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第三章 怨恨
忘れ得ぬ名前(修史side)③
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「それが断れそうにないんだ……」
「断れそうにないとはどういうことだ?」
「先方はお前が忙しいだろうからこっちのスケジュールに合わせるそうだ。それと……面会場所は会社ではなくて、別の場所を設けたいと言っている。会食での面会を希望しているようだ」
会食での面会──?と眉根を寄せた俺に、真壁は「ああ」と頷いた。
「父の一周忌の挨拶ならここに来て言えばいいことだろ? 何で俺がわざわざ藤城と会食しなきゃいけないんだよ?」
「それは俺もわからない。だがこれは俺の推測なんだが、藤城社長はお前に謝罪したいんじゃないのか? 親友だった五十嵐前社長を陰で裏切っていたわけだろ? 向こうもまさかお前のお父さんがこんなに早く亡くなるとは思っていなかったんだろう。裏切りが直接の原因ではないにしろ、少しは責任を感じてるとか……」
「今さら責任を感じてる? そんなことあるわけないだろ!」
あり得ない──と吐き捨てるように言い放った俺に、真壁は珍しく困ったような顔を向けてきた。
「じゃあどうするんだ? 断るならそれなりの理由が必要だが……。こっちの都合に合わせると言われている以上、アポイントを先延ばしにすることぐらいしかできないぞ? 許せないとはいえ、相手は藤城バイオテックの社長だからな」
真壁の言う通り、今回断ったとしてもまたアポイントの依頼は入ってくるはずだ。
個人的な理由から業務に影響を与えるわけにはいかないし、それに相手は同業者であり、藤城バイオテックの社長だ。会社の代表として立つ以上、ここはそれなりの対応をしておくべきだろう。俺は気が進まないながらも腹を決め、重い息を吐いた。
「……わかった。顔も見たくない相手だが仕方ないな。じゃあ亮太、来週どこかでそのアポイントを入れてくれないか。挨拶か謝罪か知らないが、とりあえず裏切った言い訳くらいは聞いてやるよ」
「ほんとか! あぁーよかった……。正直、お前にこの話をするのも気が重かったんだが、絶対に断るって言われたら、向こうに理由をどう伝えようかって悩んでたんだ。そう言ってくれて本当に助かったよ」
真壁は心底ほっとしたように大きく息を吐くと、「やっと安心して食える!」と好物のてりたまサンドにかぶりついた。そして瞬く間に食べ終わると、持ってきた紙袋に食べ終わったゴミを入れ、立ち上がった。
「じゃあ俺はこれから先方に連絡してアポイントの日程を決めるよ。確定したらすぐにお前に伝えるから」
「わかった。悪いな」
きっと俺の気が変わらないうちに日程を決めてしまいたいのだろう。早くこの部屋を出て行こうとしているのが手に取るようにわかる。そんな真壁がドアを開けようとしてふと立ち止まった。
「あっ、修史、そういえば午前中に美琴さんから連絡があったぞ」
「美琴からお前に?」
そう口にしながら、スマホに美琴からメッセージが届いていたことを思い出す。
先日から返信をしようと思いつつ、忙しさに紛れてつい後回しにしてしまっていた。
「ああ。お前と連絡がつかないからスケジュールを教えてほしいって言われたけど、会議が続いているから連絡できないんだろうって濁しておいたから、話を合わせておいてくれよ?」
「ああ、わかった。連絡しておく」
真壁は何か言いたげな表情で俺を見ていたが、何も口にすることなく、軽く右手をあげて部屋を出ていった。
再び一人になった俺は、ポケットからスマホを取り出して美琴のメッセージを開くと、忙しくて連絡ができなかった詫びと今週末なら時間が取れそうだと返信をして、スマホを机の上に置いた。そしてそのまま椅子に背中を預けると、脳裏にちらつく男の顔を消去するように、静かに目を閉じた。
「断れそうにないとはどういうことだ?」
「先方はお前が忙しいだろうからこっちのスケジュールに合わせるそうだ。それと……面会場所は会社ではなくて、別の場所を設けたいと言っている。会食での面会を希望しているようだ」
会食での面会──?と眉根を寄せた俺に、真壁は「ああ」と頷いた。
「父の一周忌の挨拶ならここに来て言えばいいことだろ? 何で俺がわざわざ藤城と会食しなきゃいけないんだよ?」
「それは俺もわからない。だがこれは俺の推測なんだが、藤城社長はお前に謝罪したいんじゃないのか? 親友だった五十嵐前社長を陰で裏切っていたわけだろ? 向こうもまさかお前のお父さんがこんなに早く亡くなるとは思っていなかったんだろう。裏切りが直接の原因ではないにしろ、少しは責任を感じてるとか……」
「今さら責任を感じてる? そんなことあるわけないだろ!」
あり得ない──と吐き捨てるように言い放った俺に、真壁は珍しく困ったような顔を向けてきた。
「じゃあどうするんだ? 断るならそれなりの理由が必要だが……。こっちの都合に合わせると言われている以上、アポイントを先延ばしにすることぐらいしかできないぞ? 許せないとはいえ、相手は藤城バイオテックの社長だからな」
真壁の言う通り、今回断ったとしてもまたアポイントの依頼は入ってくるはずだ。
個人的な理由から業務に影響を与えるわけにはいかないし、それに相手は同業者であり、藤城バイオテックの社長だ。会社の代表として立つ以上、ここはそれなりの対応をしておくべきだろう。俺は気が進まないながらも腹を決め、重い息を吐いた。
「……わかった。顔も見たくない相手だが仕方ないな。じゃあ亮太、来週どこかでそのアポイントを入れてくれないか。挨拶か謝罪か知らないが、とりあえず裏切った言い訳くらいは聞いてやるよ」
「ほんとか! あぁーよかった……。正直、お前にこの話をするのも気が重かったんだが、絶対に断るって言われたら、向こうに理由をどう伝えようかって悩んでたんだ。そう言ってくれて本当に助かったよ」
真壁は心底ほっとしたように大きく息を吐くと、「やっと安心して食える!」と好物のてりたまサンドにかぶりついた。そして瞬く間に食べ終わると、持ってきた紙袋に食べ終わったゴミを入れ、立ち上がった。
「じゃあ俺はこれから先方に連絡してアポイントの日程を決めるよ。確定したらすぐにお前に伝えるから」
「わかった。悪いな」
きっと俺の気が変わらないうちに日程を決めてしまいたいのだろう。早くこの部屋を出て行こうとしているのが手に取るようにわかる。そんな真壁がドアを開けようとしてふと立ち止まった。
「あっ、修史、そういえば午前中に美琴さんから連絡があったぞ」
「美琴からお前に?」
そう口にしながら、スマホに美琴からメッセージが届いていたことを思い出す。
先日から返信をしようと思いつつ、忙しさに紛れてつい後回しにしてしまっていた。
「ああ。お前と連絡がつかないからスケジュールを教えてほしいって言われたけど、会議が続いているから連絡できないんだろうって濁しておいたから、話を合わせておいてくれよ?」
「ああ、わかった。連絡しておく」
真壁は何か言いたげな表情で俺を見ていたが、何も口にすることなく、軽く右手をあげて部屋を出ていった。
再び一人になった俺は、ポケットからスマホを取り出して美琴のメッセージを開くと、忙しくて連絡ができなかった詫びと今週末なら時間が取れそうだと返信をして、スマホを机の上に置いた。そしてそのまま椅子に背中を預けると、脳裏にちらつく男の顔を消去するように、静かに目を閉じた。
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