【完結】お嬢様は今日も優雅にお茶を飲む

かのん

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第二十九話 迷える子羊 (野宮 清子)

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 自分の体と心が、同じでないような感覚、体験したことはある?

 私はある。

「ねぇ、その体、私に頂戴。」

 そう聞こえた気がした。



 桜子は、野宮清子を見つめた。

「貴方はどこにいるの?」

『私は、、、ここにいた。』

「今は?どこにいるの?」

『分からない、、、、。あぁ、あぁ、、、違う。分かる。』

 野宮清子は頭を抱え、そして桜子を涙の流れる瞳で見て言った。

『私は、、、、、、動かされている。』

 桜子はその言葉に眉間にしわを寄せると、首を傾げた。

「それは、どういう、、、、。」

 その時、鑑識からの報告が入り、学は目を丸くすると桜子に言った。

「ここにある機材から、、、現在行方不明の野宮清子さんの指紋が至る所から出ているそうです。」

「え?」

 桜子は目を丸くすると野宮清子を見た。

 すると、野宮清子は涙を流しながら笑い声をあげ、そして言った。

『あぁ、私がもう、私なんていらないって思ったから、、、取られたんだ。』

 そこから野宮清子はけらけらと笑い声を上げ続け、桜子は背筋がぞっとするのを感じた。

「しっかりなさい。取られたとは、誰に取られたの?」

 その言葉に、野宮清子は笑みを消すと言った。

『私の、妹によ。』

 そこから野宮清子は黙り、何もしゃべらなくなってしまったことから、桜子は野宮清子の事を探るべく、学と共に移動をする事となった。

 向かった先は、野宮清子の実家であり、その一軒家は火が消えたように静まり返り、玄関から顔をのぞかせた母親の顔は、白く血色がなく、目の下のクマは深く刻まれていた。

 部屋に通された学と桜子は、母親の入れた湯気の立った茶を見つめ、そして顔を上げると母親が口を開いた。

「あの子、、、どこへ行ったんでしょうね。」

 誘拐されたのではなく、自分でどこかへ言ったような口ぶりに学も桜子も訝しげに母親を見つめた。

「きっと、、、自由になって、、、嬉しかったのでしょうね。」

 学は母親が何を言っているのか分からずに口を挟もうとしたが、それを桜子は止めた。

「ずっとね、あの子、閉じ込められていましたから、、、自由になったのが嬉しかったのでしょうね。でも、ほらもう自由だから。」

「それは、誰の事を言っているのですか?」

 桜子が問うと、母親はにっこりとほほ笑んで言った。

「倫子の事ですよ。」

 学は首を傾げ、桜子は清子を見た。

 清子の顔は青ざめ、そして小さな声で呟いた。

『倫子は、死んだ私の妹です。、、、母は、私よりずっと倫子を愛していたから、、、。』




 十二歳の頃、交通事故により、妹の倫子は即死。私は重体となった。

 もうろうとする意識の中で、悲鳴のような泣き声を聞いた。

 目覚めると、両親は泣き崩れており、妹の死を知った。

 けれど、本当の地獄はそこからだった。

 母は私に毎日つらくあたりながら言った。

『倫子を出して。あんたじゃなくて、倫子を出して。』

 私の中に倫子がいるかのように、そう言った。

 だから、私は、倫子がいるように演じ続けた。

 そしたら、本当に倫子が自分を乗っ取る日が増えていった。

 そして、全部を取られた。



 桜子は、学に屋敷に帰ってから清子から聞いた話をすると、学の顔色は険しいものになった。

「という事は、犯人は、、、野宮清子さんの体の中にいる倫子さん?」

 桜子は頷いていいものか悩んだ。

 幽霊が人の意識も体も乗っ取り動けるなど、あり得るのかどうかは分からない。

 可能性はある。

 だが、極めて低い。

 二人の間に沈黙が落ちた。
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