせてしまったかな。侯爵、今日はよく来て下さった。」

 ジークはそういうと、ルチアーナをエスコートしてその場に現れた。

 ルチアーナは、ふわりとした色とりどりの花の飾りをあしらった、白いドレスを身に纏い、髪は美しく結いあげて、蝶の美しい七色に輝く髪飾りをつけていた。

 まるでルチアーナ自身が花になったかのような、可憐なその姿に、思わず三人は驚いていた。

「お父様、お母様、ナタリア。今日は来て下さってありがとう。」

 微笑む姿も美しく、アゼフはごくりと喉を鳴らした。その姿にミランは眉間にしわを寄せると、さりげなくアゼフの足を机の下で踏んだ。

「いっ・・・いや、今日はお招きありがとうございます。妻のミランと娘のナタリアです。」

「お招きありがとうございます。」

「ジーク様にお会いできてナタリアとても嬉しいです。お姉様も、お元気そうで何よりですわ。」

 その言葉に、ルチアーナは頷いた。

「私も、お会いできて良かったです。」

 ジークも頷くと言った。

「ええ。ナタリア嬢から手紙を受け取って、ご家族とも一度話をしなければと思っていたので、皆さんを小堤出来て良かった。」

 二人の言葉にアゼフは内心にやりとほくそ笑んだ。

 かなりの金額をすでに公爵家から受け取っているが、良好な関係を築くことが出来れば、もっと要求できるかもしれないと思った。

 先日の贈り物もそうだが、公爵家はかなり潤っている様子である。ならば、ルチアーナとナタリアを利用して、しぼりとれるだけしぼりとろうという考えである。

 しばらくの間他愛ない会話が続き、そして、ナタリアはそろそろ姉に退場してもらい、ジークと二人きりにしてもらおうと、にやりと笑うと、姉の横に移動した。

「お姉様、久しぶりに会えて、ナタリアとても嬉しいです。あっ」

 そして偶然を装って机の上の紅茶を、ルチアーナに向けて零そうとした。

 だがしかし、ルチアーナをさっとジークが抱き上げて膝の上に乗せた為に、カップは床に落ちて割れ、そして紅茶が床へと広がった。

 ナタリアは慌てて言った。

「申し訳ありませんわ。つい、お姉様に会えたのが嬉しくて・・それで・・」

 瞳を潤ませてジークを見ると、ジークは軽蔑した瞳でナタリアを見つめ、そして深々と大きなため息をつくと言った。

「何をするかと思えば・・ルチアーナを傷つければ、いくら家族とはいえ、許しはしない。」

 ギロリと殺気を纏った黒い瞳で睨まれ、ナタリアは小さく悲鳴を上げた。

 


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