116 / 126
最終章 君の為に
第116話 沈みゆく陽の下で
しおりを挟む
㉓
「しかし、あちらへ返ってしまえば〈鑑定〉はもう使えなくなるのか」
「アルジェさんの話だとそうだね。一部のスキルは使えるみたいだけど、〈鑑定〉とかはこの世界のシステムありきらしいし」
暫しの沈黙の後、煉二がしみじみと言った。前の話をこれ以上続けるつもりもなかったので、翔もその話題に乗る。
「成果が分かりやすくて良かったのだがな」
「まあ、煉二はあっちに戻っても同じ事してそうだけどね」
「そうですねー。煉二くん、反復練習とか昔から好きですしー?」
その結果が副生徒会長という役職である。動機が寧音への恋心というのが微笑ましいが、自己評価ほど良くない彼の地頭では、その為に並大抵ではない努力の量が必要だった。
「でも、確かにすぐに結果として見れるって意味じゃ、ほんと便利だよね。正直、アルジェさんの修行を最後まで疑わずに頑張れたのって、こうやって目に見えるからなのはあるし」
翔は久しぶりに自身を〈鑑定〉して、平均よりも多いスキルや称号を眺める。それだけで、これまでの努力が報われていることを実感できるのだ。
その中に、不可思議な表示があった。
――うん?
ユニークギフトである〈心果一如〉に『?』の記号が付いていたのだ。
「翔、どうかしたか?」
「……いや、ちょっとね」
思い当たる節はあった。
「なんですかー?」
陽菜と寧音も気になったらしく、彼に視線を向ける。もう自分たちのテントの前まで来ていたので、説明をする前に一旦中へ入った。
「あー、もしかしたら翔君のスキルってー、ナーフ、弱体化されてたのかもしれませんねー?」
落ち着いた上で心当たりを含めて説明をし、自分を〈鑑定〉させた後の寧音の台詞だ。
「ゲームでも強すぎるスキルが弱体化される事ってあるんですけどー、そうなる理由の一つに身体の成長が追い付いて無いからっていうのもあるんですよー」
運命にも干渉するようなスキルですからねー、と寧音は続ける。たしかに、まったく鍛えられていないただの人間の身体や魂には過ぎた力かもしれないと翔は納得する。
「それに、前からちょっと気になってた事があるんですよー。私たちのスキル名ってー、皆『神』とか『星』とか『天』とかー、凄そうな文字が付いてるんですよー、他のクラスメイトも含めてですー」
「全部神様を意味する事がある言葉だね。言われてみれば確かに、翔君の以外は全部そういう言葉が付いてた気がするよ」
陽菜も寧音もクラスメイトとの関わりは翔よりも多く、寧音に至ってはその人望もあって全員のスキルを把握していてもおかしくない。ならば間違いないのだろうと翔は自身のスキル欄を見る。
「じゃあ、俺の身体と魂が〈心果一如〉本来の性能に耐えれるようになったって事でいいのかな?」
「そうですねー。まあ、戦力アップですから気にしなくていいんじゃないですかー? 思った以上の出力が出ることがあるっていうのは問題かもしれませんがー」
運命に干渉する力もあるのだ。出力は不安定だとしても、それで結果的に良くなることもあるかもしれない。実際、演説をするタブルの護衛をした時がそのパターンだった。直前の[風爆]の威力が上がっておらず、予定通りの位置に着地していたなら、[雷矢]でもう少し被害が出ていただろう。
「ありがとう。気にしないでおくよ」
「はいー。そうそう、さっきちらっと聞こえたんですがー、誰かが何か狩ってきたみたいなんですよー。盛り上がり方的にご馳走かもですしー、それ食べてから出発しませんー?」
目を輝かせる彼女に苦笑いする。しかし反対する理由もないので、頷いて噂のご馳走を待った。その甲斐は確かにあって、翔達は美食に舌を楽しませるのだった。
「しかし、あちらへ返ってしまえば〈鑑定〉はもう使えなくなるのか」
「アルジェさんの話だとそうだね。一部のスキルは使えるみたいだけど、〈鑑定〉とかはこの世界のシステムありきらしいし」
暫しの沈黙の後、煉二がしみじみと言った。前の話をこれ以上続けるつもりもなかったので、翔もその話題に乗る。
「成果が分かりやすくて良かったのだがな」
「まあ、煉二はあっちに戻っても同じ事してそうだけどね」
「そうですねー。煉二くん、反復練習とか昔から好きですしー?」
その結果が副生徒会長という役職である。動機が寧音への恋心というのが微笑ましいが、自己評価ほど良くない彼の地頭では、その為に並大抵ではない努力の量が必要だった。
「でも、確かにすぐに結果として見れるって意味じゃ、ほんと便利だよね。正直、アルジェさんの修行を最後まで疑わずに頑張れたのって、こうやって目に見えるからなのはあるし」
翔は久しぶりに自身を〈鑑定〉して、平均よりも多いスキルや称号を眺める。それだけで、これまでの努力が報われていることを実感できるのだ。
その中に、不可思議な表示があった。
――うん?
ユニークギフトである〈心果一如〉に『?』の記号が付いていたのだ。
「翔、どうかしたか?」
「……いや、ちょっとね」
思い当たる節はあった。
「なんですかー?」
陽菜と寧音も気になったらしく、彼に視線を向ける。もう自分たちのテントの前まで来ていたので、説明をする前に一旦中へ入った。
「あー、もしかしたら翔君のスキルってー、ナーフ、弱体化されてたのかもしれませんねー?」
落ち着いた上で心当たりを含めて説明をし、自分を〈鑑定〉させた後の寧音の台詞だ。
「ゲームでも強すぎるスキルが弱体化される事ってあるんですけどー、そうなる理由の一つに身体の成長が追い付いて無いからっていうのもあるんですよー」
運命にも干渉するようなスキルですからねー、と寧音は続ける。たしかに、まったく鍛えられていないただの人間の身体や魂には過ぎた力かもしれないと翔は納得する。
「それに、前からちょっと気になってた事があるんですよー。私たちのスキル名ってー、皆『神』とか『星』とか『天』とかー、凄そうな文字が付いてるんですよー、他のクラスメイトも含めてですー」
「全部神様を意味する事がある言葉だね。言われてみれば確かに、翔君の以外は全部そういう言葉が付いてた気がするよ」
陽菜も寧音もクラスメイトとの関わりは翔よりも多く、寧音に至ってはその人望もあって全員のスキルを把握していてもおかしくない。ならば間違いないのだろうと翔は自身のスキル欄を見る。
「じゃあ、俺の身体と魂が〈心果一如〉本来の性能に耐えれるようになったって事でいいのかな?」
「そうですねー。まあ、戦力アップですから気にしなくていいんじゃないですかー? 思った以上の出力が出ることがあるっていうのは問題かもしれませんがー」
運命に干渉する力もあるのだ。出力は不安定だとしても、それで結果的に良くなることもあるかもしれない。実際、演説をするタブルの護衛をした時がそのパターンだった。直前の[風爆]の威力が上がっておらず、予定通りの位置に着地していたなら、[雷矢]でもう少し被害が出ていただろう。
「ありがとう。気にしないでおくよ」
「はいー。そうそう、さっきちらっと聞こえたんですがー、誰かが何か狩ってきたみたいなんですよー。盛り上がり方的にご馳走かもですしー、それ食べてから出発しませんー?」
目を輝かせる彼女に苦笑いする。しかし反対する理由もないので、頷いて噂のご馳走を待った。その甲斐は確かにあって、翔達は美食に舌を楽しませるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる