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第二章 宿命
決められた結婚③
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「雅史が亡くなったあと、修史くんが社長に就任してな。雅史の後を継いでかなり大変だったと思うが、この一年本当によく頑張っているようだ。特に実直で純粋なところは雅史にそっくりだ。冷静に判断しようとするところは若い頃の雅史よりも修史くんの方が上だがな」
何か思い出しているのか、目を細めて嬉しそうに微笑んでいる。
えっ、どういうこと?
お父さんとあの人って仲がいいの?
てっきり私たちのことを嫌っていると思っていたけれど、こんな風に父が彼のことを好意的に話しているところを見ると、どうやら私の勘違いだったようだ。
もしかしてあれは私たちじゃなくて、他の人を睨んでたのかな?
首を傾げつつ思い出そうとしてみたけれど、一年前のことなので、あの葬儀で他に誰がいたなんて全く覚えていない。なんとなくスッキリしない感じもするけれど、それよりも今はこの結婚の話を白紙にすることが最優先だ。私は改めて父に真剣な視線を向けた。
「それでどうして私がそんな大企業の社長と結婚しなきゃいけないの? これって政略結婚ってことでしょ? IGS製薬ぐらいの大企業だったら、私じゃなくても政略結婚の相手なら他にいっぱいいると思うけど」
そう、IGS製薬ほどの大手であれば、何もうちみたいな小さな会社と利害関係を結ばなくても、他にもっといい縁談はいくらでもあるだろうし、政略結婚の相手には全く困らないはずだ。そんな私の反応を予測していたのか、父は言いづらそうに口を開いた。
「この結婚は雅史と約束していたことなんだ。いつかお互いの子供たちが大きくなったら結婚させようとな」
「そんなのお父さんたちが勝手に決めただけのことじゃない。ただの口約束でしょ? 契約書があるわけじゃあるまいし……。それに前の五十嵐社長はもう亡くなったんだし、そんな律儀に約束を守る必要ないと思うよ? それより今になってどうして結婚の話が出てくるのよ?」
勝手すぎる理由に納得できなくてどうにか阻止しようと反論していると、今度は驚くどころか全く予想もしていなかったことを口にした。
「実はな、将来的に藤城バイオテックは修史くんに任せたいと思っている」
個室ではあるけれど周りに聞かれないよう声量を落とした父の顔をじっと見つめる。
私も自分の声が漏れないように両手で口元を押さえた。
「そ、それってどういうこと? 藤城バイオテックを任せるって……」
相手は大企業のIGS製薬の社長だ。
うちを継いでくれる相手には申し分のない人だけど、その社長がわざわざIGS製薬を退職してうちの会社にやってくるのだろうか?
いや、一般的に見て、IGS製薬よりも小さなうちの会社で社長になるなんてどう考えてもあり得ない。
だとしたら、他に考えられることとすれば──。
もしかして、IGS製薬の傘下に入るとか?
もしくは、会社をIGS製薬に売却するつもり……とか?
それを確認しようと口を開きかけたとき、私は父が発した言葉に目を見開いたまま呆然としてしまった。
「彩花、この結婚は既に修史くんも了承済みだからな」
はっ?
この政略結婚に了承済み?
本当に藤城バイオテックの社長をするってこと?
初めて耳にする情報に思考が追いついていかず、言葉が出てこない。父の笑顔の裏にある無言の圧力がひしひしと伝わってきて、目の前が真っ暗になる。
ちょっと待って、どういうこと?
「おそらく結婚式は年明けになるだろう。それでな、近いうちに一度修史くんと会ってもらいたいんだ。急で悪いんだが……」
父の話が全く頭に入ってこない。
警鐘を鳴らすかのように心臓が忙しなく脈を打ち、完全に思考が停止してしまった。
もしかして……。
この結婚はもう拒否できないって……こと?
心の声の問いに答えるように、父が少し申し訳なさそうな表情で頷いている。
これはもう決定事項であり、どれだけ阻止しようとしても逃れられない現実なんだと悟った私は、これから自分がどうなるのかと不安とショックでいっぱいになっていた。
何か思い出しているのか、目を細めて嬉しそうに微笑んでいる。
えっ、どういうこと?
お父さんとあの人って仲がいいの?
てっきり私たちのことを嫌っていると思っていたけれど、こんな風に父が彼のことを好意的に話しているところを見ると、どうやら私の勘違いだったようだ。
もしかしてあれは私たちじゃなくて、他の人を睨んでたのかな?
首を傾げつつ思い出そうとしてみたけれど、一年前のことなので、あの葬儀で他に誰がいたなんて全く覚えていない。なんとなくスッキリしない感じもするけれど、それよりも今はこの結婚の話を白紙にすることが最優先だ。私は改めて父に真剣な視線を向けた。
「それでどうして私がそんな大企業の社長と結婚しなきゃいけないの? これって政略結婚ってことでしょ? IGS製薬ぐらいの大企業だったら、私じゃなくても政略結婚の相手なら他にいっぱいいると思うけど」
そう、IGS製薬ほどの大手であれば、何もうちみたいな小さな会社と利害関係を結ばなくても、他にもっといい縁談はいくらでもあるだろうし、政略結婚の相手には全く困らないはずだ。そんな私の反応を予測していたのか、父は言いづらそうに口を開いた。
「この結婚は雅史と約束していたことなんだ。いつかお互いの子供たちが大きくなったら結婚させようとな」
「そんなのお父さんたちが勝手に決めただけのことじゃない。ただの口約束でしょ? 契約書があるわけじゃあるまいし……。それに前の五十嵐社長はもう亡くなったんだし、そんな律儀に約束を守る必要ないと思うよ? それより今になってどうして結婚の話が出てくるのよ?」
勝手すぎる理由に納得できなくてどうにか阻止しようと反論していると、今度は驚くどころか全く予想もしていなかったことを口にした。
「実はな、将来的に藤城バイオテックは修史くんに任せたいと思っている」
個室ではあるけれど周りに聞かれないよう声量を落とした父の顔をじっと見つめる。
私も自分の声が漏れないように両手で口元を押さえた。
「そ、それってどういうこと? 藤城バイオテックを任せるって……」
相手は大企業のIGS製薬の社長だ。
うちを継いでくれる相手には申し分のない人だけど、その社長がわざわざIGS製薬を退職してうちの会社にやってくるのだろうか?
いや、一般的に見て、IGS製薬よりも小さなうちの会社で社長になるなんてどう考えてもあり得ない。
だとしたら、他に考えられることとすれば──。
もしかして、IGS製薬の傘下に入るとか?
もしくは、会社をIGS製薬に売却するつもり……とか?
それを確認しようと口を開きかけたとき、私は父が発した言葉に目を見開いたまま呆然としてしまった。
「彩花、この結婚は既に修史くんも了承済みだからな」
はっ?
この政略結婚に了承済み?
本当に藤城バイオテックの社長をするってこと?
初めて耳にする情報に思考が追いついていかず、言葉が出てこない。父の笑顔の裏にある無言の圧力がひしひしと伝わってきて、目の前が真っ暗になる。
ちょっと待って、どういうこと?
「おそらく結婚式は年明けになるだろう。それでな、近いうちに一度修史くんと会ってもらいたいんだ。急で悪いんだが……」
父の話が全く頭に入ってこない。
警鐘を鳴らすかのように心臓が忙しなく脈を打ち、完全に思考が停止してしまった。
もしかして……。
この結婚はもう拒否できないって……こと?
心の声の問いに答えるように、父が少し申し訳なさそうな表情で頷いている。
これはもう決定事項であり、どれだけ阻止しようとしても逃れられない現実なんだと悟った私は、これから自分がどうなるのかと不安とショックでいっぱいになっていた。
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