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第5章 時は隔てる
第18話 順当な一回戦
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5-18
おはようございます。
今日は本戦一回戦です。予定では二日間かけて十一試合行うのだとか。
私たちの出番は、ブランが第一試合。私が第四試合。コスコルが第五試合。そしてスズが第八試合です。
私とブラン、スズの相手は取るに足らない程度の方々ですが、コスコルの相手はAランク冒険者です。心配はないと思いますけど、私達のようなランク詐欺もありえますからね。
因みに、例の師範代(笑)達はそれぞれ第二試合と第十試合です。
順当に勝ち上がれば、スズとブランが当たる事になります。
師範とやらは準決勝から出てくるので、当たるとしたら私です。
ついでにSランクさんは二回戦から。コスコルとスズが当たる可能性があります。決勝はその三人のうちの勝者と私でしょう。師範とやらに私が負ける筈がありませんから。
なかなか良い組み合わせだと思います。
「これより、本戦一回戦、第一試合を行う! 両者、舞台へ!」
おや、もう始まりですね。ブランは……めちゃくちゃ緊張してますね。
「相変わらずあがり症だねー、ブランちゃん」
「あの歳で、この大舞台。緊張しない方が難しいですよ」
今日は全員同じ待合室です。関係者という事で、お願いしてアリスも入れてもらってます。
「そう?」
「そうよ。スズみたいなのは稀よ」
ブランはまだ十四歳ですよ? それにこの世界では、このような大勢の前で何かをする機会は少ないです。
「あ、始まった」
「相手は魔法剣士、でいいのかな?」
「いいんじゃない?」
「舐められてますね。初手でいきなり詠唱を始めましたよ」
ブランも同じ条件のバトルロワイヤルを勝ち抜いていることを忘れたんですかね?
「あ、終わった」
「そりゃ、あんな呑気に詠唱してればね」
「ブランちゃんの動き見えてなかったみたいだし、関係ないよ」
というわけで、ブランは一回戦突破です。
◆◇◆
さて、第三試合が今終わりました。
「ふわぁ……やっと終わった」
「別に長引いてはないじゃない」
「そうだけどさぁ……」
スズには退屈だったようですね。
「それじゃ、行ってくるわ」
「あいあいー。お手柔らかにねー」
「それはスズが言うことではないでしょう……」
「姉様、いってらっしゃい」
「いってらっしゃいませ、マスター」
「いってらっしゃいませ」
そんな声を背中に受けて闘技場へ移動します。
「――両者、舞台へ!」
ブランや他の試合同様に舞台へ上がれば、前に見えたのは大斧を片手で担いだ巨体。『龍人族』にしても大きいですね。
「はじめ!」
さて、どうしますか。
「我が名はヒューガン! 龍と巨人の子なり! ……」
何やら口上を始めましたね。『龍人族』と『巨人族』のハーフらしいですが…………長い!
「いいからかかって来なさい」
「ぬぅ……我の口上を邪魔するとは…………許さん! ヌガァァァ!!」
なんかキレられました。巨大な戦斧を振り上げ突進してきます。
剣は……抜かなくていいですね。
振り下ろしてくる腕に手を添え、相手の巨体の内側へ巻き込むよう誘導します。体が大きいので、自分も前へ進みながらする必要がありましたが問題ありません。
そのまま投げても場外まで飛びそうですが……派手さに欠けるので蹴飛ばしておきますか。観客へのサービスです。
「ヌォォォォ!?」
ハーフさんはそのまま飛んでいって観客席の下の壁を砕きます。会場が一瞬、静かに……そしてどよめき…………。
あの巨大を普通サイズの私が軽々と投げ飛ばしたのは驚きだったようです。すぐに歓声へと変わりました。蹴らなくてもよかったですかね。
さ、戻りましょう。
――待合室に戻って来たのですが、何故私はスズからジト目を向けられているのでしょう?
「自分だって、目立つ事してるじゃん」
「あっ」
そ、そう言えばそうでした。
「えっと……そうよ! ほら、私はAランクって紹介されてるし、あれくらいはしないと逆に変よ!」
「ふーん……?」
弱かった、でしょうか……?
「まぁそう言う事にしておくよ。それよりコスコル、頑張って!」
……一応納得してくれましたが、『それより』というのはちょっと釈然としませんね。
「はい、スズネ様」
「コスコル。マスター方の恥じとならないようにお願いしますね」
「アリス、勿論だよ」
「そして何より、無事で帰って来てください。でないと怒りますよ」
「はは、アリスは心配性だね。大丈夫。僕を信じて」
「コスコル……」
「…………いいからさっさと勝って来なさい!」
「は、はい、マスター!」
少々〈威圧〉をしながら声を掛ければ、コスコルは慌てて闘技場の方へ向かいました。
まったくこの二人は。すぐイチャイチャするんですから。あんなに強く抱きしめあっちゃって……。すぐ側で見せられるこちらの身にもなって欲しいです! あー甘い甘い!
「あはは。お姉ちゃんもあんな風に……どうしよう。ジル義兄さんとイチャイチャしてる所が想像できない」
「……スズ姉様。私も」
「そうですか? 私にはハッキリ想像できますが」
「えー!? アリス、詳しく!」
……いや、三人は何を言ってるんですか?
「ほら、こんな所で何話してるの」
「え、何って……お姉ちゃんとジル義兄さんのイチャラブについて?」
「……真面目に答えなくていいのよ、そこは」
「姉様、顔赤い」
なっ!?
「いや、顔の色は触ってもわからないでしょ……」
「……んんっ。あ、コスコルの試合が始まるわよ!」
「誤魔化したね」
「うん、誤魔化した」
「誤魔化しました」
ちょ、何故こんな事になってるんですか!? コスコル……が来てもどうにもなりません! アルティカ……は寧ろ悪化する!
は、早く……早く試合を始めてください! でないと恥ずか死んじゃいますよ!?
おはようございます。
今日は本戦一回戦です。予定では二日間かけて十一試合行うのだとか。
私たちの出番は、ブランが第一試合。私が第四試合。コスコルが第五試合。そしてスズが第八試合です。
私とブラン、スズの相手は取るに足らない程度の方々ですが、コスコルの相手はAランク冒険者です。心配はないと思いますけど、私達のようなランク詐欺もありえますからね。
因みに、例の師範代(笑)達はそれぞれ第二試合と第十試合です。
順当に勝ち上がれば、スズとブランが当たる事になります。
師範とやらは準決勝から出てくるので、当たるとしたら私です。
ついでにSランクさんは二回戦から。コスコルとスズが当たる可能性があります。決勝はその三人のうちの勝者と私でしょう。師範とやらに私が負ける筈がありませんから。
なかなか良い組み合わせだと思います。
「これより、本戦一回戦、第一試合を行う! 両者、舞台へ!」
おや、もう始まりですね。ブランは……めちゃくちゃ緊張してますね。
「相変わらずあがり症だねー、ブランちゃん」
「あの歳で、この大舞台。緊張しない方が難しいですよ」
今日は全員同じ待合室です。関係者という事で、お願いしてアリスも入れてもらってます。
「そう?」
「そうよ。スズみたいなのは稀よ」
ブランはまだ十四歳ですよ? それにこの世界では、このような大勢の前で何かをする機会は少ないです。
「あ、始まった」
「相手は魔法剣士、でいいのかな?」
「いいんじゃない?」
「舐められてますね。初手でいきなり詠唱を始めましたよ」
ブランも同じ条件のバトルロワイヤルを勝ち抜いていることを忘れたんですかね?
「あ、終わった」
「そりゃ、あんな呑気に詠唱してればね」
「ブランちゃんの動き見えてなかったみたいだし、関係ないよ」
というわけで、ブランは一回戦突破です。
◆◇◆
さて、第三試合が今終わりました。
「ふわぁ……やっと終わった」
「別に長引いてはないじゃない」
「そうだけどさぁ……」
スズには退屈だったようですね。
「それじゃ、行ってくるわ」
「あいあいー。お手柔らかにねー」
「それはスズが言うことではないでしょう……」
「姉様、いってらっしゃい」
「いってらっしゃいませ、マスター」
「いってらっしゃいませ」
そんな声を背中に受けて闘技場へ移動します。
「――両者、舞台へ!」
ブランや他の試合同様に舞台へ上がれば、前に見えたのは大斧を片手で担いだ巨体。『龍人族』にしても大きいですね。
「はじめ!」
さて、どうしますか。
「我が名はヒューガン! 龍と巨人の子なり! ……」
何やら口上を始めましたね。『龍人族』と『巨人族』のハーフらしいですが…………長い!
「いいからかかって来なさい」
「ぬぅ……我の口上を邪魔するとは…………許さん! ヌガァァァ!!」
なんかキレられました。巨大な戦斧を振り上げ突進してきます。
剣は……抜かなくていいですね。
振り下ろしてくる腕に手を添え、相手の巨体の内側へ巻き込むよう誘導します。体が大きいので、自分も前へ進みながらする必要がありましたが問題ありません。
そのまま投げても場外まで飛びそうですが……派手さに欠けるので蹴飛ばしておきますか。観客へのサービスです。
「ヌォォォォ!?」
ハーフさんはそのまま飛んでいって観客席の下の壁を砕きます。会場が一瞬、静かに……そしてどよめき…………。
あの巨大を普通サイズの私が軽々と投げ飛ばしたのは驚きだったようです。すぐに歓声へと変わりました。蹴らなくてもよかったですかね。
さ、戻りましょう。
――待合室に戻って来たのですが、何故私はスズからジト目を向けられているのでしょう?
「自分だって、目立つ事してるじゃん」
「あっ」
そ、そう言えばそうでした。
「えっと……そうよ! ほら、私はAランクって紹介されてるし、あれくらいはしないと逆に変よ!」
「ふーん……?」
弱かった、でしょうか……?
「まぁそう言う事にしておくよ。それよりコスコル、頑張って!」
……一応納得してくれましたが、『それより』というのはちょっと釈然としませんね。
「はい、スズネ様」
「コスコル。マスター方の恥じとならないようにお願いしますね」
「アリス、勿論だよ」
「そして何より、無事で帰って来てください。でないと怒りますよ」
「はは、アリスは心配性だね。大丈夫。僕を信じて」
「コスコル……」
「…………いいからさっさと勝って来なさい!」
「は、はい、マスター!」
少々〈威圧〉をしながら声を掛ければ、コスコルは慌てて闘技場の方へ向かいました。
まったくこの二人は。すぐイチャイチャするんですから。あんなに強く抱きしめあっちゃって……。すぐ側で見せられるこちらの身にもなって欲しいです! あー甘い甘い!
「あはは。お姉ちゃんもあんな風に……どうしよう。ジル義兄さんとイチャイチャしてる所が想像できない」
「……スズ姉様。私も」
「そうですか? 私にはハッキリ想像できますが」
「えー!? アリス、詳しく!」
……いや、三人は何を言ってるんですか?
「ほら、こんな所で何話してるの」
「え、何って……お姉ちゃんとジル義兄さんのイチャラブについて?」
「……真面目に答えなくていいのよ、そこは」
「姉様、顔赤い」
なっ!?
「いや、顔の色は触ってもわからないでしょ……」
「……んんっ。あ、コスコルの試合が始まるわよ!」
「誤魔化したね」
「うん、誤魔化した」
「誤魔化しました」
ちょ、何故こんな事になってるんですか!? コスコル……が来てもどうにもなりません! アルティカ……は寧ろ悪化する!
は、早く……早く試合を始めてください! でないと恥ずか死んじゃいますよ!?
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