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第3話「冒険者と次の街」
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『東の森。
最近、魔族の襲来の確認が出来ている。
初心者の冒険者では到底太刀打ち不可。
実績のある冒険者について行くが吉。
この先向かうべきはクレニア街に向かうが吉。
尚、魔族は少なくとも幹部側近級が2人~4人ほど。』
酒場の店員から貰った紙にはそう書いてあった。
魔族。
悪魔憑きとは違い元より〈殺す〉と言う意志により作られた化け物そのものである。
弱くとも山一つ分吹き飛ばす、と伝えられている。
少年は最後の硬貨を使い装備を整えた。
それからクレニア街に向かう為、ガルデニア村1週間滞在し村を出た。
クレニア街は古代宝物が見つかり、迷宮に近い地形が評判を呼び全国各地から冒険者が集まることから“冒険者の街”として知られている街だ。
日が流れ少年は5日ほど歩いた。
クレニア街には後4日ほどで着く距離にいる。
ガルデニア村を出てからかなり冒険者を見かけるようになった。
大剣を持ったゴツゴツの体系の奴に短剣を持ちフードを被り布で顔を隠した華奢な奴、と様々いる。
干し肉をかじりながら少年は歩く。
「きゃーー!!」
少年から左の方角、背の高い茂みに女性の声が響き渡った。
「おい、行くぞ!」
「あぁ」
ゴツゴツの体系の奴と、華奢な奴は迷わず茂みに飛び込んだ。
少年も後に続いて茂みに飛び込む。
そこにいたのは、馬車とタキシードを着た紳士に礼服を着たお嬢様が倒れていた。
その周りには魔物達が群れを成して襲い掛かっている。
「オラァァ!」
体格のいい男は大剣を振り回し、一度に多くの敵を倒している。
「「キュエエェ!!」」
「舐めるな!」
華奢な奴は短剣を首元に当て確実に仕留めている。
だが、2人掛でも魔物の数が多すぎる。
故に少年は2人の助太刀に入った。
「お? なんだ、助太刀か?」
「いいよ、俺らで出来っからガキの出る幕じゃねぇよ」
そう愚痴を言って次々に魔物を倒して行く姿は初めて会う人だが、尊敬できる強さだった。
そして少年も太刀を使い、魔物を一刀両断していった。
「小僧! やるじゃねぇか」
体格のいい男と背中を合わせコクリ、と頷きどんどん魔物を斬っていく。
「「グルぁぁぁぁ!!!」」
最後の一体、今までの魔物と比較しても10倍はでかい。
そして何より、少年は怯えていた。
それは、その敵が悪魔に似ていたからである。
悪魔憑きに似た姿、鳴き声。少年が師匠から聞いた話と一致していた。
「ッ……」
少年の足は震え、太刀の構えさえおぼつかなくなっていた。
「小僧! 下がっとけ! あれはトロールだ!」
体格のいい男が大剣をトロールに斬りかかるが、傷一つ付かない。
「チッ…硬ぇな。」
「おい! ゴルダ! 技能を使え!」
「そうするしか無さそうだな! 【剛剣】!
〈一重斬り〉!」
ゴルダと言う男が繰り出す技は敵に大剣の重力を伝える様に重い技であった。
そして、ゴルダの技はトロールに少しの傷を負わせた。
が、致命傷までには全くと言っていいほど届いていなかった。
「硬すぎんだろ。こいつ」
「俺が行く!」
「頼んだぞ。ユリス!」
「【瞬剣】〈待雪草・短剣〉!」
ユリスの短剣からは冷たい冷気を纏い素早い剣術でトロールを攻撃する。
ゴルダの付けた傷から冷気が入り込み、トロールも少しの間怯むようになった。
「よし! これなら!」
「おい、小僧? 大丈夫か?」
少年はトロールと自分を比較し、同類と言う認識が強く現れていた。
焦り、苛立ち、そう言った感情が少年に着いていた制御を少しずつ壊して行く。
「ッぐ! グルぁぁぁぁ!」
少年は叫び出し、左半身が悪魔憑きと化していた。
「おいおい、本気かよ」
「ッハハハハ!! こいつは傑作だ! まさか、悪魔憑きを制御する人間がいたとはなぁ!」
ゴルダは笑い、ユリスが武器を構える。
だが、少年の目には最後の敵しか写っていなかった。
「殺す」
少年は一言、言って敵の首を刎ねた。
「ゲホッ! ゲホッゲホッ! うぅ……」
少年は咳き込み、吐き気を催した。
それは制御に体力を消耗しすぎたからだ。
悪魔となった左半身はみるみると消えていった。
「小僧!」
「ッひ!!」
ゴルダの呼ぶ声に少年は恐る。
自分が人ではない存在になる、つまり人からの迫害を少年は恐れていた。
「よくやったな!」
ゴルダは少年の頭に手を乗せ、ゴシゴシと撫で回した。
「あ、あの!」
「んあ? どうした? 嬢ちゃん?」
「初めまして。私クレニア街領主の娘、ラーニャ=クレニアと申します。」
「はは! 今日は驚かされるばかりだな! 悪魔憑きを制御する者に、今から向かう街のお嬢さんにまで会うとは!」
ゴルダはこの出会いと創造神の運命に感謝を捧げ、更に笑った。
「小僧! お嬢さん! 今日はここで少し呑まねぇか?」
「いいですね! 私の馬車に食糧と蒸留酒があるんですよ!」
「お、いいね! ありがとさん! 嬢ちゃん!」
「誠に遺憾ですなぁ」
ラーニャの付き添いの紳士はそう口にする。
「もう何よ、爺や! これくらいの出費お父様は許してくれます!」
「しかしお嬢様。早く街に戻らないと主人様もお怒りです。」
「まぁ、それもそうね。」
2人は考え、相談した。
「わかったわ。なら、この3人を私の街に招き入れましょう! 丁度うちの街に向かっているようですし!」
「左様ですね。では、御3方は護衛として依頼を受けてもらいます。それでよろしいですね?」
「あぁ、俺達は全く問題はない!!」
「承知しました。私はオリバー、何なりとお申し付けください」
「ありがとよ!」
ゴルダが気持ちの良い礼をして、紳士のオリバーは快く馬車に乗せてくれた。
馬車に揺られて道中、3人は話していた。
「改めて自己紹介するが、俺はゴルダ。Cランクの冒険者で剣士だ」
「俺はユリス、暗殺者、Cランク冒険者。」
「皆さんお強いんですね!」
ラーニャ達3人は和気藹々と話す中、少年だけが俯き息を整えていた。
「あの……」
ラーニャの声に少年はビクッと顔を上げ3人の顔を見渡した。
「あなたのお名前をお聞きしても?」
「ッノ、ッノーティ」
「ノーティさんと言うのですね! ノーティさんは冒険者なのですか?」
少年は横に首を振り、そのまま俯いてしまった。
「なぁ、小僧。お前は何に怯えている?」
ゴルダが少年に話しかける。
「……」
「言いたく、ないか。でもな、お前は強い。例え悪魔憑きだとしてもだ」
「…ッ!?」
少年の戸惑った顔はゴルダの方を向いていた。
「俺はなぁ、悪魔憑きと会ったことがあるんだ…」
それはゴルダの故郷の話であった。
その悪魔憑きとゴルダは友人だったそうだ。
ある日を境に喧嘩し、離れその村に訪れた盗賊により両親を殺された途端悪魔憑きになったのだと言う。
「ゴルダさんにそんな過去があったなんて」
ラーニャは涙を拭き取りゴルダの話に聞き入ってしまった。
「まぁ、俺はそいつを斬る他無かったが小僧は悪魔憑きを抑える力がある。恐るな! お前は強い! 誰かは知らんがお前にはいい師匠が居そうだな!」
少年はアメリの顔を思い出し、思わず泣いてしまった。
辛い気持ちの共有ができた安堵、抑えきれなかった気持ちを和らげ、そしてゴルダに対して伝えきれないほどの感謝が溢れた形となった。
「ッあ、ッありが、ッとう。」
「いいってことよ!」
「ノーティさんは冒険者をしないんですか?」
ラーニャは少年に提案をする。
「それいいな! クレニアに着いたら冒険者登録をするといいぜ!」
「…?」
少年は少々戸惑った。
「あら? 冒険者を名だけであまり存じ上げないと?」
少年はコクリ、と頷く。
「なら、予習がてら俺が教えてやる。」
ゴルダは意気揚々と少年に教え始めた。
「いいか、冒険者にはS~Fの7段階の階級がある。」
(うんうん)
少年はゴルダに聞き入った。
「Sは最強の階級だ。そしてFは初心者の階級となっている。そして依頼をこなせば階級はすぐ上がる。ま、小僧の実力なら速攻でA階級まで行っちまうんじゃないか? ガハハッ!」
「笑い事じゃない。A階級も相当の実力がないとギルドで認めてくれやしない」
笑うゴルダを横目にユリスは冷静に忠告をした。
「ま、なんと言っても小僧実力次第ってわけだ。」
「ッありが、ッとう」
少年の礼にゴルダは笑った。
「皆さん! もうすぐ着きますよ! こちらがクレニア街です!」
ラーニャの呼びかけと共に馬車から覗くクレニア街はとても綺麗だった。
最近、魔族の襲来の確認が出来ている。
初心者の冒険者では到底太刀打ち不可。
実績のある冒険者について行くが吉。
この先向かうべきはクレニア街に向かうが吉。
尚、魔族は少なくとも幹部側近級が2人~4人ほど。』
酒場の店員から貰った紙にはそう書いてあった。
魔族。
悪魔憑きとは違い元より〈殺す〉と言う意志により作られた化け物そのものである。
弱くとも山一つ分吹き飛ばす、と伝えられている。
少年は最後の硬貨を使い装備を整えた。
それからクレニア街に向かう為、ガルデニア村1週間滞在し村を出た。
クレニア街は古代宝物が見つかり、迷宮に近い地形が評判を呼び全国各地から冒険者が集まることから“冒険者の街”として知られている街だ。
日が流れ少年は5日ほど歩いた。
クレニア街には後4日ほどで着く距離にいる。
ガルデニア村を出てからかなり冒険者を見かけるようになった。
大剣を持ったゴツゴツの体系の奴に短剣を持ちフードを被り布で顔を隠した華奢な奴、と様々いる。
干し肉をかじりながら少年は歩く。
「きゃーー!!」
少年から左の方角、背の高い茂みに女性の声が響き渡った。
「おい、行くぞ!」
「あぁ」
ゴツゴツの体系の奴と、華奢な奴は迷わず茂みに飛び込んだ。
少年も後に続いて茂みに飛び込む。
そこにいたのは、馬車とタキシードを着た紳士に礼服を着たお嬢様が倒れていた。
その周りには魔物達が群れを成して襲い掛かっている。
「オラァァ!」
体格のいい男は大剣を振り回し、一度に多くの敵を倒している。
「「キュエエェ!!」」
「舐めるな!」
華奢な奴は短剣を首元に当て確実に仕留めている。
だが、2人掛でも魔物の数が多すぎる。
故に少年は2人の助太刀に入った。
「お? なんだ、助太刀か?」
「いいよ、俺らで出来っからガキの出る幕じゃねぇよ」
そう愚痴を言って次々に魔物を倒して行く姿は初めて会う人だが、尊敬できる強さだった。
そして少年も太刀を使い、魔物を一刀両断していった。
「小僧! やるじゃねぇか」
体格のいい男と背中を合わせコクリ、と頷きどんどん魔物を斬っていく。
「「グルぁぁぁぁ!!!」」
最後の一体、今までの魔物と比較しても10倍はでかい。
そして何より、少年は怯えていた。
それは、その敵が悪魔に似ていたからである。
悪魔憑きに似た姿、鳴き声。少年が師匠から聞いた話と一致していた。
「ッ……」
少年の足は震え、太刀の構えさえおぼつかなくなっていた。
「小僧! 下がっとけ! あれはトロールだ!」
体格のいい男が大剣をトロールに斬りかかるが、傷一つ付かない。
「チッ…硬ぇな。」
「おい! ゴルダ! 技能を使え!」
「そうするしか無さそうだな! 【剛剣】!
〈一重斬り〉!」
ゴルダと言う男が繰り出す技は敵に大剣の重力を伝える様に重い技であった。
そして、ゴルダの技はトロールに少しの傷を負わせた。
が、致命傷までには全くと言っていいほど届いていなかった。
「硬すぎんだろ。こいつ」
「俺が行く!」
「頼んだぞ。ユリス!」
「【瞬剣】〈待雪草・短剣〉!」
ユリスの短剣からは冷たい冷気を纏い素早い剣術でトロールを攻撃する。
ゴルダの付けた傷から冷気が入り込み、トロールも少しの間怯むようになった。
「よし! これなら!」
「おい、小僧? 大丈夫か?」
少年はトロールと自分を比較し、同類と言う認識が強く現れていた。
焦り、苛立ち、そう言った感情が少年に着いていた制御を少しずつ壊して行く。
「ッぐ! グルぁぁぁぁ!」
少年は叫び出し、左半身が悪魔憑きと化していた。
「おいおい、本気かよ」
「ッハハハハ!! こいつは傑作だ! まさか、悪魔憑きを制御する人間がいたとはなぁ!」
ゴルダは笑い、ユリスが武器を構える。
だが、少年の目には最後の敵しか写っていなかった。
「殺す」
少年は一言、言って敵の首を刎ねた。
「ゲホッ! ゲホッゲホッ! うぅ……」
少年は咳き込み、吐き気を催した。
それは制御に体力を消耗しすぎたからだ。
悪魔となった左半身はみるみると消えていった。
「小僧!」
「ッひ!!」
ゴルダの呼ぶ声に少年は恐る。
自分が人ではない存在になる、つまり人からの迫害を少年は恐れていた。
「よくやったな!」
ゴルダは少年の頭に手を乗せ、ゴシゴシと撫で回した。
「あ、あの!」
「んあ? どうした? 嬢ちゃん?」
「初めまして。私クレニア街領主の娘、ラーニャ=クレニアと申します。」
「はは! 今日は驚かされるばかりだな! 悪魔憑きを制御する者に、今から向かう街のお嬢さんにまで会うとは!」
ゴルダはこの出会いと創造神の運命に感謝を捧げ、更に笑った。
「小僧! お嬢さん! 今日はここで少し呑まねぇか?」
「いいですね! 私の馬車に食糧と蒸留酒があるんですよ!」
「お、いいね! ありがとさん! 嬢ちゃん!」
「誠に遺憾ですなぁ」
ラーニャの付き添いの紳士はそう口にする。
「もう何よ、爺や! これくらいの出費お父様は許してくれます!」
「しかしお嬢様。早く街に戻らないと主人様もお怒りです。」
「まぁ、それもそうね。」
2人は考え、相談した。
「わかったわ。なら、この3人を私の街に招き入れましょう! 丁度うちの街に向かっているようですし!」
「左様ですね。では、御3方は護衛として依頼を受けてもらいます。それでよろしいですね?」
「あぁ、俺達は全く問題はない!!」
「承知しました。私はオリバー、何なりとお申し付けください」
「ありがとよ!」
ゴルダが気持ちの良い礼をして、紳士のオリバーは快く馬車に乗せてくれた。
馬車に揺られて道中、3人は話していた。
「改めて自己紹介するが、俺はゴルダ。Cランクの冒険者で剣士だ」
「俺はユリス、暗殺者、Cランク冒険者。」
「皆さんお強いんですね!」
ラーニャ達3人は和気藹々と話す中、少年だけが俯き息を整えていた。
「あの……」
ラーニャの声に少年はビクッと顔を上げ3人の顔を見渡した。
「あなたのお名前をお聞きしても?」
「ッノ、ッノーティ」
「ノーティさんと言うのですね! ノーティさんは冒険者なのですか?」
少年は横に首を振り、そのまま俯いてしまった。
「なぁ、小僧。お前は何に怯えている?」
ゴルダが少年に話しかける。
「……」
「言いたく、ないか。でもな、お前は強い。例え悪魔憑きだとしてもだ」
「…ッ!?」
少年の戸惑った顔はゴルダの方を向いていた。
「俺はなぁ、悪魔憑きと会ったことがあるんだ…」
それはゴルダの故郷の話であった。
その悪魔憑きとゴルダは友人だったそうだ。
ある日を境に喧嘩し、離れその村に訪れた盗賊により両親を殺された途端悪魔憑きになったのだと言う。
「ゴルダさんにそんな過去があったなんて」
ラーニャは涙を拭き取りゴルダの話に聞き入ってしまった。
「まぁ、俺はそいつを斬る他無かったが小僧は悪魔憑きを抑える力がある。恐るな! お前は強い! 誰かは知らんがお前にはいい師匠が居そうだな!」
少年はアメリの顔を思い出し、思わず泣いてしまった。
辛い気持ちの共有ができた安堵、抑えきれなかった気持ちを和らげ、そしてゴルダに対して伝えきれないほどの感謝が溢れた形となった。
「ッあ、ッありが、ッとう。」
「いいってことよ!」
「ノーティさんは冒険者をしないんですか?」
ラーニャは少年に提案をする。
「それいいな! クレニアに着いたら冒険者登録をするといいぜ!」
「…?」
少年は少々戸惑った。
「あら? 冒険者を名だけであまり存じ上げないと?」
少年はコクリ、と頷く。
「なら、予習がてら俺が教えてやる。」
ゴルダは意気揚々と少年に教え始めた。
「いいか、冒険者にはS~Fの7段階の階級がある。」
(うんうん)
少年はゴルダに聞き入った。
「Sは最強の階級だ。そしてFは初心者の階級となっている。そして依頼をこなせば階級はすぐ上がる。ま、小僧の実力なら速攻でA階級まで行っちまうんじゃないか? ガハハッ!」
「笑い事じゃない。A階級も相当の実力がないとギルドで認めてくれやしない」
笑うゴルダを横目にユリスは冷静に忠告をした。
「ま、なんと言っても小僧実力次第ってわけだ。」
「ッありが、ッとう」
少年の礼にゴルダは笑った。
「皆さん! もうすぐ着きますよ! こちらがクレニア街です!」
ラーニャの呼びかけと共に馬車から覗くクレニア街はとても綺麗だった。
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