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黒豚令息の領地開拓編
初任務
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「話は着いたのか?」
早くも部外者面で逃げていたデイビッドは、オーブンから取り出したパンを冷ましながらスープ鍋をかき回していた。
「何でそういう言い方しかできないんですか…」
「ハナシツイタ リディアモ ベルダモ チャントアイシアッテタ」
「意味わかって言ってんのかコイツ…」
「デイビッド様よりはきちんと理解しているかと。」
「俺は魔物以下か…」
「少なくとも恋愛面に置いては最底辺では?」
「大丈夫、これからたくさん経験値積み上げるんですから!」
「なんだか冒険者みたいだねぇ!」
「恋も冒険も段階を踏まないと危険なんです!何処に落とし穴があるかわからないんですから!」
「うまいこと言いますねヴィオラ様。」
ジャムとチョコとカスタードがランダムに包まれた丸パンにヴィオラが夢中になり、アリーも真似をしてパンをかじっている。
今日はそれぞれやる事があり、忙しい日となるため、朝はしっかり栄養を入れていきたい。
「さてと、僕はリディアと空き家の修繕や掃除をしてくるよ。」
「僕も一度帰らなきゃなんですよ。ダンスの実技試験だけは見てくれって頼まれてるもので。」
「私は今日はデイビッド様と畑の測量したら初任務に行ってきます!!」
「アリーモ テツダウ!」
「こらこら、手伝ったら依頼にならないんだよ。アリーは僕達と一緒に来なさい。なんなら森で遊んでてもいいよ?」
「ワカッタ ヴィオラ キヲツケテネ! ナンカアッタラ ブンナグッテ ニゲテネ!」
「具体的にナニを!?」
エリックとベルダ達が居なくなると、ヴィオラは長い紐と縄と杭を担ぐデイビッドの後を嬉しそうについて行った。
「ここを押さえて、紐を引いてくから赤いところが見えたらクサビを打ってくれ。」
「…はい…」
測量用に印の付いた紐を延々と引いて行き、畑となる場所に当たりをつけて大体の距離を測り記録を取っていく。
ファルコに乗った際撮影しておいた上空からの写真と見比べ、木や岩の位置から実際の広さを予想し、大まかな耕作予定地に杭を打ち、区間の割り出しをしていると、それはつまらなそうにしているヴィオラが視界に入った。
「…飽きたんだな…?」
「つまんない…デイビッド様と一緒なのに全然一緒じゃない…」
「測量なんだからそういうモンなの!並んで立ってたらなんも測れないだろ!?」
「もっとベルダ先生とリディアちゃんみたいにしたかった!!」
「俺にそういうの求めても無理だって、結構前からわかってたろが!」
「うぇぇ~ん!デイビッド様が優しくないぃ~!!」
「…あと二区間区切ったら、森の方行って採取のやり方教えてやるから、それまで少し我慢してくれるか?」
「分かりました…」
ヴィオラは始終口を尖らせていたが、デイビッドが最期の測量を終え、残った杭と縄を回収すると、ニコニコしながら自分の鞄を掴み直した。
一度キャンプへ戻り、大砂鳥の卵を回収し、今日はファルコを呼んで森へ向かう。
ヴィオラをファルコの背に乗せ、綱を持って進むと時折ファルコが低く羽ばたくので、足がふわりふわり地から離れる度はしゃぐ声が森に響いた。
「ほらよ、この辺りはシェルの奴も良く採集に来るポイントだ。お!早速足元、これがヤロー、血止めや胃薬になる。こっちはヘビクサ。どこにでも生えるが意外と使い道が多くて解毒から整腸、解熱、傷の炎症や皮膚疾患にも効くし、目薬にもなる民間の万能薬だ。」
「これ!常時買い取りに出てた薬草ですね!」
「こっちはタネニンジン、解熱と咳止めの効果あるんで風邪の時に重宝する。医者いらずなんて呼ばれて、小児薬には必ず入るんだ。」
「依頼の薬草は…サニーカレンデュラ!確か生えてたんですよ!黄色とオレンジの花が川の近くにたくさん!」
駆け出すヴィオラを追いかけて、デイビッドも森の小川へと向かうと、確かに黄色い小花が群生していた。しかし…
「こりゃレモニーだ。似てるけどカレンデュラじゃねぇな。」
「ち…違うんですか…?」
「葉の形と、蕾の模様を覚えとくと良い。それと、カレンデュラはもっと乾いたとこに咲くんだ。この辺りだと…そうだな、森の外れに岩場があったから見に行ってみるか。」
しょんぼりするヴィオラに、デイビッドは足元に生えている草を片っ端から摘んで見せ、薬草を自分のカゴに放り込んでいった。
「これは火傷や炎症、こっちは口の中が荒れた時、こいつは飛び上がるほど苦いが大抵の腹痛はこれで治る。」
「すごい…ちょっと歩いただけで足元にこんなに薬草が生えてるなんて…」
「案外なんでもない草にも薬効がある事は多い。だから俺みたいな魔法薬が効かない人間でも、こういうのに頼ってなんとか生き延びて来れたんだよ。」
ものすごい効果は無くとも、魔力や特殊な性質は無くとも、自然と人の身体に寄り添ってくれる薬草は多い。
ヴィオラが見つけたレモニーも、虫除けや畑の緑肥として効果があるので、デイビッドは花をいくらか摘み、種ができたら取りに来ようと考えていた。
岩場に出た2人が辺りを見回していると、なにやら棘のある植物が岩肌に添ってたくさん生えている。
「なんですか?これ…」
「ツルボランの仲間だ!どっかから種が飛んできたんだろうな。火傷や炎症、傷の保護から、血の巡りや免疫を改善してくれる。美容にも良いんだと。肌荒れや乾燥肌にも良く効くんで、俺が以前出した塗り薬にも入ってる。使い勝手の良い薬草だよ。」
「なんだか中がプルプルしてる…」
「もっと枝がぶっといヤツもあって、それは中身が食えるんらしい。この辺じゃヴィオラの指くらいの太さが限界だから、食用には向かないな。」
「うぇ…苦ぁい…」
「舐めるなよ!」
すると、そこらで遊んでいたファルコが鳴いてヴィオラを呼んだ。
「キュールルルル!」
「どうしたのファルコ…あ!!こっちにもお花がたくさん咲いてる!これ!これです、今度こそ間違いなくサニーカレンデュラ!!」
「ああ、野生種だから花びらは少ないが、間違いない。カレンデュラだな。」
「やったぁ!!これを5本一束で十束採取します!」
「早くしないとファルコがどんどん食ってるぞ?」
「あぁぁっ!!ダメよファルコ!食べないで?!」
ヴィオラが薬草採取に奮闘している間、デイビッドは日陰を覗いて周り、乾燥した植物の塊を拾い集めていた。
他にもカサカサになった藻類の仲間や、棘だらけのツル草などを集めヴィオラの元へ戻る。
夢中で花を摘むヴィオラの後ろで、ファルコが猫ほどもある大きなネズミの魔物を仕留め得意そうにしていた。
「ずいぶん優秀な護衛だな。」
「クルルルル!!」
「あ!デイビッド様、見て下さい!アレ、クモイチゴじゃないですか!?」
クモイチゴは魔草で、ガクの形が蜘蛛の様な形をしているためこの名が付いた。
岩場や砂地、荒野によく見られ、真っ赤な果実が目を引くが決してそのまま食べてはならない。
「これの採り方と見分け方は分かるか?」
「はい!魔草学でやりました!まずは根元を掘るんですよね!」
「何で掘るのか、覚えてるか?」
「うーんと…忘れました!」
「正直でよろしい…このクモイチゴは根を見て無毒か有毒か見極める必要があるんだ。有毒の物を食べると舌先や末端神経に痺れが出る。陽の光が当たる所の物は根が赤みを帯びて有毒化してる。甘みも無いし実が硬くてそもそも食用には向かないから、間違って食うこともないけどな。完全な日陰で育つと根が白っぽくなって無毒化する。だから採取の際には必ず根を一緒に持ち帰るんだ。」
「じゃぁ、採るのは無毒のだけですね!?」
「いや、実は有毒の方が高値で取引されんだよ。イボとかデキモノの特効薬になるんで重宝するんだ。」
「難しい…」
見つけたクモイチゴの根は見事にオレンジ色をしており、はっきり有毒である事が分かった。
根の一部を切り取り、イチゴ部分を摘むと後は埋め戻して、また次の収穫を期待する。
「全部採るんじゃ無いんですね。」
「え?あぁ…これは俺のクセみたいなもんだよ。森の恵みは何でも採り過ぎないようにって、旅先で遭った薬師達は皆そう言ってたからな。森の行いは良いも悪いも必ず自分に返って来るからってさ。古いやり方なんだろうけど…」
「いいえ!ステキだと思います。どんな草にも生き物にも命があるんですから、人間の勝手でむやみに荒らさないって考え、なんだか森のエルフみたい!」
「そんな崇高なもんじゃないんだけどな。次来た時同じ様に収穫できたら便利ってだけで…」
その後、岩陰に生えたクモイチゴも見つけ、根が白いので無毒とわかり、全て摘んでこれはヴィオラの口に入った。
早くも部外者面で逃げていたデイビッドは、オーブンから取り出したパンを冷ましながらスープ鍋をかき回していた。
「何でそういう言い方しかできないんですか…」
「ハナシツイタ リディアモ ベルダモ チャントアイシアッテタ」
「意味わかって言ってんのかコイツ…」
「デイビッド様よりはきちんと理解しているかと。」
「俺は魔物以下か…」
「少なくとも恋愛面に置いては最底辺では?」
「大丈夫、これからたくさん経験値積み上げるんですから!」
「なんだか冒険者みたいだねぇ!」
「恋も冒険も段階を踏まないと危険なんです!何処に落とし穴があるかわからないんですから!」
「うまいこと言いますねヴィオラ様。」
ジャムとチョコとカスタードがランダムに包まれた丸パンにヴィオラが夢中になり、アリーも真似をしてパンをかじっている。
今日はそれぞれやる事があり、忙しい日となるため、朝はしっかり栄養を入れていきたい。
「さてと、僕はリディアと空き家の修繕や掃除をしてくるよ。」
「僕も一度帰らなきゃなんですよ。ダンスの実技試験だけは見てくれって頼まれてるもので。」
「私は今日はデイビッド様と畑の測量したら初任務に行ってきます!!」
「アリーモ テツダウ!」
「こらこら、手伝ったら依頼にならないんだよ。アリーは僕達と一緒に来なさい。なんなら森で遊んでてもいいよ?」
「ワカッタ ヴィオラ キヲツケテネ! ナンカアッタラ ブンナグッテ ニゲテネ!」
「具体的にナニを!?」
エリックとベルダ達が居なくなると、ヴィオラは長い紐と縄と杭を担ぐデイビッドの後を嬉しそうについて行った。
「ここを押さえて、紐を引いてくから赤いところが見えたらクサビを打ってくれ。」
「…はい…」
測量用に印の付いた紐を延々と引いて行き、畑となる場所に当たりをつけて大体の距離を測り記録を取っていく。
ファルコに乗った際撮影しておいた上空からの写真と見比べ、木や岩の位置から実際の広さを予想し、大まかな耕作予定地に杭を打ち、区間の割り出しをしていると、それはつまらなそうにしているヴィオラが視界に入った。
「…飽きたんだな…?」
「つまんない…デイビッド様と一緒なのに全然一緒じゃない…」
「測量なんだからそういうモンなの!並んで立ってたらなんも測れないだろ!?」
「もっとベルダ先生とリディアちゃんみたいにしたかった!!」
「俺にそういうの求めても無理だって、結構前からわかってたろが!」
「うぇぇ~ん!デイビッド様が優しくないぃ~!!」
「…あと二区間区切ったら、森の方行って採取のやり方教えてやるから、それまで少し我慢してくれるか?」
「分かりました…」
ヴィオラは始終口を尖らせていたが、デイビッドが最期の測量を終え、残った杭と縄を回収すると、ニコニコしながら自分の鞄を掴み直した。
一度キャンプへ戻り、大砂鳥の卵を回収し、今日はファルコを呼んで森へ向かう。
ヴィオラをファルコの背に乗せ、綱を持って進むと時折ファルコが低く羽ばたくので、足がふわりふわり地から離れる度はしゃぐ声が森に響いた。
「ほらよ、この辺りはシェルの奴も良く採集に来るポイントだ。お!早速足元、これがヤロー、血止めや胃薬になる。こっちはヘビクサ。どこにでも生えるが意外と使い道が多くて解毒から整腸、解熱、傷の炎症や皮膚疾患にも効くし、目薬にもなる民間の万能薬だ。」
「これ!常時買い取りに出てた薬草ですね!」
「こっちはタネニンジン、解熱と咳止めの効果あるんで風邪の時に重宝する。医者いらずなんて呼ばれて、小児薬には必ず入るんだ。」
「依頼の薬草は…サニーカレンデュラ!確か生えてたんですよ!黄色とオレンジの花が川の近くにたくさん!」
駆け出すヴィオラを追いかけて、デイビッドも森の小川へと向かうと、確かに黄色い小花が群生していた。しかし…
「こりゃレモニーだ。似てるけどカレンデュラじゃねぇな。」
「ち…違うんですか…?」
「葉の形と、蕾の模様を覚えとくと良い。それと、カレンデュラはもっと乾いたとこに咲くんだ。この辺りだと…そうだな、森の外れに岩場があったから見に行ってみるか。」
しょんぼりするヴィオラに、デイビッドは足元に生えている草を片っ端から摘んで見せ、薬草を自分のカゴに放り込んでいった。
「これは火傷や炎症、こっちは口の中が荒れた時、こいつは飛び上がるほど苦いが大抵の腹痛はこれで治る。」
「すごい…ちょっと歩いただけで足元にこんなに薬草が生えてるなんて…」
「案外なんでもない草にも薬効がある事は多い。だから俺みたいな魔法薬が効かない人間でも、こういうのに頼ってなんとか生き延びて来れたんだよ。」
ものすごい効果は無くとも、魔力や特殊な性質は無くとも、自然と人の身体に寄り添ってくれる薬草は多い。
ヴィオラが見つけたレモニーも、虫除けや畑の緑肥として効果があるので、デイビッドは花をいくらか摘み、種ができたら取りに来ようと考えていた。
岩場に出た2人が辺りを見回していると、なにやら棘のある植物が岩肌に添ってたくさん生えている。
「なんですか?これ…」
「ツルボランの仲間だ!どっかから種が飛んできたんだろうな。火傷や炎症、傷の保護から、血の巡りや免疫を改善してくれる。美容にも良いんだと。肌荒れや乾燥肌にも良く効くんで、俺が以前出した塗り薬にも入ってる。使い勝手の良い薬草だよ。」
「なんだか中がプルプルしてる…」
「もっと枝がぶっといヤツもあって、それは中身が食えるんらしい。この辺じゃヴィオラの指くらいの太さが限界だから、食用には向かないな。」
「うぇ…苦ぁい…」
「舐めるなよ!」
すると、そこらで遊んでいたファルコが鳴いてヴィオラを呼んだ。
「キュールルルル!」
「どうしたのファルコ…あ!!こっちにもお花がたくさん咲いてる!これ!これです、今度こそ間違いなくサニーカレンデュラ!!」
「ああ、野生種だから花びらは少ないが、間違いない。カレンデュラだな。」
「やったぁ!!これを5本一束で十束採取します!」
「早くしないとファルコがどんどん食ってるぞ?」
「あぁぁっ!!ダメよファルコ!食べないで?!」
ヴィオラが薬草採取に奮闘している間、デイビッドは日陰を覗いて周り、乾燥した植物の塊を拾い集めていた。
他にもカサカサになった藻類の仲間や、棘だらけのツル草などを集めヴィオラの元へ戻る。
夢中で花を摘むヴィオラの後ろで、ファルコが猫ほどもある大きなネズミの魔物を仕留め得意そうにしていた。
「ずいぶん優秀な護衛だな。」
「クルルルル!!」
「あ!デイビッド様、見て下さい!アレ、クモイチゴじゃないですか!?」
クモイチゴは魔草で、ガクの形が蜘蛛の様な形をしているためこの名が付いた。
岩場や砂地、荒野によく見られ、真っ赤な果実が目を引くが決してそのまま食べてはならない。
「これの採り方と見分け方は分かるか?」
「はい!魔草学でやりました!まずは根元を掘るんですよね!」
「何で掘るのか、覚えてるか?」
「うーんと…忘れました!」
「正直でよろしい…このクモイチゴは根を見て無毒か有毒か見極める必要があるんだ。有毒の物を食べると舌先や末端神経に痺れが出る。陽の光が当たる所の物は根が赤みを帯びて有毒化してる。甘みも無いし実が硬くてそもそも食用には向かないから、間違って食うこともないけどな。完全な日陰で育つと根が白っぽくなって無毒化する。だから採取の際には必ず根を一緒に持ち帰るんだ。」
「じゃぁ、採るのは無毒のだけですね!?」
「いや、実は有毒の方が高値で取引されんだよ。イボとかデキモノの特効薬になるんで重宝するんだ。」
「難しい…」
見つけたクモイチゴの根は見事にオレンジ色をしており、はっきり有毒である事が分かった。
根の一部を切り取り、イチゴ部分を摘むと後は埋め戻して、また次の収穫を期待する。
「全部採るんじゃ無いんですね。」
「え?あぁ…これは俺のクセみたいなもんだよ。森の恵みは何でも採り過ぎないようにって、旅先で遭った薬師達は皆そう言ってたからな。森の行いは良いも悪いも必ず自分に返って来るからってさ。古いやり方なんだろうけど…」
「いいえ!ステキだと思います。どんな草にも生き物にも命があるんですから、人間の勝手でむやみに荒らさないって考え、なんだか森のエルフみたい!」
「そんな崇高なもんじゃないんだけどな。次来た時同じ様に収穫できたら便利ってだけで…」
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