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第一話 婚約破棄? ありがとうございます
しおりを挟む「リザ! 君との婚約を破棄させてもらう!」
突然響き渡った声に、大広間が一瞬にして静まり返る。
勝ち誇ったような笑みを浮かべ声を上げたのは、私の婚約者であるライアンだった。
社交界が行われていた王宮の大広間。集まった貴族たちの視線が一斉に私に注がれる。
その目線に込められているのは同情ではなく好奇心。
見世物でも見るかのような視線は、まとわりつくハエよりもウザったい。
「理由はなんでしょうか?」
冷静に問いかけると、ライアンは得意気になって答えた。
「簡単だ! リザよりも愛すべき人ができた! 俺はカリンを愛している!」
ライアンの隣に立っているカリンは、彼と同じように勝ち誇った表情を浮かべている。
「ライアン様はあなたじゃ物足りなかったみたいですよ。お勤めも満足にできないなんて、ライアン様が可哀想ですわ」
豊満な胸をこれ見よがしにライアンの腕に押し付けながら、嘲笑混じりの声を上げた。
──可哀想?
本当に可哀想なのは、こんな大勢の人たちの前でそんな発言をしてしまう彼と彼女の頭の方だと思うのだが。
思わずため息をついてしまう。
「カリンは俺を愛してくれているし、俺もカリンを心の底から愛している!」
ライアンがドヤ顔で続ける。どうやら初めてを捧げた相手に対して、相当自信を持っているらしい。
もはやため息を通り越して反吐が出る。
それにライアンとカリンが密かに関係を持っていたことなど、とっくに知っていた。
そもそも「結婚するまでは貞操を守りたい」などと言い出したのはライアンの方だ。満足もクソもない。
まあ大方、カリンの溢れんばかりの胸にでも心を奪われたのだろう。
彼の猿並みの理性には呆れるほかない。
「わかりました。邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに」
静かにそう告げると、二人の顔にかすかな動揺が走った。
泣き叫ぶか怒り狂う私の姿でも想像していたのだろうが、おあいにく様だ。
面倒な政略結婚に終止符を打ってくれたのだから、こちらとしては喜ばしい限りである。
親が勝手に決めた結婚、そのせいで自分の夢も諦めた。そんな相手に愛情など抱けるはずがない。
それでも、親たちの面子は保とうと頑張ってきたのに、まさかこんなにも滑稽なかたちで婚約破棄を言い渡されるとは思ってもいなかった。
だが、それももうどうでもいい。晴れて自由の身になったのだ。
「ライアン様。お身体には、じゅうぶん、お気をつけて」
わずかに微笑みながらゆっくりと告げ、その場を去る。
背後でライアンの困惑した声が聞こえたが、振り返るつもりなんて全くなかった。
清々しい気持ちで大広間を出る。
──さっさと荷物をまとめて出て行こう。
行く当てなどなかったが、不思議と足取りは軽かった。
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