12/10^16のキセキ〜異世界で長生きすればいいだけ……だけど妹たちに手を出すなら容赦しない!〜(カクヨム版)

嘉神かろ

文字の大きさ
47 / 145
第3章 二つの輝き

第10話 アルジェの『魂の進化』講座

しおりを挟む
3-10
「……うぅむ」

 それぞれが今話した知識を噛み砕き、吸収しようとしているようです。
 ぽっと出の私の話を真剣に聞き、頭ごなしに否定する事なく、かと言って鵜呑みにするのではなく疑問点があればその都度聞く。しかもソレは、全く新しい知識です。もちろん、土台のあるものもありましたが、なかなかできることでは無いですね。
 この国が大国足り得た理由の一端でしょう。

「しかし、この知識……。【転生者】か? いや、しかし……」

 まあバレますよね。

「ええ、そうです」
「(どういうことだ……?)」

 私も全ての原子、物質の事を知っているわけでは無いです。その事は念を押しておきます。魔素の様な特有の物質もありますし。

「そちらも、あまり広めないでいただければ」
「まあ問題なかろう」
「ありがとうございます」

 バレても問題ないと言えばないのですが、積極的に広げて面倒ごとが起きても嫌です。

「ああ、そうだ。アリエル、自分の種族、確認してみなさい」
「種族、ですか?」

 突然の私の言葉に困惑しつつも、鑑定の魔道具を利用して確認しています。

「『人族』のは……、え?」

 おー、やっぱりですか。
 これはますます勝てなくなりますね。

「アリエル、どうしたのだ?」
「ジュリウス様、その、種族が、ですね」
「種族がどうかしたのか?」

 これ知ってる人、どれくらいいますかねー?
 ジジイの知り合いのエルフの女王様なら知ってるかもですね?

「種族が、『英雄種Hero』に変わってるんです……」
「「「…………」」」

 おー、固まりましたね!
 なんか面白いです。
 しかし、まさかの英雄種、Heroヒーローですか…。私の設定だと、鑑定のルビが英語なのはかなり上位のものになるんですよね……。

「これから徐々に体が作り変えられるから、多少感覚が変わるかもしれないわ。そうね、長ければ一週間くらいかかるかも。タイミングを見て慣らしておくべきね」

 て、アリエル、聴いてます?
 というか、他の人も。……ダメそう?




「……アルジェ、説明してもらってもいいかな?」

 最初に復活したのはミカエル様ですか。意外ですね。
 せっかくですから知ってることと、〈鑑定眼〉の内容を説明してあげましょう。

「先程の模擬戦で〈制魂解放〉のレベルが5になった事が原因ですね。どの種族でも、そのレベルになれば魂が昇華して、一つ上位の種族になるんです」
「ほう。『鬼神の系譜』など一部の種族が成長して進化するのとは別ですか?」
「ええ、全く別ね。アレはそうゆう体の仕組みをしてるだけだから。この進化は魂そのものの進化よ」

 以前話した“例外”のことです。
 そもそも『鬼神の系譜』は、魂としては完成されてますから。例外と言う意味では、『鬼神の系譜』こそがそうであると言う方が正しいでしょう。

「では、『闇森妖精』だと何になるのでしょうか?」
「ダークエルフは、『上位闇妖精ハイ・ダークエルフ』ね。エルフも同じ、“闇”がつかないだけ」
「なるほど。せっかくですので、ここにいる種族の上位種族……進化先を教えていただけませんか?」

 どうやらヴェルデの学者魂に火をつけたようです。

「ええ。えっと、さっき言ったダークエルフは省くとして、ローザ様とローズの『闇妖精ダークフェアリー』は『月妖精ムーンフェアリー』か『死妖精デスフェアリー』。ミカエル様の『猫人族』は『猫又人ねこまたひと族』。
アイリス様の『水妖精ウンディーネ』は女性なら『妖精女王ティターニア』で男性なら『妖精王オベイロン』、それか男女どちらもなれる『死毒妖精ポイズンフェアリー』ね。ああ、『人族』も本当は『高位人族ハイ・ヒユーマン』になるの。どの種族でも、持ってる称号によっては、アリエルのように特殊な進化をする事があるのよ」

 ジジイも確実に進化してたでしょうから、『龍人族ドラゴニユート』の上位種、『古代エンシェント・龍人族ドラゴニユート』ですかね。あるいは……。

「『猫又人族』? 聞いた事ないね」
「進化以外では産まれませんから。尻尾が二本になって魔法への適性が妖精種に準じる程になります。あとは、どの種族もですが寿命も延びますね」
「それは魅力的だね。まあかなりハードル高いけど」
「妖精は二種類進化先があるみたいだけど、エルフやダークエルフは無いの?」
「ええ。そもそも妖精種は、存在が不安定な所があるんですよ。エルフやダークエルフは“世界樹の加護”を受けてますから、割と安定しているのですが。 それに、二種類といっても片方は闇落ちみたいなものです」

 精神的にヤバいか、瘴気や強力な呪いに侵されてるとなっちゃうんです。

「へ~。じゃ~、お母様とローズと違って、私の種族が進化したら属性が関係なくなるのは~?」
「『水妖精』を含めた四元素の名を冠する妖精族と、闇と光の妖精族は系統が違うんです。詳しいことは省きますが、『水妖精』、『火妖精イフリート』、『風妖精シルフィ』、『土妖精ノーム』は『妖精王』、或いは『妖精女王』の眷属で、自然の調和を図るために生み出された存在です。ですから、進化したら親元の王になります。元の種族で得意な属性は変わりますがね。対して、光と闇はそれぞれ、太陽の神と月の神の眷属で、世界そのもののバランスをとっています。両者共にその役割上、自然や世界との境界線が曖昧なのが、存在が不安定な理由ですね」
「では、エルフとダークエルフは本来は森との境界線が曖昧なのか?」
「ええ、そうなります。あ、妖精は精霊が受肉して発生した種族なので、意識して訓練すれば〈精霊化〉ができるようになりますよ?」

 かなり難しいんですがね。

「じゃあ、私が特殊な進化? をした原因の称号って分かりますか? 必要なら開示しますが……」
「そこまでしなくていいわ。【上位迷宮攻略者】とか、そのまま【〇〇の英雄】とか、英雄系の称号をもってたらそれよ」

 一定ランクの、とはつきますが。下位や中位の迷宮攻略ではダメということです。一定ランク以下でも、ものによって進化先のランクに影響があります。

「【竜殺しドラゴンキラー】、でしょうか?」
「それね」

 うわー、まさに英雄! って感じの来ましたよ。
 取得条件は中位以上の竜種を位ごとに決められた一定数、一定以上の貢献度を稼いだうえでの討伐です。【英雄種】になったのも納得のランクですよ!

「ところで、グラシア姉妹の進化先はなんですか?」

 とはアリエルの質問です。

「私は、種族名は変わらないけど『始祖』になるわね。ブランは、『王狼人族ロイヤルウルフメン』のどれかね」

 “黒狼の民”なら多分、『冥王狼人族』でしょうが、【神狼の加護】が何かしそうなんですよねー。
 私の加護は……どうでしょう?
 『始祖』の時点で、『鬼神の系譜』と同じく【調停者】という管理者さん達に近い、謂わば“世界のバランスを保つもの”になります。実際の神ではありませんが、その雑用係くらいの上位存在になるので、加護が何かするなら二回目の進化だと思うんですよね。
 まあそこまでは言わないでおきましょう。
 ついでに言えば、普通の『吸血族』が進化したら『真祖』ですね。
 
「いくつかあるのか?」
「ええ、一部の獣人種族は、民族によって進化先が変わります。なんでかしら?」

 ほんとに。調べたらわかりますが。

「あとは、そうね。次はレベル MAXで進化するから。しないこともあるけど」
「ま、まだするのですか……」
「二回目の方は個人差が激しいのだけど、そもそもそこまで至る人は早々いないでしょうね」
「そうよね~」
「スキルとか、才能とか、色々絡むわ。妖精種なら寿命のない半精霊になることが多いから、ずっと王様やれますよ?」

 冗談めかして王太子の『闇森妖精』に言ってみます。

「流石に永遠は勘弁してほしいがな」

 そう言ってジュリウス殿下が肩を竦めれば、他の王族の方々も、尤もだとばかりに笑います。
 本当に権力欲がないんですね。

 最後に、〈限界突破〉と〈制魂解放〉、特に〈制魂解放〉はかなりの危険を伴うのでむやみに“進化”を目指さないようにと釘を刺してから王城を後にしました。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...