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黒豚令息の領地改革編
リックとロニー
ロナルドはグラスを飲み干すと、思い詰めたように呟いた。
「最後に、もう一度潜りたい…」
「最後?」
「家庭を持てばもう冒険者なんてやってられないだろ?」
「ああ、そう言や婚約したんだっけ。おめでとう!」
「そりゃお互い様だろ?もう話題になってるぞ?ロシェ家の“白銀の魔女姫”が“妖精の騎士”に落とされたって。」
「そんないいもんじゃないよ。出会いから関係から全部他人のおこぼれでさ、実力じゃないからいつ飽きられるかもわかんないし。お前はいいな、相手のお嬢さんもベタ惚れだったろ?」
「まだ学生だよ。夢が覚めないように振る舞ってるだけさ。どの道親父の決めた婚約だ。どうなるかもわかんないよ。」
次々と運ばれて来る酒を水の様に空にし、ついに2人のグラスがボトルに変わった。
大量の酒をグイグイ飲みながら、運ばれて来る料理も次々と平らげていく。
酒が進むと話も弾むようで、だんだんと口調も砕けていった。
「は?お前妖精と契約してんの?あんだけ元実家と同じ道は進まないとか言っといて!?」
「しかたなかったんだって!そんくらいしないと今の雇い先じゃやってけないの!」
「今のって…こないだ会った噂の“若旦那”だろ?確かに商人としての腕はあるみたいだけどよ、そんな騒ぐ程の奴か?どうせもう手懐けてお前の言いなりなんだろ?」
「あれは無理!」
「なんだよ、人の懐に入るのはお手の物じゃないのか?」
「ああ見えて経験値高過ぎて、僕なんかじゃ信用をもぎ取るだけで精一杯だった…」
「へぇ?あんなぽやっとしたおデブちゃんがねぇ…社交界にも疎いんじゃ、それこそ手取り足取り教育できただろうに。」
「…あの人が疎いのはこの国の王都の社交界であって、友交関係先は自他国含めほぼ王族。流行は気にしないだけで、常に最先端の流行り物を作る側の人間だ。人が良さそうに振る舞ったのはお前が僕の知り合いだから愛想良くしてただけだよ…」
「ハハハ!そりゃスゲェな。大商人じゃねぇか。じゃお前がしっかり守ってやんないとな!?」
「要るかなぁ…護衛…」
店が混み始める前に席を立った2人は、コインを投げて賭けを始めた。
「裏。」
「残念、表だ。」
「なぁんだツイてないの。お姉さん、お代ここに置くね。お釣りは取っといて。」
エリックがテーブルに大銀貨を置くと、直ぐに給仕の女性が現れ、にこやかに手を振る。
2人は次の店に向かう間、ぶらぶら歩きながらまた話をした。
「ところでさぁ、さっきのダンジョンの話、どこまで本気?」
「かなりマジ。婚約者もできたことだし、最後にパァーッと暴れたい。昔みたいに…」
「え?こっちはもう昔超えてるケド?」
「何言ってんだ?」
「ホントホント、なんなら今が全盛期って言っても過言じゃないね!」
「おいおい、そんな盛るなよ。長い事貴族の侍従だったんだろ?ブランク舐めんなよ。俺だって3年前の自分に勝てるかわかんねぇってのに。」
「で?潜るの?ニューゲート。」
「お前のご主人様が許可してくれるならな。」
「なんで?」
「なんでって、侍従借りるのに主人の許可は必要だろ?!」
「あ、悪い…その辺の常識ちょっと失くしてる可能性高い…」
「どんな雇い主だよ!」
「いや、失くしたの僕の方。」
「何やってんだ!?」
2人は繁華街の裏路地のバーに向かうと、今度は個室に入り、また酒を注文していく。
「ところでよ、あの噂って実のトコどこまで本当なんだ?」
「噂?どの?」
「協力はする手前、こっちも気になってね。ホラ、出禁の娼館がいくつもあるとか、小児性愛者だとか、愛妾集めてハーレム作ってるとか…いくらでもあるだろ?」
「9割9分デマだよ。」
「事実が1分でもありゃ噂なんて人の耳には真実になっちまう。で?どの話が実話なんだ…?!」
「…アデラの王族の血筋で、向こうの国も認めてるって。」
「え?噂ってそっちの!?」
「キリフの王女で現アデラ王太子妃の元婚約者候補ってのも事実。」
「いやいや、それは流石に嘘だろ!?」
「あと、未婚のまま一児の親になったのもホント。」
「なんだ、やっぱ他所に子供作ったってのはマジなのか。」
「ううん、引き取ったのは赤の他人で、元は婚約者が連れて来た捨て子。」
「どゆこと?」
酒場の酒とは違う高級酒を次々空にしながら、2人は徐々にほろ酔いになっていく。
「にしても…まさかお前が王都に留まってるとは思わなかったな。」
「まぁね、始めはさっさと出て行きたかったんだけど、居心地良くされちゃってさぁ…」
「はっきり言って、今の雇い主、お前の好みじゃないだろ?」
「あ…う~ん…まぁそうだったんだけどさ…」
「もっと知的で聡明で、だけどちょっと抜けてる~みたいなタイプが好みだったんじゃなかったのか?」
「確かに…それ言ったら今の婚約者が好みのど真ん中なんだよねぇ…」
「あの小豚ちゃんじゃ目の保養にもならねぇだろ。良く我慢してんな?」
「いや~そこは何と言うか…既に目的がズレてると言うか…」
「でもなぁ…ナンていうか、あの腹の肉といい、キョトンとした顔といい…」
「「泣かしてみたい!」」
エリックにもなかなか気の合った友人がいた様だ。
「だよねぇ、無理ってわかってるけど。」
「わかる、あの掴みやすそうな後ろ髪とか、鷲掴みにしてギチギチに痛めつけてみたい…」
「去年までもっと長くてさ、それこそ腕に巻き付けて釣り上げるか、引きずり回すくらいできそうだったんだ…しなかったけど。」
「引っ叩いたらイイ反応しそう…」
「しないしない。なんならただつまんなそ~な顔されて終わるよ。」
「なんだ。痛み強いのか、それとも鈍いだけ?」
「いや…ガチな拷問と地獄から生き延びて来たバケモン。ちょっとやそっとじゃ、泣くどころか表情すら変わんないよ。」
「何の話してんだ?」
「僕の雇い主の話。今も週一くらいで顔面に拳もらったり、たまに刺客に襲われて死にかけたりしてる。」
「…バイオレンス過ぎないか?!」
「最近ようやく他人を愛せる様になって、人間に戻ったとこ。」
「え?…人間…なんだよな?」
「たぶん…」
「そこで自信なさげにするなよ!」
気軽に引き受けた相談相手が、まさか人に成り立ての化け物と言われて、ロナルドは少しだけ不安になった。
バーの個室に澄んだコインの音が響く。
「表。」
「うわー表だ!なんだよ今日は連敗かぁ…」
「ご馳走様、次は君のおすすめの店紹介してよ。」
「こちらも久々で楽しかったですよ。サロンの件ありがとう、楽しみにしてますね。」
「僕の知り合いもいるし、デュロック家とグロッグマン商会に興味のある参加者も集まるから、全くの敵陣って訳でもないし安心してって伝えて。じゃ、お休みエリック、また飲みに行こう!?」
「ええ、近い内にまた!」
外に出ると既に夜。繁華街が目覚める時間だ。
エリックとロナルドはそれぞれ仮面を被り直し、帰路に着いた。
「ライラ、その目はヤメなさい…」
「ふんっ!」
「目つき悪くなっちゃうぞ?!人を指さすな!俺はいいんだよ!生まれつきなんだから!」
「ふんっ!!」
「そんな顔したってデザートはもうおしまい!歯磨いて寝るぞ!?」
「ぶぅぅ…」
「そんなブーブー言ってたら子豚になっちまうぞ?!だから人を指さすんじゃない!!」
明日のパンの仕込みをするデイビッドの足元に、不機嫌そうにしたライラがまとわりついている。
その様子を見て、ヴィオラが楽しそうに笑いながら小さな洗濯物を畳んでいる。
カウチに倒れ込んだシェルリアーナは、仲の良い3人を眺めながらぼんやり考え事をしていた。
(いいわねぇ…私もいつかあんな風に笑えるかしら…)
ライラが眠り、ヴィオラとシェルリアーナも部屋に戻った頃、ご機嫌なエリックが部屋へ戻って来た。
「ただいま戻りましたぁ!いやぁ~久々でついつい飲み過ぎちゃいましたよ!」
「楽しそうで何よりだ…」
「あ、そうそう!デイビッド様のデビュー決まりましたよ?明後日開かれるピオーネ新侯爵家主催のサロンですって!」
「思ったより急だな。確か先月叙爵した元上位伯爵家だったか…派閥を増やそうとしてるんだろうな。」
「派閥もそうですけど、パイプが欲しいんですよ。ピオーネ領はブドウの産地なので、売り込み先も確保したいし、協力者も募りたいのでしょう。」
「…じゃ出されるもんもワインか…一番酔うんだよなぁ…」
「デイビッド様が酔わない酒なんてこの世にあります?!」
7割ジュースで割ったカクテルでさえ、ひと口ふた口で顔が火照る。
エリック曰く、上手く酔うと饒舌になり秘密でもなんでも赤裸々に良く喋ってくれるらしい。
1年前、ワインの相談を受けた生徒から貰った試飲のボトルを開けてしまい、ヘラヘラとエリック相手に胸の内を晒した事がある。
(覚えてないんだろうなぁ…)
エリックが何を聞いたのか、知るのはエリック本人のみである。
夏休みも終わり間近。
新学期の授業に必要な道具を、友人達と買い揃えに行くヴィオラを見送ると、デイビッドは少しだけ憂鬱な気持ちで迎えの馬車に乗り込んだ。
「参加したいとは言ったものの…何をどうしたらいいのか全くわからん…」
「今まで立食パーティー型の商談くらいあったでしょう?」
「サシならなんとかなるけどな、目的がバラバラの人間とは一斉に関わったことなんてねぇんだよ!」
「またまた、学園なんてそんなもんでしょ?声掛けて、自分の話して、相手の話聞いて、質疑応答と意見交換して、何が違うんです?」
「そういう考え方もあるのか…」
「そもそも学園ってもの自体がそういうものの練習になってるんですって。」
「そうなのか…」
「デイビッド様って、ホントにピンポイントで好きな事しかして来なかったんですね…」
「悪かったなぁ!それどころじゃなかったんだよ!」
自分のことで手一杯になり、噂を探るどころではなくなってしまわないか、エリックは少しだけ心配になった。
「最後に、もう一度潜りたい…」
「最後?」
「家庭を持てばもう冒険者なんてやってられないだろ?」
「ああ、そう言や婚約したんだっけ。おめでとう!」
「そりゃお互い様だろ?もう話題になってるぞ?ロシェ家の“白銀の魔女姫”が“妖精の騎士”に落とされたって。」
「そんないいもんじゃないよ。出会いから関係から全部他人のおこぼれでさ、実力じゃないからいつ飽きられるかもわかんないし。お前はいいな、相手のお嬢さんもベタ惚れだったろ?」
「まだ学生だよ。夢が覚めないように振る舞ってるだけさ。どの道親父の決めた婚約だ。どうなるかもわかんないよ。」
次々と運ばれて来る酒を水の様に空にし、ついに2人のグラスがボトルに変わった。
大量の酒をグイグイ飲みながら、運ばれて来る料理も次々と平らげていく。
酒が進むと話も弾むようで、だんだんと口調も砕けていった。
「は?お前妖精と契約してんの?あんだけ元実家と同じ道は進まないとか言っといて!?」
「しかたなかったんだって!そんくらいしないと今の雇い先じゃやってけないの!」
「今のって…こないだ会った噂の“若旦那”だろ?確かに商人としての腕はあるみたいだけどよ、そんな騒ぐ程の奴か?どうせもう手懐けてお前の言いなりなんだろ?」
「あれは無理!」
「なんだよ、人の懐に入るのはお手の物じゃないのか?」
「ああ見えて経験値高過ぎて、僕なんかじゃ信用をもぎ取るだけで精一杯だった…」
「へぇ?あんなぽやっとしたおデブちゃんがねぇ…社交界にも疎いんじゃ、それこそ手取り足取り教育できただろうに。」
「…あの人が疎いのはこの国の王都の社交界であって、友交関係先は自他国含めほぼ王族。流行は気にしないだけで、常に最先端の流行り物を作る側の人間だ。人が良さそうに振る舞ったのはお前が僕の知り合いだから愛想良くしてただけだよ…」
「ハハハ!そりゃスゲェな。大商人じゃねぇか。じゃお前がしっかり守ってやんないとな!?」
「要るかなぁ…護衛…」
店が混み始める前に席を立った2人は、コインを投げて賭けを始めた。
「裏。」
「残念、表だ。」
「なぁんだツイてないの。お姉さん、お代ここに置くね。お釣りは取っといて。」
エリックがテーブルに大銀貨を置くと、直ぐに給仕の女性が現れ、にこやかに手を振る。
2人は次の店に向かう間、ぶらぶら歩きながらまた話をした。
「ところでさぁ、さっきのダンジョンの話、どこまで本気?」
「かなりマジ。婚約者もできたことだし、最後にパァーッと暴れたい。昔みたいに…」
「え?こっちはもう昔超えてるケド?」
「何言ってんだ?」
「ホントホント、なんなら今が全盛期って言っても過言じゃないね!」
「おいおい、そんな盛るなよ。長い事貴族の侍従だったんだろ?ブランク舐めんなよ。俺だって3年前の自分に勝てるかわかんねぇってのに。」
「で?潜るの?ニューゲート。」
「お前のご主人様が許可してくれるならな。」
「なんで?」
「なんでって、侍従借りるのに主人の許可は必要だろ?!」
「あ、悪い…その辺の常識ちょっと失くしてる可能性高い…」
「どんな雇い主だよ!」
「いや、失くしたの僕の方。」
「何やってんだ!?」
2人は繁華街の裏路地のバーに向かうと、今度は個室に入り、また酒を注文していく。
「ところでよ、あの噂って実のトコどこまで本当なんだ?」
「噂?どの?」
「協力はする手前、こっちも気になってね。ホラ、出禁の娼館がいくつもあるとか、小児性愛者だとか、愛妾集めてハーレム作ってるとか…いくらでもあるだろ?」
「9割9分デマだよ。」
「事実が1分でもありゃ噂なんて人の耳には真実になっちまう。で?どの話が実話なんだ…?!」
「…アデラの王族の血筋で、向こうの国も認めてるって。」
「え?噂ってそっちの!?」
「キリフの王女で現アデラ王太子妃の元婚約者候補ってのも事実。」
「いやいや、それは流石に嘘だろ!?」
「あと、未婚のまま一児の親になったのもホント。」
「なんだ、やっぱ他所に子供作ったってのはマジなのか。」
「ううん、引き取ったのは赤の他人で、元は婚約者が連れて来た捨て子。」
「どゆこと?」
酒場の酒とは違う高級酒を次々空にしながら、2人は徐々にほろ酔いになっていく。
「にしても…まさかお前が王都に留まってるとは思わなかったな。」
「まぁね、始めはさっさと出て行きたかったんだけど、居心地良くされちゃってさぁ…」
「はっきり言って、今の雇い主、お前の好みじゃないだろ?」
「あ…う~ん…まぁそうだったんだけどさ…」
「もっと知的で聡明で、だけどちょっと抜けてる~みたいなタイプが好みだったんじゃなかったのか?」
「確かに…それ言ったら今の婚約者が好みのど真ん中なんだよねぇ…」
「あの小豚ちゃんじゃ目の保養にもならねぇだろ。良く我慢してんな?」
「いや~そこは何と言うか…既に目的がズレてると言うか…」
「でもなぁ…ナンていうか、あの腹の肉といい、キョトンとした顔といい…」
「「泣かしてみたい!」」
エリックにもなかなか気の合った友人がいた様だ。
「だよねぇ、無理ってわかってるけど。」
「わかる、あの掴みやすそうな後ろ髪とか、鷲掴みにしてギチギチに痛めつけてみたい…」
「去年までもっと長くてさ、それこそ腕に巻き付けて釣り上げるか、引きずり回すくらいできそうだったんだ…しなかったけど。」
「引っ叩いたらイイ反応しそう…」
「しないしない。なんならただつまんなそ~な顔されて終わるよ。」
「なんだ。痛み強いのか、それとも鈍いだけ?」
「いや…ガチな拷問と地獄から生き延びて来たバケモン。ちょっとやそっとじゃ、泣くどころか表情すら変わんないよ。」
「何の話してんだ?」
「僕の雇い主の話。今も週一くらいで顔面に拳もらったり、たまに刺客に襲われて死にかけたりしてる。」
「…バイオレンス過ぎないか?!」
「最近ようやく他人を愛せる様になって、人間に戻ったとこ。」
「え?…人間…なんだよな?」
「たぶん…」
「そこで自信なさげにするなよ!」
気軽に引き受けた相談相手が、まさか人に成り立ての化け物と言われて、ロナルドは少しだけ不安になった。
バーの個室に澄んだコインの音が響く。
「表。」
「うわー表だ!なんだよ今日は連敗かぁ…」
「ご馳走様、次は君のおすすめの店紹介してよ。」
「こちらも久々で楽しかったですよ。サロンの件ありがとう、楽しみにしてますね。」
「僕の知り合いもいるし、デュロック家とグロッグマン商会に興味のある参加者も集まるから、全くの敵陣って訳でもないし安心してって伝えて。じゃ、お休みエリック、また飲みに行こう!?」
「ええ、近い内にまた!」
外に出ると既に夜。繁華街が目覚める時間だ。
エリックとロナルドはそれぞれ仮面を被り直し、帰路に着いた。
「ライラ、その目はヤメなさい…」
「ふんっ!」
「目つき悪くなっちゃうぞ?!人を指さすな!俺はいいんだよ!生まれつきなんだから!」
「ふんっ!!」
「そんな顔したってデザートはもうおしまい!歯磨いて寝るぞ!?」
「ぶぅぅ…」
「そんなブーブー言ってたら子豚になっちまうぞ?!だから人を指さすんじゃない!!」
明日のパンの仕込みをするデイビッドの足元に、不機嫌そうにしたライラがまとわりついている。
その様子を見て、ヴィオラが楽しそうに笑いながら小さな洗濯物を畳んでいる。
カウチに倒れ込んだシェルリアーナは、仲の良い3人を眺めながらぼんやり考え事をしていた。
(いいわねぇ…私もいつかあんな風に笑えるかしら…)
ライラが眠り、ヴィオラとシェルリアーナも部屋に戻った頃、ご機嫌なエリックが部屋へ戻って来た。
「ただいま戻りましたぁ!いやぁ~久々でついつい飲み過ぎちゃいましたよ!」
「楽しそうで何よりだ…」
「あ、そうそう!デイビッド様のデビュー決まりましたよ?明後日開かれるピオーネ新侯爵家主催のサロンですって!」
「思ったより急だな。確か先月叙爵した元上位伯爵家だったか…派閥を増やそうとしてるんだろうな。」
「派閥もそうですけど、パイプが欲しいんですよ。ピオーネ領はブドウの産地なので、売り込み先も確保したいし、協力者も募りたいのでしょう。」
「…じゃ出されるもんもワインか…一番酔うんだよなぁ…」
「デイビッド様が酔わない酒なんてこの世にあります?!」
7割ジュースで割ったカクテルでさえ、ひと口ふた口で顔が火照る。
エリック曰く、上手く酔うと饒舌になり秘密でもなんでも赤裸々に良く喋ってくれるらしい。
1年前、ワインの相談を受けた生徒から貰った試飲のボトルを開けてしまい、ヘラヘラとエリック相手に胸の内を晒した事がある。
(覚えてないんだろうなぁ…)
エリックが何を聞いたのか、知るのはエリック本人のみである。
夏休みも終わり間近。
新学期の授業に必要な道具を、友人達と買い揃えに行くヴィオラを見送ると、デイビッドは少しだけ憂鬱な気持ちで迎えの馬車に乗り込んだ。
「参加したいとは言ったものの…何をどうしたらいいのか全くわからん…」
「今まで立食パーティー型の商談くらいあったでしょう?」
「サシならなんとかなるけどな、目的がバラバラの人間とは一斉に関わったことなんてねぇんだよ!」
「またまた、学園なんてそんなもんでしょ?声掛けて、自分の話して、相手の話聞いて、質疑応答と意見交換して、何が違うんです?」
「そういう考え方もあるのか…」
「そもそも学園ってもの自体がそういうものの練習になってるんですって。」
「そうなのか…」
「デイビッド様って、ホントにピンポイントで好きな事しかして来なかったんですね…」
「悪かったなぁ!それどころじゃなかったんだよ!」
自分のことで手一杯になり、噂を探るどころではなくなってしまわないか、エリックは少しだけ心配になった。
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