呪いの忌子と祝福のつがい

しまっコ

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心の距離※

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ラファエロが離宮に戻った時、ルクレツィアは自室の寝所で眠っていた。
夫婦の寝室に連れて行くか、このまま休ませるか迷う。せっかく眠っているのを起こすのは忍びないが、さりとて問題を解決しないまま過ごすことへの苛立ちも抑えがたい。
しかし、ルクレツィアのベッドサイドに付き添っていたオクタヴィアをみて、ラファエロはまず姉に様子を問うことにした。
目線で合図し、居室に戻る。
ジョバンニの淹れたハーブティを手に、ソファーで向かい合った。
「ルクレツィアは何か言っていたか」
仲のいい姉になら心情を打ち明けているかもしれない。
「何も。泣きながら眠ってしまいました」
ルクレツィアはそれほどまでに子を望んでいたのだろうか。
父や母にどれほど強く言われようとも、ラファエロは頷くつもりはなかった。ルクレツィアを失う危険を冒してまで子を産ませる意義が見いだせない。ラファエロにとってルクレツィアこそが最も大切な存在だ。
しかし、そのルクレツィア自身が子どもを望んでいるというのなら、自分はいったいどうすればいいのか。
「オクタヴィア、おまえはどう思う?」
「貴方が、ルクレツィアを子どもを産ませる道具のように扱う男でなくて良かったと思いますよ」
そう言ってもらえるのは嬉しいが、ききたいのはそういうことではない。
ラファエロの思いを察したように、オクタヴィアは言葉をつづけた。
「心情的には貴方と同じです。ルクレツィアを危険に晒したくない。しかし、子どもを産み育てることを至上の喜びとする女性が少なくないのも事実です。ルクレツィア自身が望んでいるというのなら、支えてやるべきなのかもしれない」
ルクレツィアが子どもを望んでいるのなら――…ラファエロは今まで考えたこともなかったが、ルクレツィアは子を産み育てたいと望んでいるのか。
きっとそうなのだろう。言葉もなく涙を流す姿を思い出し、胸が痛んだ。
「どちらにしろ、急ぐ必要はないでしょう。よく話し合うべきだと思います」
オクタヴィアの言葉に黙って頷く。
全く急ぐ必要はない。ルクレツィアはまだ16歳なのだから。
「今日はもう下がっていい」
オクタヴィアは目礼し、与えられた隣室に戻っていった。
ラファエロは寝台に行きルクレツィアを起こさぬようそっと抱き上げた。夫婦の寝室に運んだのは、朝、一人で目覚めさせたくなかったからだ。
ルクレツィアを失うわけにはいかない。子を産ませることよりもルクレツィアの安全を優先したい。
この気持ちを理解してもらえるまで言葉を尽くすほかない。ラファエロにとってルクレツィアこそが唯一無二の存在なのだと。
ラファエロは柔らかな青銀の髪を梳きながら、涙の痕が残る目元にそっと唇を寄せた。

翌朝、ルクレツィアは夫婦の寝室で目覚めた。ラファエロの逞しい腕で腰をがっちり抱き込まれている。
「ルクレツィア。目覚めたのか」
頭上から窺うような小声が下りてきた。夕べあんなことがあったから、きっと心配をかけてしまったのだろう。
「おはようございます、ラファエロ様」
「……」
言おうとしたことばを飲み込む気配がする。
「夕べは申し訳ございませんでした。あのような場で取り乱したこと、未熟な自分を恥じております」
「何を言う。おまえは何も悪くない。王族全員が揃う席であのような話題を持ち出され、つらい思いをさせてしまった」
ラファエロはルクレツィアを仰向けに押し倒し、真上からルクレツィアの顔を見下ろした。
「おまえは、子を欲しているのか」
漆黒の瞳に真摯な色が宿っている。
「いつかラファエロ様の御子を授けていただくことを願っておりました。でも……」
ラファエロが望まないことを強制することはできない。もし出産でルクレツィアが命を落としたら、ラファエロは生まれた子を憎むかもしれない。
「わたくしはラファエロ様のおっしゃることに従います」
「俺は、おまえを危険に晒したくない。おまえを失う危険を冒してまで子を望んではいない。だが、おまえがどうしてもと望むなら……考える時間をくれ」
「ラファエロ様」
大きな手がルクレツィアの頬にあてられた。精悍な顔が下りてきて、唇が重なる。肉厚な舌で唇を割り開かれ、舌を絡めとられた。
「んっ、ふっ」
体内に魔力が流れ込んできて体が熱くなる。
チュッと湿った音を残して離れていく唇から、情欲のこもった声が放たれる。
「おまえに魔力を注ぎたい。いいか」
いつもは尋ねたりしないのに。
「はい、ラファエロ様」
大きな手が器用にルクレツィアのナイトドレスを脱がせていく。
左の胸の先端を口に含まれ、右を指先でこね回される。それだけでルクレツィアの体温は上昇し、蜜口が湿る感触がした。
「あっ、あっ、ラファエロさまっ」
代わる代わる左右の胸の先端を口に含まれ、腰のあたりの皮膚がざわざわひきつる。
「可愛らしく立ち上がっている。わかるか」
「ひゃんっ」
両手で胸の頂をキュッと摘ままれ、ルクレツィアの身体が跳ねた。
ラファエロは体をずらし、ルクレツィアの両足を開かせた。つぅっとお尻に粘液が伝い落ちる。ラファエロは見せつけるように舌で粘液をぺろりと舐めあげた。肉厚な舌がお尻から秘裂の上をなぞる。さらに足を大きく割り開かれ、ぷちゅっと小さな音を立てて秘裂の中が空気に晒された。
「あっ、だめっ」
寝室には朝日が差し込み、何もかもが見えてしまっている。
「とても愛らしい。この愛らしい花に欲望を打ち込みたいと願わぬつがいはいない」
じっと見られている。とてつもなく恥ずかしい。そんなルクレツィアの気持ちとは裏腹にラファエロは秘部にさらに顔を近づけた。敏感な花弁に息がかかった。
「んアっ」
ルクレツィアの花弁が期待に震えた。直後、ラファエロの両手がお尻を左右に割り開く。
「だが、この蕾だって同じくらい愛おしい」
湿った感触が後ろのすぼまりに触れた。
「やっ、だめ、です。きたない、から」
魔法薬を使っていないのに、そんなところを舐めないでほしい。
「おまえの身体に汚いところなどあるものか」
ぺろり、ぺろり、とひとつひとつの襞を舌でなぞられる。ルクレツィアは泣きながら懇願した。
「ラファエロさま、もう、おねがい」
「ルクレツィア?」
「ラファエロさまのお腰のもので、可愛がってくださいませ」
これ以上、恥ずかしい思いをするより、早く貫いてほしい。
「ルクレツィア。おまえは……俺の理性を試しているのか」
ラファエロががばりと身を起こした。魔法薬が性急に入ってきた直後、圧倒的な質量をもったラファエロのもので貫かれる。
「あぁぁぁっ」
十分ほぐされていない後孔が押し開かれ、ルクレツィアは啼き声をあげた。圧迫感が強く苦しい。
覆いかぶさってきたラファエロはルクレツィアを抱きしめ、貪るように唇に吸い付いた。激しいキスで悲鳴すら飲み込まれ、ルクレツィアは激しく揺さぶられた。
身体はどんどん高められていく。
苦しいほどにきつきつだった後孔は、すぐにつがいの楔に絡みつき、快楽を拾ってうねり始めた。
愛されている。これ以上ないほどに。それでも何かが足りない。御子を授けて貰えない、ただ快楽を貪るためだけの行為――…。これまで素直に快楽に身を任せていたのに、なぜ今は虚しさを感じてしまうのだろう。ルクレツィアは声もなく涙を流し続けた。


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