416 / 512
黒豚令息の領地改革編
ホーム
デュロック領を出てから3日目の昼過ぎ。
船はついにラムダ運河の最終地点ベルル湖の港へ到着した。
「買ったもんが3分の2消えてる!?」
「食べちゃいました。」
「かなり広めの収納にぎっちり入ってたのに!?」
「果物美味しかったです!」
「フカフカのパンみたいなヤツ、アレ今度作りなさいよ。」
「あんだけ食えば流石に腹回りとかに肉…ガッ!!」
船の積み荷を荷車に積み替え中、鼻血が止まらなくなったデイビッドは桟橋にしゃがんで湖面を眺めていた。
乱暴に拭った血を払うと、ポタポタと水に赤い筋が沈んでいく。
「カププポコポコポコパクパク」
「出たな水妖語…」
「君はやっぱりおいしいね またおいで だってさ」
「世話になったって、礼だけ言っといてくれ…」
やはりあまり仲良くはなれそうにない水妖達に、ルーチェを通して礼を言い、慣れた港に降りる。
「よし、帰るか!」
馬車に乗り換えた一行は、ゴトゴト揺れる馬車の中で、全員夜まですっかり眠ってしまっていた。
「ぷはぁっ!気持ちいい!」
「長旅の後のお風呂は最高ね!この風呂釜…やっぱり欲しいわ…」
いつもはエリックしか使わない風呂釜の魔道具に今日はヴィオラとシェルリアーナが浸かっている。
その間にデイビッドは荷物を研究室に運び込み、エリックが部屋の中をザッと掃除する。
ホコリもほとんど無く、キレイに使われていたようだ。
先に風呂から上げられて来たライラに、軽く食事をさせて服を取り替え布団に寝かせてやると、エリックもカウチに寝転んだ。
「はぁー…なんだかんだ落ち着いてしまいますね…ここ部屋じゃないのに!」
「そろそろ…ちゃんとした部屋っつーか、家っつーか…用意しねぇとな…」
「やっとその気になりました!?」
「いや…もう少ししたら、臨時講師なんてやってられなくなりそうでよ…」
「え?なんで…?」
「デュロックの総領に、7代目を引き継がされた。あと半月もしない内に、俺は“次期当主”じゃなくなる。」
「それは…おめでとう…ございます…?」
「拠点がここじゃ色々不便も出てくる。そろそろ潮時なんだろうな。」
「それでは、契約の方も?」
「ああ、中途半端な時期に申し訳ないが、反故にさせてもらうしかないだろうな。」
「せっかくここで上手くやって来てたのにぃ…」
「仕方ない。それに、いきなり切るわけじゃない。少しずつ変えてって、タイミング見て…だな…」
「そっかぁ。さみしくなりますね。」
湯上がりの淑女2人が、氷たっぷりのフルーツティーを飲み干して転移陣から自室へ戻って行くと、デイビッドはしみじみと帰ってきた実感が湧いて、少しだけ疲れていることに気が付いた。
(明日は…なにしよう…)
夏休みはまだ残っている。
久々に休みらしい休みを過ごしてみようか、などと考えている内に、デイビッドも目を閉じた。
次の朝、いつもは早朝からやって来るヴィオラもシェルリアーナも、今日はどちらも部屋から出て来ない。
朝一で大砂鳥の卵を回収に来てくれた騎士化の生徒達に礼を言い、卵を2~3個分けてもらうと残りを全て渡してしまう。
まだ寝ているライラをエリックに預け、今日は少し外に出てあちこち回る予定だ。
デュロック領から帰る前に商会に知らせを入れておいたので、今日は届いているはずの荷物を受け取りに行こうと、家畜小屋のムスタを起こした。
「ブヒヒン!」
「よぉ、ちゃんとキレイにしてもらってんじゃねぇか。よかったな。」
「ブルルルッ!」
「わかってるって、今日は少し走ろうぜ!」
鞍に飛び乗ると、小屋の中をぐるりと回ったムスタが裏口の門目掛けて駆けて行く。
「お気を付けて!」
開いた門の前にいたウィルム青年が、駆け抜けるデイビッドに敬礼した。
(アイツまだやってんのか…)
郊外の商会支部に着くと、倉庫に積み上げられた自分宛の荷物をひとつひとつ開けて中身を調べて行く。
木箱の中に詰められていたのは、黄色の細長い果実がいくつもぶら下がった房状の奇妙な果物。
1本を千切って手に持ち、上から皮をむしるとキレイに剥けて、中からクリーム色をした果肉が現れた。
一口かじると、軟らかくねっとりほくほくとした食感と共に、濃い甘みとわずかな酸味が口に広がった。
十分商品として見込める品質に満足はしたが、まだこちらでは珍しいため、どこまで受け入れられるか見極める必要がある。
次の荷物には、厚い紙に包まれた瓶が並べられていた。
そっとめくると、中には真っ黒な液体と、透明な水の様な液体が揺れている。
最後の両手の平に乗る程の大きさの箱の中からは、緩衝材と布に包まれた石が2つ現れた。
雪と氷の国キリフで採れる魔石の原石で、濃い青と水色がひとつずつ。
純度の高い魔石は、磨く前から透明感があって既に美しい。
荷物を確認すると、全て荷馬車に積んで学園に戻った。
「お帰りなさいませ!」
「エライ真面目にやってんな…」
「ええ、彼が来てから本当に助かっております。こちら、お留守の間にデイビッド先生を訪ねて来られた方々のお名前を控えておきました。」
「悪いな、いつも助かる。」
「いえいえ、こちらこそ。」
老門番に差し入れの包みを渡すと、ムスタを連れてまずは騎士科へ足を向ける。
「あ!デイビッド先生だ!」
「先生ー!どこ遊び行ってたの?」
「遊びじゃねぇよ。コールマン卿いるか?」
「いるよ。こっち!」
「デニス先生ー!デイビッド先生が呼んでるーっ!」
賑やかな1年生達の後ろから、今日はシャツ1枚のコールマン卿がやって来た。
「デイビッド殿!いかがでしたかなご領地の方は。」
「俺の出る幕は無いってとこだな。今まで通り、俺は王都暮らしだよ。それより、前言ってた品が届いたんで持って来た。見てくれよ。」
「おお!これが!?」
箱の中に詰まった黄色の大きな房を見て、コールマンはためらわず手を出した。
「ひとつ味見しても?!」
「ああ、食ってみてくれよ。」
「ほう…皮をこう…手で剥けるというのは、なんともありがたい!味は…うむ!甘くてやわらかくて、種もなく食べやすい!鍛錬の合間にこれ程適した補給は無い!素晴らしい食べ物だ!なるほど、これがバナナか!!」
「栄養価も高いし、食い出もあって間食にも向いてる。腹っぺらしの多いここならみんな食うだろ。」
「もちろん!生徒が食べないと言うなら、私が責任持って消費を…」
「あー!先生ズルいーっ!」
「その黄色いの美味い?!果物なの?」
「食べていい?」
「おう!運ぶの手伝ってくれたらな。」
「「やったぁーー!!」」
南の国からやって来た果物、プラータノ。またの名を“バナナ”。
カカオの原生林と共生していた株を増やし、やっと出荷に耐えられる量の栽培に成功したこの果実は、今まで輸送の段階で傷んでしまうため現地で消費するだけだったが、収穫後に追熟が可能であることに着目し、適切な収穫時期を見極めるため実験を重ね、ようやく大量輸送に耐えられる様になったばかり。
見た目よりデリケートなこの果物は、今後市井の低層民達を支える食品として広める予定だ。
栄養価に優れ、何より甘く食べやすいことから、特に子供の食事と栄養の補助になればと考えている。
手始めに、ここ騎士科と商会の従業員、そして乳児院、養護施設への供給を安定させ、いずれは市井に流すつもりだ。
「いつもながら、かたじけない!デイビッド殿が来てから、たった1年で騎士科は見違えるほど生まれ変わった…何より何も見えていなかった己が不甲斐ない。」
「いやいや、コールマン卿みたいな真面目なヤツが屋台骨だったから潰れずやって来れてたんだ。俺のはただのテコ入れと粗探し。本気で生徒とぶつかり合える指導者の方が、何倍も貴重でありがたいもんさ。」
「…~ッデイビッド殿ぉぉ!!」
「暑苦しい!こっち来んな!!」
両手を広げて追って来るコールマンから逃げたデイビッドは、研究室に戻ると棚の奥に瓶をしまい込んだ。
「なんですか、それ?」
「コレか?エルム帝国“ミヤビ”の更に奥にある“アサギ”って隠れ里で作られてる“タマリ”の一種と蒸留酒だよ。」
「それはまた珍品ですね。」
「手に入れるのはかなり骨だったが…これは期待できるぞぉ…」
「うわぁなんか楽しそう…」
「それから、ほらよ。コレはお前のだ。」
「なんですこれ?」
「開けてみな。」
「これは…魔石!?しかもこの濃い碧…まさか“キリフブルー”…こっちはブルーベリル!?どっちも王族が身に付ける魔宝石ですよね!?」
「鏡見ろよ。」
「まさか…僕とシェリィの瞳の色ですか!?」
「いいだろ?!俺から婚約祝いだとでも思っとけ。」
「は?!受け取れませんよこんなん!!大体いくらすると思って…」
「その大きさなら好きなカットが可能だろ?後は好きにしろ。加工はどこ持ってっていいが、ウチの工房ならいつでも使えるよう頼んであるからな。最高の一品に仕上げてやれよ?」
デイビッドはそう言い残すと、またムスタを連れて出て行ってしまった。
(太っ腹どころじゃないでしょうが…どうすんの…小粒の加工品ですら金貨5枚はするのに…)
拳2つ分はある原石は、透明度も高く最高級品である事が分かる。
(あーあ…そういうとこですよ、まったく…)
また出し抜かれたエリックは、魔石を包み直し、鍵のかかる引き出しの奥に大切にしまい込んだ。
デイビッドは養護施設にもバナナを届けると、次に郊外の更に外れ、鬱蒼と生い茂る木立の向こう側。自分の領地へと向かって行った。
ファルコとグリフォンがあれからどうなったか、ずっと気になっていたのだ。
通りから道の無い方へ進むと、足元がいつの間にか草地に変わり、どこかへと勝手に誘われて行く。
人の立ち入りを制限された妖精と精霊の領域に、デイビッドはムスタと共に入って行った。
船はついにラムダ運河の最終地点ベルル湖の港へ到着した。
「買ったもんが3分の2消えてる!?」
「食べちゃいました。」
「かなり広めの収納にぎっちり入ってたのに!?」
「果物美味しかったです!」
「フカフカのパンみたいなヤツ、アレ今度作りなさいよ。」
「あんだけ食えば流石に腹回りとかに肉…ガッ!!」
船の積み荷を荷車に積み替え中、鼻血が止まらなくなったデイビッドは桟橋にしゃがんで湖面を眺めていた。
乱暴に拭った血を払うと、ポタポタと水に赤い筋が沈んでいく。
「カププポコポコポコパクパク」
「出たな水妖語…」
「君はやっぱりおいしいね またおいで だってさ」
「世話になったって、礼だけ言っといてくれ…」
やはりあまり仲良くはなれそうにない水妖達に、ルーチェを通して礼を言い、慣れた港に降りる。
「よし、帰るか!」
馬車に乗り換えた一行は、ゴトゴト揺れる馬車の中で、全員夜まですっかり眠ってしまっていた。
「ぷはぁっ!気持ちいい!」
「長旅の後のお風呂は最高ね!この風呂釜…やっぱり欲しいわ…」
いつもはエリックしか使わない風呂釜の魔道具に今日はヴィオラとシェルリアーナが浸かっている。
その間にデイビッドは荷物を研究室に運び込み、エリックが部屋の中をザッと掃除する。
ホコリもほとんど無く、キレイに使われていたようだ。
先に風呂から上げられて来たライラに、軽く食事をさせて服を取り替え布団に寝かせてやると、エリックもカウチに寝転んだ。
「はぁー…なんだかんだ落ち着いてしまいますね…ここ部屋じゃないのに!」
「そろそろ…ちゃんとした部屋っつーか、家っつーか…用意しねぇとな…」
「やっとその気になりました!?」
「いや…もう少ししたら、臨時講師なんてやってられなくなりそうでよ…」
「え?なんで…?」
「デュロックの総領に、7代目を引き継がされた。あと半月もしない内に、俺は“次期当主”じゃなくなる。」
「それは…おめでとう…ございます…?」
「拠点がここじゃ色々不便も出てくる。そろそろ潮時なんだろうな。」
「それでは、契約の方も?」
「ああ、中途半端な時期に申し訳ないが、反故にさせてもらうしかないだろうな。」
「せっかくここで上手くやって来てたのにぃ…」
「仕方ない。それに、いきなり切るわけじゃない。少しずつ変えてって、タイミング見て…だな…」
「そっかぁ。さみしくなりますね。」
湯上がりの淑女2人が、氷たっぷりのフルーツティーを飲み干して転移陣から自室へ戻って行くと、デイビッドはしみじみと帰ってきた実感が湧いて、少しだけ疲れていることに気が付いた。
(明日は…なにしよう…)
夏休みはまだ残っている。
久々に休みらしい休みを過ごしてみようか、などと考えている内に、デイビッドも目を閉じた。
次の朝、いつもは早朝からやって来るヴィオラもシェルリアーナも、今日はどちらも部屋から出て来ない。
朝一で大砂鳥の卵を回収に来てくれた騎士化の生徒達に礼を言い、卵を2~3個分けてもらうと残りを全て渡してしまう。
まだ寝ているライラをエリックに預け、今日は少し外に出てあちこち回る予定だ。
デュロック領から帰る前に商会に知らせを入れておいたので、今日は届いているはずの荷物を受け取りに行こうと、家畜小屋のムスタを起こした。
「ブヒヒン!」
「よぉ、ちゃんとキレイにしてもらってんじゃねぇか。よかったな。」
「ブルルルッ!」
「わかってるって、今日は少し走ろうぜ!」
鞍に飛び乗ると、小屋の中をぐるりと回ったムスタが裏口の門目掛けて駆けて行く。
「お気を付けて!」
開いた門の前にいたウィルム青年が、駆け抜けるデイビッドに敬礼した。
(アイツまだやってんのか…)
郊外の商会支部に着くと、倉庫に積み上げられた自分宛の荷物をひとつひとつ開けて中身を調べて行く。
木箱の中に詰められていたのは、黄色の細長い果実がいくつもぶら下がった房状の奇妙な果物。
1本を千切って手に持ち、上から皮をむしるとキレイに剥けて、中からクリーム色をした果肉が現れた。
一口かじると、軟らかくねっとりほくほくとした食感と共に、濃い甘みとわずかな酸味が口に広がった。
十分商品として見込める品質に満足はしたが、まだこちらでは珍しいため、どこまで受け入れられるか見極める必要がある。
次の荷物には、厚い紙に包まれた瓶が並べられていた。
そっとめくると、中には真っ黒な液体と、透明な水の様な液体が揺れている。
最後の両手の平に乗る程の大きさの箱の中からは、緩衝材と布に包まれた石が2つ現れた。
雪と氷の国キリフで採れる魔石の原石で、濃い青と水色がひとつずつ。
純度の高い魔石は、磨く前から透明感があって既に美しい。
荷物を確認すると、全て荷馬車に積んで学園に戻った。
「お帰りなさいませ!」
「エライ真面目にやってんな…」
「ええ、彼が来てから本当に助かっております。こちら、お留守の間にデイビッド先生を訪ねて来られた方々のお名前を控えておきました。」
「悪いな、いつも助かる。」
「いえいえ、こちらこそ。」
老門番に差し入れの包みを渡すと、ムスタを連れてまずは騎士科へ足を向ける。
「あ!デイビッド先生だ!」
「先生ー!どこ遊び行ってたの?」
「遊びじゃねぇよ。コールマン卿いるか?」
「いるよ。こっち!」
「デニス先生ー!デイビッド先生が呼んでるーっ!」
賑やかな1年生達の後ろから、今日はシャツ1枚のコールマン卿がやって来た。
「デイビッド殿!いかがでしたかなご領地の方は。」
「俺の出る幕は無いってとこだな。今まで通り、俺は王都暮らしだよ。それより、前言ってた品が届いたんで持って来た。見てくれよ。」
「おお!これが!?」
箱の中に詰まった黄色の大きな房を見て、コールマンはためらわず手を出した。
「ひとつ味見しても?!」
「ああ、食ってみてくれよ。」
「ほう…皮をこう…手で剥けるというのは、なんともありがたい!味は…うむ!甘くてやわらかくて、種もなく食べやすい!鍛錬の合間にこれ程適した補給は無い!素晴らしい食べ物だ!なるほど、これがバナナか!!」
「栄養価も高いし、食い出もあって間食にも向いてる。腹っぺらしの多いここならみんな食うだろ。」
「もちろん!生徒が食べないと言うなら、私が責任持って消費を…」
「あー!先生ズルいーっ!」
「その黄色いの美味い?!果物なの?」
「食べていい?」
「おう!運ぶの手伝ってくれたらな。」
「「やったぁーー!!」」
南の国からやって来た果物、プラータノ。またの名を“バナナ”。
カカオの原生林と共生していた株を増やし、やっと出荷に耐えられる量の栽培に成功したこの果実は、今まで輸送の段階で傷んでしまうため現地で消費するだけだったが、収穫後に追熟が可能であることに着目し、適切な収穫時期を見極めるため実験を重ね、ようやく大量輸送に耐えられる様になったばかり。
見た目よりデリケートなこの果物は、今後市井の低層民達を支える食品として広める予定だ。
栄養価に優れ、何より甘く食べやすいことから、特に子供の食事と栄養の補助になればと考えている。
手始めに、ここ騎士科と商会の従業員、そして乳児院、養護施設への供給を安定させ、いずれは市井に流すつもりだ。
「いつもながら、かたじけない!デイビッド殿が来てから、たった1年で騎士科は見違えるほど生まれ変わった…何より何も見えていなかった己が不甲斐ない。」
「いやいや、コールマン卿みたいな真面目なヤツが屋台骨だったから潰れずやって来れてたんだ。俺のはただのテコ入れと粗探し。本気で生徒とぶつかり合える指導者の方が、何倍も貴重でありがたいもんさ。」
「…~ッデイビッド殿ぉぉ!!」
「暑苦しい!こっち来んな!!」
両手を広げて追って来るコールマンから逃げたデイビッドは、研究室に戻ると棚の奥に瓶をしまい込んだ。
「なんですか、それ?」
「コレか?エルム帝国“ミヤビ”の更に奥にある“アサギ”って隠れ里で作られてる“タマリ”の一種と蒸留酒だよ。」
「それはまた珍品ですね。」
「手に入れるのはかなり骨だったが…これは期待できるぞぉ…」
「うわぁなんか楽しそう…」
「それから、ほらよ。コレはお前のだ。」
「なんですこれ?」
「開けてみな。」
「これは…魔石!?しかもこの濃い碧…まさか“キリフブルー”…こっちはブルーベリル!?どっちも王族が身に付ける魔宝石ですよね!?」
「鏡見ろよ。」
「まさか…僕とシェリィの瞳の色ですか!?」
「いいだろ?!俺から婚約祝いだとでも思っとけ。」
「は?!受け取れませんよこんなん!!大体いくらすると思って…」
「その大きさなら好きなカットが可能だろ?後は好きにしろ。加工はどこ持ってっていいが、ウチの工房ならいつでも使えるよう頼んであるからな。最高の一品に仕上げてやれよ?」
デイビッドはそう言い残すと、またムスタを連れて出て行ってしまった。
(太っ腹どころじゃないでしょうが…どうすんの…小粒の加工品ですら金貨5枚はするのに…)
拳2つ分はある原石は、透明度も高く最高級品である事が分かる。
(あーあ…そういうとこですよ、まったく…)
また出し抜かれたエリックは、魔石を包み直し、鍵のかかる引き出しの奥に大切にしまい込んだ。
デイビッドは養護施設にもバナナを届けると、次に郊外の更に外れ、鬱蒼と生い茂る木立の向こう側。自分の領地へと向かって行った。
ファルコとグリフォンがあれからどうなったか、ずっと気になっていたのだ。
通りから道の無い方へ進むと、足元がいつの間にか草地に変わり、どこかへと勝手に誘われて行く。
人の立ち入りを制限された妖精と精霊の領域に、デイビッドはムスタと共に入って行った。
あなたにおすすめの小説
【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
⚪︎
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】
本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。
Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited.
© 魯恒凛 / RoKourin
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました
ねむ太朗
恋愛
伯爵令嬢のリリアーナは、小さい頃から、妹のエルーシアにネックレスや髪飾りなどのお気に入りの物を奪われてきた。
とうとう、婚約者のルシアンまでも妹に奪われてしまい……
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。