114 / 126
最終章 君の為に
第114話 革命の襲撃
しおりを挟む
㉑
その後何事も無いままに雲に近づいていき、大火山へ入ってから二度目の日の出を見た。
未だ薄暗い中、翔たち四人は下位の騎士から配られたスープに口をつける。地面から漂う熱気とスープの熱さに翔が顔を顰めていると、不意に覚えのある気配を感じた。
同じタイミングで察知した陽菜と翔が一気にスープを飲み干す。一瞬だけ遅れて寧音と煉二も倣う間に、二人は武器を握って立ち上がった。
「敵襲! 山頂方面!」
魔法も併用した叫びは騎士団の夜営地全体に広がり、その先、今まさに機を窺っていたであろう革命軍にまで届く。自分たちは気付いたぞと、奇襲は出来ないのだと、そのまま引き返してくれる事を願った絶叫は、しかし虚しい響きとなった。
「放て!!」
ルキリエナを襲撃した時に先行組の指揮をとっていた幹部の声だ。
直後、飛来するのは魔力や気で強化された無数の矢。加えて多種多様な魔法の雨だ。
「防ぎますー!」
間延びした声と共に騎士団の頭上に展開された障壁がその全てを受け止める。障壁とぶつかった魔法が弾け、薄暮の空に星を作る。
「魔法部隊、詠唱開始! その他は弓を構えろ!」
カイルの指示で騎士たちは一斉に臨戦態勢に入った。己の〈ストレージ〉から出した弓や杖を敵のいる方向へ向ける。
「弓、放て!」
星の見えなくなるのと同時に矢が放たれた。数瞬前まで障壁に覆われていた空へ向けて放たれた矢たちは弧を描き、重力に従って革命軍に降り注ぐ。
「魔法撃て!」
号令と同時に革命軍を二重の障壁が覆った。その障壁に向けられたいくつもの杖から同じ数だけの魔法が撃ちだされる。
弧を描く矢と直線状に飛ぶ魔法は、殆ど同時に障壁へ突き刺さる。
つい先ほどの焼き直しとなるように思われたのは、ほんの数秒。ガラスの割れるような音と共に障壁が砕け散り、いくつも命の灯が消える。
「持ち替えろ! 突撃!」
革命軍側の混乱を座して見るようではグローリエル帝国の騎士団長は任せられない。
すぐさま各々得意な近接武器に持ち替え、盾を持った短鎗使いを先頭に駆け出す。翔たちの気付かない間に隊列を組んでいたらしい。
「俺たちも行こう!」
すぐに乱戦の様相を呈した戦場に、邪魔をしないよう万一に備えるだけだった四人も参戦する。一気に前線に躍り出るのが翔で、続く位置にいるのは煉二だ。そのやや後ろで陽菜が舞い、寧音は後方から支援する。
散々心を痛めていた翔も命を懸けた戦いとなれば切り替える。そう心と体に教え込まれた。それでも、極力苦しめないよう即死させられる部位を努めて狙う。
「翔、無理はするなよ!」
「分かってる!」
相変わらずよく見ている友に苦笑いを禁じ得ない。その煉二は杖術を主にして捌き、魔法で仕留めるという戦い方をしていた。明らかに魔法使い然とした煉二がこれなのだから、相手どる革命軍の兵士たちからすれば混乱するなという方が難しい。
「煉二が前へ出た時はどうしたものかと思ったのだが、なるほど、闘神様に鍛えられただけはある」
「ええ、まあ……。ははは……」
翔の近くで剛剣を振るっていたカイルが感心したように言った。聖国に攻め込む前の修業時代を思いだして、若干視線が遠くなる。
――思い返すとアルジェさんとの模擬戦が一番死にそうだったかもしれない……。
何度も切られた右腕に、幾度となく感じた覚えのある悪寒。それに従って剣を振るうと、驚く様な声が彼の耳に届いた。相手からすれば完全な奇襲だった筈だが、経験を元に無意識の判断を下す〈直感〉の目をかいくぐる事は出来なかったらしい。
再び遠くなりかけた視線を強引に戻し、たった今切りかかってきた、何となく見覚えのある女の首を跳ね飛ばした。
その後何事も無いままに雲に近づいていき、大火山へ入ってから二度目の日の出を見た。
未だ薄暗い中、翔たち四人は下位の騎士から配られたスープに口をつける。地面から漂う熱気とスープの熱さに翔が顔を顰めていると、不意に覚えのある気配を感じた。
同じタイミングで察知した陽菜と翔が一気にスープを飲み干す。一瞬だけ遅れて寧音と煉二も倣う間に、二人は武器を握って立ち上がった。
「敵襲! 山頂方面!」
魔法も併用した叫びは騎士団の夜営地全体に広がり、その先、今まさに機を窺っていたであろう革命軍にまで届く。自分たちは気付いたぞと、奇襲は出来ないのだと、そのまま引き返してくれる事を願った絶叫は、しかし虚しい響きとなった。
「放て!!」
ルキリエナを襲撃した時に先行組の指揮をとっていた幹部の声だ。
直後、飛来するのは魔力や気で強化された無数の矢。加えて多種多様な魔法の雨だ。
「防ぎますー!」
間延びした声と共に騎士団の頭上に展開された障壁がその全てを受け止める。障壁とぶつかった魔法が弾け、薄暮の空に星を作る。
「魔法部隊、詠唱開始! その他は弓を構えろ!」
カイルの指示で騎士たちは一斉に臨戦態勢に入った。己の〈ストレージ〉から出した弓や杖を敵のいる方向へ向ける。
「弓、放て!」
星の見えなくなるのと同時に矢が放たれた。数瞬前まで障壁に覆われていた空へ向けて放たれた矢たちは弧を描き、重力に従って革命軍に降り注ぐ。
「魔法撃て!」
号令と同時に革命軍を二重の障壁が覆った。その障壁に向けられたいくつもの杖から同じ数だけの魔法が撃ちだされる。
弧を描く矢と直線状に飛ぶ魔法は、殆ど同時に障壁へ突き刺さる。
つい先ほどの焼き直しとなるように思われたのは、ほんの数秒。ガラスの割れるような音と共に障壁が砕け散り、いくつも命の灯が消える。
「持ち替えろ! 突撃!」
革命軍側の混乱を座して見るようではグローリエル帝国の騎士団長は任せられない。
すぐさま各々得意な近接武器に持ち替え、盾を持った短鎗使いを先頭に駆け出す。翔たちの気付かない間に隊列を組んでいたらしい。
「俺たちも行こう!」
すぐに乱戦の様相を呈した戦場に、邪魔をしないよう万一に備えるだけだった四人も参戦する。一気に前線に躍り出るのが翔で、続く位置にいるのは煉二だ。そのやや後ろで陽菜が舞い、寧音は後方から支援する。
散々心を痛めていた翔も命を懸けた戦いとなれば切り替える。そう心と体に教え込まれた。それでも、極力苦しめないよう即死させられる部位を努めて狙う。
「翔、無理はするなよ!」
「分かってる!」
相変わらずよく見ている友に苦笑いを禁じ得ない。その煉二は杖術を主にして捌き、魔法で仕留めるという戦い方をしていた。明らかに魔法使い然とした煉二がこれなのだから、相手どる革命軍の兵士たちからすれば混乱するなという方が難しい。
「煉二が前へ出た時はどうしたものかと思ったのだが、なるほど、闘神様に鍛えられただけはある」
「ええ、まあ……。ははは……」
翔の近くで剛剣を振るっていたカイルが感心したように言った。聖国に攻め込む前の修業時代を思いだして、若干視線が遠くなる。
――思い返すとアルジェさんとの模擬戦が一番死にそうだったかもしれない……。
何度も切られた右腕に、幾度となく感じた覚えのある悪寒。それに従って剣を振るうと、驚く様な声が彼の耳に届いた。相手からすれば完全な奇襲だった筈だが、経験を元に無意識の判断を下す〈直感〉の目をかいくぐる事は出来なかったらしい。
再び遠くなりかけた視線を強引に戻し、たった今切りかかってきた、何となく見覚えのある女の首を跳ね飛ばした。
0
あなたにおすすめの小説
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる