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黒豚令息の領地改革編
新たな噂
妖精達が隠した領地の入り口は、デイビッドが近づいただけで難なく開き、まずは放ったらかしにしてしまっていた畑が見えてきた。
「なんだこりゃ!?」
植えたのは、主に芋と豆と菜花、それから周辺に虫除けのハーブ類と、空いた所には薬草の種を適当に蒔いてある。
はずだった。
水やりがほとんど不要で、荒れた土地でも育てやすく、食の地盤となる野菜や植物を中心に選別して植えたつもりが、畑は一面の緑に覆われ、白や黄色の豆の花が咲き乱れている。
どの種類も支柱がしなる程大量の豆が鈴なりになり、どれもツヤツヤで美味しそうだ。
雑草も伸びたツルが邪魔してそこまで育っていない。
思わず手前のエンドウ豆を採ってみると、色も形も上出来で、少し手を動かしただけで袋いっぱい採れてしまった。
芋の葉っぱも順調に育ち、これなら秋にはかなりの収穫が見込めるだろう。
菜種を採るために植えた菜花も、そろそろ始めの花芽がつき始めている。
(順調過ぎる…)
正直この畑の開拓は実験のような物。多少作物が育てば恩の字程度の、本腰を入れたものではなかったはずだ。
目を凝らすと畑のあちこちに何か動くモノがいる。
(歩き草……!?)
どうやらこの畑にすっかり馴染んだ彼らが、手助けしてくれていたようだ。
(頼むからフツーにやらせてくれ!フツーに!!)
ムスタを連れ、いつものマロニエの木の所まで進むと、そこにも驚きが待ち構えていた。
(ん…?なんだ?やけに近くに木が生えて…こんな木あったっけか?!)
草原に生えている木はまばらで、周りに何もないので都合が良かったはずのマロニエのすぐ近くに、さらに大きな木が生えている。
よく見るとそれはリンゴの木だった。
根本に、いつぞやがデイビッドが立てた目印の旗が斜めに立っている。
間違いない、ヴィオラが植えて芽が出たリンゴだ。
(恩恵がエグい!!人の出入りを制限しといて正解だった…奇跡なんてちゃちなモンじゃねぇ、間違いなく土地に精霊の力が影響してる!)
畑の周りを一通りみてから、いよいよ森の中へ入ると、直ぐに聞き慣れた甲高い鳴き声が飛んで来た。
「キュルルピィーー!!」
「ファルコ!久しぶりだな!?どうだ?みんな元気してたか?!」
飛び付いて甘えに来たファルコを撫で回してやると、その後ろから茶色い毛玉がついてくる。
「「キィキィキィキィキィ!!!」」
「おお!グリフォンのヒナか!?でっかくなったなぁ!」
もうファルコの半分くらいはあるモフモフ達は、ファルコに懐いてどこまでもついて行く。
本来岩山の頂上付近に巣を作るグリフォンの雛は、巣から転げ落ちる事で飛行訓練を行うが、巣があるここは森の中のそれも地べたの上。
なので、ファルコが1羽1羽空へ連れて行き、上空で離して羽を広げる練習をさせている様だ。
3羽の内、2羽はすっかり風切り羽まで生え揃い、地上でも羽をよく動かしている。
しかし、最後の1羽だけまだお尻に産毛がくっついていて、上手く羽ばたけていない。
他の兄弟はそれを気にしながら、励ますように呼びかけている。
ファルコはそんな雛達が危なくないよう、付きっきりで世話を焼いていた。
「キュキュキュ」
「キュルルピィ」
「上手くやってるみたいで安心した。ファルコお前、育児が様になって、すっかりパパ…」
言ってから自分も似たようなモノだと気づいて、少しだけ虚しくなる。
「似た者同士だな…俺達…」
「キュルルル」
やがて母鳥が大きなツノイノシシを狩って戻って来た。
雛達は一斉に母の元へ駈けて行き、餌にありつこうと口を開けている。
(あの一番チビの奴が飛べるようになったら群れに帰るんだろうな…)
グリフォンは基本的に単独で狩りをしているが、繁殖期だけは雛の安全のため、狩りを覚える時期まで数頭から十数頭の群れを作る。
このグリフォンは、恐らくショーン伯爵領の先にある岩山から来たのだろう。
それも伴侶を置いて…
(嫁さんと卵を一度に失って…荒れてなきゃいいけどな…)
グリフォンのみならず魔物は雌が優勢なことが多いが、だからと言って雄が弱い訳では無い。
浅ましい人間の身勝手で、卵と番を失くした雄のグリフォンが、無茶をしていなければ良いと願うデイビッドだった。
帰りしな、王都の中にも入り商会へ顔を出すと、何やら表が騒がしい。
そっと様子を見ると、老齢の貴族女性がなにか喚いている。
「~~ですからそのような話に心当たりはありません!」
「なんでよ!私は間違いなく聞いたのよ!?」
「どなたかとお間違いではございませんか?」
「まぁ!なんて失礼な小娘なの!?いいから責任者を出しなさい!!」
(なんだありゃ?!)
(あ、デイビッド様!お帰りでしたか!!)
物陰から様子を見ていると、店の者達が急いでやって来た。
(なんか揉めてんの?)
(いえ…それが、あちらの御婦人が自分の娘をデイビッド様の妾にしろと仰っておりまして…)
(…迷惑な客なら出禁でいいんだぞ!?)
(それなのですが…実は数日前から何名かいらっしゃっているんですよ…その…デイビッド様が愛妾を集めていると噂を聞いたとかでやって来るお客様が…)
(そういうのは客として相手しなくていい!余程なら憲兵を呼んじまってもいいからな!?)
このままでは従業員達が仕事にならないと、デイビッドは仕方なく表の婦人の前に出て行った。
「おい、人の店先で騒いでんじゃねぇよ!」
「まぁ!なんて横柄な店員かしら!即刻クビにしなさい!」
「何言ってんだ?!」
「それはこちらの台詞よ!ここは貴族の客も多いグロッグマン商会よ?!貴方のようなゴロツキ紛いな従業員がいたら迷惑になるわ!そんな事もわからないの?これだから頭の悪い平民は図々しくてイヤなのよ。」
「…だったらこっちもお断りだな。店にも客を選ぶ権利がある。店先で喚いて営業妨害する上に、人を見下して簡単に侮辱する人間相手に商売はしたくない。えーと、なになに…フープ子爵家…確か魔道具専用の部品の仕入れ先だったな。娘は34歳!?出戻りの押し付け先にでもする気か?!」
「勝手に見ないで!」
「残念だが、この店の責任者は愛妾どころか他所の女に目移りすらしねぇよ。とんだデマに振り回されたなおばさん。さっさと帰んなよ。いつまでもいられちゃそれこそ迷惑だ。」
「なんて失礼な!貴族を怒らせたらどうなるか、身を持って知るがいいわ!!」
ケバい化粧の老婦人は、怒り心頭といった様子でやっと店から出て行った。
「ありがとうございます!若旦那!」
「なんかまたヘンな噂が立ってんな…しかも今回は実害か出た。やっぱ動くしかねぇのかなぁ…」
ただの話のネタではない。
今度は直接デイビッドの信用に関わる部類の悪質なものだ。
散々後回しにしていた社交界で、どんな噂が出回っているのか、少し探る必要がありそうだ…
ー嫌なコトがあった後には楽しいコトで口直しするんです!ー
ヴィオラはいつもそう言って楽しみを自分で見つけ、荒んだ心を癒していた。
最近はデイビッドもその考えに倣い、重苦しい気分をそのまま飲み込まず、別のことで発散しようとするようになった。
このところ、デイビッドは買い物が楽しい。
“買い物が”と言うより、何を買うにも必ずヴィオラの顔が思い浮かぶからだ。
トマトひとつ選ぶにしても、ヴィオラに何を作ろうか、どんな料理なら喜ぶかと考えるのが、堪らなく楽しくなっていた。
おかげで財布の紐は緩みっ放し。それでも一般的な貴族の出費と比べれば、かわいいものだ。
空っぽの研究室を満たすべく、まずはヴィオラの好きなもの…を作る材料。
次にエリックやシェルリアーナ達からしょっちゅうリクエストされるメニュー…の材料。
そしてライラのおやつ…の原料。
肉と野菜と穀類と、ハーブ、スパイス、調味料…
(既製品がほとんどねぇ!!)
自業自得である。
最後に果物をドサッと箱で買い付け、昼近くに学園に戻ると丁度ライラがゴキゲンに外で遊んでいるところだった。
「とななちた、たかた、でちた!」
「どうしたライラ?」
「あぶたたちた、おどどた、ののでちた!」
「…なんだか良くはわかんねぇが、なんか話になってるのか?」
「めでたちめでたち!」
「あー、婆ちゃんになんか読んでもらったんだろ?そっかぁ、ライラにもそういうの必要だな…」
子供の成長に、大人の語る物語りは欠かせない。
大人が何度も話しかけ、楽しい話を聞かせることで、子供は成長の中で言葉を覚え、会話を楽しむことができるようになるのだ。
(絵本と…なんか子供向けのおとぎ話とか…)
デイビッドには見当もつかないが、その辺りは専門家などに相談すれば大丈夫だろう。
(あっという間だったなぁ…)
剣を振り回したり、ドラゴンになったり、お姫様になったりと、忙しく遊ぶライラを見ていると、ついこの前まで歩くこともできない赤ん坊であったライラの成長の速さに、感慨深いものを感じ、嬉しくなる。
昼はゴマのパンと、トリのスープにトマトのサラダ、果物たっぷりの冷たいゼリー、そして“バナナ”。
「おはようございます!」
「もう昼だぞ…」
「師匠と語り合う夢見てたの…」
「頭、爆発してるのなんとかしろよ?」
「イ゙ャ゙ーーッ!!見ないでぇぇ!!」
髪がボサボサに跳ね上がったシェルリアーナが、洗面台に逃げて行く。
貴族令嬢ならば、たとえ家族の前だろうと身だしなみもせずに顔を見せることは無い。
ここまで気が緩むとは、正直デイビッドも思っていなかった。
1年前のシェルリアーナが見たら絶句するだろう。
ライラの手を洗い、全員揃ったところで、テーブルに昼食が並べられていく。
「はぁ…美味しい…やっぱり落ち着ける場所で食べるご飯が一番ですね!」
「そうか…」
来年までには、その“落ち着ける場所”を別に用意しなければならない。
改めて、良い家探しは責任重大な任務である。
「なんだこりゃ!?」
植えたのは、主に芋と豆と菜花、それから周辺に虫除けのハーブ類と、空いた所には薬草の種を適当に蒔いてある。
はずだった。
水やりがほとんど不要で、荒れた土地でも育てやすく、食の地盤となる野菜や植物を中心に選別して植えたつもりが、畑は一面の緑に覆われ、白や黄色の豆の花が咲き乱れている。
どの種類も支柱がしなる程大量の豆が鈴なりになり、どれもツヤツヤで美味しそうだ。
雑草も伸びたツルが邪魔してそこまで育っていない。
思わず手前のエンドウ豆を採ってみると、色も形も上出来で、少し手を動かしただけで袋いっぱい採れてしまった。
芋の葉っぱも順調に育ち、これなら秋にはかなりの収穫が見込めるだろう。
菜種を採るために植えた菜花も、そろそろ始めの花芽がつき始めている。
(順調過ぎる…)
正直この畑の開拓は実験のような物。多少作物が育てば恩の字程度の、本腰を入れたものではなかったはずだ。
目を凝らすと畑のあちこちに何か動くモノがいる。
(歩き草……!?)
どうやらこの畑にすっかり馴染んだ彼らが、手助けしてくれていたようだ。
(頼むからフツーにやらせてくれ!フツーに!!)
ムスタを連れ、いつものマロニエの木の所まで進むと、そこにも驚きが待ち構えていた。
(ん…?なんだ?やけに近くに木が生えて…こんな木あったっけか?!)
草原に生えている木はまばらで、周りに何もないので都合が良かったはずのマロニエのすぐ近くに、さらに大きな木が生えている。
よく見るとそれはリンゴの木だった。
根本に、いつぞやがデイビッドが立てた目印の旗が斜めに立っている。
間違いない、ヴィオラが植えて芽が出たリンゴだ。
(恩恵がエグい!!人の出入りを制限しといて正解だった…奇跡なんてちゃちなモンじゃねぇ、間違いなく土地に精霊の力が影響してる!)
畑の周りを一通りみてから、いよいよ森の中へ入ると、直ぐに聞き慣れた甲高い鳴き声が飛んで来た。
「キュルルピィーー!!」
「ファルコ!久しぶりだな!?どうだ?みんな元気してたか?!」
飛び付いて甘えに来たファルコを撫で回してやると、その後ろから茶色い毛玉がついてくる。
「「キィキィキィキィキィ!!!」」
「おお!グリフォンのヒナか!?でっかくなったなぁ!」
もうファルコの半分くらいはあるモフモフ達は、ファルコに懐いてどこまでもついて行く。
本来岩山の頂上付近に巣を作るグリフォンの雛は、巣から転げ落ちる事で飛行訓練を行うが、巣があるここは森の中のそれも地べたの上。
なので、ファルコが1羽1羽空へ連れて行き、上空で離して羽を広げる練習をさせている様だ。
3羽の内、2羽はすっかり風切り羽まで生え揃い、地上でも羽をよく動かしている。
しかし、最後の1羽だけまだお尻に産毛がくっついていて、上手く羽ばたけていない。
他の兄弟はそれを気にしながら、励ますように呼びかけている。
ファルコはそんな雛達が危なくないよう、付きっきりで世話を焼いていた。
「キュキュキュ」
「キュルルピィ」
「上手くやってるみたいで安心した。ファルコお前、育児が様になって、すっかりパパ…」
言ってから自分も似たようなモノだと気づいて、少しだけ虚しくなる。
「似た者同士だな…俺達…」
「キュルルル」
やがて母鳥が大きなツノイノシシを狩って戻って来た。
雛達は一斉に母の元へ駈けて行き、餌にありつこうと口を開けている。
(あの一番チビの奴が飛べるようになったら群れに帰るんだろうな…)
グリフォンは基本的に単独で狩りをしているが、繁殖期だけは雛の安全のため、狩りを覚える時期まで数頭から十数頭の群れを作る。
このグリフォンは、恐らくショーン伯爵領の先にある岩山から来たのだろう。
それも伴侶を置いて…
(嫁さんと卵を一度に失って…荒れてなきゃいいけどな…)
グリフォンのみならず魔物は雌が優勢なことが多いが、だからと言って雄が弱い訳では無い。
浅ましい人間の身勝手で、卵と番を失くした雄のグリフォンが、無茶をしていなければ良いと願うデイビッドだった。
帰りしな、王都の中にも入り商会へ顔を出すと、何やら表が騒がしい。
そっと様子を見ると、老齢の貴族女性がなにか喚いている。
「~~ですからそのような話に心当たりはありません!」
「なんでよ!私は間違いなく聞いたのよ!?」
「どなたかとお間違いではございませんか?」
「まぁ!なんて失礼な小娘なの!?いいから責任者を出しなさい!!」
(なんだありゃ?!)
(あ、デイビッド様!お帰りでしたか!!)
物陰から様子を見ていると、店の者達が急いでやって来た。
(なんか揉めてんの?)
(いえ…それが、あちらの御婦人が自分の娘をデイビッド様の妾にしろと仰っておりまして…)
(…迷惑な客なら出禁でいいんだぞ!?)
(それなのですが…実は数日前から何名かいらっしゃっているんですよ…その…デイビッド様が愛妾を集めていると噂を聞いたとかでやって来るお客様が…)
(そういうのは客として相手しなくていい!余程なら憲兵を呼んじまってもいいからな!?)
このままでは従業員達が仕事にならないと、デイビッドは仕方なく表の婦人の前に出て行った。
「おい、人の店先で騒いでんじゃねぇよ!」
「まぁ!なんて横柄な店員かしら!即刻クビにしなさい!」
「何言ってんだ?!」
「それはこちらの台詞よ!ここは貴族の客も多いグロッグマン商会よ?!貴方のようなゴロツキ紛いな従業員がいたら迷惑になるわ!そんな事もわからないの?これだから頭の悪い平民は図々しくてイヤなのよ。」
「…だったらこっちもお断りだな。店にも客を選ぶ権利がある。店先で喚いて営業妨害する上に、人を見下して簡単に侮辱する人間相手に商売はしたくない。えーと、なになに…フープ子爵家…確か魔道具専用の部品の仕入れ先だったな。娘は34歳!?出戻りの押し付け先にでもする気か?!」
「勝手に見ないで!」
「残念だが、この店の責任者は愛妾どころか他所の女に目移りすらしねぇよ。とんだデマに振り回されたなおばさん。さっさと帰んなよ。いつまでもいられちゃそれこそ迷惑だ。」
「なんて失礼な!貴族を怒らせたらどうなるか、身を持って知るがいいわ!!」
ケバい化粧の老婦人は、怒り心頭といった様子でやっと店から出て行った。
「ありがとうございます!若旦那!」
「なんかまたヘンな噂が立ってんな…しかも今回は実害か出た。やっぱ動くしかねぇのかなぁ…」
ただの話のネタではない。
今度は直接デイビッドの信用に関わる部類の悪質なものだ。
散々後回しにしていた社交界で、どんな噂が出回っているのか、少し探る必要がありそうだ…
ー嫌なコトがあった後には楽しいコトで口直しするんです!ー
ヴィオラはいつもそう言って楽しみを自分で見つけ、荒んだ心を癒していた。
最近はデイビッドもその考えに倣い、重苦しい気分をそのまま飲み込まず、別のことで発散しようとするようになった。
このところ、デイビッドは買い物が楽しい。
“買い物が”と言うより、何を買うにも必ずヴィオラの顔が思い浮かぶからだ。
トマトひとつ選ぶにしても、ヴィオラに何を作ろうか、どんな料理なら喜ぶかと考えるのが、堪らなく楽しくなっていた。
おかげで財布の紐は緩みっ放し。それでも一般的な貴族の出費と比べれば、かわいいものだ。
空っぽの研究室を満たすべく、まずはヴィオラの好きなもの…を作る材料。
次にエリックやシェルリアーナ達からしょっちゅうリクエストされるメニュー…の材料。
そしてライラのおやつ…の原料。
肉と野菜と穀類と、ハーブ、スパイス、調味料…
(既製品がほとんどねぇ!!)
自業自得である。
最後に果物をドサッと箱で買い付け、昼近くに学園に戻ると丁度ライラがゴキゲンに外で遊んでいるところだった。
「とななちた、たかた、でちた!」
「どうしたライラ?」
「あぶたたちた、おどどた、ののでちた!」
「…なんだか良くはわかんねぇが、なんか話になってるのか?」
「めでたちめでたち!」
「あー、婆ちゃんになんか読んでもらったんだろ?そっかぁ、ライラにもそういうの必要だな…」
子供の成長に、大人の語る物語りは欠かせない。
大人が何度も話しかけ、楽しい話を聞かせることで、子供は成長の中で言葉を覚え、会話を楽しむことができるようになるのだ。
(絵本と…なんか子供向けのおとぎ話とか…)
デイビッドには見当もつかないが、その辺りは専門家などに相談すれば大丈夫だろう。
(あっという間だったなぁ…)
剣を振り回したり、ドラゴンになったり、お姫様になったりと、忙しく遊ぶライラを見ていると、ついこの前まで歩くこともできない赤ん坊であったライラの成長の速さに、感慨深いものを感じ、嬉しくなる。
昼はゴマのパンと、トリのスープにトマトのサラダ、果物たっぷりの冷たいゼリー、そして“バナナ”。
「おはようございます!」
「もう昼だぞ…」
「師匠と語り合う夢見てたの…」
「頭、爆発してるのなんとかしろよ?」
「イ゙ャ゙ーーッ!!見ないでぇぇ!!」
髪がボサボサに跳ね上がったシェルリアーナが、洗面台に逃げて行く。
貴族令嬢ならば、たとえ家族の前だろうと身だしなみもせずに顔を見せることは無い。
ここまで気が緩むとは、正直デイビッドも思っていなかった。
1年前のシェルリアーナが見たら絶句するだろう。
ライラの手を洗い、全員揃ったところで、テーブルに昼食が並べられていく。
「はぁ…美味しい…やっぱり落ち着ける場所で食べるご飯が一番ですね!」
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