拳闘哀歌

人生真っ逆さま

文字の大きさ
9 / 40

フォゲット・ミーノット

しおりを挟む
「フォーゲット・ミーノット、準備は出来ているのか?」

「はい、出来てます」

※※※

何万人入るかも知れない、このスタジアムで歌うんだ。
―――でも、そんなに来てるのかな、控え室からじゃ、確認出来ないし、いや駄目だ、お客様の数じゃない、例え、0人でも歌わなきゃ、私は何たって、数々の歌手の憧れの地アドマイアスタジアムで歌うんだ。
ここで、怖じ気ついたら、駄目だよね。
お客様にだって失礼だし、何よりここまで、準備してくれたみんなにも顔向け出来ないよ。
ここまで来て何を照れてるだろう////、私ったら本当に歌えるのかしら。
そんなこと考えてたら控え室のドアからノックが…開けたらマネージャーがそこにいる。

「大丈夫?顔真っ赤じゃない、いつも言ってるじゃない、客の事は犬なり猫だと思えって」

私、そんな器用な事出来ないんだよ、マネージャー、私はいつも人の前では、こうやって緊張して顔真っ赤で、歌ってることは貴女だって分かってることじゃない~、もーー、私
だって好きでこんなんになってる、訳じゃないのに。

「あらあら、顔にでてるわね」

「そんな事…あります、でもローレルだって緊張してるんじゃない、こんな大舞台初めてでしょ」

ローレルはマネージャーだ、今までだって私を仕事のスケジュール管理や心理面でも、支えてもらえたけれど、こんな大仕事は彼女だって初めての筈だ、

「あんたを信頼してるからよ、私の心配なんて杞憂だわ」

「うん、そうだね…そうだよね」

よーし、やってやるんだ、私でも出来る事を、今、証明してみせるんだ。
トントンとノックが鳴ると、鋭い目の会場の支配人が私に「フォゲット・ミーノット準備は出来ているのか?」って、言うと、私は、「はい、出来てます!」と返事をした。
会場までの関係者通路を一歩一歩歩く度、胸の鼓動が高鳴る、これは出来る時の高鳴りだと、不思議と過度な緊張は和らいでいった。
そして、会場の舞台に着くと数えきれない、お客様が、私の歌を聴きに来てくれてる。
場内アナウンスが『只今より、フォゲット・ミーノットよりが、歌われます、会場の皆様、盛大な拍手を以てご覧ください』
私は拍手の中、一礼をし、マイクの前に立った。

「それでは…歌います、あの街へ…」

お腹から肺を通して、ビブラートを効かせてた音程が、私の口から奏でる。
必死に、身体中で歌うように、音を出すとお客様は、聴き入ってくれてるようだ。
まだ、まだ、まだだ、こんなものが私の全力じゃない、私は故郷を思い出して歌っていた。
死んだお父さんの事、お母さんの事、孤児院に行って別れた兄の事、街での寂しさは、孤児院で歌ったこの歌で紛らせていたなぁ。
最後まで、歌い切ると、会場からは盛大な拍手が迎えてくれた。
最初から最後まで、こんなに迎えてくれる場所が、この場所であり、私、フォゲット・ミーノットなんだって実感できた。
最後に一礼し、会場をあとにした。
控室に戻ると、マネージャーのローレルが抱き着いてきた。

「ミーノット、貴女、最高よ、想像以上だわ、みんな大絶賛よ」

「そんな大袈裟だって…」

「そんな小柄な身体で、どこからあんな綺麗で声量のある声を出せるの、本当に不思議」

私は余り褒め慣れてない、だから顔を赤く染めて照れ隠しに、わーー! って叫んじゃった。

「どうしたの!?」

「照れ隠し」

「もう、驚かせないでよ」

ローレルは、嬉し泣きを拭いなぎながら、私に言う。

「さあ、帰りましょ、車も用意してるわ」

「うん、そうだね」

私達は、用意されてる車へ向かうと、外は、月明かりだけが、私達を照らしていた。
何だか、ロマンチックだなーって思っていたら、キャーー!?とマネージャーの悲鳴が。
よく見ると、周りを男達に囲まれていた。

「あんた達、警備の人を呼ぶわよ」

「あん、それなら、そこで猿轡にしておねんねしてるぜ」

「目的は、お金?それなら…」

私は懐から財布を出し、男達の前に投げた。

「違う、違う、用は貴女だよ、フォゲット・ミーノットさん」

どうして、私に…彼らに犯行を掻き立てる要素なんて…身代金目当てだったとしても、うちの事務所なんて弱小でたかが知れてるのに。
「分かったわ、マネージャーを離して貴方達の言う通りにするわ」

「よしよし、物分りのいいお嬢様で助かるわ、おおーっとそう睨むなって、その端正な顔が台無しだぜ」

悔しい、こんな所で、訳の分からない連中の好きにされるなんて。
私が、手を後ろから縄で縛られて、連中に連れていかれそうになった時…妙な事が起きた。
男達が、次々に倒れていくのだ。
私を捕えていた男もその人に向かうと、あっと言う間に、地面にひれ伏せた。

「がはっ!?」

「夜中に、まさか女の子を連れ去ろうとする馬鹿がいるとはな、ズィクタトリアも治安が悪いじゃねーの」

、こっちは大丈夫だぜ」

「よし、タケシよくやった、おっとお嬢ちゃん、縄で縛られているな、今、解いてやる」

「うん…」

縄から開放された私は、すぐにマネージャーに駆け寄った。

「ローレル大丈夫?」

「私は大丈夫よ、貴女も傷が無さそうで安心したわ、不幸中の幸いだわ」

あっ、あの人にお礼を…言おうとしたら、もういなかった。
まるで、涼風のように私達を助けてくれたあの人は一体…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...