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黒豚令息の領地改革編
家族の自覚
今回、エリックに次いで張り切っているのはトムティット。
鏡から鏡へ次々貴族の集まりに聞き耳を立てては、情報を集めて来る。
「なぁなぁ!面白いことがわかったぜ!?噂の元を辿ってくと、黒豚ちゃんがグロッグマン商会の次期当主ってことになってんだと!」
「なるほど、だから噂が変な風になってんのか…」
「辺境伯爵って、普通は領地から出て来ませんもんね。」
「下級の商人貴族を相手にしてるつもりだったんだな。通りで嫌がらせが低俗だと思った。」
確かに、ロドム氏とデイビッドは、並ぶと親子と言われても納得しそうになる。
顔が似ている訳では無いが、身長や体格がそっくりなので実の父親よりもしっくりきてしまうのは仕方がない。
「ほっとけよ。会頭はワザとあの見た目にしてんだ。客をふるいに掛けるのに都合がいいんだと。」
「デイビッド様は?」
「悪かったな生まれつきでよ!!」
それからもう1つ、店の評判とは別に、どうも怪しい話が出回っているそうだ。
「おチビちゃんの両親を名乗る夫婦が、貴族院に何度か出入りしてたらしい…本当の親は自分だと人のいる中で騒いでつまみ出されてたってよ。」
「ライラの?!」
「ただ、どうもヤラセのような気がする。俺達妖精や妖魔は人間を顔じゃ覚えない。魔力や纏う雰囲気みたいのを直感で捉えてんだ。親子なら多少似てるか、それなりに共通するものがなんとなくあるのがほとんどなんだけど、あの夫婦にはライラと似てる要素は欠片もなかった。」
「親の髪色は栗色と黄土色だ。」
「なら違うね、聞いた話じゃブロンドと茶金だったって。見た事あんの?」
「一度、縁切りの呪いに入れられてる髪を見た。」
「それ、取ってあったりとか…?」
「するか、気持ちワリィ!」
「だよな…向こうもそれを見越してんだろうね。どうすんの?元は孤児の赤ん坊の親権なんて、実の親名乗られたら厳しいよ?」
「誰に雇われたにせよ自発的なもんにせよ、偽物相手なら怖くねぇよ。ライラはもう俺の家族だ。手ぇ出そうとしたこと後悔させてやる。」
「最近は以前にも増して可愛がってますよね。父性なのか母性なのか分かんないけど。」
「ライラの扶養責任は当主に付随する形で貴族院に出してんの!当主継いだら自動的にそれも引き継ぐことになるんだよ!」
「え?じゃぁデイビッド様、もうすぐパパですか?おめでとうございまーす。」
「うるせぇな、楽しそうにしやがって!」
義兄と義妹の関係も、当主の引き継ぎと同時に養父と養女になる。
成婚前に事実上の養子を取ることになるとは…これは流石のデイビッドにも予想できず、そこはヴィオラにも申し訳ないと思っている。
更に言えば、きちんと親として振る舞えるかどうかも自信が無い。
果たしてライラはデイビッドを“父親”として見てくれるだろうか。
(その前に“まま”呼びをどうにかしねぇとなんだけどな…)
そう、ライラはデイビッドを“まま”と呼ぶ。
「まま、おやちゅ!」
「まま、だっこ!」
「まま、あしょんで!」
「まま、おちっこ!」
話せる言葉が増えて来たのは良いのだが、すっかり定着してしまった“まま”。
何度違うと教えても直らなかった“まま”。
クッションに埋もれて昼寝するライラは、直ぐに布団を剥いでしまうので、何度もかけてやる必要がある。
健やかに眠るライラを撫でてやると、寝言でくすくす笑い出した。
両親共に母性も父性も希薄だったデイビッドは、自分がまともな親になれるものか、とても悩んでいた。
デイビッドの母親であるカトレアは生粋の貴族だ。
それは良い意味でも悪い意味でもそうだった。
貴族は自分のすべきこと以外はせず、全て人を雇って回し、雇用主と使用人の立場を崩さない。
子育てなどその最たる例だ。
子は産まれて直ぐから乳母が世話をし、貴族の子供として教育しながら、母親を慕い父親に従い家の仕来りを忠実に守るよう躾けられ、雇い主が納得する貴族子女に仕立て上げられる。
それが貴族というものであり、歴史の中でも当然とされて来たやり方だ。
それが悪いわけではない。そういう生き方をしている者達もいるという事だ。
カトレアも自身がそうであったように、我が子が産まれてもほとんど世話はしなかった。
自分の身体を元に戻す事に専念し、貴族婦人として役目を果たすべく、乳飲み子にすら見向きもせず離れて行った。
更に父ジェイムスは、夫になろうと親になろうと自分のやりたいこと以外には興味を示さず、ましてや言葉の通じない赤ん坊になど構うことはなかった。
家族の愛情というモノを、祖父母からのみ受けたデイビッドは、自分がまともに他人へ愛情を掛けられるか不安で仕方がない。
しかし、悩みながらも一切の妥協をせず、手厚く世話をしていることが既に“愛情”というものなのだが、自覚が伴わない内はヴィオラに対する気持ちと同じ、自信が持てないのだ。
(なんか哀れというか可哀想というか…)
(人間、なんもかんも足りてないとああなるんですよ。何か1つでも満たされて自信を持った経験が無いと、卑屈になるんです。)
(兄さんも人のこと言えなくない?)
(家出たら案外スッキリしましてね。そこからはもう成功と称賛の連続だったもので、自尊心は満たされましたよ。)
無意識に動くライラの手をつつくと、キュッと指をつかまれて引き寄せられた。
ライラはデイビッドが大好きだ。父親としてではなく母親代わりとしてでもなく、ライラにとってデイビッドはデイビッドであり、“まま”なのだ。
一緒に食べて、遊んで、眠って、泣いて笑って、時々叱られて、いつもライラを一番に見てくれる人。
小難しく考える大人よりも、直感で動く赤ん坊の方が、家族というものをよく理解している。
ライラが眠っている隙に洗い物を終え、夕飯の支度に取り掛かると、ヴィオラがにこにこしながら帰って来た。
「ただい…あ、お昼寝中ですね…静かにしないと…」
今日は友人達にお土産を渡してお喋りをして来たそうだ。
「ローラが小説がついに2冊目になったんです!新刊にサインもらってきちゃった!」
「よく書くなぁ…」
「コラムの方もだいぶ溜まったから近い内にもう一度まとめて本にするって!描き下ろしも増量して豪華な装丁にするそうです!」
「コラムって、あのブタが出て来るヤツか…」
今巷で人気のちょい読みコラム“黒豚令息のおいしい生活”も2冊目の本になるらしい。
(いらねぇだろ!!)
ちなみにヴィオラは既に初版を予約済みである。
「チェルシーはこの夏の間にカイン様と何度もデートしたって喜んでました!」
「あいつも元気にやってるみたいだな。その内顔見に行ってやるか。」
「ミランダは芸術祭に出す絵を描いてて、今年は大作に挑戦するそうです。」
「そういやもうすぐなんだな…準備期間…」
芸術祭の準備期間、デイビッドは会計としてサイモンと予算案と購入品の報告書をひたすらチェックする事になる。
(まぁ、なんかしろって言われるよか何倍もいいか…)
「ソフィアは婚約者と小旅行に行ってて、アニスはまた工房に籠って出て来ないんですって。」
「どうなるかと思ってたけど、休みが短いなりに楽しんでるなら良かったな。ヴィオラは…その、どうだった…?」
「私は楽しかったです!デイビッド様とデートいっぱいして、船旅ももちろん、アルテ様やギディオン様ともお会いしましたし、ダンジョンにも潜りました!」
「やり残したこととか…」
「今年はまだデイビッドと踊ってない!」
「そんな気に入ってたのか、去年のアレ!!」
「今年はもっと上手く踊れます!」
「そんな気合い入れないで!?」
茹でたトウモロコシは、ほぐしてスープ用とサラダ用に取り分け、残りをライラに取っておく。
茹でた卵の殻をむいていると、ヴィオラが横に来てぴったりくっついた。
「デイビッド様がまた何か隠し事してる気がします…」
「最近見抜くのが上手くなったな…それとも俺の気が緩んでるだけか?」
「女の勘です。」
「敵わねぇなぁ…ちょっと店の方でトラブルと…ライラの両親を名乗る奴等が出たんで、調べてるとこなんだ。」
「ライラちゃんの!?」
「どうも偽物らしいがな。何が目的か分からない内は泳がせて、最終的には白黒付けるよ。」
「偽物なんて…酷い!赤ちゃんをなんだと思ってるんでしょう!」
「大丈夫、ライラは間違いなくウチの子だよ。絶対に誰かに渡したりしない。必ず守るから安心しろよ?」
「でもちょっとヤキモチな気持ち…」
「ライラと対等になろうとするんじゃないの!」
「だったら私の事も同じくらいヨシヨシして下さい!」
「じゃ、夕飯はお粥にするか!?」
「それはイヤ!!」
「冗談だよ。ヴィオラにはちゃんと別に用意があるから楽しみにしてな?」
ニッと笑ったデイビッドの顔が、いつもの遠慮がちで自嘲気味のものではなくなった。
自信満々とまでは行かないが、こちらに戻って来てからはいく分か晴れやかに笑う様になった気がする。
ヴィオラが抱き着いても狼狽えなくなり、何かを気にして引き剥がそうともしなくなった。
(でもまだ抱きしめ返してはくれないなぁ…)
ヴィオラの少し過剰目なスキンシップには慣れてくれたが、同量のお返しはまだ見込めそうにない。
ヴィオラの理想の“幸せな婚約生活”はもう少し先になりそうだ。
「ままぁ~…」
「お、起きたか。もうすぐオヤツにしような?」
「おちっこ…」
「待ちなさい!!」
昼寝から目が覚めたライラを、デイビッドが連れて行く。
部屋の外に何か丸い入れ物が置いてあり、ライラを座らせて様子を見る。
最近ライラは“おまる”を覚えた。
アルテミシアから贈られて来た山のようなプレゼントの中にあった陶器の“おまる”を気に入って、自分から座るようになったのだ。
それでもほとんどはおしめだが、成功するととても嬉しそうにする。
「でちた!」
「よかったなぁ。」
ライラをヴィオラに任せ、外で洗い物を片付けてから中へ入ると、お腹を空かせたライラとシェルリアーナが並んで座っていた。
「遅いわよ!」
「赤ん坊とレベルが一緒!!」
鏡から鏡へ次々貴族の集まりに聞き耳を立てては、情報を集めて来る。
「なぁなぁ!面白いことがわかったぜ!?噂の元を辿ってくと、黒豚ちゃんがグロッグマン商会の次期当主ってことになってんだと!」
「なるほど、だから噂が変な風になってんのか…」
「辺境伯爵って、普通は領地から出て来ませんもんね。」
「下級の商人貴族を相手にしてるつもりだったんだな。通りで嫌がらせが低俗だと思った。」
確かに、ロドム氏とデイビッドは、並ぶと親子と言われても納得しそうになる。
顔が似ている訳では無いが、身長や体格がそっくりなので実の父親よりもしっくりきてしまうのは仕方がない。
「ほっとけよ。会頭はワザとあの見た目にしてんだ。客をふるいに掛けるのに都合がいいんだと。」
「デイビッド様は?」
「悪かったな生まれつきでよ!!」
それからもう1つ、店の評判とは別に、どうも怪しい話が出回っているそうだ。
「おチビちゃんの両親を名乗る夫婦が、貴族院に何度か出入りしてたらしい…本当の親は自分だと人のいる中で騒いでつまみ出されてたってよ。」
「ライラの?!」
「ただ、どうもヤラセのような気がする。俺達妖精や妖魔は人間を顔じゃ覚えない。魔力や纏う雰囲気みたいのを直感で捉えてんだ。親子なら多少似てるか、それなりに共通するものがなんとなくあるのがほとんどなんだけど、あの夫婦にはライラと似てる要素は欠片もなかった。」
「親の髪色は栗色と黄土色だ。」
「なら違うね、聞いた話じゃブロンドと茶金だったって。見た事あんの?」
「一度、縁切りの呪いに入れられてる髪を見た。」
「それ、取ってあったりとか…?」
「するか、気持ちワリィ!」
「だよな…向こうもそれを見越してんだろうね。どうすんの?元は孤児の赤ん坊の親権なんて、実の親名乗られたら厳しいよ?」
「誰に雇われたにせよ自発的なもんにせよ、偽物相手なら怖くねぇよ。ライラはもう俺の家族だ。手ぇ出そうとしたこと後悔させてやる。」
「最近は以前にも増して可愛がってますよね。父性なのか母性なのか分かんないけど。」
「ライラの扶養責任は当主に付随する形で貴族院に出してんの!当主継いだら自動的にそれも引き継ぐことになるんだよ!」
「え?じゃぁデイビッド様、もうすぐパパですか?おめでとうございまーす。」
「うるせぇな、楽しそうにしやがって!」
義兄と義妹の関係も、当主の引き継ぎと同時に養父と養女になる。
成婚前に事実上の養子を取ることになるとは…これは流石のデイビッドにも予想できず、そこはヴィオラにも申し訳ないと思っている。
更に言えば、きちんと親として振る舞えるかどうかも自信が無い。
果たしてライラはデイビッドを“父親”として見てくれるだろうか。
(その前に“まま”呼びをどうにかしねぇとなんだけどな…)
そう、ライラはデイビッドを“まま”と呼ぶ。
「まま、おやちゅ!」
「まま、だっこ!」
「まま、あしょんで!」
「まま、おちっこ!」
話せる言葉が増えて来たのは良いのだが、すっかり定着してしまった“まま”。
何度違うと教えても直らなかった“まま”。
クッションに埋もれて昼寝するライラは、直ぐに布団を剥いでしまうので、何度もかけてやる必要がある。
健やかに眠るライラを撫でてやると、寝言でくすくす笑い出した。
両親共に母性も父性も希薄だったデイビッドは、自分がまともな親になれるものか、とても悩んでいた。
デイビッドの母親であるカトレアは生粋の貴族だ。
それは良い意味でも悪い意味でもそうだった。
貴族は自分のすべきこと以外はせず、全て人を雇って回し、雇用主と使用人の立場を崩さない。
子育てなどその最たる例だ。
子は産まれて直ぐから乳母が世話をし、貴族の子供として教育しながら、母親を慕い父親に従い家の仕来りを忠実に守るよう躾けられ、雇い主が納得する貴族子女に仕立て上げられる。
それが貴族というものであり、歴史の中でも当然とされて来たやり方だ。
それが悪いわけではない。そういう生き方をしている者達もいるという事だ。
カトレアも自身がそうであったように、我が子が産まれてもほとんど世話はしなかった。
自分の身体を元に戻す事に専念し、貴族婦人として役目を果たすべく、乳飲み子にすら見向きもせず離れて行った。
更に父ジェイムスは、夫になろうと親になろうと自分のやりたいこと以外には興味を示さず、ましてや言葉の通じない赤ん坊になど構うことはなかった。
家族の愛情というモノを、祖父母からのみ受けたデイビッドは、自分がまともに他人へ愛情を掛けられるか不安で仕方がない。
しかし、悩みながらも一切の妥協をせず、手厚く世話をしていることが既に“愛情”というものなのだが、自覚が伴わない内はヴィオラに対する気持ちと同じ、自信が持てないのだ。
(なんか哀れというか可哀想というか…)
(人間、なんもかんも足りてないとああなるんですよ。何か1つでも満たされて自信を持った経験が無いと、卑屈になるんです。)
(兄さんも人のこと言えなくない?)
(家出たら案外スッキリしましてね。そこからはもう成功と称賛の連続だったもので、自尊心は満たされましたよ。)
無意識に動くライラの手をつつくと、キュッと指をつかまれて引き寄せられた。
ライラはデイビッドが大好きだ。父親としてではなく母親代わりとしてでもなく、ライラにとってデイビッドはデイビッドであり、“まま”なのだ。
一緒に食べて、遊んで、眠って、泣いて笑って、時々叱られて、いつもライラを一番に見てくれる人。
小難しく考える大人よりも、直感で動く赤ん坊の方が、家族というものをよく理解している。
ライラが眠っている隙に洗い物を終え、夕飯の支度に取り掛かると、ヴィオラがにこにこしながら帰って来た。
「ただい…あ、お昼寝中ですね…静かにしないと…」
今日は友人達にお土産を渡してお喋りをして来たそうだ。
「ローラが小説がついに2冊目になったんです!新刊にサインもらってきちゃった!」
「よく書くなぁ…」
「コラムの方もだいぶ溜まったから近い内にもう一度まとめて本にするって!描き下ろしも増量して豪華な装丁にするそうです!」
「コラムって、あのブタが出て来るヤツか…」
今巷で人気のちょい読みコラム“黒豚令息のおいしい生活”も2冊目の本になるらしい。
(いらねぇだろ!!)
ちなみにヴィオラは既に初版を予約済みである。
「チェルシーはこの夏の間にカイン様と何度もデートしたって喜んでました!」
「あいつも元気にやってるみたいだな。その内顔見に行ってやるか。」
「ミランダは芸術祭に出す絵を描いてて、今年は大作に挑戦するそうです。」
「そういやもうすぐなんだな…準備期間…」
芸術祭の準備期間、デイビッドは会計としてサイモンと予算案と購入品の報告書をひたすらチェックする事になる。
(まぁ、なんかしろって言われるよか何倍もいいか…)
「ソフィアは婚約者と小旅行に行ってて、アニスはまた工房に籠って出て来ないんですって。」
「どうなるかと思ってたけど、休みが短いなりに楽しんでるなら良かったな。ヴィオラは…その、どうだった…?」
「私は楽しかったです!デイビッド様とデートいっぱいして、船旅ももちろん、アルテ様やギディオン様ともお会いしましたし、ダンジョンにも潜りました!」
「やり残したこととか…」
「今年はまだデイビッドと踊ってない!」
「そんな気に入ってたのか、去年のアレ!!」
「今年はもっと上手く踊れます!」
「そんな気合い入れないで!?」
茹でたトウモロコシは、ほぐしてスープ用とサラダ用に取り分け、残りをライラに取っておく。
茹でた卵の殻をむいていると、ヴィオラが横に来てぴったりくっついた。
「デイビッド様がまた何か隠し事してる気がします…」
「最近見抜くのが上手くなったな…それとも俺の気が緩んでるだけか?」
「女の勘です。」
「敵わねぇなぁ…ちょっと店の方でトラブルと…ライラの両親を名乗る奴等が出たんで、調べてるとこなんだ。」
「ライラちゃんの!?」
「どうも偽物らしいがな。何が目的か分からない内は泳がせて、最終的には白黒付けるよ。」
「偽物なんて…酷い!赤ちゃんをなんだと思ってるんでしょう!」
「大丈夫、ライラは間違いなくウチの子だよ。絶対に誰かに渡したりしない。必ず守るから安心しろよ?」
「でもちょっとヤキモチな気持ち…」
「ライラと対等になろうとするんじゃないの!」
「だったら私の事も同じくらいヨシヨシして下さい!」
「じゃ、夕飯はお粥にするか!?」
「それはイヤ!!」
「冗談だよ。ヴィオラにはちゃんと別に用意があるから楽しみにしてな?」
ニッと笑ったデイビッドの顔が、いつもの遠慮がちで自嘲気味のものではなくなった。
自信満々とまでは行かないが、こちらに戻って来てからはいく分か晴れやかに笑う様になった気がする。
ヴィオラが抱き着いても狼狽えなくなり、何かを気にして引き剥がそうともしなくなった。
(でもまだ抱きしめ返してはくれないなぁ…)
ヴィオラの少し過剰目なスキンシップには慣れてくれたが、同量のお返しはまだ見込めそうにない。
ヴィオラの理想の“幸せな婚約生活”はもう少し先になりそうだ。
「ままぁ~…」
「お、起きたか。もうすぐオヤツにしような?」
「おちっこ…」
「待ちなさい!!」
昼寝から目が覚めたライラを、デイビッドが連れて行く。
部屋の外に何か丸い入れ物が置いてあり、ライラを座らせて様子を見る。
最近ライラは“おまる”を覚えた。
アルテミシアから贈られて来た山のようなプレゼントの中にあった陶器の“おまる”を気に入って、自分から座るようになったのだ。
それでもほとんどはおしめだが、成功するととても嬉しそうにする。
「でちた!」
「よかったなぁ。」
ライラをヴィオラに任せ、外で洗い物を片付けてから中へ入ると、お腹を空かせたライラとシェルリアーナが並んで座っていた。
「遅いわよ!」
「赤ん坊とレベルが一緒!!」
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