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十六話 家族とは
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ルチアーナは、ジークの膝の上へと乗せられ、顔を真っ赤にしていたが、ナタリアが顔を青ざめさせているのを見て、そろそろ本題に移らなければと、小さく覚悟を決めた。
ルチアーナはジークの親類の家へと籍を移し、その上で正式な結婚をあげようと言われていた。そしてロドリコ侯爵家と縁を切るべきだと、話を改めてうけ、それを受け入れた。
街でナタリアに言っていた言葉は本当の事だったのだと驚きながらも、ルチアーナはその申し出を喜んで受け入れることにしたのだ。
自分を売るような家族である。
これからも脅し続けられる運命など、ルチアーナには耐えられなかった。
侍女らが落ちたティーカップを片付け終えると、ルチアーナはジークに降ろしてもらい、そして口を開いた。
「お父様、お母様、ナタリア。・・・ジーク様からの申し出で、私はジーク様の親類であるエビアン侯爵の家へと籍を移すこととしました。」
その言葉に、三人は驚くと慌てた声で言った。
「なっ何を!?お前は私達と家族の縁を切るというのか?!」
「そうですよ。これまで育てたのは誰だと思っているのです!」
「お姉様、何を言っているのよ。」
ルチアーナは静かに、真っ直ぐに三人を見つめた。
「私は、もう子どもではありません。・・・それに、三人もせいせいするのではないかしら?」
アゼフは唇を噛み、ミランは憎々しげにルチアーナを睨んだ。
ナタリアは目の前に置かれた紅茶を一口飲むと、先ほど青ざめていたのがウソのように口を開いた。
「ジーク様、何か勘違いされているのではないかしら?」
「何?」
ジークが眉間にしわを寄せると、ナタリアはにやりと笑って言った。
「お姉様はね、正当な貴族の血筋ではないのよ?・・庶民の母親から生まれた、卑しい血を継いでいるの。それに、お姉様はね、尻軽で、ジーク様とは不釣り合いではないかしら?その点、私なら、ジーク様にぴったりだわ。血筋も、貴族としての気品も備えているもの。」
大きな胸を張って見せたナタリアはふふんっと鼻を鳴らして見せたが、その言葉にジークは目を見張った後に、笑い声を上げた。
その様子にナタリアは顔を歪めた。
「何がおかしいのですか!」
ジークはルチアーナの肩に腕を回して抱き寄せると、にっこりと笑みを浮かべた。
顔を真っ赤に染めるルチアーナの耳元で、ジークは言った。
「男に肩を抱かれただけで、顔をこんなにも赤らめるルチアーナが尻軽?では、男の腕に胸を押し当て、姉の婚約者を寝取る妹とは、尻軽以上の娼婦か何かか?」
「なっ!?」
ナタリアは怒った様子で立ち上がると、ジークがジャンに視線を向けると、ジャンは扉を開き、ロアンを部屋へと引き入れた。
ロアンは顔を青ざめさせており、微かに震えながら、扉の前に立つ。
「婚約者がいる身でありながら、俺にすり寄るとはな。ロアン殿はどうするつもりだ?」
突然現れたロアンに、ナタリアは動揺するがぎこちない笑みを浮かべて言った。
「ろ、ロアン様がどうしてここに?」
「その・・・公爵から招待を受けて・・けれど・・これは一体・・・」
「ジーク様!だまし討ちとは酷いではないですか!」
ナタリアの言葉に、ルチアーナは小さく息を吐くと、静かな口調で言った。
「ナタリア。ジーク様に失礼です。それに、ロアン様にも。」
「なんですって!お姉様は黙っていなさいよ!」
「いいえ。・・・もう、黙らないわ。」
「何ですって!」
ルチアーナはこれまでのことを思い出していた。
これまで、何度も、何度もナタリアに様々な物を奪われてきた。そして奪われることに慣れてきていた。
だが、それも以前までの事。ルチアーナは背筋を正すと言った。
「もう、貴方の我儘な行動にはうんざりだわ。はっきり言わせていただきます。ナタリア。貴方、とても下品だわ。人の物を欲しがって、それでいて大切にしない。それに、ロアン様のことだってそう。家同士の約束事もあるのに、貴方は我儘に、私の婚約者だからって欲しがったのよ。それはロアン様にも失礼だわ。」
「何ですって!」
その言葉にロアンは何故か感動しているように瞳を潤ませた。
「ルチアーナ嬢・・・」
そんなロアンにルチアーナは視線を向けると言った。
「そしてロアン様。妹と婚約したのですから、どうぞ妹の手綱をしっかりと握って下さいませ。男として目の前で婚約者が他の男性にすり寄っていくのを見過ごすのはどうかと思います。」
「なっ・・・」
その言葉にジークは横でクスクスと笑っている。
ルチアーナは両親に視線を向けると言った。
「お父様、お母様、いえ、侯爵と侯爵夫人。私の私物全てを公爵家へと送って下さい。もちろん、私の母の遺品もです。」
「なんだと!?お前は、親を何だと思っているんだ!」
「そうよ!薄情な娘ね!」
その言葉に、ジークはくすくすと笑いながら、ジャンに以前交わした書面を持ってこさせると言った。
「侯爵、貴方とのやりとりはすでにこの書面をもって終わっているはずだが?それに、ここに書いているだろう?ルチアーナ嬢を俺の親類の籍に移し、今後一切かかわらないと。ちゃんと書類は読まないとだめだろうに。」
アゼフはその言葉に驚き、目を見開くと渡された書面にもう一度目を通して顔を真っ赤にした。
「こ、こんなもの!」
「侯爵、もしそれを反故にするならば、貴方に渡した金と、ルチアーナの送った品々全てを返していただくが?」
「な、なんですと!?」
「当たり前でしょう。全額、返していただくことになるが、いいかな?」
すでに金銭は使い込んでおり、今すぐに用意することは不可能である。
アゼフは唇を噛み、ミランとナタリアもルチアーナを睨みつけている。
その様子に、ジークは言った。
「あぁ、あと、侯爵は最近・・手を出してはいけないモノにも手を出しているそうだな。」
その言葉に、アゼフは目を見開くと、顔を青ざめさせ、額からは大粒の汗を流す。
「な・・なんのことか。」
「ルチアーナに、二度と近づくな。いいな?」
ジークの言葉にアゼフは力なく頷いた。だが、それに反論するようにナタリアが立ち上がった。
ルチアーナはジークの親類の家へと籍を移し、その上で正式な結婚をあげようと言われていた。そしてロドリコ侯爵家と縁を切るべきだと、話を改めてうけ、それを受け入れた。
街でナタリアに言っていた言葉は本当の事だったのだと驚きながらも、ルチアーナはその申し出を喜んで受け入れることにしたのだ。
自分を売るような家族である。
これからも脅し続けられる運命など、ルチアーナには耐えられなかった。
侍女らが落ちたティーカップを片付け終えると、ルチアーナはジークに降ろしてもらい、そして口を開いた。
「お父様、お母様、ナタリア。・・・ジーク様からの申し出で、私はジーク様の親類であるエビアン侯爵の家へと籍を移すこととしました。」
その言葉に、三人は驚くと慌てた声で言った。
「なっ何を!?お前は私達と家族の縁を切るというのか?!」
「そうですよ。これまで育てたのは誰だと思っているのです!」
「お姉様、何を言っているのよ。」
ルチアーナは静かに、真っ直ぐに三人を見つめた。
「私は、もう子どもではありません。・・・それに、三人もせいせいするのではないかしら?」
アゼフは唇を噛み、ミランは憎々しげにルチアーナを睨んだ。
ナタリアは目の前に置かれた紅茶を一口飲むと、先ほど青ざめていたのがウソのように口を開いた。
「ジーク様、何か勘違いされているのではないかしら?」
「何?」
ジークが眉間にしわを寄せると、ナタリアはにやりと笑って言った。
「お姉様はね、正当な貴族の血筋ではないのよ?・・庶民の母親から生まれた、卑しい血を継いでいるの。それに、お姉様はね、尻軽で、ジーク様とは不釣り合いではないかしら?その点、私なら、ジーク様にぴったりだわ。血筋も、貴族としての気品も備えているもの。」
大きな胸を張って見せたナタリアはふふんっと鼻を鳴らして見せたが、その言葉にジークは目を見張った後に、笑い声を上げた。
その様子にナタリアは顔を歪めた。
「何がおかしいのですか!」
ジークはルチアーナの肩に腕を回して抱き寄せると、にっこりと笑みを浮かべた。
顔を真っ赤に染めるルチアーナの耳元で、ジークは言った。
「男に肩を抱かれただけで、顔をこんなにも赤らめるルチアーナが尻軽?では、男の腕に胸を押し当て、姉の婚約者を寝取る妹とは、尻軽以上の娼婦か何かか?」
「なっ!?」
ナタリアは怒った様子で立ち上がると、ジークがジャンに視線を向けると、ジャンは扉を開き、ロアンを部屋へと引き入れた。
ロアンは顔を青ざめさせており、微かに震えながら、扉の前に立つ。
「婚約者がいる身でありながら、俺にすり寄るとはな。ロアン殿はどうするつもりだ?」
突然現れたロアンに、ナタリアは動揺するがぎこちない笑みを浮かべて言った。
「ろ、ロアン様がどうしてここに?」
「その・・・公爵から招待を受けて・・けれど・・これは一体・・・」
「ジーク様!だまし討ちとは酷いではないですか!」
ナタリアの言葉に、ルチアーナは小さく息を吐くと、静かな口調で言った。
「ナタリア。ジーク様に失礼です。それに、ロアン様にも。」
「なんですって!お姉様は黙っていなさいよ!」
「いいえ。・・・もう、黙らないわ。」
「何ですって!」
ルチアーナはこれまでのことを思い出していた。
これまで、何度も、何度もナタリアに様々な物を奪われてきた。そして奪われることに慣れてきていた。
だが、それも以前までの事。ルチアーナは背筋を正すと言った。
「もう、貴方の我儘な行動にはうんざりだわ。はっきり言わせていただきます。ナタリア。貴方、とても下品だわ。人の物を欲しがって、それでいて大切にしない。それに、ロアン様のことだってそう。家同士の約束事もあるのに、貴方は我儘に、私の婚約者だからって欲しがったのよ。それはロアン様にも失礼だわ。」
「何ですって!」
その言葉にロアンは何故か感動しているように瞳を潤ませた。
「ルチアーナ嬢・・・」
そんなロアンにルチアーナは視線を向けると言った。
「そしてロアン様。妹と婚約したのですから、どうぞ妹の手綱をしっかりと握って下さいませ。男として目の前で婚約者が他の男性にすり寄っていくのを見過ごすのはどうかと思います。」
「なっ・・・」
その言葉にジークは横でクスクスと笑っている。
ルチアーナは両親に視線を向けると言った。
「お父様、お母様、いえ、侯爵と侯爵夫人。私の私物全てを公爵家へと送って下さい。もちろん、私の母の遺品もです。」
「なんだと!?お前は、親を何だと思っているんだ!」
「そうよ!薄情な娘ね!」
その言葉に、ジークはくすくすと笑いながら、ジャンに以前交わした書面を持ってこさせると言った。
「侯爵、貴方とのやりとりはすでにこの書面をもって終わっているはずだが?それに、ここに書いているだろう?ルチアーナ嬢を俺の親類の籍に移し、今後一切かかわらないと。ちゃんと書類は読まないとだめだろうに。」
アゼフはその言葉に驚き、目を見開くと渡された書面にもう一度目を通して顔を真っ赤にした。
「こ、こんなもの!」
「侯爵、もしそれを反故にするならば、貴方に渡した金と、ルチアーナの送った品々全てを返していただくが?」
「な、なんですと!?」
「当たり前でしょう。全額、返していただくことになるが、いいかな?」
すでに金銭は使い込んでおり、今すぐに用意することは不可能である。
アゼフは唇を噛み、ミランとナタリアもルチアーナを睨みつけている。
その様子に、ジークは言った。
「あぁ、あと、侯爵は最近・・手を出してはいけないモノにも手を出しているそうだな。」
その言葉に、アゼフは目を見開くと、顔を青ざめさせ、額からは大粒の汗を流す。
「な・・なんのことか。」
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