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7代目デュロック辺境伯爵編
7代目デュロック辺境伯爵
テレンスは、鞄にたくさんの書類と、自分で書き起こした路線の計画図面を持って来ていた。
「卒業したら直ぐに着工したいんだ!その為にも何としてもここで話をまとめないとと思ってる!」
「頑張って下さいね!」
「デュロック先生が居なくて、皆寂しがってました。ヴィオラ様のお友達も、早く会いたいって。」
「私もです!お休みが終わるまでには帰りますからね。」
「そしたら何か美味しい物作ってもらわなくちゃ!」
「また皆でご飯食べたいですね!」
ようやく笑ったヴィオラは、汽車が数駅を過ぎる間、2人と気兼ねなくお喋りを楽しむと、メルの街に着いたので仕方なく汽車を降りた。
「お気を付けて!また学園で会いましょう!」
「お2人も、楽しんで来て下さいね!」
「さよならミス・ヴィオラ!エリック先生も!」
「デュロック先生によろしく!」
にこやかに友人達と分かれると、別のドアから降て来たジョエルが慌てて追いかけて来た。
「どこに行っていたんです?探しても見つからないし、心配したんですよ!?」
「友人と偶然会ったのでお話しておりました。」
実はエリックがこっそり認識阻害の魔法を展開していたので、ジョエルにはヴィオラ達が見つけられなかったようだ。
「意地の悪いことをなさらないで下さい!今日の貴女のお相手は、この私なのですからね!?」
「頼んでなどおりません。」
「でも、誘いには乗って下さったではありませんか?」
「婚約者の親族がどのような考えをお持ちか、見ておきたかっただけですわ。」
ヴィオラが照れているだけだと本気で思い込んでいるジョエルと、今すぐにでもサウラリースへ戻り、昨日見かけた露天のパフェを食べてみたいと思っているヴィオラ。
(いい加減脈ナシって気づけよなぁクソガキが…)
更に内心大荒れのエリックが、後ろからついて行く。
連れて行かれた繁華街は、確かに貴族と見られる着飾った人々で溢れ大層な賑わいだが、ヴィオラの心に刺さる物は一つも置いていない。
ドレス、ジュエリー、化粧品、高級魔道具、香水に紅茶にお菓子…
「どうです!素晴らしいでしょう?ヴィオラ嬢の気に入る店が必ず見つかりますよ!?」
「そうですか?」
ツンと澄ましてジョエルの後を歩いていると、店沿いにどこかで見覚えのあるマークが目に付いた。
(これ…どこかで見たような…)
「ここは文具を扱う専門店なんです。入ってみますか?」
(いつも目にしてる様な…あ!そっか!)
ヴィオラが気が付いて後ろを向くと、エリックもショーウインドゥを覗いて目を細めていた。
(そうだ、エリック様のペン!)
店の商品には皆、小さな銀色の小鳥が描かれている。
エリックがいつも胸元に挿しているペンと同じ模様だ。
「ここのペンは使いやすくて私も愛用しているんです。プレゼント等にも喜ばれるんですよ!」
(なるほどね…)
7年前、デイビッドに嫌がらせのプレゼントを贈った家のひとつが判明し、エリックの中でジョエルは完全な敵と認識された。
忘れもしないデイビッドの12歳の誕生日。
あの日受け取らされた慰謝料代わりのペンを、エリックはあれからずっと使っている。
ヴィオラは、別段興味もなさげな素振りで店前を通り過ぎると、繁華街の通りを無言で歩いて行った。
(ロゼ…ロゼの町…この次か…)
デイビッドが、総領に指定された時間にロゼの町に到着し、別荘地への道を調べていると、横から馬車が現れ総領が顔を出した。
「時間通りですね。さ、行きますよ?」
「はぁ…あの、親父を捕まえてなんの話合いをするんですか?」
「デュロックの今後に最も影響する、重要な話し合いです。貴方も無関係ではないのよ?。」
馬車に乗せられ向かった先には、きらびやかな貴族専用の別荘が並んでいた。
その中のひとつに、デイビッドにすら目視出来るほどの結界が重ね掛けされた建物が見えて来る。
「あそこよ。」
「ぅわぁ…」
門を潜ると、まずはキンキンとした女性の叫び声が響いて来た。
「あれ程総領様にご迷惑を掛けるなと念を押したのに!アナタと来たら!!」
「ごめんよぉ!」
「当主印を息子に押し付けてた上に、口先三寸で王都の事業を全て放って来るなんて、無責任にも程があります!!」
「だって、やっと外交の仕事から解放されたんだ。少しくらい羽根を伸ばしたいと思って…」
「羽根を伸ばすなら責任を取ってからになさいと、いつも言っているでしょう!?いきなり雲隠れして、一体どれだけの人を困らせたら気が済むの!いい歳してみっともない!!」
あまり聞きたくない母親の怒鳴り声に、デイビッドはうんざりしたが、総領は涼しい顔で横から声を掛けた。
「お久しぶりですねカトレア。いつにも増して元気そうでなによりです。」
「これは総領様!ご無沙汰しておりました。この度は夫の愚行に気がつけず、誠に申し訳ございません!」
「いいのよ。甥がいつも迷惑をかけてこちらこそ申し訳ないわ。」
久々に見るカトレアは、何年経っても変わらず美しいまま。
その足元には、樽に詰め込まれ頭だけ出した父ジェイムスが転がっていた。
「ひとまず出してやって。話ができないから…」
「そうですね!この期に及んで逃げ出しはしないでしょう。」
バキバキと壊された樽から転がり出したジェイムスは、息子の足元で体のあちこちを擦りながら立ち上がり、総領に挨拶した。
「これは叔母上、お久しぶりです。」
「本当に。いつも逃げ足だけは速くて困るわ。今日こそ我が家門に平穏が訪れると願いたいものですね。」
「デイビッドも元気そうで何よりだ!」
「面倒事押し付けられて以来だなクソ親父…」
「デイビッド!またそんな口の利き方をして!総領様の前ですよ!?」
部屋の中へ通されると、陽の当たるサロンで最新型の魔導式機械人形がお茶の支度をしていた。
椅子に座らされると、これも何かしらの魔道具なのだろう、座面からは妙な涼しさが感じられるが、デイビッドには居心地の悪さと不快感しかない。
出された茶器も全てが魔道具。
案の定、紅茶のカップからは何の香りも感じることはできなかった。
「それで、お話とはなんでしょうか、叔母上?」
「そうそう、今日はとても大切な今後の話をしようと思って来たのよ。」
そう言うと、総領はテーブルに数枚の書類を差し出した。
「ジェイムス、今日この時を以て、貴方を当主から解任致します。」
「それは!本当ですか叔母上!?」
「ええ、嘘ではないわ。」
「やったぁ!これで私は解放され…」
「そして今この時より、貴方を次期総領に指名し、教育し直します。」
「そんなぁっ!何故です叔母上!当主としての任を果たせば、私を自由にして下さると約束したではありませんか!!」
「貴方の王家直属の外交管としての功績は認めます。で・す・が!他の事業と商品開発に関してはなんですか!?目先の結果ばかり追い求めて周囲を振り回し、成果を急がせては人材を使い潰してばかりの非人道的事業形態!思い付きで人を動かしたかと思えば、あっさり自分だけ手を引いて中途半端に残された者達の事は考えず、指示や確認を取ろうにもふらふら出歩いてばかり!承認がないまま途方に暮れる従業員達の事は気にするどころか忘れる始末!報酬さえ払えば良いと言う考えにも賛同しかねます。これで当主として役目を果たしたと言えますか?貴方に必要なのは責任感と権利に対する義務の遂行です。まずは展開した全ての事業と魔道具の開発に関わる研究が収拾するまで、グロッグマン商会の囲う屋敷から出る事を禁じます!監視はカトレア、貴女に任せますよ?今までの様に手に負えないからと夫の行動を見て見ぬ振りしない様に。良いですね!?」
「も…申し訳ありません、叔母上…」
「私も…当主夫人としての配慮が足りませんでした…お役目、然とお受けします…」
デュロックで最も怒らせてはならない人物の怒りを盛大に買った当主夫妻は、身動ぎもできず頭を垂れている。
デイビッドはその横でなるべく音を立てずにじっとしていた。
しかし、次の言葉に思わず顔を上げてしまった。
「そしてもう一つ、新たな当主にはこのデイビッドを据えようと思います。」
「え!?俺…ですか?その…いずれかはと思っていましたが、こんなに早く…?」
「あと10年も待ってたら、この男1人のせいで長年積み上げた我が家の信用が地に落ちます!そんな沈みかけの泥舟を次代に負わせるわけには行きません。それに、貴方の話はもう聞かせてもらいました。王都でも素晴らしい成果を出し続けているそうですね?」
「たった1日で何か分かりました?」
「少なくとも貴方が主体の事業と、他国からの評価は正しく得られました。それだけで十分資格はあるわ。」
「その程度、出来て当たり前と言われておりましたので、実感が持てません。親父は大天才と名高く、俺の何倍もの稼ぎがあり、人を使う事に長けていたと聞いておりましたので…」
「いくら稼ごうと3分の2は潰した事業の負債の穴埋めよ?人に押しつけた仕事に結果を求め過ぎて、古参の従業員達からは恨まれているし、発明家なんて言うけれど、自分は思いつくだけ。開発はほとんど人任せで成功した物の3倍は失敗しているの。外交だけしていればよかったものを、これ以上は看過できないわ。」
「知らなかった…そりゃ最悪だな!」
「その点、貴方の下についた者達は皆一様に貴方を褒めているそうよ?気遣いも細やかで、何かあればいつでも対応してくれる上に、体調や家族の事まで気にかけてくれるとね。事業主の鑑だわ。」
「別に…経験上、必要な事をしてるだけですよ。」
「その経験無くして人の上に立てるものではありません。働く者の声と視点を理解する貴方こそ、このデュロックの当主に相応しい人物です!」
「そうですか…?」
「何より当主印が貴方を認めました。このデュロック総領ロザリアが、デイビッド・デュロックを、ここに第7代目デュロックの当主として定めます。」
その言葉に、とうとう観念したデイビッドは総領に最高の礼を取った。
「謹んで、お受け致します…」
渡されたペンで箔押しの特別な書類にサインし、当主印を押すと、総領は慈しむようにデイビッドを見つめ、にっこりと微笑んだ。
「卒業したら直ぐに着工したいんだ!その為にも何としてもここで話をまとめないとと思ってる!」
「頑張って下さいね!」
「デュロック先生が居なくて、皆寂しがってました。ヴィオラ様のお友達も、早く会いたいって。」
「私もです!お休みが終わるまでには帰りますからね。」
「そしたら何か美味しい物作ってもらわなくちゃ!」
「また皆でご飯食べたいですね!」
ようやく笑ったヴィオラは、汽車が数駅を過ぎる間、2人と気兼ねなくお喋りを楽しむと、メルの街に着いたので仕方なく汽車を降りた。
「お気を付けて!また学園で会いましょう!」
「お2人も、楽しんで来て下さいね!」
「さよならミス・ヴィオラ!エリック先生も!」
「デュロック先生によろしく!」
にこやかに友人達と分かれると、別のドアから降て来たジョエルが慌てて追いかけて来た。
「どこに行っていたんです?探しても見つからないし、心配したんですよ!?」
「友人と偶然会ったのでお話しておりました。」
実はエリックがこっそり認識阻害の魔法を展開していたので、ジョエルにはヴィオラ達が見つけられなかったようだ。
「意地の悪いことをなさらないで下さい!今日の貴女のお相手は、この私なのですからね!?」
「頼んでなどおりません。」
「でも、誘いには乗って下さったではありませんか?」
「婚約者の親族がどのような考えをお持ちか、見ておきたかっただけですわ。」
ヴィオラが照れているだけだと本気で思い込んでいるジョエルと、今すぐにでもサウラリースへ戻り、昨日見かけた露天のパフェを食べてみたいと思っているヴィオラ。
(いい加減脈ナシって気づけよなぁクソガキが…)
更に内心大荒れのエリックが、後ろからついて行く。
連れて行かれた繁華街は、確かに貴族と見られる着飾った人々で溢れ大層な賑わいだが、ヴィオラの心に刺さる物は一つも置いていない。
ドレス、ジュエリー、化粧品、高級魔道具、香水に紅茶にお菓子…
「どうです!素晴らしいでしょう?ヴィオラ嬢の気に入る店が必ず見つかりますよ!?」
「そうですか?」
ツンと澄ましてジョエルの後を歩いていると、店沿いにどこかで見覚えのあるマークが目に付いた。
(これ…どこかで見たような…)
「ここは文具を扱う専門店なんです。入ってみますか?」
(いつも目にしてる様な…あ!そっか!)
ヴィオラが気が付いて後ろを向くと、エリックもショーウインドゥを覗いて目を細めていた。
(そうだ、エリック様のペン!)
店の商品には皆、小さな銀色の小鳥が描かれている。
エリックがいつも胸元に挿しているペンと同じ模様だ。
「ここのペンは使いやすくて私も愛用しているんです。プレゼント等にも喜ばれるんですよ!」
(なるほどね…)
7年前、デイビッドに嫌がらせのプレゼントを贈った家のひとつが判明し、エリックの中でジョエルは完全な敵と認識された。
忘れもしないデイビッドの12歳の誕生日。
あの日受け取らされた慰謝料代わりのペンを、エリックはあれからずっと使っている。
ヴィオラは、別段興味もなさげな素振りで店前を通り過ぎると、繁華街の通りを無言で歩いて行った。
(ロゼ…ロゼの町…この次か…)
デイビッドが、総領に指定された時間にロゼの町に到着し、別荘地への道を調べていると、横から馬車が現れ総領が顔を出した。
「時間通りですね。さ、行きますよ?」
「はぁ…あの、親父を捕まえてなんの話合いをするんですか?」
「デュロックの今後に最も影響する、重要な話し合いです。貴方も無関係ではないのよ?。」
馬車に乗せられ向かった先には、きらびやかな貴族専用の別荘が並んでいた。
その中のひとつに、デイビッドにすら目視出来るほどの結界が重ね掛けされた建物が見えて来る。
「あそこよ。」
「ぅわぁ…」
門を潜ると、まずはキンキンとした女性の叫び声が響いて来た。
「あれ程総領様にご迷惑を掛けるなと念を押したのに!アナタと来たら!!」
「ごめんよぉ!」
「当主印を息子に押し付けてた上に、口先三寸で王都の事業を全て放って来るなんて、無責任にも程があります!!」
「だって、やっと外交の仕事から解放されたんだ。少しくらい羽根を伸ばしたいと思って…」
「羽根を伸ばすなら責任を取ってからになさいと、いつも言っているでしょう!?いきなり雲隠れして、一体どれだけの人を困らせたら気が済むの!いい歳してみっともない!!」
あまり聞きたくない母親の怒鳴り声に、デイビッドはうんざりしたが、総領は涼しい顔で横から声を掛けた。
「お久しぶりですねカトレア。いつにも増して元気そうでなによりです。」
「これは総領様!ご無沙汰しておりました。この度は夫の愚行に気がつけず、誠に申し訳ございません!」
「いいのよ。甥がいつも迷惑をかけてこちらこそ申し訳ないわ。」
久々に見るカトレアは、何年経っても変わらず美しいまま。
その足元には、樽に詰め込まれ頭だけ出した父ジェイムスが転がっていた。
「ひとまず出してやって。話ができないから…」
「そうですね!この期に及んで逃げ出しはしないでしょう。」
バキバキと壊された樽から転がり出したジェイムスは、息子の足元で体のあちこちを擦りながら立ち上がり、総領に挨拶した。
「これは叔母上、お久しぶりです。」
「本当に。いつも逃げ足だけは速くて困るわ。今日こそ我が家門に平穏が訪れると願いたいものですね。」
「デイビッドも元気そうで何よりだ!」
「面倒事押し付けられて以来だなクソ親父…」
「デイビッド!またそんな口の利き方をして!総領様の前ですよ!?」
部屋の中へ通されると、陽の当たるサロンで最新型の魔導式機械人形がお茶の支度をしていた。
椅子に座らされると、これも何かしらの魔道具なのだろう、座面からは妙な涼しさが感じられるが、デイビッドには居心地の悪さと不快感しかない。
出された茶器も全てが魔道具。
案の定、紅茶のカップからは何の香りも感じることはできなかった。
「それで、お話とはなんでしょうか、叔母上?」
「そうそう、今日はとても大切な今後の話をしようと思って来たのよ。」
そう言うと、総領はテーブルに数枚の書類を差し出した。
「ジェイムス、今日この時を以て、貴方を当主から解任致します。」
「それは!本当ですか叔母上!?」
「ええ、嘘ではないわ。」
「やったぁ!これで私は解放され…」
「そして今この時より、貴方を次期総領に指名し、教育し直します。」
「そんなぁっ!何故です叔母上!当主としての任を果たせば、私を自由にして下さると約束したではありませんか!!」
「貴方の王家直属の外交管としての功績は認めます。で・す・が!他の事業と商品開発に関してはなんですか!?目先の結果ばかり追い求めて周囲を振り回し、成果を急がせては人材を使い潰してばかりの非人道的事業形態!思い付きで人を動かしたかと思えば、あっさり自分だけ手を引いて中途半端に残された者達の事は考えず、指示や確認を取ろうにもふらふら出歩いてばかり!承認がないまま途方に暮れる従業員達の事は気にするどころか忘れる始末!報酬さえ払えば良いと言う考えにも賛同しかねます。これで当主として役目を果たしたと言えますか?貴方に必要なのは責任感と権利に対する義務の遂行です。まずは展開した全ての事業と魔道具の開発に関わる研究が収拾するまで、グロッグマン商会の囲う屋敷から出る事を禁じます!監視はカトレア、貴女に任せますよ?今までの様に手に負えないからと夫の行動を見て見ぬ振りしない様に。良いですね!?」
「も…申し訳ありません、叔母上…」
「私も…当主夫人としての配慮が足りませんでした…お役目、然とお受けします…」
デュロックで最も怒らせてはならない人物の怒りを盛大に買った当主夫妻は、身動ぎもできず頭を垂れている。
デイビッドはその横でなるべく音を立てずにじっとしていた。
しかし、次の言葉に思わず顔を上げてしまった。
「そしてもう一つ、新たな当主にはこのデイビッドを据えようと思います。」
「え!?俺…ですか?その…いずれかはと思っていましたが、こんなに早く…?」
「あと10年も待ってたら、この男1人のせいで長年積み上げた我が家の信用が地に落ちます!そんな沈みかけの泥舟を次代に負わせるわけには行きません。それに、貴方の話はもう聞かせてもらいました。王都でも素晴らしい成果を出し続けているそうですね?」
「たった1日で何か分かりました?」
「少なくとも貴方が主体の事業と、他国からの評価は正しく得られました。それだけで十分資格はあるわ。」
「その程度、出来て当たり前と言われておりましたので、実感が持てません。親父は大天才と名高く、俺の何倍もの稼ぎがあり、人を使う事に長けていたと聞いておりましたので…」
「いくら稼ごうと3分の2は潰した事業の負債の穴埋めよ?人に押しつけた仕事に結果を求め過ぎて、古参の従業員達からは恨まれているし、発明家なんて言うけれど、自分は思いつくだけ。開発はほとんど人任せで成功した物の3倍は失敗しているの。外交だけしていればよかったものを、これ以上は看過できないわ。」
「知らなかった…そりゃ最悪だな!」
「その点、貴方の下についた者達は皆一様に貴方を褒めているそうよ?気遣いも細やかで、何かあればいつでも対応してくれる上に、体調や家族の事まで気にかけてくれるとね。事業主の鑑だわ。」
「別に…経験上、必要な事をしてるだけですよ。」
「その経験無くして人の上に立てるものではありません。働く者の声と視点を理解する貴方こそ、このデュロックの当主に相応しい人物です!」
「そうですか…?」
「何より当主印が貴方を認めました。このデュロック総領ロザリアが、デイビッド・デュロックを、ここに第7代目デュロックの当主として定めます。」
その言葉に、とうとう観念したデイビッドは総領に最高の礼を取った。
「謹んで、お受け致します…」
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