【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか

文字の大きさ
36 / 48

30話

 伝えられた気持ちが、胸に歓喜を灯す。
 そして、私も抱えていた感情を口にした。

「私もです、フィリクス様」

「……」

「貴方と会って、初めてなにも隠さなくていい相手ができて、心地よかったです。楽しかった」

 話し始めれば止まらない。
 今まで隠していた気持ちを吐露してしまう。

「誰にも分かってもらえない、誰にも理解されないと思っていた」

「俺もだ」

「父やエミネは良き理解者です、感謝してもしきれない。でもこの気持ちを知るのは同じ境遇の貴方だけで、だからこそ色んな事を話せた」

「……」

「私も貴方が好き……です。立場の違いはあるので、この気持ちは抑えていますが––––」

 言葉の途中で私の頬に彼の手が当てられ、そっと口づけを交わす。
 優しくて、柔らかい力。
 そして唇に触れた感触に瞳を閉じて受け入れる。

「立場は関係ない」

「……良いのですか」

 彼からの答えは再度の口付けで示される。
 胸が満たされる感覚で、こんな気持ちや、充実感は初めての経験でどうすればいいのか分からない。
 ただただ心臓が高鳴ってうるさく鼓動する。

「もう、一人じゃないですから。頼ってくださいね」

「あぁ……約束する」

 二人で見つめ合いながら、吹雪の中で毛布にくるまって気持ちを伝えあう。
 貴族同士の政略結婚や、ロマンあふれる場所での告白でもない、成り行きのものだ。
 だけど今まで経験したどんな事よりも、嬉しい感情で満たされた。

   ◇◇◇


 少し時間が経って、ようやく吹雪が収まってきた。
 廃墟に近い屋敷に入っていた風が止み、私とフィリクス様は外を見る。

「そろそろ、エミネ達のもとへ帰りますか」

「そうだな」

 吹雪という共に過ごす名目は無くなり、残ったのはどこか気恥ずかしい気持ち。
 だけど手だけは繋ぎながら、名残惜しい気持ちのまま屋敷へと戻る。

「お嬢様! 吹雪でお帰りになられないと思っておりましたが……ご無事で……え」

 屋敷に帰ってくれば、エミネは私とフィリクス様を見て足を止める。
 そして何度も私達へと視線を交わせて、最後に繋いだ手を一点に見つめる。

「その……お嬢様、え? その……あれ」

「エミネ、そういうことです」

「あ……あぁ」

 恥ずかしくて直接は言えなかったけれど、エミネにはハッキリ分かったようだ。
 目を大きく見開いて驚きで倒れそうになるのとグッと耐えた後、こっそりガッツポーズしてきた。

「お嬢様に良いお相手ができて良かったです。本当にお嬢様は私を驚かせてきますね」

「いつも申し訳ないわね」

「気にしないでください。それがお嬢様だと思っておりますので」

 エミネはそう言いつつ、私へと笑いかける。
 今までずっと傍に居てくれていた彼女は、心から嬉しそうに私の空いた手を握った。

「本当に良かったです。お嬢様に大事な方ができて」

「えぇ、今までエミネが居てくれたおかげよ」

 その後、フィリクス様を応接室へと案内する。
 エミネがお茶を淹れると言ってくれていたが、それよりも先に私はフィリクス様と話す事があった。

「フィリクス様、もっと二人で話をしたい気持ちはありますが。今は優先すべき事に集中させてもらいます」

「あぁ、それでいい」

「先日、収容所にて傭兵を雇ったのがアロルドだというのが判明しました」

「加えてローザの件もある。君の元夫については問い質す事が多そうだ」

「そうです。彼を責めるための材料は揃いました。でも……あと一つだけ足りないのです」

 私はフィリクス様を見つめて頭を下げる。
 これからあるお願いをするためだ。

「フィリクス様、アロルドには相応の責任を負わせて……もう関わることが無いようにしたい」

「……」

「だからお願いがあります。先日のローザの件を含めて、辺境伯家として彼らを裁いていただけないでしょうか」

 私からの抗議であれば、またいつもの長い話し合いで終わってしまう。
 暴力で解決では意味がない、もう私に関わりたくないと思わせる程に追い詰めるにはそれでは駄目だ。
 だから彼らに大きな責任を負わせるためには、フィリクス様の協力が不可欠だった。

「俺はもう、そのつもりでいた」

 そしてフィリクス様の返事は私が望むものであり、感謝から再び頭を下げた。

「それでは、始めましょう。アロルド達を徹底的に潰します。私の平穏な生活のために」

「これからは、俺達のだ」

「っ! そうですね」

 フィリクス様と話し合いながら、今度の流れを確認していく。
 アロルドとローザを徹底的に追い詰め、関わっている私の元母の真意を探るため……

「それで、いつ彼らの元に向かう。向こうへ向かうにも準備が」

「いえフェリクス様、彼らの屋敷で話し合いなんてしませんよ」

「なに? どうする気だ」

「私が連れてきます。どうせなら、早い方がいいでしょう?」
 
 それだけ伝えればフィリクス様には意図が伝わったのだろう。
「君だけにしかできない方法だな」と小さくつぶやき、口元に笑みを浮かべた。
感想 167

あなたにおすすめの小説

幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました

ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。 けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。 やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。 ――もう、この結婚には見切りをつけよう。 夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。 身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。 一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。 幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。

【完結】私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜

恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」 不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。 結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、 「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。 元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。 独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場! 無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。 記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける! ※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。  苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる  物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる── 侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。 だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。 アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。 そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。 「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」 これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。 ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。 4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜

まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。 愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。 夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。 でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。 「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」 幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。 ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。 夫が全てを失うのはこれからの話。 私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです

藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。 理由は単純。 愛などなくても、仕事に支障はないからだという。 ──そうですか。 それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。 王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。 夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。 離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。 気づいたときにはもう遅い。 積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。 一方で私は、王妃のもとへ。 今さら引き止められても、遅いのです。

ベールを上げた新郎は『君じゃない』と叫んだ

ハートリオ
恋愛
結婚式で新郎に『君じゃない』と叫ばれたのはウィオラ。 スピーナ子爵家の次女。 どうやら新郎が結婚する積りだったのは姉のリリウム。 ウィオラはいつも『じゃない方』 認められない、 選ばれない… そんなウィオラは―― 中世ヨーロッパ風異世界でのお話です。 よろしくお願いします。