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黒豚令息の領地改革編
諸悪の根源
本来であれば向こうから頭を下げ、母親と道を同じくすべく王家に傅くものと思い込んでいた王妃は、汚い手を使い始めた。
窮地に立たされ、頼るものが無くなれば、自ずと友人であるアーネストに縋るに違いない。
王太子の元へ通うようになったら、そこで声をかけ、王妃派に引きずり込もうという、なんとも浅ましく、しかし回りくどいやり方で、デイビッドを囲い込もうとしていたそうだ。
更に、化粧品や整髪剤の開発に力を入れているのは、いずれは自分に取り入るための手札だろうと勝手な考えを起こして。
“影”を普段は貴族院に常駐させ、妙な動きはないか目を光らせながら、商会の業績や功績を探らせ、噂が立てばワザと煽って立場を追い込もうと躍起になっていたと言う。
「変な噂が広まるのが早かったのは、そのせいだったのか?」
「醜聞に塗れて身動きが取れなくなれば、いずれは旧知の僕に縋るだろうなんて、考えていたらしい…」
「普通の貴族だったらそうだったかもな。」
「ええ、ごく普通の貴族なら、もっと前に音を上げて殿下の権力に縋ったでしょうね。」
「普通じゃないもんなぁ…」
あちこちの夜会や催しなどの席にも、息のかかった貴族達を送り込み、デイビッドの様子を探らせようとしていたが、そもそもデイビッドは社交はしない。
出るのは王家から直接招待のある義務的なものだけ。
それも本気の王族とだけ交流して引き上げてしまう。
王妃の誤算は、デイビッドが規格外中の規格外だった事だろう。
やがて“影”達は王妃の意図を誤解するようになった。
デイビッド・デュロックは、王妃を蔑ろにし忠誠を立てない恩知らず。故に目を付け、手を回して貴族社会から追放すべき対象であると…
「君がデュロック領に戻る事を知って、コイツは先回りして待ち構えていたんだ。追えば君は直ぐに気がつくだろうからね。」
「ヴィオラを巻き込んで襲って来たのは?あれはなんだったんだ?!」
「君の近くにいると恐ろしい目に遭うと思えば、貴族令嬢なら離れていくと思ったらしい…」
「そんな下らねぇ理由で…」
「君が怒るのも無理はない。一つもまともな理由がないんだからな。」
“影”の男は、デイビッドが1人の時に襲った事に対し、まだ先だと思っていた当主の座をデイビッドが手にした事を知り、手傷を負わせて当主としての能力を奪うつもりだったと吐いたそうだ。
元々は人知れず利き手か目を狙うつもりが、使役者の殺意を汲んで妖獣が派手に動いたことで失敗したのは不幸中の幸いだったのかも知れない。
長年お役目に受け継がれてきた使役妖魔は、元は猿の姿をしていたらしいが、好き勝手形を変えられ、今ではまるで合成獣のようだ。
隠密行動に向かない姿になったことで、あの様に白昼堂々襲い掛かって来たのだろう。
「王家ってのはどんだけ暇なんだ?人1人の嫌がらせに“影”なんざ使って、それだけで予算の無駄遣いだろ?」
「父上もかなり怒ってらしてね。恐らくもう表舞台には立たせてもらえなくなると思う。」
国母であるはずの王配が、まさか個人的な、それも逆恨みで王太子を(一応形だけでも)支持する家臣に裏から圧力を掛けようとしていたなどと、外に知られたら大事だ。
「母上が…一度会いたいと言っているけど、どうする?」
「ほぉ~。んじゃ会ってみるとするか?」
アーネストに連れられて、デイビッドは高位貴族でも滅多に入れない王宮の奥まで案内され、厳重な見張りに護られた部屋に通された。
ドアを開けるや否や、甲高い声が響く。
「アーネスト!やっと来たのね!?陛下のお怒りは収まったの?早くここから出して欲しいものだわ!」
「母上…何度も申しますが、貴方をここからお出しすることはできません。」
「嫌だわ。あの人ったらまだ怒っているのね。仕方ないわ…」
優雅に紅茶を飲む王妃に、反省した様子は欠片もない。
むしろ人の眼がないのを良いことに自由に振る舞っているようだ。
「それにしても、遅かったわね。いつまで待たせるつもりだったのかしら?こんなに大事にしてくれたんだから、それなりの誠意は見せてもらいたいものだわ!」
(誰に話してんだ?)
(たぶん君だよ…)
王妃はカップを置くと、扇を広げデイビッドの方へ向き直った。
「本当ならばもっと早くに頭を下げに来るべきだったけれど、貴方の母親に免じてそこは問わずに置きましょう。その代わり、資産の4分の1を寄進なさい。それから、今展開しているドレスと化粧品の販売権を譲渡すること。それで水に流しましょう。」
「あの…なんのお話でしょうか?」
「まぁ!この期に及んでまだしらばっくれるつもり?それとも本当に気がついていないの?!これ以上は付き合い切れないわ!いいこと?貴方は私の派閥に入り私を支持するべきなよ?!こんな事すら言われなければ分からないなんて、本当に貴族としての自覚が抜けているのね!カトレアの言っていた通りだわ。」
「母上と、何か関係が?」
「彼女は私の派閥の筆頭よ?そして夫は陛下付きの人間だった。2代続けて城勤めでもない同じ家門の人間が王の下に付くことは憚られます。よって、貴方は私の下に来るのが正解なの!ここまで説明しなければいけないなんて…これから教育し直して間に合うかしら?」
(こりゃ相当イカれてんな…)
王妃の頭の中では今尚、旧体制の国家規格がそのまま働いているようだ。
伝統や血筋に重きを置き、より高い身分の者が統べる派閥に与することで家を守り、国の栄えに繋げるやり方は、現代ではほとんど意味をなさなくなっている。
王妃の派閥は確かに強力な発言力を持ち、多くの支持者を囲っていた。しかしそれも当に昔の話だ。
教会崩壊後の立て直しからこっち、半数以上を占めていた教会寄りの貴族が派閥を離れ、城勤めの役人貴族の顔触れも大きく入れ替わり、自陣の勢力が削がれたことで焦っているのだろう。
そして、自分の思い通りにならないデイビッドの事がとことんお気に召さない様だ。
話の終わらない王妃の前で、愕然とするアーネストを促しドアへ向かうと、言葉にならないような金切り声が背中から追って来たが兵士がドアを閉めるとピタリと静かになった。
「アーネスト、お前の弟がなんでああなったのか、原因の一つが判明したな…」
「ああ…甘言に乗る以前に、地にあの人の教育があったからだったんだな…」
「陛下も頭が痛かろう…こうなったからにはペンバートンに戻すのが一番な気がするが、そこは王の決断次第だな。」
「確かに、あそこなら…クロードもいる事だし…」
「…だったら少し考えがある。王家のそれも王配直々に迷惑を被ったって事で、ひとつ欲しいものができた。陛下に許可を願いたい。手紙を置いて行くから、後で返事をもらってくれるか?」
「わかった…すまないデイビッド…僕は何もわかっていなかった…まさか君を蔑ろにしている根源が王家にあったなんて…どんな噂も止められないはずだ…長い事友人を苦しめていたのが自分の母親だったなんて…本当にゴメンよ…」
「そんな苦しんじゃいねぇから安心しろよ。なんなら以前は国外追放でもしてくれりゃ万々歳なんて思ってたんだからよ。」
「頼むから僕の代で居なくならないでくれよ!?君が消えたら何もかも崩れ落ちてラムダ王国が壊滅するぞ!!」
「アホか!一個人の有無程度で国が崩壊するかよ?!」
若干崩壊しそうだな…と思いながら、エリックは黙ったまま後ろで遠くを見つめていた。
デイビッドはそのまま文官棟の端を借り、国王に対し多少の苦言を匂わせ、労いとこちらは気にしていないことに加え、ちゃっかり欲しい物の要求をしたためると気軽にアーネストに渡し、城を後にした。
「お疲れ様でした!」
「本当に疲れた…」
「この後まだ時間ありますよね!?よそ行きのカッコしてる内に、もう一軒寄るとこがあるのでお付き合い下さいな。」
「は?聞いてねぇよ?!」
「言ってませんからねぇ。大丈夫、僕の知り合いにちょっと会うだけですから。」
「お前の知り合い!?」
「はい。」
「実家から逃げてこの方王都の貴族とはほぼほぼ没交渉だったお前の知り合い!?」
「うるさいなぁ!」
「絶対ヤダ!!」
「何言ってんですか。会いたいと言ったのはデイビッド様の方だったでしょ?」
「俺がいつ誰に会いたいなんて言った?」
「偶然って怖いですよね。ロナルド・ドラードは僕の元ルームメイトなんですよ。連絡したら直ぐ会いたいって喜んでました。」
「最悪だ!!」
世間とは狭いものである。
ソフィア嬢の婚約者は、なんとエリックの元同級生だったようだ。
しかし、エリックは元実家を気にして専門外の分野で成績を上げ、友人もろくに作らず飛び級で卒業したと聞いている。
果たしてどんな人物が現れるのだろうか。
(いや、でもソフィアから聞いた話じゃ常識人…)
本当にそうだろうか?エリックも外面だけは完璧な良識人だ。
デイビッドは嫌な予感に怖気付きながら、繁華街の一角へと連れて行かれた。
まだ昼だと言うのに、洒落た派手な装いの人間が大勢闊歩する繁華街にはあらゆる娯楽が溢れている。
グロッグマン商会でも一部展開しているが、デイビッドは一切関わっていないため、内情も経営状況もよく分からない。
まだ知らないオトナの世界の入り口。その中でも特に賑わう商店の集まりに馬車は止まった。
「ドラード商会の支店です。今日はこの中で待ち合わせしてるんですよ。」
場違い感満載のデイビッドが、まるで街の一部の様に馴染むエリックの後について商会のドアを潜った。
(う……やっぱ苦手だ…)
酒にタバコに香水に謎のポーションの匂いが混ざり、デイビッドには相当キツい。
応接室へ通されると、そこは柑橘の香りで満ちていて幾分かましだった。
そこへノックの音がして軟らかな男性の声がした。
「ようこそおいで下さいました!はじめまして、ドラード商会宣伝部責任者のロナルドと申します!」
にこやかに手を出され、握手を求められた事に少しためらっているとエリックに肘で突かれ、ぎこちなく手を握り返した。
窮地に立たされ、頼るものが無くなれば、自ずと友人であるアーネストに縋るに違いない。
王太子の元へ通うようになったら、そこで声をかけ、王妃派に引きずり込もうという、なんとも浅ましく、しかし回りくどいやり方で、デイビッドを囲い込もうとしていたそうだ。
更に、化粧品や整髪剤の開発に力を入れているのは、いずれは自分に取り入るための手札だろうと勝手な考えを起こして。
“影”を普段は貴族院に常駐させ、妙な動きはないか目を光らせながら、商会の業績や功績を探らせ、噂が立てばワザと煽って立場を追い込もうと躍起になっていたと言う。
「変な噂が広まるのが早かったのは、そのせいだったのか?」
「醜聞に塗れて身動きが取れなくなれば、いずれは旧知の僕に縋るだろうなんて、考えていたらしい…」
「普通の貴族だったらそうだったかもな。」
「ええ、ごく普通の貴族なら、もっと前に音を上げて殿下の権力に縋ったでしょうね。」
「普通じゃないもんなぁ…」
あちこちの夜会や催しなどの席にも、息のかかった貴族達を送り込み、デイビッドの様子を探らせようとしていたが、そもそもデイビッドは社交はしない。
出るのは王家から直接招待のある義務的なものだけ。
それも本気の王族とだけ交流して引き上げてしまう。
王妃の誤算は、デイビッドが規格外中の規格外だった事だろう。
やがて“影”達は王妃の意図を誤解するようになった。
デイビッド・デュロックは、王妃を蔑ろにし忠誠を立てない恩知らず。故に目を付け、手を回して貴族社会から追放すべき対象であると…
「君がデュロック領に戻る事を知って、コイツは先回りして待ち構えていたんだ。追えば君は直ぐに気がつくだろうからね。」
「ヴィオラを巻き込んで襲って来たのは?あれはなんだったんだ?!」
「君の近くにいると恐ろしい目に遭うと思えば、貴族令嬢なら離れていくと思ったらしい…」
「そんな下らねぇ理由で…」
「君が怒るのも無理はない。一つもまともな理由がないんだからな。」
“影”の男は、デイビッドが1人の時に襲った事に対し、まだ先だと思っていた当主の座をデイビッドが手にした事を知り、手傷を負わせて当主としての能力を奪うつもりだったと吐いたそうだ。
元々は人知れず利き手か目を狙うつもりが、使役者の殺意を汲んで妖獣が派手に動いたことで失敗したのは不幸中の幸いだったのかも知れない。
長年お役目に受け継がれてきた使役妖魔は、元は猿の姿をしていたらしいが、好き勝手形を変えられ、今ではまるで合成獣のようだ。
隠密行動に向かない姿になったことで、あの様に白昼堂々襲い掛かって来たのだろう。
「王家ってのはどんだけ暇なんだ?人1人の嫌がらせに“影”なんざ使って、それだけで予算の無駄遣いだろ?」
「父上もかなり怒ってらしてね。恐らくもう表舞台には立たせてもらえなくなると思う。」
国母であるはずの王配が、まさか個人的な、それも逆恨みで王太子を(一応形だけでも)支持する家臣に裏から圧力を掛けようとしていたなどと、外に知られたら大事だ。
「母上が…一度会いたいと言っているけど、どうする?」
「ほぉ~。んじゃ会ってみるとするか?」
アーネストに連れられて、デイビッドは高位貴族でも滅多に入れない王宮の奥まで案内され、厳重な見張りに護られた部屋に通された。
ドアを開けるや否や、甲高い声が響く。
「アーネスト!やっと来たのね!?陛下のお怒りは収まったの?早くここから出して欲しいものだわ!」
「母上…何度も申しますが、貴方をここからお出しすることはできません。」
「嫌だわ。あの人ったらまだ怒っているのね。仕方ないわ…」
優雅に紅茶を飲む王妃に、反省した様子は欠片もない。
むしろ人の眼がないのを良いことに自由に振る舞っているようだ。
「それにしても、遅かったわね。いつまで待たせるつもりだったのかしら?こんなに大事にしてくれたんだから、それなりの誠意は見せてもらいたいものだわ!」
(誰に話してんだ?)
(たぶん君だよ…)
王妃はカップを置くと、扇を広げデイビッドの方へ向き直った。
「本当ならばもっと早くに頭を下げに来るべきだったけれど、貴方の母親に免じてそこは問わずに置きましょう。その代わり、資産の4分の1を寄進なさい。それから、今展開しているドレスと化粧品の販売権を譲渡すること。それで水に流しましょう。」
「あの…なんのお話でしょうか?」
「まぁ!この期に及んでまだしらばっくれるつもり?それとも本当に気がついていないの?!これ以上は付き合い切れないわ!いいこと?貴方は私の派閥に入り私を支持するべきなよ?!こんな事すら言われなければ分からないなんて、本当に貴族としての自覚が抜けているのね!カトレアの言っていた通りだわ。」
「母上と、何か関係が?」
「彼女は私の派閥の筆頭よ?そして夫は陛下付きの人間だった。2代続けて城勤めでもない同じ家門の人間が王の下に付くことは憚られます。よって、貴方は私の下に来るのが正解なの!ここまで説明しなければいけないなんて…これから教育し直して間に合うかしら?」
(こりゃ相当イカれてんな…)
王妃の頭の中では今尚、旧体制の国家規格がそのまま働いているようだ。
伝統や血筋に重きを置き、より高い身分の者が統べる派閥に与することで家を守り、国の栄えに繋げるやり方は、現代ではほとんど意味をなさなくなっている。
王妃の派閥は確かに強力な発言力を持ち、多くの支持者を囲っていた。しかしそれも当に昔の話だ。
教会崩壊後の立て直しからこっち、半数以上を占めていた教会寄りの貴族が派閥を離れ、城勤めの役人貴族の顔触れも大きく入れ替わり、自陣の勢力が削がれたことで焦っているのだろう。
そして、自分の思い通りにならないデイビッドの事がとことんお気に召さない様だ。
話の終わらない王妃の前で、愕然とするアーネストを促しドアへ向かうと、言葉にならないような金切り声が背中から追って来たが兵士がドアを閉めるとピタリと静かになった。
「アーネスト、お前の弟がなんでああなったのか、原因の一つが判明したな…」
「ああ…甘言に乗る以前に、地にあの人の教育があったからだったんだな…」
「陛下も頭が痛かろう…こうなったからにはペンバートンに戻すのが一番な気がするが、そこは王の決断次第だな。」
「確かに、あそこなら…クロードもいる事だし…」
「…だったら少し考えがある。王家のそれも王配直々に迷惑を被ったって事で、ひとつ欲しいものができた。陛下に許可を願いたい。手紙を置いて行くから、後で返事をもらってくれるか?」
「わかった…すまないデイビッド…僕は何もわかっていなかった…まさか君を蔑ろにしている根源が王家にあったなんて…どんな噂も止められないはずだ…長い事友人を苦しめていたのが自分の母親だったなんて…本当にゴメンよ…」
「そんな苦しんじゃいねぇから安心しろよ。なんなら以前は国外追放でもしてくれりゃ万々歳なんて思ってたんだからよ。」
「頼むから僕の代で居なくならないでくれよ!?君が消えたら何もかも崩れ落ちてラムダ王国が壊滅するぞ!!」
「アホか!一個人の有無程度で国が崩壊するかよ?!」
若干崩壊しそうだな…と思いながら、エリックは黙ったまま後ろで遠くを見つめていた。
デイビッドはそのまま文官棟の端を借り、国王に対し多少の苦言を匂わせ、労いとこちらは気にしていないことに加え、ちゃっかり欲しい物の要求をしたためると気軽にアーネストに渡し、城を後にした。
「お疲れ様でした!」
「本当に疲れた…」
「この後まだ時間ありますよね!?よそ行きのカッコしてる内に、もう一軒寄るとこがあるのでお付き合い下さいな。」
「は?聞いてねぇよ?!」
「言ってませんからねぇ。大丈夫、僕の知り合いにちょっと会うだけですから。」
「お前の知り合い!?」
「はい。」
「実家から逃げてこの方王都の貴族とはほぼほぼ没交渉だったお前の知り合い!?」
「うるさいなぁ!」
「絶対ヤダ!!」
「何言ってんですか。会いたいと言ったのはデイビッド様の方だったでしょ?」
「俺がいつ誰に会いたいなんて言った?」
「偶然って怖いですよね。ロナルド・ドラードは僕の元ルームメイトなんですよ。連絡したら直ぐ会いたいって喜んでました。」
「最悪だ!!」
世間とは狭いものである。
ソフィア嬢の婚約者は、なんとエリックの元同級生だったようだ。
しかし、エリックは元実家を気にして専門外の分野で成績を上げ、友人もろくに作らず飛び級で卒業したと聞いている。
果たしてどんな人物が現れるのだろうか。
(いや、でもソフィアから聞いた話じゃ常識人…)
本当にそうだろうか?エリックも外面だけは完璧な良識人だ。
デイビッドは嫌な予感に怖気付きながら、繁華街の一角へと連れて行かれた。
まだ昼だと言うのに、洒落た派手な装いの人間が大勢闊歩する繁華街にはあらゆる娯楽が溢れている。
グロッグマン商会でも一部展開しているが、デイビッドは一切関わっていないため、内情も経営状況もよく分からない。
まだ知らないオトナの世界の入り口。その中でも特に賑わう商店の集まりに馬車は止まった。
「ドラード商会の支店です。今日はこの中で待ち合わせしてるんですよ。」
場違い感満載のデイビッドが、まるで街の一部の様に馴染むエリックの後について商会のドアを潜った。
(う……やっぱ苦手だ…)
酒にタバコに香水に謎のポーションの匂いが混ざり、デイビッドには相当キツい。
応接室へ通されると、そこは柑橘の香りで満ちていて幾分かましだった。
そこへノックの音がして軟らかな男性の声がした。
「ようこそおいで下さいました!はじめまして、ドラード商会宣伝部責任者のロナルドと申します!」
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