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第十四章 微熱
揺れる想い②
それは、仕事が終わって紗絵が帰り際に、『結婚祝い』としてくれたプレゼントが発端だった。
「彩花、遅くなったけど、結婚のお祝いのプレゼントを買ったの。何にしたらいいかずっと迷っちゃって……。それで遅くなっちゃった。ごめんね」
そう言って、紙袋に入ったプレゼントを渡してくれた。
中を見ると、赤いリボンでラッピングされた、綺麗な白い箱が入っている。
「わぁー! ありがとう。もらっていいの? なんだか気を遣わせちゃってごめんね」
「そんなことないって。だって、大好きな彩花が結婚したんだもん。プレゼントくらい贈りたいでしょ! でも……開けるのは帰ってからにしてね!」
なにやらとっても嬉しそうな顔をして、私に微笑んでいる。私が喜びそうなプレゼントを、選んでくれたのだろうか。
「ここで開けない方がいいの?」
「そうよ。中身は帰ってからの、お・た・の・し・み! あっ、五十嵐社長と一緒に開けてもいいよ!」
紗絵はそう言って、笑顔で「また明日ね!」と手を振って帰っていった。
家に帰った私は、食事とお風呂を済ませたあと、リビングでそのプレゼントを開けてみることにした。
修史さんは接待なので、帰ってくるまでまだ時間がある。
紗絵は、修史さんと一緒に開けてもいいなんて言っていたけれど、そんな風に一緒にプレゼントを開けるほど、親しくなっているわけじゃない。
そう思って開けてみたのだけれど──。
中身を見て、私はその箱を持ったまま、目を瞠ってしまった。
それはなんと、女性の私でもドキドキして恥ずかしくなるくらい、華やかで妖艶な下着の上下セットだった。
しかも二つもあり、一つは華やかな花の刺繍の淡いピンクの下着で、もう一つは、花の刺繍にネイビーとブラックを合わせた妖艶な大人の下着だった。
一緒にメッセージカードも添えられていて、「彩花、これで旦那さまと楽しんでね!」なんて書いてある。
「もう、紗絵! こんなの着られるわけないでしょー!」
ブラジャーも妖艶すぎてびっくりしてしまうけど、ショーツなんて両サイドが紐になっているのだ。こんな大人の下着、今まで身に着けたことがない。
修史さんがいなくて本当によかった──。
ひとりでいることに安堵しながら、生地が少ししかないショーツを手に取る。
果たして、このショーツできちんと隠すことができるのだろうかと考えていると、いきなりリビングのドアが開き、なんと修史さんが入ってきた。
「えっ……どうして……」
今日のスケジュールには『接待』だと書いてあったのに、どうしてこんな時間に帰って来るのだろう。
理由がわからなすぎて、呆然としてしまう。
しかも、私は今、目を覆いたくなるような、妖艶な下着を手にしているのだ。
こんな姿を見られてしまうなんて──。
修史さんはこんな私を見てどう思うのだろう。
いやらしいことを考えている女性だと、そう思われてしまうのだろうか。恥ずかしさと混乱で、どうしたらいいのかわからなくなる。
気づいたら、ぽろぽろと涙が溢れ出していた。
涙が頬を伝い、パジャマに染みを作っていく。
一度でも男性と付き合った経験があるなら、すぐに素知らぬふりをして隠したり、「紗絵から結婚祝いのプレゼントにもらったの」と、普通に対応できたかもしれない。
でも、私には恋愛に全く耐性がないのだ。
せっかく修史さんと少しずつ打ち解けてきたというのに、軽蔑されてしまうのが怖くて堪らない。
「どうしたんだ、彩花。なんで泣いているんだ?」
「嫌だ……見ないで……。見ないで……」
「何があったんだ? 彩花、どうしたんだ?」
修史さんが鞄を置き、私の顔を覗き込んでくる。
私は顔を見られないように、必死で抵抗した。
「見ないでって言ってるのに……。いやっ……見ないで……」
溢れる涙を止めることができず、この場から逃げることもできず、ただ顔を隠して「見ないで」と口にすることしかできない。すると、修史さんが両腕で、私の身体を包み込んだ。
「わかった。何も見てない。何も見てないから。だから安心しろ、彩花」
まるで、私の不安な気持ちを取り除こうとしてくれるかのように、視界を塞ぎ、自分の胸に私の顔を抱き寄せ、ぎゅっと包み込む。
初めて男性に抱きしめられた緊張と、好意を寄せている修史さんに抱きしめられているという現実、そして下着を見られたかもしれない恥ずかしさで、顔を上げることができない。
それに──。
修史さんの体温と、ふわりと漂う爽やかな香水の匂い、そして大きな胸板が一気に伝わってきて、好きだという気持ちが溢れ出してしまう。
どのくらい時間が経っただろうか。
抱きしめられている頭上から、修史さんの声が聞こえてきた。
「彩花、遅くなったけど、結婚のお祝いのプレゼントを買ったの。何にしたらいいかずっと迷っちゃって……。それで遅くなっちゃった。ごめんね」
そう言って、紙袋に入ったプレゼントを渡してくれた。
中を見ると、赤いリボンでラッピングされた、綺麗な白い箱が入っている。
「わぁー! ありがとう。もらっていいの? なんだか気を遣わせちゃってごめんね」
「そんなことないって。だって、大好きな彩花が結婚したんだもん。プレゼントくらい贈りたいでしょ! でも……開けるのは帰ってからにしてね!」
なにやらとっても嬉しそうな顔をして、私に微笑んでいる。私が喜びそうなプレゼントを、選んでくれたのだろうか。
「ここで開けない方がいいの?」
「そうよ。中身は帰ってからの、お・た・の・し・み! あっ、五十嵐社長と一緒に開けてもいいよ!」
紗絵はそう言って、笑顔で「また明日ね!」と手を振って帰っていった。
家に帰った私は、食事とお風呂を済ませたあと、リビングでそのプレゼントを開けてみることにした。
修史さんは接待なので、帰ってくるまでまだ時間がある。
紗絵は、修史さんと一緒に開けてもいいなんて言っていたけれど、そんな風に一緒にプレゼントを開けるほど、親しくなっているわけじゃない。
そう思って開けてみたのだけれど──。
中身を見て、私はその箱を持ったまま、目を瞠ってしまった。
それはなんと、女性の私でもドキドキして恥ずかしくなるくらい、華やかで妖艶な下着の上下セットだった。
しかも二つもあり、一つは華やかな花の刺繍の淡いピンクの下着で、もう一つは、花の刺繍にネイビーとブラックを合わせた妖艶な大人の下着だった。
一緒にメッセージカードも添えられていて、「彩花、これで旦那さまと楽しんでね!」なんて書いてある。
「もう、紗絵! こんなの着られるわけないでしょー!」
ブラジャーも妖艶すぎてびっくりしてしまうけど、ショーツなんて両サイドが紐になっているのだ。こんな大人の下着、今まで身に着けたことがない。
修史さんがいなくて本当によかった──。
ひとりでいることに安堵しながら、生地が少ししかないショーツを手に取る。
果たして、このショーツできちんと隠すことができるのだろうかと考えていると、いきなりリビングのドアが開き、なんと修史さんが入ってきた。
「えっ……どうして……」
今日のスケジュールには『接待』だと書いてあったのに、どうしてこんな時間に帰って来るのだろう。
理由がわからなすぎて、呆然としてしまう。
しかも、私は今、目を覆いたくなるような、妖艶な下着を手にしているのだ。
こんな姿を見られてしまうなんて──。
修史さんはこんな私を見てどう思うのだろう。
いやらしいことを考えている女性だと、そう思われてしまうのだろうか。恥ずかしさと混乱で、どうしたらいいのかわからなくなる。
気づいたら、ぽろぽろと涙が溢れ出していた。
涙が頬を伝い、パジャマに染みを作っていく。
一度でも男性と付き合った経験があるなら、すぐに素知らぬふりをして隠したり、「紗絵から結婚祝いのプレゼントにもらったの」と、普通に対応できたかもしれない。
でも、私には恋愛に全く耐性がないのだ。
せっかく修史さんと少しずつ打ち解けてきたというのに、軽蔑されてしまうのが怖くて堪らない。
「どうしたんだ、彩花。なんで泣いているんだ?」
「嫌だ……見ないで……。見ないで……」
「何があったんだ? 彩花、どうしたんだ?」
修史さんが鞄を置き、私の顔を覗き込んでくる。
私は顔を見られないように、必死で抵抗した。
「見ないでって言ってるのに……。いやっ……見ないで……」
溢れる涙を止めることができず、この場から逃げることもできず、ただ顔を隠して「見ないで」と口にすることしかできない。すると、修史さんが両腕で、私の身体を包み込んだ。
「わかった。何も見てない。何も見てないから。だから安心しろ、彩花」
まるで、私の不安な気持ちを取り除こうとしてくれるかのように、視界を塞ぎ、自分の胸に私の顔を抱き寄せ、ぎゅっと包み込む。
初めて男性に抱きしめられた緊張と、好意を寄せている修史さんに抱きしめられているという現実、そして下着を見られたかもしれない恥ずかしさで、顔を上げることができない。
それに──。
修史さんの体温と、ふわりと漂う爽やかな香水の匂い、そして大きな胸板が一気に伝わってきて、好きだという気持ちが溢れ出してしまう。
どのくらい時間が経っただろうか。
抱きしめられている頭上から、修史さんの声が聞こえてきた。
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