14 / 145
第2章 千の時を共に
第2話 二つ名
しおりを挟む
2-2
さて、なにか依頼でも受けましょうかね。
スタンピートの報酬が基本報酬だけで金貨5枚もありましたので余裕はあります。
貢献度によるものも別であるそうなんですが、今回のスタンピートの原因調査が捗っていないらしく、まだ確定しないらしいです。
時間は昼食には少し早いくらいですから、近場のものしかうけられません。お昼は移動しながらなにかつまめるものを買うつもりです。
あぁそういえば、こっそり回収したハイオークが〈ストレージ〉に眠ったままでしたね。
ベアルさんに頼もうかとも思いましたが、あの大物を解体するには忙しすぎるでしょう。
自分でやるには知識がたりません。
初心者講習で習ったのはもっと低ランクの魔物の解体方法、というか剥ぎ取り方法です。オークやハイオークはわかりません。
「よぉ~嬢ちゃん。1週間ぶりかぁ? ゲヘヘッ」
「あら? se…シンじゃない。そうね」
「? そんで、なんか悩んでたようだが相談に乗ってやってもいいぜぇ? 安心していいぜぇ? なんも怖いことなんてねぇんだからよ! ギャハハハ!」
「え、いや、別に問題ないわ」
慌てて取り繕ってしまいました。
まぁこっそりくすねたハイオークの解体で悩んでたとはいえませんし。
「ひょっとしてハイオークあたりの解体かぁ?」
「ち、違うわ!」
もう冷や汗ダラダラです。
「ギャハハハ! そう慌てるなって。別にわるいことじゃぁねぇよ。暗黙の了解ってやつだ。嬢ちゃんは〈ストレージ〉もちの癖に新人って変わり種だからなぁ!」
「そ、そうなの……って何で私が〈ストレージ〉持ってるって知ってるのよ!」
「スタンピートの時使ってるの見たやつから聞いたんだよ。その様子じゃぁやっぱくすねてたよぉだなぁ? 『狂戦姫』さんよぉ?」
「そ、そうゆう事ね。」
……ん? 『狂戦姫』?
「ちょっと待ちなさい。『狂戦姫』って何よ、『狂戦姫』って!」
「ギャハハハ! な~に驚いてんだぁ? 聞いたぜぇ? 不気味な大剣で首チョンパしながら狂ったように笑ってたそうじゃねぇか? そんだけ目立ちゃぁ二つ名くらいつくってぇの!」
「うっ…。そんなに目立ってたのね。」
「しかも嬢ちゃんはイイ女だしなぁ!」
それは当然です! そう作りましたから!
口には出しませんけどね。
「ちなみに俺ぁ『仮面の変人』ってのと『マジ別人』ってのがあるぜぇ?」
「……そ、そう」
いや、まぁ納得なんですが。
特に二つ目って二つ名なんでしょうか?
ルビ振る意味あります?
すっっっごい納得なんですけどね?
「そんで、解体の話だったかぁ?」
そうでした。
「えぇ」
「ブツはハイオークで間違いねぇな?」
「そうね。なんでわかったの?」
「そりゃ~あの中でくすねるならオーク族だからな。んで、何も知らないお嬢ちゃんならジェネラルには手をださねぇだろうし。量より質って感じだしなぁ?」
「その通りよ。流石Aランクまで生き残ってるだけはあるわね」
「ギャハハハ! 褒めたって何もでねぇぞぉ? とにかくだぁ、ハイオークならギルドに頼んじまえばいい」
それはいいのかしら?
「それはいいのかって顔してんなぁ? さっき言っただろぉ? 暗黙の了解って。スタンピートの基本報酬は金貨5枚しかねぇし、貢献度で稼ごうと思っても普通のやつぁ大して貰えねぇからなぁ? 嬢ちゃんは最初の魔法で数稼いだみてぇだし、そこそこもらえると思うがなぁ!」
「アレも私ってバレてたのね…」
「そりゃぁこの街で高ランクの冒険者やってるようなやつぁだいたい魔力を感じられるからなぁ! 二つ名も『爆殺姫』ってぇのが候補に挙がってたらしいぜ? まぁその後が印象的すぎてさっきいったやつになったらしいがなぁ! ギャハハハ!」
まだそっちの方が良かった気がします…。
しかし、基本報酬金貨5枚は少ないですか。たしかに、あれだけの数の魔物と、他にも多くの冒険者が居るとしても、戦わなければいけないという危険を考えれば少ないですね。
緊急依頼なので参加はしなければなりませんが、モチベーションは上がりづらいでしょう。
薄情な話ではありますが、冒険者ならとっとと別の街や国に逃げることも簡単ですから。
この報酬は討伐した魔物の素材の売り上げから出されますが、他にもお金がかかっている部分があるために自身で同じ数狩ってきた時の収入に大きく劣ります。
その分を冒険者がコッソリ魔物を回収して売ることで補填しようとすると、報酬やその他の消費を賄うための売り上げが減ることになります。
しかし低いやる気で怪我をしないよう冒険者が立ち回った結果街に被害がでてしまう、なんてことになった時は余計に費用が嵩みますので、それよりはマシ程度のマイナスです。
〈ストレージ〉もちが何十人もいたらそうもいっていられませんが、それほど珍しくはないといってもそこはスキルの進化。
せいぜい二十人もいれば多い方らしいです。
〈収納魔法〉の容量なんてたかが知れており、高レベルでオーク族一頭がやっと。
それなら上手くやれば損失を出さずに済む程度だからとやかく言わないでおこうとなったわけですね。
ともかく、それを聞いて安心した私は世紀末銀行マンにお礼を言って買取カウンターの方へむかいます。
「ハイオークの解体と素材の買取をおねがいしたいのだけど、いいかしら?」
「あ、『狂戦姫』さんですね。大丈夫です。こちらに出していただければ解体場まで運びます。」
買取カウンターのお兄さんにまで私の二つ名は広まっているようです……。
まあそれはもうしょうがないとして、ちょっと考えてることがあるんですよね。
「私も解体場? の方までいっちゃダメかしら?」
「はい、大丈夫ですよ。こちらです」
そう言ってお兄さんは先導してくれました。
◆◇◆
解体場はいくつかあるらしく、今回案内されたのは中型サイズまでの解体を行うところでした。
見た目は学校の体育館で広さはサッカーコートと同じくらいです。
ハイオークは3メートルちょっともありますが、魔物としてはギリギリ小型だそうです。
大型ってどれだけ大きいのでしょう……。
なんでもその解体のために地下に今いる解体場の数倍はあるスペースを確保してあるらしいです。
ともかく、ここに来た目的を果たしましょう。
お兄さんが誰かを探しています。
「あ! いた! ギンさん!」
「おう、追加の解体依頼か?」
「はい、こちらの『狂戦姫』さんがハイオークの解体を依頼したいそうです」
お兄さんに呼ばれて来たのは鬼人族の男性でした。
どうやら『ギン』という名前らしいですが、『妖鬼族』であるシュテンと違って見た目から力が強そうです。ええもうムキムキです。
「ほう、お前さんが『狂戦姫』か。人は見た目によらねえなあ。まあギルマスでわかっちゃいたがな。ガハハッ!」
彼も鬼人族の例に漏れず豪快な人物なようですね。
これならお願いも聞いてくれるでしょう。
「あまり女性に狂ってるなんて言わないものよ? それより、解体するところを見たいのだけれどいいかしら?」
「おう、それはすまんな。なんだお前さん、〈解体〉スキルないのか?」
「あるにはあるけど、まだレベルも低いし、スキルで補えない部分もあるでしょう?」
「まあそうだな。もちろんスキルレベルが高いに越したことはないが、そもそも解体のスキルレベルを上げるには知識も要るし自分でどうするか把握しておいた方が素材の状態もよくなる」
「ということで、お願いね」
「ああわかった。俺はギンだ。ついてきな」
「ありがとう。私はアルジェよ。ああお兄さん。案内助かったわ」
「いえ、仕事ですから」
そう言って戻っていったお兄さんに背を向けてギンのあとを追います。
ちなみに解体スキルなんてもってません。
おそらく見てるうちに覚えると思うのですが、普通はそんな短時間で覚えませんのでそう言っておきました。
「よし、ここでやろう。ハイオークをだしな。」
ギンが指定したあたりにハイオークをだします。解体待ちらしきハイオークのすぐ横です。
「ほう首を一撃か。断面も綺麗だ。腕がいいのか武器がいいのかは知らんが、こっちとしても綺麗に仕留めてくれた方がやりやすいし素材も多く取れる」
その辺りには気を使いましたからね。おいしいお肉のためです!
「これからこいつを解体するが、自分で経験しておいた方がいいところはそっちのギルドで回収した方でやって見せる。そのあとは後ろで見といてやるからやってみな」
おっと大丈夫ですかね? 私本当はまだスキルないんですが。
なんて若干不安になりつつ、ギンが解体するところを解説を聞きながらみていると五分ほどで生えましたよ。〈解体〉スキル。
その直後にやってみろと言われたのでギリギリセーフでしたね。
ちなみに、私にやらせるためにもう片方のオークを解体した時は同じ所まで半分以下の時間で終わらせていました。
解体が終わったのは始めてから一時間ほど経った頃。なお半分以上の時間を私が使ってます。スキルレベル7のギンと1の私を比べてはいけません。
「よし、これで終わりだな。しかしホントにスキルレベル低いんだな。ギルドの魔物図鑑によっぽど珍しかったりしない限り、だいたいの魔物の解体方法は書いてあるから読んでおきな。鑑定スキルでもlv8でわかるようになるらしいがな」
なるほど、つまり今の魔力量ではlv7以下の性能ということですね。
「わかったわ。ありがとう。結局ここを頼ることはそれなりにありそうだし、その時はおねがいね」
「おう、まかしときな! それじゃあこいつら持って行きな。査定はさっきのやつの仕事だ」
そう言って渡されたのは先程処理をした素材たち。ついでに保存方法も教えてもらえました。
まあ私はストレージにぽいっ、てすることの方が多そうですが。
◆◇◆
「もどったわ。はい、これお願いね」
「お疲れ様でした。査定しますので10分ほどお待ちください」
今回売らないのは肉のみ。内臓は食べないそうです。しっかり処理すれば食べれそうですが、それはまた今度にしました。
素材として売れるのは皮と心臓、それから定番の睾丸ですね。皮は鎧や盾に、心臓は薬師や錬金術師が触媒として、睾丸は精力剤として使うそうです。
「はい、お待たせしました。皮が30万L、心臓が20万L、睾丸は60万3000L、それから魔石が5万Lで合計115万3000Lです」
魔石とは、魔物が体内に持つ結晶体で、魔道具などの動力として使われます。純度が高いものだと魔結晶と呼ぶこともありますね。
「意外と安いのね」
Cランクとはいえ、あの大きさ――ピンポン玉より少し小さいくらい――のモノなら倍してもおかしくないはずです。
「オーク種のは不純物が多いんですよ」
なら納得ですね。
「それじゃあ、それは売らずに持っておくわ」
「わかりました。では、合計110万3000Lですね。金貨十一枚と銀貨三枚でよろしいでしょうか?」
ちょっと考えがあるんです。
「金貨一枚を銀版九枚と銀貨十枚、それから銀貨一枚を銅貨にしてくれる?」
あまり大きいと使いづらいですからね。
「はい、……それでは金貨十枚、銀版九枚、銀貨十一枚、それから銅貨十枚です。ご確認ください」
「たしかに、ありがとう」
さすがCランク。スタンピートの基本報酬の倍以上になりました。その少なさが実感できた、とも言えますが。
それから売店でギンに勧められた魔物図鑑全十巻を三巻まで買い、帰路につきます。
さて、これでようやくハイオークが食べれますね!
売れば一頭あたり金貨二十枚はくだらないというハイオーク。自分で作ってもいいですが、ベアルさんに頼みましょう。どんな味かわからないですから最初は慣れたプロに頼むべきです!
さて、なにか依頼でも受けましょうかね。
スタンピートの報酬が基本報酬だけで金貨5枚もありましたので余裕はあります。
貢献度によるものも別であるそうなんですが、今回のスタンピートの原因調査が捗っていないらしく、まだ確定しないらしいです。
時間は昼食には少し早いくらいですから、近場のものしかうけられません。お昼は移動しながらなにかつまめるものを買うつもりです。
あぁそういえば、こっそり回収したハイオークが〈ストレージ〉に眠ったままでしたね。
ベアルさんに頼もうかとも思いましたが、あの大物を解体するには忙しすぎるでしょう。
自分でやるには知識がたりません。
初心者講習で習ったのはもっと低ランクの魔物の解体方法、というか剥ぎ取り方法です。オークやハイオークはわかりません。
「よぉ~嬢ちゃん。1週間ぶりかぁ? ゲヘヘッ」
「あら? se…シンじゃない。そうね」
「? そんで、なんか悩んでたようだが相談に乗ってやってもいいぜぇ? 安心していいぜぇ? なんも怖いことなんてねぇんだからよ! ギャハハハ!」
「え、いや、別に問題ないわ」
慌てて取り繕ってしまいました。
まぁこっそりくすねたハイオークの解体で悩んでたとはいえませんし。
「ひょっとしてハイオークあたりの解体かぁ?」
「ち、違うわ!」
もう冷や汗ダラダラです。
「ギャハハハ! そう慌てるなって。別にわるいことじゃぁねぇよ。暗黙の了解ってやつだ。嬢ちゃんは〈ストレージ〉もちの癖に新人って変わり種だからなぁ!」
「そ、そうなの……って何で私が〈ストレージ〉持ってるって知ってるのよ!」
「スタンピートの時使ってるの見たやつから聞いたんだよ。その様子じゃぁやっぱくすねてたよぉだなぁ? 『狂戦姫』さんよぉ?」
「そ、そうゆう事ね。」
……ん? 『狂戦姫』?
「ちょっと待ちなさい。『狂戦姫』って何よ、『狂戦姫』って!」
「ギャハハハ! な~に驚いてんだぁ? 聞いたぜぇ? 不気味な大剣で首チョンパしながら狂ったように笑ってたそうじゃねぇか? そんだけ目立ちゃぁ二つ名くらいつくってぇの!」
「うっ…。そんなに目立ってたのね。」
「しかも嬢ちゃんはイイ女だしなぁ!」
それは当然です! そう作りましたから!
口には出しませんけどね。
「ちなみに俺ぁ『仮面の変人』ってのと『マジ別人』ってのがあるぜぇ?」
「……そ、そう」
いや、まぁ納得なんですが。
特に二つ目って二つ名なんでしょうか?
ルビ振る意味あります?
すっっっごい納得なんですけどね?
「そんで、解体の話だったかぁ?」
そうでした。
「えぇ」
「ブツはハイオークで間違いねぇな?」
「そうね。なんでわかったの?」
「そりゃ~あの中でくすねるならオーク族だからな。んで、何も知らないお嬢ちゃんならジェネラルには手をださねぇだろうし。量より質って感じだしなぁ?」
「その通りよ。流石Aランクまで生き残ってるだけはあるわね」
「ギャハハハ! 褒めたって何もでねぇぞぉ? とにかくだぁ、ハイオークならギルドに頼んじまえばいい」
それはいいのかしら?
「それはいいのかって顔してんなぁ? さっき言っただろぉ? 暗黙の了解って。スタンピートの基本報酬は金貨5枚しかねぇし、貢献度で稼ごうと思っても普通のやつぁ大して貰えねぇからなぁ? 嬢ちゃんは最初の魔法で数稼いだみてぇだし、そこそこもらえると思うがなぁ!」
「アレも私ってバレてたのね…」
「そりゃぁこの街で高ランクの冒険者やってるようなやつぁだいたい魔力を感じられるからなぁ! 二つ名も『爆殺姫』ってぇのが候補に挙がってたらしいぜ? まぁその後が印象的すぎてさっきいったやつになったらしいがなぁ! ギャハハハ!」
まだそっちの方が良かった気がします…。
しかし、基本報酬金貨5枚は少ないですか。たしかに、あれだけの数の魔物と、他にも多くの冒険者が居るとしても、戦わなければいけないという危険を考えれば少ないですね。
緊急依頼なので参加はしなければなりませんが、モチベーションは上がりづらいでしょう。
薄情な話ではありますが、冒険者ならとっとと別の街や国に逃げることも簡単ですから。
この報酬は討伐した魔物の素材の売り上げから出されますが、他にもお金がかかっている部分があるために自身で同じ数狩ってきた時の収入に大きく劣ります。
その分を冒険者がコッソリ魔物を回収して売ることで補填しようとすると、報酬やその他の消費を賄うための売り上げが減ることになります。
しかし低いやる気で怪我をしないよう冒険者が立ち回った結果街に被害がでてしまう、なんてことになった時は余計に費用が嵩みますので、それよりはマシ程度のマイナスです。
〈ストレージ〉もちが何十人もいたらそうもいっていられませんが、それほど珍しくはないといってもそこはスキルの進化。
せいぜい二十人もいれば多い方らしいです。
〈収納魔法〉の容量なんてたかが知れており、高レベルでオーク族一頭がやっと。
それなら上手くやれば損失を出さずに済む程度だからとやかく言わないでおこうとなったわけですね。
ともかく、それを聞いて安心した私は世紀末銀行マンにお礼を言って買取カウンターの方へむかいます。
「ハイオークの解体と素材の買取をおねがいしたいのだけど、いいかしら?」
「あ、『狂戦姫』さんですね。大丈夫です。こちらに出していただければ解体場まで運びます。」
買取カウンターのお兄さんにまで私の二つ名は広まっているようです……。
まあそれはもうしょうがないとして、ちょっと考えてることがあるんですよね。
「私も解体場? の方までいっちゃダメかしら?」
「はい、大丈夫ですよ。こちらです」
そう言ってお兄さんは先導してくれました。
◆◇◆
解体場はいくつかあるらしく、今回案内されたのは中型サイズまでの解体を行うところでした。
見た目は学校の体育館で広さはサッカーコートと同じくらいです。
ハイオークは3メートルちょっともありますが、魔物としてはギリギリ小型だそうです。
大型ってどれだけ大きいのでしょう……。
なんでもその解体のために地下に今いる解体場の数倍はあるスペースを確保してあるらしいです。
ともかく、ここに来た目的を果たしましょう。
お兄さんが誰かを探しています。
「あ! いた! ギンさん!」
「おう、追加の解体依頼か?」
「はい、こちらの『狂戦姫』さんがハイオークの解体を依頼したいそうです」
お兄さんに呼ばれて来たのは鬼人族の男性でした。
どうやら『ギン』という名前らしいですが、『妖鬼族』であるシュテンと違って見た目から力が強そうです。ええもうムキムキです。
「ほう、お前さんが『狂戦姫』か。人は見た目によらねえなあ。まあギルマスでわかっちゃいたがな。ガハハッ!」
彼も鬼人族の例に漏れず豪快な人物なようですね。
これならお願いも聞いてくれるでしょう。
「あまり女性に狂ってるなんて言わないものよ? それより、解体するところを見たいのだけれどいいかしら?」
「おう、それはすまんな。なんだお前さん、〈解体〉スキルないのか?」
「あるにはあるけど、まだレベルも低いし、スキルで補えない部分もあるでしょう?」
「まあそうだな。もちろんスキルレベルが高いに越したことはないが、そもそも解体のスキルレベルを上げるには知識も要るし自分でどうするか把握しておいた方が素材の状態もよくなる」
「ということで、お願いね」
「ああわかった。俺はギンだ。ついてきな」
「ありがとう。私はアルジェよ。ああお兄さん。案内助かったわ」
「いえ、仕事ですから」
そう言って戻っていったお兄さんに背を向けてギンのあとを追います。
ちなみに解体スキルなんてもってません。
おそらく見てるうちに覚えると思うのですが、普通はそんな短時間で覚えませんのでそう言っておきました。
「よし、ここでやろう。ハイオークをだしな。」
ギンが指定したあたりにハイオークをだします。解体待ちらしきハイオークのすぐ横です。
「ほう首を一撃か。断面も綺麗だ。腕がいいのか武器がいいのかは知らんが、こっちとしても綺麗に仕留めてくれた方がやりやすいし素材も多く取れる」
その辺りには気を使いましたからね。おいしいお肉のためです!
「これからこいつを解体するが、自分で経験しておいた方がいいところはそっちのギルドで回収した方でやって見せる。そのあとは後ろで見といてやるからやってみな」
おっと大丈夫ですかね? 私本当はまだスキルないんですが。
なんて若干不安になりつつ、ギンが解体するところを解説を聞きながらみていると五分ほどで生えましたよ。〈解体〉スキル。
その直後にやってみろと言われたのでギリギリセーフでしたね。
ちなみに、私にやらせるためにもう片方のオークを解体した時は同じ所まで半分以下の時間で終わらせていました。
解体が終わったのは始めてから一時間ほど経った頃。なお半分以上の時間を私が使ってます。スキルレベル7のギンと1の私を比べてはいけません。
「よし、これで終わりだな。しかしホントにスキルレベル低いんだな。ギルドの魔物図鑑によっぽど珍しかったりしない限り、だいたいの魔物の解体方法は書いてあるから読んでおきな。鑑定スキルでもlv8でわかるようになるらしいがな」
なるほど、つまり今の魔力量ではlv7以下の性能ということですね。
「わかったわ。ありがとう。結局ここを頼ることはそれなりにありそうだし、その時はおねがいね」
「おう、まかしときな! それじゃあこいつら持って行きな。査定はさっきのやつの仕事だ」
そう言って渡されたのは先程処理をした素材たち。ついでに保存方法も教えてもらえました。
まあ私はストレージにぽいっ、てすることの方が多そうですが。
◆◇◆
「もどったわ。はい、これお願いね」
「お疲れ様でした。査定しますので10分ほどお待ちください」
今回売らないのは肉のみ。内臓は食べないそうです。しっかり処理すれば食べれそうですが、それはまた今度にしました。
素材として売れるのは皮と心臓、それから定番の睾丸ですね。皮は鎧や盾に、心臓は薬師や錬金術師が触媒として、睾丸は精力剤として使うそうです。
「はい、お待たせしました。皮が30万L、心臓が20万L、睾丸は60万3000L、それから魔石が5万Lで合計115万3000Lです」
魔石とは、魔物が体内に持つ結晶体で、魔道具などの動力として使われます。純度が高いものだと魔結晶と呼ぶこともありますね。
「意外と安いのね」
Cランクとはいえ、あの大きさ――ピンポン玉より少し小さいくらい――のモノなら倍してもおかしくないはずです。
「オーク種のは不純物が多いんですよ」
なら納得ですね。
「それじゃあ、それは売らずに持っておくわ」
「わかりました。では、合計110万3000Lですね。金貨十一枚と銀貨三枚でよろしいでしょうか?」
ちょっと考えがあるんです。
「金貨一枚を銀版九枚と銀貨十枚、それから銀貨一枚を銅貨にしてくれる?」
あまり大きいと使いづらいですからね。
「はい、……それでは金貨十枚、銀版九枚、銀貨十一枚、それから銅貨十枚です。ご確認ください」
「たしかに、ありがとう」
さすがCランク。スタンピートの基本報酬の倍以上になりました。その少なさが実感できた、とも言えますが。
それから売店でギンに勧められた魔物図鑑全十巻を三巻まで買い、帰路につきます。
さて、これでようやくハイオークが食べれますね!
売れば一頭あたり金貨二十枚はくだらないというハイオーク。自分で作ってもいいですが、ベアルさんに頼みましょう。どんな味かわからないですから最初は慣れたプロに頼むべきです!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる