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黒豚令息の領地改革編
ダンスホール
街歩きの為にお洒落をしたヴィオラは、また一段と可愛らしく、輝いて見える。
デイビッドは思い切って口を開いた。
「ヴィオラ…こんなとこで会うなんて、奇遇だな。」
「お仕事中…ですか?」
「まぁ、半分は…ヴィオラこそ買い物はもういいのか?」
「はい、これから帰るところでしたので!」
「あ…あの、ヴィオラ…よければ…その…どうかな、一曲……」
「っはいっ!喜んで!!」
普段なら有り得ない誘いに、ヴィオラも後ろのエリックも驚いた。
柵から身を乗り出すヴィオラを、周りの目が温かく受け入れてくれている。
走って来るヴィオラを隣の屋外ホールへ案内すると、丁度曲の切れ間になり、踊り終わった人々と入れ替わりで輪の中へ入ることができた。
大きな蓄音機の魔道具から、軽快なワルツが流れるとホールも一斉に踊り出す。
皆、自分の踊りと相手に夢中で、誰もデイビッドのことなど気にしていない。
のびのびと軽やかに踊るヴィオラは、いつになく楽しそうだった。
「あら、なかなかキレのあるダンスね。」
「リードもしっかりしてて、悪くないわ。」
「女の子の方も幸せそうで、見てるこっちが嬉しくなっちゃう!」
「私達も踊ってこようかしら?」
ガーデンホールは最も解放的なフリーのサロンで、庶民でも出かけたついでや仕事上がりにふらっと訪れ、誰でも気軽にお喋りやダンスを楽しむことができる。
デートスポットとしても人気で、華やかな装いの男女が、皆自分達だけの世界に浸りながら踊っている。
(成長したなぁ…)
デイビッドが、人前で踊っている。それも公式ではないにせよダンスホールで。
1年前ならば絶対に考えられなかった事だ。
まず人混みに近寄りたがらず、卑屈一直線だったあの自己肯定感マイナスだったデイビッドが、婚約者の手を取り、明るい空の下で踊るなんて。
友人と主人がそれぞれの婚約者を伴って踊る姿を眺めながら、エリックはシェルリアーナの事を考えていた。
(僕も、次のパーティーまでには決めないとなぁ…)
“偽装”などというカードを切ってしまった手前、相手の警戒がなかなか解けないエリックは、そろそろこちらがどれ程本気か示すつもりでいた。
(嬉しそうな顔しやがって…)
婚約者と踊るデイビッドの姿を、エリックは鈍い弟に先を越された兄の様な、複雑な心境で見守っていた。
「あらまぁ!婚約者さんがお迎えに来たのなら、そろそろ自由にして差し上げなくてね!」
「今日は来てくれてありがとう!実りある話が聞けた事で私の株もグンと上がったよ。また来てくれたまえ!」
「ありがとうございます侯爵。奥様も、お心遣い本当に助かりました。」
「いいのよ!ほら行きなさい、かわいいお嬢さんが待ってるわ?」
サロンを後にすると、直ぐにロナルドもソフィアを連れて現れた。
「今日はお疲れ様でした。噂の方は色々拾っておきましたので、後で参考にして下さい。」
「すみません…自分から言い出しておいて目的が果たせず…」
「そんな事ありませんよ。確かに、悪い噂を調べて潰す事も大切です。でもね、それだけじゃないことも気づけたでしょう?今までは出会いが悪かっただけ、君を受け入れてくれる人は大勢います。そう下ばかり向かないで、君は君を歓迎してくれる人達に報いればいい。今日はそれを実感してもらいたくてお呼びしたんですから。」
よく考えれば、デイビッドが今まで関わらされて来た派閥や集団は両親に寄るところが大きく、自ら向かって行った訳では無い。
なんなら国の外ではその都度信頼できる仲間を作り、共に過ごしていたのだ。本当に誰からも嫌われている人間にできることではない。
デイビッドに無能で役立たずのレッテルを貼り付け、都合の良いサンドバッグであり続けることを望む輩共に、こちらが合わせてやる必要など欠片もない。
デイビッドにはデイビッドの付き合いがあり、手を取る相手を選ぶ権利もある。
踏み躙られることに慣れて、長く他者の言葉に縛られていたのはデイビッドの方だったのかも知れない。
この日の経験を通し、デイビッドの中にもほんの少しだが、自尊心と言うものが育ち始めた。
「はぁ……楽しかったです…まさかデイビッド様と踊れるなんて!」
「疲れてないか?」
「あんな大勢いる中で踊れるなんて!お日様はキラキラで、風も気持ちよくて、デイビッド様は格好良くて!思わず3曲も踊っちゃいました!」
「楽しめたなら良かった…」
「私もロナルド様と踊れて幸せでした!お会いできて本当に良かった!」
「ええ、ソフィアが友人を連れて来てくれたお陰で、最高に良いものが見られましたよ。」
馬車に揺られる2組のカップルの横で、チェルシーだけはつまらなそうにしていた。
「見てなさい…次は絶対にカイン様と踊ってやるんだから…」
「アイツ踊れねぇよ?」
「騎士科にだって基礎教育はあったじゃない!!」
「仲間とすっぽかして演習訓練してたんだと。」
「なら踊れるように教育するまでよ!!」
チェルシーはあれからもカインにアプローチを続けているらしい。
なんとも健気なものだ。
ミランダはどこかでインスピレーションが湧いたらしく、ひたすらノートに何か描いている。
にこにこ顔のヴィオラにくっつかれながら、照れなのか、気不味さなのか、何も話せなくなってしまったデイビッドを見て、ロナルドは初々しい後輩の一助になれた事を、非常に嬉しく思っていた。
こうしてデイビッドの社交界デビューは無事成功し、ヴィオラの望みも叶って万々歳の夏季休暇の終わり。
王都に、昨年より少し遅目の雨季がやって来た。
雨の中新学期という、少し憂鬱なイベントが始まる前日、シェルリアーナとデイビッドはヴィオラを王城へ連れて行った。
「今日は何かあるんですか?」
「世紀の大発明のお披露目よ!」
「エリザベス先輩と作ってた装置ですね!?」
「ええ!今日この日をどれ程待ちわびたことか!最高の瞬間にヴィオラも立ち会ってちょうだい!」
同時刻、王城内でもアリスティアが駆け回り、客人達のもてなしの支度に余念がなかった。
「お茶の支度に、お茶菓子は…とりあえずミリオンファームで揃えたから大丈夫!魔道具の調節はエリザベス様からお聞きした通り練習したし…あとはお部屋の用意をしませんとね!」
この度、見習いから正規の侍女に昇格したドレス姿の女生徒達を引き連れ、城内を忙しなく動いて兄の執務室の前で足を止めた。
「お兄様、今お時間よろしいですか?」
「ああ、どうしたアリスティア。」
「これから友人達が参りますので、申し訳ありませんがお兄様はこの部屋から出てって下さいませんか?」
「は?」
「今されているお仕事なら、文官棟のお部屋でもできますでしょう?あら、椅子が足りないかしら?ソファを…いえ…ジュートとクッションにローチェアの方がよろしいかしら…」
「どちらもご用意致します、姫殿下。」
「ありがとう、よろしく頼むわね。という訳なのでお兄様、邪魔なのでお仕事は外でお願いしますね?」
「待て待て待て!一体なんの話だ!?」
「以前お話しましたでしょ?国の歴史が変わる程の大発明のお披露目がございますので、支度が整うまでちょっと邪魔なので外にいて下さいまし?」
書類を抱えたアーネストの鼻先でバタンとドアが閉まる。
何も理解できないまま、狼狽える使用人達に囲まれたアーネストは自分の執務室から追い出されてしまった。
デイビッドが城に着くと、狼狽えたアーネストがいきなり縋り付いて来た。
「デイビッドォォォ!!もう何がなんだかわかんないよぉぉ!」
「よう、アーネスト。今日は部屋借りるぞ?」
「それだよそれぇぇ!執務中にいきなりアリスティアが来てさぁ!邪魔だから出てけって言うんだよ!仕事してたのに!僕の部屋なのに!!」
「別に減るもんじゃねぇだろ?」
「減るよ!!少なくとも僕の集中力とメンタルは減ったよ!?」
「後にしろよ。今日は外部には極秘の話をしに来たんだ。お前の部屋が一番おあつらえ向きなんだよ。」
「確かに防音とか盗聴防止とか山程付いてるけどさぁ!もっとこう、事前に密な相談とか計画とか共有しとくもんじゃないの!?」
「仕事に追われたお前を気遣ったんだろ?俺が聞いた時はこの部屋を使う事は決定事項だってぞ?」
「それならなんで誰も僕になんの相談もしてくれないの?!なんで王太子が蚊帳の外どころか自分の部屋の外に出されるの?!もう訳わかんないよ!」
「お前、相当疲れてそうだな…」
「疲れたよぉぉぉ!身内のゴタゴタに市井の立て直しに派閥争いに通常業務でもうパンクしそうなんだよぉぉ!!」
城に勤めていた役職持ちの貴族家が、教会の不正やハルフェン家の崩壊により起きた聖霊信教の派閥争いに巻き込まれ、城勤め所ではなくなってしまい、抜けたポストが新たに埋まらず、アーネストの仕事量は増えるばかりらしい。
「わかったわかった。何にせよお前がいなきゃ始まらねぇんだ。しっかりしてくれよ、王太子殿下様よ?」
デイビッドは、持って来た大きなバスケットと箱を担ぐと、アーネストの執務室を目指して歩いて行った。
部屋の中には既に涼し気なジュートが敷かれ、ディアナ姫とアリスティアが寛いでいる。
セルジオもソファに腰掛け、皆の到着を待っていた。
「デイビッド様、ヴィオラ様、シェル様!ご機嫌よう!」
「デュロック先生!お待ちしてました!」
「デイビッド殿!チーズケーキ!リクエストのチーズケーキは?!」
「まぁ待てよ。ちゃんと用意して来たって。」
デイビッドがテーブルに荷物を降ろし、バスケットの中身を広げると、ディアナとアリスティアの歓声が上がった。
「今日はお招きありがとうございます!夏休みの終わりにアリス様達と一緒に過ごせるなんて、嬉しいです!」
「私もですヴィオラ様!」
そこへ別の部屋から文官服を着たエリザベスが現れた。
デイビッドは思い切って口を開いた。
「ヴィオラ…こんなとこで会うなんて、奇遇だな。」
「お仕事中…ですか?」
「まぁ、半分は…ヴィオラこそ買い物はもういいのか?」
「はい、これから帰るところでしたので!」
「あ…あの、ヴィオラ…よければ…その…どうかな、一曲……」
「っはいっ!喜んで!!」
普段なら有り得ない誘いに、ヴィオラも後ろのエリックも驚いた。
柵から身を乗り出すヴィオラを、周りの目が温かく受け入れてくれている。
走って来るヴィオラを隣の屋外ホールへ案内すると、丁度曲の切れ間になり、踊り終わった人々と入れ替わりで輪の中へ入ることができた。
大きな蓄音機の魔道具から、軽快なワルツが流れるとホールも一斉に踊り出す。
皆、自分の踊りと相手に夢中で、誰もデイビッドのことなど気にしていない。
のびのびと軽やかに踊るヴィオラは、いつになく楽しそうだった。
「あら、なかなかキレのあるダンスね。」
「リードもしっかりしてて、悪くないわ。」
「女の子の方も幸せそうで、見てるこっちが嬉しくなっちゃう!」
「私達も踊ってこようかしら?」
ガーデンホールは最も解放的なフリーのサロンで、庶民でも出かけたついでや仕事上がりにふらっと訪れ、誰でも気軽にお喋りやダンスを楽しむことができる。
デートスポットとしても人気で、華やかな装いの男女が、皆自分達だけの世界に浸りながら踊っている。
(成長したなぁ…)
デイビッドが、人前で踊っている。それも公式ではないにせよダンスホールで。
1年前ならば絶対に考えられなかった事だ。
まず人混みに近寄りたがらず、卑屈一直線だったあの自己肯定感マイナスだったデイビッドが、婚約者の手を取り、明るい空の下で踊るなんて。
友人と主人がそれぞれの婚約者を伴って踊る姿を眺めながら、エリックはシェルリアーナの事を考えていた。
(僕も、次のパーティーまでには決めないとなぁ…)
“偽装”などというカードを切ってしまった手前、相手の警戒がなかなか解けないエリックは、そろそろこちらがどれ程本気か示すつもりでいた。
(嬉しそうな顔しやがって…)
婚約者と踊るデイビッドの姿を、エリックは鈍い弟に先を越された兄の様な、複雑な心境で見守っていた。
「あらまぁ!婚約者さんがお迎えに来たのなら、そろそろ自由にして差し上げなくてね!」
「今日は来てくれてありがとう!実りある話が聞けた事で私の株もグンと上がったよ。また来てくれたまえ!」
「ありがとうございます侯爵。奥様も、お心遣い本当に助かりました。」
「いいのよ!ほら行きなさい、かわいいお嬢さんが待ってるわ?」
サロンを後にすると、直ぐにロナルドもソフィアを連れて現れた。
「今日はお疲れ様でした。噂の方は色々拾っておきましたので、後で参考にして下さい。」
「すみません…自分から言い出しておいて目的が果たせず…」
「そんな事ありませんよ。確かに、悪い噂を調べて潰す事も大切です。でもね、それだけじゃないことも気づけたでしょう?今までは出会いが悪かっただけ、君を受け入れてくれる人は大勢います。そう下ばかり向かないで、君は君を歓迎してくれる人達に報いればいい。今日はそれを実感してもらいたくてお呼びしたんですから。」
よく考えれば、デイビッドが今まで関わらされて来た派閥や集団は両親に寄るところが大きく、自ら向かって行った訳では無い。
なんなら国の外ではその都度信頼できる仲間を作り、共に過ごしていたのだ。本当に誰からも嫌われている人間にできることではない。
デイビッドに無能で役立たずのレッテルを貼り付け、都合の良いサンドバッグであり続けることを望む輩共に、こちらが合わせてやる必要など欠片もない。
デイビッドにはデイビッドの付き合いがあり、手を取る相手を選ぶ権利もある。
踏み躙られることに慣れて、長く他者の言葉に縛られていたのはデイビッドの方だったのかも知れない。
この日の経験を通し、デイビッドの中にもほんの少しだが、自尊心と言うものが育ち始めた。
「はぁ……楽しかったです…まさかデイビッド様と踊れるなんて!」
「疲れてないか?」
「あんな大勢いる中で踊れるなんて!お日様はキラキラで、風も気持ちよくて、デイビッド様は格好良くて!思わず3曲も踊っちゃいました!」
「楽しめたなら良かった…」
「私もロナルド様と踊れて幸せでした!お会いできて本当に良かった!」
「ええ、ソフィアが友人を連れて来てくれたお陰で、最高に良いものが見られましたよ。」
馬車に揺られる2組のカップルの横で、チェルシーだけはつまらなそうにしていた。
「見てなさい…次は絶対にカイン様と踊ってやるんだから…」
「アイツ踊れねぇよ?」
「騎士科にだって基礎教育はあったじゃない!!」
「仲間とすっぽかして演習訓練してたんだと。」
「なら踊れるように教育するまでよ!!」
チェルシーはあれからもカインにアプローチを続けているらしい。
なんとも健気なものだ。
ミランダはどこかでインスピレーションが湧いたらしく、ひたすらノートに何か描いている。
にこにこ顔のヴィオラにくっつかれながら、照れなのか、気不味さなのか、何も話せなくなってしまったデイビッドを見て、ロナルドは初々しい後輩の一助になれた事を、非常に嬉しく思っていた。
こうしてデイビッドの社交界デビューは無事成功し、ヴィオラの望みも叶って万々歳の夏季休暇の終わり。
王都に、昨年より少し遅目の雨季がやって来た。
雨の中新学期という、少し憂鬱なイベントが始まる前日、シェルリアーナとデイビッドはヴィオラを王城へ連れて行った。
「今日は何かあるんですか?」
「世紀の大発明のお披露目よ!」
「エリザベス先輩と作ってた装置ですね!?」
「ええ!今日この日をどれ程待ちわびたことか!最高の瞬間にヴィオラも立ち会ってちょうだい!」
同時刻、王城内でもアリスティアが駆け回り、客人達のもてなしの支度に余念がなかった。
「お茶の支度に、お茶菓子は…とりあえずミリオンファームで揃えたから大丈夫!魔道具の調節はエリザベス様からお聞きした通り練習したし…あとはお部屋の用意をしませんとね!」
この度、見習いから正規の侍女に昇格したドレス姿の女生徒達を引き連れ、城内を忙しなく動いて兄の執務室の前で足を止めた。
「お兄様、今お時間よろしいですか?」
「ああ、どうしたアリスティア。」
「これから友人達が参りますので、申し訳ありませんがお兄様はこの部屋から出てって下さいませんか?」
「は?」
「今されているお仕事なら、文官棟のお部屋でもできますでしょう?あら、椅子が足りないかしら?ソファを…いえ…ジュートとクッションにローチェアの方がよろしいかしら…」
「どちらもご用意致します、姫殿下。」
「ありがとう、よろしく頼むわね。という訳なのでお兄様、邪魔なのでお仕事は外でお願いしますね?」
「待て待て待て!一体なんの話だ!?」
「以前お話しましたでしょ?国の歴史が変わる程の大発明のお披露目がございますので、支度が整うまでちょっと邪魔なので外にいて下さいまし?」
書類を抱えたアーネストの鼻先でバタンとドアが閉まる。
何も理解できないまま、狼狽える使用人達に囲まれたアーネストは自分の執務室から追い出されてしまった。
デイビッドが城に着くと、狼狽えたアーネストがいきなり縋り付いて来た。
「デイビッドォォォ!!もう何がなんだかわかんないよぉぉ!」
「よう、アーネスト。今日は部屋借りるぞ?」
「それだよそれぇぇ!執務中にいきなりアリスティアが来てさぁ!邪魔だから出てけって言うんだよ!仕事してたのに!僕の部屋なのに!!」
「別に減るもんじゃねぇだろ?」
「減るよ!!少なくとも僕の集中力とメンタルは減ったよ!?」
「後にしろよ。今日は外部には極秘の話をしに来たんだ。お前の部屋が一番おあつらえ向きなんだよ。」
「確かに防音とか盗聴防止とか山程付いてるけどさぁ!もっとこう、事前に密な相談とか計画とか共有しとくもんじゃないの!?」
「仕事に追われたお前を気遣ったんだろ?俺が聞いた時はこの部屋を使う事は決定事項だってぞ?」
「それならなんで誰も僕になんの相談もしてくれないの?!なんで王太子が蚊帳の外どころか自分の部屋の外に出されるの?!もう訳わかんないよ!」
「お前、相当疲れてそうだな…」
「疲れたよぉぉぉ!身内のゴタゴタに市井の立て直しに派閥争いに通常業務でもうパンクしそうなんだよぉぉ!!」
城に勤めていた役職持ちの貴族家が、教会の不正やハルフェン家の崩壊により起きた聖霊信教の派閥争いに巻き込まれ、城勤め所ではなくなってしまい、抜けたポストが新たに埋まらず、アーネストの仕事量は増えるばかりらしい。
「わかったわかった。何にせよお前がいなきゃ始まらねぇんだ。しっかりしてくれよ、王太子殿下様よ?」
デイビッドは、持って来た大きなバスケットと箱を担ぐと、アーネストの執務室を目指して歩いて行った。
部屋の中には既に涼し気なジュートが敷かれ、ディアナ姫とアリスティアが寛いでいる。
セルジオもソファに腰掛け、皆の到着を待っていた。
「デイビッド様、ヴィオラ様、シェル様!ご機嫌よう!」
「デュロック先生!お待ちしてました!」
「デイビッド殿!チーズケーキ!リクエストのチーズケーキは?!」
「まぁ待てよ。ちゃんと用意して来たって。」
デイビッドがテーブルに荷物を降ろし、バスケットの中身を広げると、ディアナとアリスティアの歓声が上がった。
「今日はお招きありがとうございます!夏休みの終わりにアリス様達と一緒に過ごせるなんて、嬉しいです!」
「私もですヴィオラ様!」
そこへ別の部屋から文官服を着たエリザベスが現れた。
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