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第2章 千の時を共に
第23話 契約=血約
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2-23
やっと終わりました……。いくらなんでも魔法なしで学校のグラウンドレベルの丘陵地帯を平地にさせるとか……。まあやり遂げたんですけどね?
ぐったりしながら訓練場から戻ると、ブランたちは酒場エリア(私が勝手に呼んでるだけですが)で待っていました。……テオは仕事いいんでしょうか? ギルド職員ですよね?
「あ、姉様。おかえり」
「お、嬢ちゃん終わったか! ヒャハハハ!」
「お疲れ様です。アルジェさん」
昼間っから麦酒を飲んでヒャッハーなってる銀行マンって違和感凄いですよね、今更ながら。
「ほんとよ。なんで私だけ……」
「嬢ちゃんが剣に呑まれるからわりぃんだよぉ! ギャハハハ! ……呑まれないよな? もう」
「急に普通にならないでくれる? それはそれで違和感酷いから。
もう大丈夫よ、取り敢えずの整理はついたから」
「そうですか。それは安心しました。色々な意味で」
「……ごめんなさい」
いや、本当に。
「それで、何話してたの?」
「妹ちゃんにぃイロイロイイコト教えてやってたんだよ」
「うん、『吸血族』の事とか。冒険者としてのアドバイスとか教えてもらった」
「そう、よかったわね。シン、言い方が何か如何わしいわ。ブランが楽しそうだから流してあげるけど」
「流してませんよね?(というか、これは楽しそうだったのか……。……わからない)」
剣を抜いてないから流してるでいいんですよ。まったく、コレが20xx年なら内部破裂で肉片にしてたところです。
「(ブルッ)……なんだぁ? 今悪寒がしやがった」
「それで、シン、貴方の斧ってやっぱり伝説級なのよね。鑑定させてもらってもいいかしら?」
さすがAランク。勘がいいです。
話をそらしましょう。
「ん? ああ。もちろんダァ! 鑑定してもよくわかんねぇ文字で読めねぇがなぁ! ギャハハハ!」
読めない字の鑑定画面?
〈鑑定〉は基本的に術者の最も慣れ親しんだ言語になるはずなんですが……。
「ちょっと視てもいいかしら?
「いいぜぇ?」
それじゃ早速。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〈20xx年製戦斧〉伝説(最良:固定)
二百年前に生きた人類最高の鍛治師、鉄斎の作。
ある日、ふと思い出した前世の漫画の続きが非常に気になり、その思いを込めて鍛えられた斧。その想いが斧に宿り人の手で作り出せる限界を越えた。
その一撃は大地を割るが、言動に世紀末感がでる。
『至天の十器』の一振り。
p.s. この文は“日本語”に固定されるよう細工した。今コレを視ている同胞よ、コレを伝えるかどうかは任せよう。正しく使ってくれよ?
《スキル》
大地破撃(始動鍵:汚物は消毒ダァ!!)
身体強化 不壊 切断力増 重撃 世紀末化
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……何から突っ込みましょうか。
まず、『至天の十器』とは人の手によって作られた武具のうち、一般的な素材――Aランク魔物の素材を含め、多くは希少級以下です――から人が作れる限界の希少級を超えてしまった十種の武具の事を言います。年月を掛けて進化することはあれど、作られた時点で希少級を超えることはないという常識をぶち壊すものですね。
もちろん、伝説級以上の素材を使えばその限りではありませんが、等級は下がってしまうことの方が多いです。
大体の“十器”が秘宝級らしいんですが、コレは伝説ですね。
で、下にあるスキルは、その武具がもつ特殊な能力ですね。最近視えるようになりました。ブランの『白梅』に付いている[洗浄]などもコレに当たります。私のドレスには、まだ視えないですが、恐らく[状態固定]が付いているでしょう。この斧の[不壊]の上位スキルで、壊れないだけでなく汚れたり、とにかく状態が変わることがなくなります。
正確には、直ぐに元の状態に戻る、ですね。
このスキル、普通ダンジョンなどから発見されるものでも付いているのは二つ程で、三つもあれば白金貨が十枚単位で飛んでいきます。つまり異常です。
その中身ですが……。
「ねえ、シン。貴方がその……、愉快な性質になったのはいつからかきいていいかしら?」
「気を使うならちゃんとつかいやがれ! マァいい。……そうダナァ、その斧を手に入れたくらいか?」
シン、ごめんなさい。世紀末銀行マンとか言って。理由は後で説明しますね。
とりあえず、シンがこんなことになったのは[世紀末化]という謎スキルのせいだということがハッキリしました。
それは置いておきましょう。大地破撃の始動キーも、消毒される側じゃないのか? という疑問は閉まっておきます。
あ、始動キーというのはそのスキル、この場合は技と言い換えてもいいですね。それを発動するためのものです。多くの場合口に出す必要があります。
私の場合だと、……あれです。スタンピードの時の、あのかなり恥ずかしいやつです。
最近、感覚が元に戻るに連れて、だんだん恥ずかしくなってきて……。あぁぁぁぁ! ダメです! 思い出したくないです!
アレは二度と使いませんよ!?
……重撃や身体強化はそのままですから、いいですね。
……さて、そろそろ私がシンに謝っていた理由を話しましょうか。出来れば目を逸らしたいのですが……。
この斧の製作者、『鉄斎』ですが、恐らく、いや、確実に身内です。
……なんです? その『あぁやっぱり』という目は。
…………とにかく!
この『漫画の続きが気になるという思いが人間の限界を超えた』とかいう意味わからない説明も、あの人なら納得できます。日本にいた時からそうでした。子供に鶴を折ってあげる感覚でホイホイ名刀――最低でも百万円とかでしたかね――を作って配ってた人物で、ジジイの従兄弟になります。
刀剣マニアの友人が『大業物』とか『最上大業物』とか言ってた記憶もあります。何かで見た刀の値段が五十万ほどだったので、相当ですよね。そんなものお年玉感覚でホイホイ渡さないでほしいです。毎年増えて、彫刻刀から方天画戟まで揃ってますよ? ……ではなく。
ジジイに続き鉄斎さんまでこっちに来てた。それも遥か昔。やはりこの差がきになりますね。
……まぁ、今はいいですね。
最後のメッセージですが、これはどうしましょうかね?
(ジーーーーー)
「な、なんだぁ? 嬢ちゃん、俺の顔になんかついてるかぁ?」
……シンならいいですね。迷惑もかけましたし、ブランもお世話になりました。礼です。
「これ、鉄斎作の『至天の十器』らしいわよ」
「はぁぁ!? てか、読めんのか!?」
「アルジェさん! 詳しく!」
おや、さっきまで空気だったテオが食いつくとは意外。
「これ、故郷の字よ」
「故郷? 『吸血族』のか?」
ちらっとリオラさんをみると、聞こえていたようですね。カウンターの向こうから頷き返してきました。
サクッと結界を張ります。
「これは、遮音結界?」
「ええ、今から話すのは私の秘密。知ってるのはギルマスとリオラさんだけね」
「姉様の秘密?」
「えぇ、貴女にはいずれ話すつもりだったのよ?」
そう言って一息の間をあけ、その秘密を打ち明けます。
「私は、【転生者】なのよ」
「はっ! なるほどなぁ! 嬢ちゃんの異常な成長速度の秘密がわかったぜ」
「残念だけど、これは成長というより前に戻ってるという方が正しいわ。まだちょっと違和感があるのよね」
「……マジか」
「ちょっと待ってください。アルジェさんが【転生者】で、そこ故郷の字を鉄斎氏が使っているということは……」
「ええ、御察しの通り、彼も【転生者】ね。というか、私の身内よ」
「あぁ、ちょっと色々混乱してきやがった」
「姉様が【転生者】……。あの訓練が普通の。……異世界怖い」
「ブラン、違うわ! あっちでもアレは普通じゃなかったわ!
私の祖父がおかしかったの!」
「……それをやってるアルジェさんも十分おかしいということですよね?」
(ギロッ!)
「いえ、なんでもないです」
まったく、話が進まないじゃないですか!
小さくなったテオはほっといて、シンにスキルを伝えます。……[世紀末化]以外。聞いてもわからないでしょう。
彼はなかなか喜んでくれました。
「よっしゃぁ! 試して来るゼェ!」
「させん!!」
「ゲハァッ!」
危ない危ない。せっかく平らにした訓練場がまた壊されるところでした。
「アルジェさん、また……。シン、男を捨てないでくださいね?」
テオがなにやら言ってますが、シンには届いてないようでした。
◆◇◆
しばらく三人で歓談していると、シンが復活しました。
「死ぬかと思ったぜ、ギャハハハ……」
そんな消え入りそうなギャハハハは初めて聞きましたね。
「そういえば、初心者講習の時には盾を使ってたけど、普段は使ってないの?」
さっきはつかってなかったんですよね。
「おう、ありゃあ指導するのに受け止めた方が都合がいい時もあるからダァ」
「なるほどね」
そろそろいい時間ですね。
帰りますか。っと、一つ聞かなきゃでした。
「知らないわよ。それより、一つ聞いていいかしら?」
「おぅ! 嬢ちゃんの頼みダァ」
「はい、構いませんよ」
「数百年前の、多分鉄斎さんと同じくらいの頃だと思うんだけど、『龍人族』でこういう武器を使ったメチャクチャ強い人知らない?」
ブランの刀を見せながら二人に聞きます。
あのジジイ、こっちでの名前言ってなかったんですよね。
「すまねぇなぁ嬢ちゃん。俺は知らネェなぁ?」
「……一人知ってます」
「ほんと!? 教えてくれない?」
「『ゲンリューサイ』という人物です」
「あぁ! あの伝説の!」
「はい。彼は……」
「ストップ! それで間違いないわ! それ以上いわないで! 聞きたくない!」
「その様子だと、その人物も【転生者】で?」
「……祖父よ」
「「は?」」
「だから、祖父よ、私の」
固まる空気。見開かれる二対の目。コクコクというブランがジュースを飲む音……。
ホントあのクソジジイ!ロクなことしない!(決めつけ)
「ま、まぁ。嬢ちゃんは嬢ちゃんだからな」
「そ、そうですね」
……いや、本当にロクなことしてないようですね。
「一応フォローしておくと、基本的に評判の良い英雄の一人だからな? あの事件以外」
シンが素面でフォローするって……。
――この時の私は、何故聞いておかなかったのかと後悔する事になるなんて思ってもいませんでした。
◆◇◆
帰ってきました。我が家。
なんでしょう、あの数分でドッと疲れたのですが?
冒険者ですから、夕食は言わなければ作らなくて良いと言ってあります。なのであのまま四人で夕食をとりました。
テオはそもそも非番だったらしいです。……私のせいでごめなさいです。ほんと。
以前リオラさんに話すと言っていた、転生した後に転生前の技術がスキルとして徐々に反映されていく現象のことの聞き取りも押し付けられたそうです。
今はお風呂にも入り、あとは寝るだけ。
――なんですが……。
「姉様、血、ちょうだい。代わりに私の吸っていいから」
な、なんて破廉恥な!
ブ、ブラン? いいんですか?
は、鼻血出しちゃいそうですよ?
……なんてふざけていい話ではないですね。
「……そんな事も聞いたの?」
「うん」
……余計なことを。
「いいの?」
「うん」
「もう、戻れないわよ?」
「いいの」
「……」
「……」
ブランの目をじっと見ます。
「はぁ……。わかったわ」
「うん、ありがとう」
「私のセリフよ。それ」
今から行うのは、一つの“契約”。
“血約”とも呼ばれる、血の誓い。
古くより続く『吸血族』の始祖と、真祖にのみ許された、最上の祈り。
互いの血を媒介に、この世界を創造した副王と、自らの存在に願う“絶対”の宣言。
『血の盟約』
その細く真っ白な首筋に、冷たく光を跳ね返す一対の牙をたてる。
「んっ…」
漏れ聞こえる甘い声と、喉を伝う彼女の熱に酔いながら、今度は己の手首を切り裂き、口に含んだ生命の源流を、哀れな子羊の体内へと、接吻をもって注ぎ込む。
「ん……んむ…………」
己そのものを注ぐように。
何処までも甘美に。
そして、紡ぐ。
その唄を。
『我、創造の副王、契約と断罪の主に誓う。彼の者を我が血の一部となし、守り、死を超えて、共にあることを』
私の言霊と共に、幾何学模様が青みの掛かった白銀色の魔法陣をなし、二人を包む。
「さあ、ブラン。祝詞はもう解るわね?」
「はぁ……はぁ……はぁ…………うん」
頰を紅潮させたブランが続けます。
『我、我らの血と魂に誓う。悠久の時を超え、空間を超え、この身滅びようとも、共にあり続けることを』
ブランが言い終わると、魔法陣に黒い輝きが混じります。
やがて、完全に混じり合い、単色となったそれは、鎖を成し、私たちの胸の奥にある何かに絡みつきました。
――そういえば、欧米では日本と違って心は頭に宿っていると言う思想でしたっけ。
そんな下らない思考がよぎる中、仕上げに移ります。
『『我らに、祝福を』』
途端に溢れ出す光。
気がつけば、鎖は無くなっていました。
しかし、確かに私たちを結び付けている。そう感じます。
「――これで私たちは本当の姉妹と言ってよくなったわ」
「うん、ずっと、一緒だよ?」
本当に、この子は……。
きっとテオですね。許しません。本当に。
満足げなブランを抱きしめます。
「?? 姉様、泣いてるの? 悲しいの?」
「違うわ。嬉しいのよ」
私をこんなにも、愛してくれていることが。
この、呪いとも言える“誓い”をたててくれたことが……。
そう、これは呪い。
私が生きる限り、この子に寿命が来ることはない。
一定の年齢で成長を止める。
外的要因で死ぬことはあれど、千年を超える時を、私に縛り付けられる。
そういう“契約”なんですよ。これは。
せっかく整理をつけたのに、意味なかったですね。テオのせいです。
テオには罰として、石鹸とケーキでも山ほど送りつけてやりましょう。えぇ、許しませんからね。
そんなことを考えつつ、私は眠りに落ちました。
チリンッ
【魂の定着率が100%になりました。
【副王の加護】により、〈時魔法〉が付与されました。
レベル5以上の〈光魔導〉、〈闇魔導〉を確認。
〈時魔法〉がレベル5になりました。
未構築の熟練度の痕跡を多数確認。
復元しますか?→yes/no
…………
一定時間回答が得られなかったため、自動的に復元を開始します。
以前復元に失敗した熟練度を再度復元します。
……成功しました。
〈刀術〉がレベルMAXになりました。
ユニークスキルの譲渡申請がありました。
復元後のスキルを統合し、スキルを継承します。
…………
復元後の熟練度の不足が予想されます。
ユニークスキル〈武神〉の退化を実行。
……成功しました。
ユニークスキル〈武神〉はユニークスキル〈武王〉として継承されます。
一部熟練度の超過を確認。
ユニークスキル〈武王〉の構成に綻びが生じる危険があるため、スキル系統〈刀術〉を分離し、ユニークスキル〈刀帝〉として再取得します。
復元完了まで、あと3時間21分16秒。
…………
条件を達成しました。
〈母なる塔の剣〉、〈時空のドレス〉の進化を開始します。】
やっと終わりました……。いくらなんでも魔法なしで学校のグラウンドレベルの丘陵地帯を平地にさせるとか……。まあやり遂げたんですけどね?
ぐったりしながら訓練場から戻ると、ブランたちは酒場エリア(私が勝手に呼んでるだけですが)で待っていました。……テオは仕事いいんでしょうか? ギルド職員ですよね?
「あ、姉様。おかえり」
「お、嬢ちゃん終わったか! ヒャハハハ!」
「お疲れ様です。アルジェさん」
昼間っから麦酒を飲んでヒャッハーなってる銀行マンって違和感凄いですよね、今更ながら。
「ほんとよ。なんで私だけ……」
「嬢ちゃんが剣に呑まれるからわりぃんだよぉ! ギャハハハ! ……呑まれないよな? もう」
「急に普通にならないでくれる? それはそれで違和感酷いから。
もう大丈夫よ、取り敢えずの整理はついたから」
「そうですか。それは安心しました。色々な意味で」
「……ごめんなさい」
いや、本当に。
「それで、何話してたの?」
「妹ちゃんにぃイロイロイイコト教えてやってたんだよ」
「うん、『吸血族』の事とか。冒険者としてのアドバイスとか教えてもらった」
「そう、よかったわね。シン、言い方が何か如何わしいわ。ブランが楽しそうだから流してあげるけど」
「流してませんよね?(というか、これは楽しそうだったのか……。……わからない)」
剣を抜いてないから流してるでいいんですよ。まったく、コレが20xx年なら内部破裂で肉片にしてたところです。
「(ブルッ)……なんだぁ? 今悪寒がしやがった」
「それで、シン、貴方の斧ってやっぱり伝説級なのよね。鑑定させてもらってもいいかしら?」
さすがAランク。勘がいいです。
話をそらしましょう。
「ん? ああ。もちろんダァ! 鑑定してもよくわかんねぇ文字で読めねぇがなぁ! ギャハハハ!」
読めない字の鑑定画面?
〈鑑定〉は基本的に術者の最も慣れ親しんだ言語になるはずなんですが……。
「ちょっと視てもいいかしら?
「いいぜぇ?」
それじゃ早速。
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〈20xx年製戦斧〉伝説(最良:固定)
二百年前に生きた人類最高の鍛治師、鉄斎の作。
ある日、ふと思い出した前世の漫画の続きが非常に気になり、その思いを込めて鍛えられた斧。その想いが斧に宿り人の手で作り出せる限界を越えた。
その一撃は大地を割るが、言動に世紀末感がでる。
『至天の十器』の一振り。
p.s. この文は“日本語”に固定されるよう細工した。今コレを視ている同胞よ、コレを伝えるかどうかは任せよう。正しく使ってくれよ?
《スキル》
大地破撃(始動鍵:汚物は消毒ダァ!!)
身体強化 不壊 切断力増 重撃 世紀末化
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……何から突っ込みましょうか。
まず、『至天の十器』とは人の手によって作られた武具のうち、一般的な素材――Aランク魔物の素材を含め、多くは希少級以下です――から人が作れる限界の希少級を超えてしまった十種の武具の事を言います。年月を掛けて進化することはあれど、作られた時点で希少級を超えることはないという常識をぶち壊すものですね。
もちろん、伝説級以上の素材を使えばその限りではありませんが、等級は下がってしまうことの方が多いです。
大体の“十器”が秘宝級らしいんですが、コレは伝説ですね。
で、下にあるスキルは、その武具がもつ特殊な能力ですね。最近視えるようになりました。ブランの『白梅』に付いている[洗浄]などもコレに当たります。私のドレスには、まだ視えないですが、恐らく[状態固定]が付いているでしょう。この斧の[不壊]の上位スキルで、壊れないだけでなく汚れたり、とにかく状態が変わることがなくなります。
正確には、直ぐに元の状態に戻る、ですね。
このスキル、普通ダンジョンなどから発見されるものでも付いているのは二つ程で、三つもあれば白金貨が十枚単位で飛んでいきます。つまり異常です。
その中身ですが……。
「ねえ、シン。貴方がその……、愉快な性質になったのはいつからかきいていいかしら?」
「気を使うならちゃんとつかいやがれ! マァいい。……そうダナァ、その斧を手に入れたくらいか?」
シン、ごめんなさい。世紀末銀行マンとか言って。理由は後で説明しますね。
とりあえず、シンがこんなことになったのは[世紀末化]という謎スキルのせいだということがハッキリしました。
それは置いておきましょう。大地破撃の始動キーも、消毒される側じゃないのか? という疑問は閉まっておきます。
あ、始動キーというのはそのスキル、この場合は技と言い換えてもいいですね。それを発動するためのものです。多くの場合口に出す必要があります。
私の場合だと、……あれです。スタンピードの時の、あのかなり恥ずかしいやつです。
最近、感覚が元に戻るに連れて、だんだん恥ずかしくなってきて……。あぁぁぁぁ! ダメです! 思い出したくないです!
アレは二度と使いませんよ!?
……重撃や身体強化はそのままですから、いいですね。
……さて、そろそろ私がシンに謝っていた理由を話しましょうか。出来れば目を逸らしたいのですが……。
この斧の製作者、『鉄斎』ですが、恐らく、いや、確実に身内です。
……なんです? その『あぁやっぱり』という目は。
…………とにかく!
この『漫画の続きが気になるという思いが人間の限界を超えた』とかいう意味わからない説明も、あの人なら納得できます。日本にいた時からそうでした。子供に鶴を折ってあげる感覚でホイホイ名刀――最低でも百万円とかでしたかね――を作って配ってた人物で、ジジイの従兄弟になります。
刀剣マニアの友人が『大業物』とか『最上大業物』とか言ってた記憶もあります。何かで見た刀の値段が五十万ほどだったので、相当ですよね。そんなものお年玉感覚でホイホイ渡さないでほしいです。毎年増えて、彫刻刀から方天画戟まで揃ってますよ? ……ではなく。
ジジイに続き鉄斎さんまでこっちに来てた。それも遥か昔。やはりこの差がきになりますね。
……まぁ、今はいいですね。
最後のメッセージですが、これはどうしましょうかね?
(ジーーーーー)
「な、なんだぁ? 嬢ちゃん、俺の顔になんかついてるかぁ?」
……シンならいいですね。迷惑もかけましたし、ブランもお世話になりました。礼です。
「これ、鉄斎作の『至天の十器』らしいわよ」
「はぁぁ!? てか、読めんのか!?」
「アルジェさん! 詳しく!」
おや、さっきまで空気だったテオが食いつくとは意外。
「これ、故郷の字よ」
「故郷? 『吸血族』のか?」
ちらっとリオラさんをみると、聞こえていたようですね。カウンターの向こうから頷き返してきました。
サクッと結界を張ります。
「これは、遮音結界?」
「ええ、今から話すのは私の秘密。知ってるのはギルマスとリオラさんだけね」
「姉様の秘密?」
「えぇ、貴女にはいずれ話すつもりだったのよ?」
そう言って一息の間をあけ、その秘密を打ち明けます。
「私は、【転生者】なのよ」
「はっ! なるほどなぁ! 嬢ちゃんの異常な成長速度の秘密がわかったぜ」
「残念だけど、これは成長というより前に戻ってるという方が正しいわ。まだちょっと違和感があるのよね」
「……マジか」
「ちょっと待ってください。アルジェさんが【転生者】で、そこ故郷の字を鉄斎氏が使っているということは……」
「ええ、御察しの通り、彼も【転生者】ね。というか、私の身内よ」
「あぁ、ちょっと色々混乱してきやがった」
「姉様が【転生者】……。あの訓練が普通の。……異世界怖い」
「ブラン、違うわ! あっちでもアレは普通じゃなかったわ!
私の祖父がおかしかったの!」
「……それをやってるアルジェさんも十分おかしいということですよね?」
(ギロッ!)
「いえ、なんでもないです」
まったく、話が進まないじゃないですか!
小さくなったテオはほっといて、シンにスキルを伝えます。……[世紀末化]以外。聞いてもわからないでしょう。
彼はなかなか喜んでくれました。
「よっしゃぁ! 試して来るゼェ!」
「させん!!」
「ゲハァッ!」
危ない危ない。せっかく平らにした訓練場がまた壊されるところでした。
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◆◇◆
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そんな消え入りそうなギャハハハは初めて聞きましたね。
「そういえば、初心者講習の時には盾を使ってたけど、普段は使ってないの?」
さっきはつかってなかったんですよね。
「おう、ありゃあ指導するのに受け止めた方が都合がいい時もあるからダァ」
「なるほどね」
そろそろいい時間ですね。
帰りますか。っと、一つ聞かなきゃでした。
「知らないわよ。それより、一つ聞いていいかしら?」
「おぅ! 嬢ちゃんの頼みダァ」
「はい、構いませんよ」
「数百年前の、多分鉄斎さんと同じくらいの頃だと思うんだけど、『龍人族』でこういう武器を使ったメチャクチャ強い人知らない?」
ブランの刀を見せながら二人に聞きます。
あのジジイ、こっちでの名前言ってなかったんですよね。
「すまねぇなぁ嬢ちゃん。俺は知らネェなぁ?」
「……一人知ってます」
「ほんと!? 教えてくれない?」
「『ゲンリューサイ』という人物です」
「あぁ! あの伝説の!」
「はい。彼は……」
「ストップ! それで間違いないわ! それ以上いわないで! 聞きたくない!」
「その様子だと、その人物も【転生者】で?」
「……祖父よ」
「「は?」」
「だから、祖父よ、私の」
固まる空気。見開かれる二対の目。コクコクというブランがジュースを飲む音……。
ホントあのクソジジイ!ロクなことしない!(決めつけ)
「ま、まぁ。嬢ちゃんは嬢ちゃんだからな」
「そ、そうですね」
……いや、本当にロクなことしてないようですね。
「一応フォローしておくと、基本的に評判の良い英雄の一人だからな? あの事件以外」
シンが素面でフォローするって……。
――この時の私は、何故聞いておかなかったのかと後悔する事になるなんて思ってもいませんでした。
◆◇◆
帰ってきました。我が家。
なんでしょう、あの数分でドッと疲れたのですが?
冒険者ですから、夕食は言わなければ作らなくて良いと言ってあります。なのであのまま四人で夕食をとりました。
テオはそもそも非番だったらしいです。……私のせいでごめなさいです。ほんと。
以前リオラさんに話すと言っていた、転生した後に転生前の技術がスキルとして徐々に反映されていく現象のことの聞き取りも押し付けられたそうです。
今はお風呂にも入り、あとは寝るだけ。
――なんですが……。
「姉様、血、ちょうだい。代わりに私の吸っていいから」
な、なんて破廉恥な!
ブ、ブラン? いいんですか?
は、鼻血出しちゃいそうですよ?
……なんてふざけていい話ではないですね。
「……そんな事も聞いたの?」
「うん」
……余計なことを。
「いいの?」
「うん」
「もう、戻れないわよ?」
「いいの」
「……」
「……」
ブランの目をじっと見ます。
「はぁ……。わかったわ」
「うん、ありがとう」
「私のセリフよ。それ」
今から行うのは、一つの“契約”。
“血約”とも呼ばれる、血の誓い。
古くより続く『吸血族』の始祖と、真祖にのみ許された、最上の祈り。
互いの血を媒介に、この世界を創造した副王と、自らの存在に願う“絶対”の宣言。
『血の盟約』
その細く真っ白な首筋に、冷たく光を跳ね返す一対の牙をたてる。
「んっ…」
漏れ聞こえる甘い声と、喉を伝う彼女の熱に酔いながら、今度は己の手首を切り裂き、口に含んだ生命の源流を、哀れな子羊の体内へと、接吻をもって注ぎ込む。
「ん……んむ…………」
己そのものを注ぐように。
何処までも甘美に。
そして、紡ぐ。
その唄を。
『我、創造の副王、契約と断罪の主に誓う。彼の者を我が血の一部となし、守り、死を超えて、共にあることを』
私の言霊と共に、幾何学模様が青みの掛かった白銀色の魔法陣をなし、二人を包む。
「さあ、ブラン。祝詞はもう解るわね?」
「はぁ……はぁ……はぁ…………うん」
頰を紅潮させたブランが続けます。
『我、我らの血と魂に誓う。悠久の時を超え、空間を超え、この身滅びようとも、共にあり続けることを』
ブランが言い終わると、魔法陣に黒い輝きが混じります。
やがて、完全に混じり合い、単色となったそれは、鎖を成し、私たちの胸の奥にある何かに絡みつきました。
――そういえば、欧米では日本と違って心は頭に宿っていると言う思想でしたっけ。
そんな下らない思考がよぎる中、仕上げに移ります。
『『我らに、祝福を』』
途端に溢れ出す光。
気がつけば、鎖は無くなっていました。
しかし、確かに私たちを結び付けている。そう感じます。
「――これで私たちは本当の姉妹と言ってよくなったわ」
「うん、ずっと、一緒だよ?」
本当に、この子は……。
きっとテオですね。許しません。本当に。
満足げなブランを抱きしめます。
「?? 姉様、泣いてるの? 悲しいの?」
「違うわ。嬉しいのよ」
私をこんなにも、愛してくれていることが。
この、呪いとも言える“誓い”をたててくれたことが……。
そう、これは呪い。
私が生きる限り、この子に寿命が来ることはない。
一定の年齢で成長を止める。
外的要因で死ぬことはあれど、千年を超える時を、私に縛り付けられる。
そういう“契約”なんですよ。これは。
せっかく整理をつけたのに、意味なかったですね。テオのせいです。
テオには罰として、石鹸とケーキでも山ほど送りつけてやりましょう。えぇ、許しませんからね。
そんなことを考えつつ、私は眠りに落ちました。
チリンッ
【魂の定着率が100%になりました。
【副王の加護】により、〈時魔法〉が付与されました。
レベル5以上の〈光魔導〉、〈闇魔導〉を確認。
〈時魔法〉がレベル5になりました。
未構築の熟練度の痕跡を多数確認。
復元しますか?→yes/no
…………
一定時間回答が得られなかったため、自動的に復元を開始します。
以前復元に失敗した熟練度を再度復元します。
……成功しました。
〈刀術〉がレベルMAXになりました。
ユニークスキルの譲渡申請がありました。
復元後のスキルを統合し、スキルを継承します。
…………
復元後の熟練度の不足が予想されます。
ユニークスキル〈武神〉の退化を実行。
……成功しました。
ユニークスキル〈武神〉はユニークスキル〈武王〉として継承されます。
一部熟練度の超過を確認。
ユニークスキル〈武王〉の構成に綻びが生じる危険があるため、スキル系統〈刀術〉を分離し、ユニークスキル〈刀帝〉として再取得します。
復元完了まで、あと3時間21分16秒。
…………
条件を達成しました。
〈母なる塔の剣〉、〈時空のドレス〉の進化を開始します。】
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この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
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良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
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けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
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ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
少し冷めた村人少年の冒険記
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辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
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田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
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『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
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> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
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神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
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無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
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克全
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エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
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