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黒豚令息の領地開拓編
リディアとベルダ
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次の朝は靄が出ており、草原が真っ白に覆われて見通しが悪かった。
早くからオーブンを開けていたデイビッドが竈門の薪を足していると、まだ人も起きない時間に転移門が光り、誰かがマロニエの木の下に入って来た。
「へぇ、魔物も転移門を通れるのか。」
デイビッドが顔を上げると、そこにはリディアがひとり佇んでいた。
「ベルダは?一緒じゃねぇのか?」
首を振るリディアは、微笑んではいるがどこか寂しそうにしている。
デイビッドがコーヒーを淹れようとすると、リディアもスルスルと近づいて来て手伝った。豆を挽き、サイフォンにネルを張る動作は慣れたものだ。
「手際がいいな。ベルダのために覚えたんだろ?だらしねぇ大の大人の世話なんて大変じゃねぇの?」
リディアはまだ首を横に振る。
「ここはどうだ?アイツ、学園辞めたらこの先の森の近くに引っ越す気でいるらしいぜ?」
リディアは少し嬉しそうに頷くと、木の上で眠っているアリーにツルを伸ばした。
「ンー ナァニ…?」
寝ぼけたアリーは地上へ降りてくると、リディアと何やらツタの会話を交わし、デイビッドの側へ寄って来た。
「リディア ハナシガアルッテ」
「話…?それは俺にか?」
「ダイジナ ハナシ チャントキイテ」
リディアは深く頭を下げると、相変わらず微笑んだままデイビッドを座らせた。
「リディア メガネガ スキナンダッテ」
「それは…なんとなく鈍い俺でも気が付いてた。」
「デモ リディアハ マモノダカラ メガネノショユウブツトシテ ソバニイラレルダケデ テシアワセダッタ…」
「いきなり重い!」
ーーリディアは、深い森の奥で生まれた日差しを好む種類のドライアドの若木だったそうだ。
ある日人間に連れて行かれ、魔物の本能で襲いかかろうとしたが魔力差で圧されしまい、ケージに入れられ長い事脱出の機を伺っていたという。
しかし、その人間は魔物であるはずのドライアドに献身的に愛情深く世話を焼き続け、名前を与えた。
リディアは、その名で呼ばれた瞬間リディアになったのだ。
ベルダを信用し、懐いた頃は苦労したそうだ。始めはアリーの様に、何をやっても的外れでベルダに迷惑をかけてばかりいたが、リディアが人と関わろうとする度にベルダは嬉しそうに寄り添い、成長する度に喜んだ。
アリーとデイビッドのやり取りを見てそのことが無性に懐かしく、リディアは真の魔物には有り得ない“思い出”というモノを振り返るようになったそうだ。
早くから自我を持ち人間を慕うアリーの存在が、人に飼われたドライアドを、完全な“リディア”に変えてしまった。それまでただ慕うだけだったベルダを、人間と同じ様に愛するようになってしまったのだと、リディアは主張する。
「リディアハ メガネノコトガ スキ デモ メガネハ リディアガ マモノジャナクナッタラ スキジャナクナル カモシレナイ」
「それは…確かに、なんかあり得そうな話だなとは思う…」
「ダッタラ コノママ ショユウブツデモ イイッテ オモッテタ…」
「何を聞かされてるんだ俺は…?」
「クルシイッテ…リディアハ メガネノコトガ スキナノニ メガネハリディアヲ マモノトシテシカ アイシテナインジャナイカッテ」
「リディアちゃん!その気持ちすごく良くわかる!!」
いつの間にか起き出していたヴィオラが、目を潤ませながらリディアに駆け寄った。
「私もね、不安で不安で仕方ないの!デイビッド様が私の事をただの同情で受け入れてくれたんじゃないかって…私が困ってるから手を差し伸べてくれただけで、問題が全部解決しちゃったら、私から離れて行ってしまうんじゃないかって…ずっと考えちゃって苦しいの!」
「ソレハ ゼッタイニ ナイッテ」
「そんなの、わからないじゃない…」
「アリーニハ ワカル デイビッド メッチャ アセッテル」
「デイビッド様が…?」
「おい、アリー!?」
「ヘタレダカラ イワナイケド アタマノナカ ホトンドヴィオラノコト カンガエテル」
「そうなんだ…」
「ステラレタラ タブン ゼツボーシテ シヌカモッテ」
「そうなんだぁ!」
「止めろ!流れ弾で人の感情を読むな!!」
リディアもアリーも人間の心が読めてしまうため、情緒もなく全ての感情が赤裸々に曝け出されてしまう。
しかし、それも真意までは読み取れないらしい。
ベルダはリディアを愛している。が、果たしてそれはリディアの望む形の愛だろうか。
「で?当のベルダはどこに行ったんだ?」
「リディアちゃんがここにいるなら魔法陣の近くには居ますよ。魔物だけでは作動しませんから。私ちょっと見てきます!」
ヴィオラは転移門にぴょんと飛び込むと、直ぐに姿が見えなくなった。
やがてリディアが落ち切ったコーヒーをカップに注いでいると、転移門が作動してヴィオラと魔力の縄で縛り上げられたベルダが現れた。
「あ、あの!別に酷いことをしようとしたんじゃなくて…その…逃げようとしたのでつい…」
「つい、で仮にも教員を縛るなよ…」
「いやぁ悩む時間もくれないとか、ちょっと行動的過ぎない君の婚約者。」
ベルダを解放すると、リディアがよれた服や髪を整えに手を出す。
「もう悩んでる時間なんてありませんよ!リディアちゃんはずーっと待っててくれてるのに!」
「オイ ヘタレメガネ リディアナカシタラ シバキアゲルゾ」
「わかった、わかったってば!」
アリーにどつかれ、よろけたベルダをリディアが支えようとした時、ベルダはリディアの胸元にずっとついていた緑色の魔石に手を触れた。
「僕も覚悟を決めなきゃいけないね…」
パリンと音がして、魔石が割れ粉々になって消えていく。その瞬間、リディアの身体が少しだけ光って全身に本来の魔力が戻っていった。
「リディア…これで君は自由だ。もうどこへでも行けるよ…」
リディアは長年自分を縛っていた拘束が解け、清々しい気持ちになると同時に、いきなりベルダとの繋がりが絶たれた事で焦りを感じていた。
アリーは不安な時どうしていただろうか…自分の心に素直に行動する事は魔物として当然の事だ。
リディアはベルダを抱きしめ、ツタとツルを絡みつけた。
「リディア…?」
「ゔぇ…るぅ…だぁ…」
「リディア…君、言葉が…」
「べぇるだ…あい…し…てぇ…る…」
「リディア!!そうか…ずっとアリーの影響を受けていたのか!それが魔力制限で開花せずにいたんだ…僕はなんて愚かなんだろうね…君から奪ってばかりで…情けない…」
「べぇるだぁ…あいしてぇる…」
「こんな僕でも君は側にいてくれるかい…?君をずっと閉じ込めて、良いように使っていたのに?」
ベルダがリディアの言葉に感動していると、その背中をアリーが蹴りながら口を挟んだ。
「オイ メガネ リディアカ゚ マモノジャ ナクナッタラ リディアノコト ステルノカ?」
「情緒も何も無いな!アリー少し待ってくれ、こう言うのには雰囲気とかタイミングっていうものがあるんだよ!?」
「アリーちゃん、邪魔しちゃダメ!!」
ヴィオラが慌ててアリーを向こうへ連れて行き、リディアとベルダが二人切りになると、一呼吸置いて、ついに観念したベルダがリディアを抱きしめ返した。
「ドライアドとか魔物とかなんてどうでもいいよ。リディアが居てくれないと、僕はもうダメなんだ。こんなどうしようもない人間でも君は本当にいいのかい?」
リディアが黙ってベルダにキスをするのを、ヴィオラは感動しながらこっそりと眺めていた。
(いいなぁ…)
(魔物と人間の愛情物語なんてお話になりますねぇ!)
(あ、エリック様…あれ?デイビッド様は?)
(途中からオーブンの方に行っちゃいました。)
(リディア シアワセソウ)
(そうなの!好きな人と気持ちを確かめ合えるのってすごく幸せな事なんだよ…)
(ヴィオラモ?)
(もちろん!でもね、気持ちの伝え方ってたくさんあるの。私はデイビッド様の不器用な愛情表現も大好きよ?)
(ウチのも究極的にヘタレだからなぁ…)
そこへパンの焼き上がる匂いがして、ヴィオラのお腹がクゥと鳴った。
「そうだ!朝ごはん!」
テーブルには既に玉ねぎのスープとツヤツヤの丸パン、卵のサラダと厚切りベーコン、ウサギ肉の蒸し焼きが並び、ハーブティーが湧いている。
いつの間にか靄が晴れ、風も吹いて来た。
少し冷めたコーヒーを飲むベルダの隣に座ったリディアは、今までで一番幸せそうだった。
早くからオーブンを開けていたデイビッドが竈門の薪を足していると、まだ人も起きない時間に転移門が光り、誰かがマロニエの木の下に入って来た。
「へぇ、魔物も転移門を通れるのか。」
デイビッドが顔を上げると、そこにはリディアがひとり佇んでいた。
「ベルダは?一緒じゃねぇのか?」
首を振るリディアは、微笑んではいるがどこか寂しそうにしている。
デイビッドがコーヒーを淹れようとすると、リディアもスルスルと近づいて来て手伝った。豆を挽き、サイフォンにネルを張る動作は慣れたものだ。
「手際がいいな。ベルダのために覚えたんだろ?だらしねぇ大の大人の世話なんて大変じゃねぇの?」
リディアはまだ首を横に振る。
「ここはどうだ?アイツ、学園辞めたらこの先の森の近くに引っ越す気でいるらしいぜ?」
リディアは少し嬉しそうに頷くと、木の上で眠っているアリーにツルを伸ばした。
「ンー ナァニ…?」
寝ぼけたアリーは地上へ降りてくると、リディアと何やらツタの会話を交わし、デイビッドの側へ寄って来た。
「リディア ハナシガアルッテ」
「話…?それは俺にか?」
「ダイジナ ハナシ チャントキイテ」
リディアは深く頭を下げると、相変わらず微笑んだままデイビッドを座らせた。
「リディア メガネガ スキナンダッテ」
「それは…なんとなく鈍い俺でも気が付いてた。」
「デモ リディアハ マモノダカラ メガネノショユウブツトシテ ソバニイラレルダケデ テシアワセダッタ…」
「いきなり重い!」
ーーリディアは、深い森の奥で生まれた日差しを好む種類のドライアドの若木だったそうだ。
ある日人間に連れて行かれ、魔物の本能で襲いかかろうとしたが魔力差で圧されしまい、ケージに入れられ長い事脱出の機を伺っていたという。
しかし、その人間は魔物であるはずのドライアドに献身的に愛情深く世話を焼き続け、名前を与えた。
リディアは、その名で呼ばれた瞬間リディアになったのだ。
ベルダを信用し、懐いた頃は苦労したそうだ。始めはアリーの様に、何をやっても的外れでベルダに迷惑をかけてばかりいたが、リディアが人と関わろうとする度にベルダは嬉しそうに寄り添い、成長する度に喜んだ。
アリーとデイビッドのやり取りを見てそのことが無性に懐かしく、リディアは真の魔物には有り得ない“思い出”というモノを振り返るようになったそうだ。
早くから自我を持ち人間を慕うアリーの存在が、人に飼われたドライアドを、完全な“リディア”に変えてしまった。それまでただ慕うだけだったベルダを、人間と同じ様に愛するようになってしまったのだと、リディアは主張する。
「リディアハ メガネノコトガ スキ デモ メガネハ リディアガ マモノジャナクナッタラ スキジャナクナル カモシレナイ」
「それは…確かに、なんかあり得そうな話だなとは思う…」
「ダッタラ コノママ ショユウブツデモ イイッテ オモッテタ…」
「何を聞かされてるんだ俺は…?」
「クルシイッテ…リディアハ メガネノコトガ スキナノニ メガネハリディアヲ マモノトシテシカ アイシテナインジャナイカッテ」
「リディアちゃん!その気持ちすごく良くわかる!!」
いつの間にか起き出していたヴィオラが、目を潤ませながらリディアに駆け寄った。
「私もね、不安で不安で仕方ないの!デイビッド様が私の事をただの同情で受け入れてくれたんじゃないかって…私が困ってるから手を差し伸べてくれただけで、問題が全部解決しちゃったら、私から離れて行ってしまうんじゃないかって…ずっと考えちゃって苦しいの!」
「ソレハ ゼッタイニ ナイッテ」
「そんなの、わからないじゃない…」
「アリーニハ ワカル デイビッド メッチャ アセッテル」
「デイビッド様が…?」
「おい、アリー!?」
「ヘタレダカラ イワナイケド アタマノナカ ホトンドヴィオラノコト カンガエテル」
「そうなんだ…」
「ステラレタラ タブン ゼツボーシテ シヌカモッテ」
「そうなんだぁ!」
「止めろ!流れ弾で人の感情を読むな!!」
リディアもアリーも人間の心が読めてしまうため、情緒もなく全ての感情が赤裸々に曝け出されてしまう。
しかし、それも真意までは読み取れないらしい。
ベルダはリディアを愛している。が、果たしてそれはリディアの望む形の愛だろうか。
「で?当のベルダはどこに行ったんだ?」
「リディアちゃんがここにいるなら魔法陣の近くには居ますよ。魔物だけでは作動しませんから。私ちょっと見てきます!」
ヴィオラは転移門にぴょんと飛び込むと、直ぐに姿が見えなくなった。
やがてリディアが落ち切ったコーヒーをカップに注いでいると、転移門が作動してヴィオラと魔力の縄で縛り上げられたベルダが現れた。
「あ、あの!別に酷いことをしようとしたんじゃなくて…その…逃げようとしたのでつい…」
「つい、で仮にも教員を縛るなよ…」
「いやぁ悩む時間もくれないとか、ちょっと行動的過ぎない君の婚約者。」
ベルダを解放すると、リディアがよれた服や髪を整えに手を出す。
「もう悩んでる時間なんてありませんよ!リディアちゃんはずーっと待っててくれてるのに!」
「オイ ヘタレメガネ リディアナカシタラ シバキアゲルゾ」
「わかった、わかったってば!」
アリーにどつかれ、よろけたベルダをリディアが支えようとした時、ベルダはリディアの胸元にずっとついていた緑色の魔石に手を触れた。
「僕も覚悟を決めなきゃいけないね…」
パリンと音がして、魔石が割れ粉々になって消えていく。その瞬間、リディアの身体が少しだけ光って全身に本来の魔力が戻っていった。
「リディア…これで君は自由だ。もうどこへでも行けるよ…」
リディアは長年自分を縛っていた拘束が解け、清々しい気持ちになると同時に、いきなりベルダとの繋がりが絶たれた事で焦りを感じていた。
アリーは不安な時どうしていただろうか…自分の心に素直に行動する事は魔物として当然の事だ。
リディアはベルダを抱きしめ、ツタとツルを絡みつけた。
「リディア…?」
「ゔぇ…るぅ…だぁ…」
「リディア…君、言葉が…」
「べぇるだ…あい…し…てぇ…る…」
「リディア!!そうか…ずっとアリーの影響を受けていたのか!それが魔力制限で開花せずにいたんだ…僕はなんて愚かなんだろうね…君から奪ってばかりで…情けない…」
「べぇるだぁ…あいしてぇる…」
「こんな僕でも君は側にいてくれるかい…?君をずっと閉じ込めて、良いように使っていたのに?」
ベルダがリディアの言葉に感動していると、その背中をアリーが蹴りながら口を挟んだ。
「オイ メガネ リディアカ゚ マモノジャ ナクナッタラ リディアノコト ステルノカ?」
「情緒も何も無いな!アリー少し待ってくれ、こう言うのには雰囲気とかタイミングっていうものがあるんだよ!?」
「アリーちゃん、邪魔しちゃダメ!!」
ヴィオラが慌ててアリーを向こうへ連れて行き、リディアとベルダが二人切りになると、一呼吸置いて、ついに観念したベルダがリディアを抱きしめ返した。
「ドライアドとか魔物とかなんてどうでもいいよ。リディアが居てくれないと、僕はもうダメなんだ。こんなどうしようもない人間でも君は本当にいいのかい?」
リディアが黙ってベルダにキスをするのを、ヴィオラは感動しながらこっそりと眺めていた。
(いいなぁ…)
(魔物と人間の愛情物語なんてお話になりますねぇ!)
(あ、エリック様…あれ?デイビッド様は?)
(途中からオーブンの方に行っちゃいました。)
(リディア シアワセソウ)
(そうなの!好きな人と気持ちを確かめ合えるのってすごく幸せな事なんだよ…)
(ヴィオラモ?)
(もちろん!でもね、気持ちの伝え方ってたくさんあるの。私はデイビッド様の不器用な愛情表現も大好きよ?)
(ウチのも究極的にヘタレだからなぁ…)
そこへパンの焼き上がる匂いがして、ヴィオラのお腹がクゥと鳴った。
「そうだ!朝ごはん!」
テーブルには既に玉ねぎのスープとツヤツヤの丸パン、卵のサラダと厚切りベーコン、ウサギ肉の蒸し焼きが並び、ハーブティーが湧いている。
いつの間にか靄が晴れ、風も吹いて来た。
少し冷めたコーヒーを飲むベルダの隣に座ったリディアは、今までで一番幸せそうだった。
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