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最終章 軌跡の終着点
第14話 巡る因果の果てに(前編)
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8-14
視界が一瞬明滅し、自分が転移を完了した事を知ります。
見えるのは、先程のタイトゥース様の空間と同じ、真っ白で何も無い空間。違う点と言えば、あの三柱がいない事と、ブランの眠っている黒い直方体がない事、そして、スズの姿をした、敵がいる事です。
「……生きていたか」
「妹たちに手を出されて、簡単に死ねるわけないでしょ?」
この女神の場合、二度目ですし。尚更です。
「スズは返してもらうわ。そしてあなたは、ブランの為に滅びなさい」
♰♰♰
先の言葉を言い終わるかどうかというタイミングで[縮地]。ディアスの背後に回り込む。
刀形態の『シュブ=二グラス』を取り出しながら右方に向けて水平に薙ぐ。と同時に、下方への重力場を発生させる。
ディアスは沈み込んで避けた。
(身体能力はスズの五割増し。勘は、スキルの分だけってところね)
沈み込もうとした瞬間に生じた重力がディアスの想定を狂わせ、バランスを崩させた。
私の魔法が無ければ、間違った対応ではない。しかしスズなら、勘付いて前方に避けていただろう。
(魔力効率も、『理外のスキル』なら問題なさそう)
振り切らず、刀を持つ手の上下を入れ替えて袈裟斬りに繋げるが、空を斬るに止まった。
ディアスは、上。転移したらしい。
振り下ろされる剣を側転する形で左へ避け、スズの種族である『英霊種』の核がある位置目掛けて真空の刃を放つことで牽制する。
(どうやら、スズの技は使えるみたいね)
今の動きは『建御雷』だった。
それまでの動きも、その癖も、あの子と同じだ。
(余計に腹が立つけど、やり易いのは確かか。これが態とでなかったら、だけど)
牽制を両の剣で弾いたディアスは、余裕の表情。先手を取る気は無いらしい。
タイトゥース様曰く、まだスズの身体には、完全に馴染んでいないはず。それまでに器であるスズの身体の機能を停止させる、つまり殺さなければならない。
認識をずらす歩法を使いながらディアスに向かって駆ける。
惑わされている様子は、ない。視覚は飾りのようなモノらしい。
ならばスピードを上げよう。
『英霊種』の核の位置は、おおよそ心臓と同じ辺り。そこを目掛け、平突きの構えをとる。
そして体を引き絞り、刀の間合いへと入る二歩手前で強く踏み込んで目標目掛けて真っ直ぐと腕を伸ばす。
ディアスは、避けない。届く筈がない距離なのだから、当然だ。
突きのスピードが最高となる直前、『シュブ=二グラス』を大剣へと変形させる。
盾として構えれば、百七十センチ近い身長の私を優に隠す大剣だ。柄を合わせれば、一メートル程しかない打刀形態の倍の間合いを持つことになる。
突く速度に加えて変形の速度が加算された平突きは、狙い違わず幻想級の鎧を貫き、肋骨の隙間を抜け、魂を留める核へと迫った。
「くっ!?」
ここでディアスは初めて焦りの色を見せた。後ろへ下がりながら身を捻り、突きの軌道から核を逸らしてくる。
(そう簡単に勝たせてはくれないわよねっ……!)
スピード重視の突きを放ち、更に重量の大きい大剣を片手で操っていた私の体は前方へと流れて死に体となる。
ディアスはそこへ左手の剣を使った切り下ろしを仕掛けてきた。狙いは首だ。
概ね予想通り。王様への襲撃にしても、私への不意打ちにしても、そして聖国にあった魔道具の兵器にしても、こいつは最小限の労力で一撃必殺を狙う傾向がある。
『シュブ=二グラス』を〈ストレージ〉にしまい、踏み込んでいた脚で地面を蹴って前宙し、剣撃をやり過ごす。
そのまま体を捻って前進する勢いを乗せた蹴りをお見舞いしてやる。
しかし蹴りは障壁に阻まれ、空中で一瞬静止することになってしまった。
次の瞬間、視界を光が覆った。
咄嗟に顔の前で腕を交差する。
一瞬の浮遊感。
どうにか地面を判別して着地した。
魔力をあのタイミングで込められる目一杯まで込めて防御したにも関わらず、私の腕は焼け爛れ、骨が見えている。
(ほぼノータイムでこの威力。流石は神と言ったところね)
意識的に〈超速再生〉を使って腕を再生し、刀形態の『シュブ=二グラス』を取り出す。
ディアスは……。あちらも再生を終えているようだ。スズの再生速度だったら、まだ時間がかかっていた筈。
(この辺りは強化されている、と)
これは逆に幸運かもしれない。
この再生速度なら、あの魔法を使ってもスズの身体を消滅させる事はないだろう。
「……あの忌々しき魔王の器に選ばれるだけの事はあるということか。良いだろう。我の全力を以て、叩き潰してくれる!」
雰囲気が変わった。
スズの体から眩しいくらいの光が溢れ出す。
(アレが、『世界を砕く輝き』とやらってわけね……)
まだまだ全力からは程遠い筈だが、溢れ出る光は辛うじて直視していられるというくらいの強さがある。
更にディアスの持つ双剣が光を纏った。[光輝く剣]だ。
ただし、スズのそれより明らかに強い力を感じる。
魔力は私の倍以上。スズのスキルの強化版を持ち、理不尽なまでの再生能力を持つ。加えて、時間が経つ程にどんどん強くなっていく、神。
(……ジジイだったら、嬉々として挑むんでしょうね)
ふと、戦闘狂だったジジイの事が頭をよぎった。
確かに心躍るものはあるが、今はそれ以上に、ディアスが憎い。
(ジジイがいたら、憎しみを以て剣を振るうなんて、許してくれないのでしょうけど……。やっぱり、二人に手を出されたのに、これ以上は抑えられないわ)
自分の気持ちを再確認したら、後はもう、目的を達成するだけだ。
息をゆっくりと吸い、吐く。
刀の握りを確かめ、あの時より強化された自身の魂へと意識を向ける。
そして、再び、その引鉄を引いた。
視界が一瞬明滅し、自分が転移を完了した事を知ります。
見えるのは、先程のタイトゥース様の空間と同じ、真っ白で何も無い空間。違う点と言えば、あの三柱がいない事と、ブランの眠っている黒い直方体がない事、そして、スズの姿をした、敵がいる事です。
「……生きていたか」
「妹たちに手を出されて、簡単に死ねるわけないでしょ?」
この女神の場合、二度目ですし。尚更です。
「スズは返してもらうわ。そしてあなたは、ブランの為に滅びなさい」
♰♰♰
先の言葉を言い終わるかどうかというタイミングで[縮地]。ディアスの背後に回り込む。
刀形態の『シュブ=二グラス』を取り出しながら右方に向けて水平に薙ぐ。と同時に、下方への重力場を発生させる。
ディアスは沈み込んで避けた。
(身体能力はスズの五割増し。勘は、スキルの分だけってところね)
沈み込もうとした瞬間に生じた重力がディアスの想定を狂わせ、バランスを崩させた。
私の魔法が無ければ、間違った対応ではない。しかしスズなら、勘付いて前方に避けていただろう。
(魔力効率も、『理外のスキル』なら問題なさそう)
振り切らず、刀を持つ手の上下を入れ替えて袈裟斬りに繋げるが、空を斬るに止まった。
ディアスは、上。転移したらしい。
振り下ろされる剣を側転する形で左へ避け、スズの種族である『英霊種』の核がある位置目掛けて真空の刃を放つことで牽制する。
(どうやら、スズの技は使えるみたいね)
今の動きは『建御雷』だった。
それまでの動きも、その癖も、あの子と同じだ。
(余計に腹が立つけど、やり易いのは確かか。これが態とでなかったら、だけど)
牽制を両の剣で弾いたディアスは、余裕の表情。先手を取る気は無いらしい。
タイトゥース様曰く、まだスズの身体には、完全に馴染んでいないはず。それまでに器であるスズの身体の機能を停止させる、つまり殺さなければならない。
認識をずらす歩法を使いながらディアスに向かって駆ける。
惑わされている様子は、ない。視覚は飾りのようなモノらしい。
ならばスピードを上げよう。
『英霊種』の核の位置は、おおよそ心臓と同じ辺り。そこを目掛け、平突きの構えをとる。
そして体を引き絞り、刀の間合いへと入る二歩手前で強く踏み込んで目標目掛けて真っ直ぐと腕を伸ばす。
ディアスは、避けない。届く筈がない距離なのだから、当然だ。
突きのスピードが最高となる直前、『シュブ=二グラス』を大剣へと変形させる。
盾として構えれば、百七十センチ近い身長の私を優に隠す大剣だ。柄を合わせれば、一メートル程しかない打刀形態の倍の間合いを持つことになる。
突く速度に加えて変形の速度が加算された平突きは、狙い違わず幻想級の鎧を貫き、肋骨の隙間を抜け、魂を留める核へと迫った。
「くっ!?」
ここでディアスは初めて焦りの色を見せた。後ろへ下がりながら身を捻り、突きの軌道から核を逸らしてくる。
(そう簡単に勝たせてはくれないわよねっ……!)
スピード重視の突きを放ち、更に重量の大きい大剣を片手で操っていた私の体は前方へと流れて死に体となる。
ディアスはそこへ左手の剣を使った切り下ろしを仕掛けてきた。狙いは首だ。
概ね予想通り。王様への襲撃にしても、私への不意打ちにしても、そして聖国にあった魔道具の兵器にしても、こいつは最小限の労力で一撃必殺を狙う傾向がある。
『シュブ=二グラス』を〈ストレージ〉にしまい、踏み込んでいた脚で地面を蹴って前宙し、剣撃をやり過ごす。
そのまま体を捻って前進する勢いを乗せた蹴りをお見舞いしてやる。
しかし蹴りは障壁に阻まれ、空中で一瞬静止することになってしまった。
次の瞬間、視界を光が覆った。
咄嗟に顔の前で腕を交差する。
一瞬の浮遊感。
どうにか地面を判別して着地した。
魔力をあのタイミングで込められる目一杯まで込めて防御したにも関わらず、私の腕は焼け爛れ、骨が見えている。
(ほぼノータイムでこの威力。流石は神と言ったところね)
意識的に〈超速再生〉を使って腕を再生し、刀形態の『シュブ=二グラス』を取り出す。
ディアスは……。あちらも再生を終えているようだ。スズの再生速度だったら、まだ時間がかかっていた筈。
(この辺りは強化されている、と)
これは逆に幸運かもしれない。
この再生速度なら、あの魔法を使ってもスズの身体を消滅させる事はないだろう。
「……あの忌々しき魔王の器に選ばれるだけの事はあるということか。良いだろう。我の全力を以て、叩き潰してくれる!」
雰囲気が変わった。
スズの体から眩しいくらいの光が溢れ出す。
(アレが、『世界を砕く輝き』とやらってわけね……)
まだまだ全力からは程遠い筈だが、溢れ出る光は辛うじて直視していられるというくらいの強さがある。
更にディアスの持つ双剣が光を纏った。[光輝く剣]だ。
ただし、スズのそれより明らかに強い力を感じる。
魔力は私の倍以上。スズのスキルの強化版を持ち、理不尽なまでの再生能力を持つ。加えて、時間が経つ程にどんどん強くなっていく、神。
(……ジジイだったら、嬉々として挑むんでしょうね)
ふと、戦闘狂だったジジイの事が頭をよぎった。
確かに心躍るものはあるが、今はそれ以上に、ディアスが憎い。
(ジジイがいたら、憎しみを以て剣を振るうなんて、許してくれないのでしょうけど……。やっぱり、二人に手を出されたのに、これ以上は抑えられないわ)
自分の気持ちを再確認したら、後はもう、目的を達成するだけだ。
息をゆっくりと吸い、吐く。
刀の握りを確かめ、あの時より強化された自身の魂へと意識を向ける。
そして、再び、その引鉄を引いた。
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