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24話
「ふざけないで! 悪魔憑きと呼ばれている者がどれだけ蔑まれているのか知らないの?」
「知っているわよ、辺境伯様の事は貴方が吹聴したものね」
「っ! ど、どうして知って」
「それは今は関係ない。貴方が私の特異体質について吹聴するのなら好きにしたらいい」
「孤独で、不幸な人生を変えてあげると言っているのよ! 貴方のお母様だって私に協力を願ったのよ」
「私は人と違うからと不幸だと思った事はないわ。今の人生が最悪だなんて感じた事もない」
本心から告げた言葉だ。
自分が人と違うからって、私が不幸だと思っているとでも?
むしろ趣味を謳歌して楽しめているじゃないか。
「母の名が出て少し驚いたけれど、やっぱり私には関係ない。貴方が吹聴して王家が出張ってきても私はなにも変わらないわ」
「…………へ、へぇ。だったら私にも考えがあるわ。準備をしておいて良かった」
ローザは立ち上がり、急に屋敷を出て行く。
その後に連れてきたのは、なにやら仰々しい恰好をした者達だった。
鎧を着こんだ者や、多くの紙を抱えて必死に書いているもの。
そして……恰幅のよい男が前に出る。
「どうもセシーリア様。ローザ嬢に呼ばれて、無遠慮ながら屋敷へと入らせていただきました。まずは無礼をお許しください」
「貴方達は?」
「申し遅れました。我らは王国の治安維持という特命を背負い、辺境伯様のような特異体質も調べている調査員です。私は彼らの代表として……そして国王陛下の代理としてやって来たウノル大臣と申します」
ウノル大臣と名乗り、調査員と聞いて合点がいく。
なるほど……私のような者を調査するための王家組織というわけだ。
フィリクス様という前例があるのだから、国家で魔物憑きの調査組織があってもおかしくはない。
「此度はローザ様より情報提供を頂き、セシーリア様には特異体質の可能性があるとお聞きして参りました」
ローザはきっと彼らを呼んでおり、交渉が決裂した際にこうして出てくるように考えていたのだろう。
彼女は私の近くに寄り、耳元で囁く。
「貴方が受け入れていれば、私が彼らに頭を下げるだけで済んだのに。もう止まらないわよぉ?」
挑発的な言動の後、ローザは調査組織へと振り返る。
「私、とっても怖いですぅ! ぜひ調査してください」
「セシーリア様、大変失礼ですが屋敷周りを調査させていただきます。加えて貴方自身にも色々とお話をお聞きしたい。これは王家の意向です。拒否はできないと考えてください」
抵抗する意思はない。
そう思ってうなずくと、周囲に立っていた騎士や、学者らしき者達が屋敷の外へと出向いて散策する。
隠してはいるけれどすぐに見つかるだろう。
思った通りに暫くして学者が慌てて戻ってくる。
「や、屋敷の外に複数の魔物の遺体を発見いたしました!」
「警戒級の魔物が、複数……か、考えられません。王国騎士団でもあの数では何人が犠牲になるか」
丁寧だったウノル大臣はその報告を聞いた瞬間。
そっと右手を上げる。
傍に居た騎士達が私へと剣を抜き、首筋に当ててきた。
「報告通りに魔物憑きであると判断せざるを得ません。王家として貴方は警戒すべきであるため、手荒な事をご了承ください」
「どうしようというのですか?」
「拘束し、貴方の行動は王家の管理下に置かせていただきます」
私を見るローザの視線が笑っている。
バカにするように口元をほころばせて、声には出さないが唇が「馬鹿ね」と呟いていた。
でも私には焦りはない、背後に立っているエミネも表情を変えていなかった。
なぜか?
こんな時が来た場合に備えているに決まっているからだ。
「エミネ、部屋に置いてある物を持ってきてもらえる?」
「え……私がですか? 重たいので時間がかかりますよ」
「私が動くと、傍らにいる騎士様が警戒なさるでしょう。大臣様、良ければエミネと共に部屋にある物を持ってきてもらえるよう騎士を数人つけてもらえますか」
「…………数人だけ向かいなさい。後は彼女の監視を」
かなり厳重に監視される中、エミネが数人の騎士を連れて私の部屋へ向かう。
少しして、叫びのような、驚きの声が屋敷に響いた。
大臣、学者、残った騎士、ローザの皆が何事かと視線を向ける。
「何事ですか?」
大臣が声をかければ、慌てるような足音と共に騎士が数人掛かりで、ある物を持ってくる。
それは大きく、尖った形状の物体。
ドスッと床に置かれたソレに、大臣が私を見て尋ねる。
「こ、これは」
「竜の牙です」
「は……」
「十年前まで、王国各地であらゆる種の竜被害が多発していたのを知っておられますか?」
大臣が学者に目配せすれば、彼はうなずいた。
「確かに十年前まで、我が国は竜種により毎年被害を受けておりました。ですがその飛竜は生息数を減らしている状況で今は被害などありません!」
「それ、私が三年に一度……数を減らしているからです」
「……は?」
「その牙は東の山に生息する溶岩竜のものです。非常に美味で……いえ、非常に多くの被害をもたらす竜を定期的に狩っております」
周囲がざわつく、騎士達は視線を合わせて、学者はこぞって牙を調べていく。
大臣は息を呑んで私を見つめた。
その瞳に微笑んで言葉を告げる。
「これは脅しに聞こえるかもしれませんが、私は権利を侵害される気はありません」
「な、なにが言いたい」
「もし王家が私の行動を制限するのなら……今後一切の魔物を狩る行為を止めさせていただきます」
「っ!」
「私を拘束したいのならどうぞご自由になさってください。しかしそのせいで再び竜種の被害が王家を襲う事になっても私は一切の協力をいたしませんので」
特異体質に生まれたから、王国のために働く義務がある?
そんな命令を受けるつもりはない。
だから私はあえて、自らの権利を主張するために交渉を申し出た。
「知っているわよ、辺境伯様の事は貴方が吹聴したものね」
「っ! ど、どうして知って」
「それは今は関係ない。貴方が私の特異体質について吹聴するのなら好きにしたらいい」
「孤独で、不幸な人生を変えてあげると言っているのよ! 貴方のお母様だって私に協力を願ったのよ」
「私は人と違うからと不幸だと思った事はないわ。今の人生が最悪だなんて感じた事もない」
本心から告げた言葉だ。
自分が人と違うからって、私が不幸だと思っているとでも?
むしろ趣味を謳歌して楽しめているじゃないか。
「母の名が出て少し驚いたけれど、やっぱり私には関係ない。貴方が吹聴して王家が出張ってきても私はなにも変わらないわ」
「…………へ、へぇ。だったら私にも考えがあるわ。準備をしておいて良かった」
ローザは立ち上がり、急に屋敷を出て行く。
その後に連れてきたのは、なにやら仰々しい恰好をした者達だった。
鎧を着こんだ者や、多くの紙を抱えて必死に書いているもの。
そして……恰幅のよい男が前に出る。
「どうもセシーリア様。ローザ嬢に呼ばれて、無遠慮ながら屋敷へと入らせていただきました。まずは無礼をお許しください」
「貴方達は?」
「申し遅れました。我らは王国の治安維持という特命を背負い、辺境伯様のような特異体質も調べている調査員です。私は彼らの代表として……そして国王陛下の代理としてやって来たウノル大臣と申します」
ウノル大臣と名乗り、調査員と聞いて合点がいく。
なるほど……私のような者を調査するための王家組織というわけだ。
フィリクス様という前例があるのだから、国家で魔物憑きの調査組織があってもおかしくはない。
「此度はローザ様より情報提供を頂き、セシーリア様には特異体質の可能性があるとお聞きして参りました」
ローザはきっと彼らを呼んでおり、交渉が決裂した際にこうして出てくるように考えていたのだろう。
彼女は私の近くに寄り、耳元で囁く。
「貴方が受け入れていれば、私が彼らに頭を下げるだけで済んだのに。もう止まらないわよぉ?」
挑発的な言動の後、ローザは調査組織へと振り返る。
「私、とっても怖いですぅ! ぜひ調査してください」
「セシーリア様、大変失礼ですが屋敷周りを調査させていただきます。加えて貴方自身にも色々とお話をお聞きしたい。これは王家の意向です。拒否はできないと考えてください」
抵抗する意思はない。
そう思ってうなずくと、周囲に立っていた騎士や、学者らしき者達が屋敷の外へと出向いて散策する。
隠してはいるけれどすぐに見つかるだろう。
思った通りに暫くして学者が慌てて戻ってくる。
「や、屋敷の外に複数の魔物の遺体を発見いたしました!」
「警戒級の魔物が、複数……か、考えられません。王国騎士団でもあの数では何人が犠牲になるか」
丁寧だったウノル大臣はその報告を聞いた瞬間。
そっと右手を上げる。
傍に居た騎士達が私へと剣を抜き、首筋に当ててきた。
「報告通りに魔物憑きであると判断せざるを得ません。王家として貴方は警戒すべきであるため、手荒な事をご了承ください」
「どうしようというのですか?」
「拘束し、貴方の行動は王家の管理下に置かせていただきます」
私を見るローザの視線が笑っている。
バカにするように口元をほころばせて、声には出さないが唇が「馬鹿ね」と呟いていた。
でも私には焦りはない、背後に立っているエミネも表情を変えていなかった。
なぜか?
こんな時が来た場合に備えているに決まっているからだ。
「エミネ、部屋に置いてある物を持ってきてもらえる?」
「え……私がですか? 重たいので時間がかかりますよ」
「私が動くと、傍らにいる騎士様が警戒なさるでしょう。大臣様、良ければエミネと共に部屋にある物を持ってきてもらえるよう騎士を数人つけてもらえますか」
「…………数人だけ向かいなさい。後は彼女の監視を」
かなり厳重に監視される中、エミネが数人の騎士を連れて私の部屋へ向かう。
少しして、叫びのような、驚きの声が屋敷に響いた。
大臣、学者、残った騎士、ローザの皆が何事かと視線を向ける。
「何事ですか?」
大臣が声をかければ、慌てるような足音と共に騎士が数人掛かりで、ある物を持ってくる。
それは大きく、尖った形状の物体。
ドスッと床に置かれたソレに、大臣が私を見て尋ねる。
「こ、これは」
「竜の牙です」
「は……」
「十年前まで、王国各地であらゆる種の竜被害が多発していたのを知っておられますか?」
大臣が学者に目配せすれば、彼はうなずいた。
「確かに十年前まで、我が国は竜種により毎年被害を受けておりました。ですがその飛竜は生息数を減らしている状況で今は被害などありません!」
「それ、私が三年に一度……数を減らしているからです」
「……は?」
「その牙は東の山に生息する溶岩竜のものです。非常に美味で……いえ、非常に多くの被害をもたらす竜を定期的に狩っております」
周囲がざわつく、騎士達は視線を合わせて、学者はこぞって牙を調べていく。
大臣は息を呑んで私を見つめた。
その瞳に微笑んで言葉を告げる。
「これは脅しに聞こえるかもしれませんが、私は権利を侵害される気はありません」
「な、なにが言いたい」
「もし王家が私の行動を制限するのなら……今後一切の魔物を狩る行為を止めさせていただきます」
「っ!」
「私を拘束したいのならどうぞご自由になさってください。しかしそのせいで再び竜種の被害が王家を襲う事になっても私は一切の協力をいたしませんので」
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そんな命令を受けるつもりはない。
だから私はあえて、自らの権利を主張するために交渉を申し出た。
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