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黒豚令息の領地改革編
お疲れ気味の
「今年の会計は昨年と違って楽勝だ。」
そんな噂が生徒の間で囁かれた。
昨年は、それまで許されていた購入品が却下され、予算も減らされ、モチベーションが下がり実力を出し切れず散々な目に遭わされた……そう歪んだ逆恨みをしていた特に上流の貴族生徒達は喜び、また自分勝手な予算案を書いて会計の元へ持って行った。
「頑張って書いたのだろうが申し訳ない、今年はこの用紙に必要な箇所だけ明確に記載して提出するように。顧問にもそう伝えたはずだが、行き違いかね?それから、申請された各活動費用は最大上限が銀貨5枚だ。ざっと見る限りこれでは大銀貨に届く金額が記載されているぞ?訂正するように。」
渡された用紙には既に上限額や注意書きが記されていて、要望やいかにその品物の購入が必要かなどの陳述を書く場所はない。
数字に対して下される決定は“可”か“不可”のどちらかのみ。
突ける穴など無い。
では今回だけ…仕方がない…大目に見て…今まではそんな言葉で皆が融通し通してくれた門が閉ざされ、学園側もそれに賛成してしまった。
デイビッドに対し、ここでまたひとつ「金にがめつくケチで狭量な偏屈者」と言う噂が立った。
「デイビッド先生!あの予算の紙作ったの先生ですか?」
「半分は商会、もう半分は俺の思い付き。学生向けだからかなり甘く作ってあるぞ?」
「やっぱり!おかげで作業時間が例年の10分の一で済みました!ありがとうございます!」
「そりゃ良かった。ところで…今日は俺の方からちょっと聞きたい事があるんだ。わかる奴、居たら答えてくれ。」
「わぁぁ!先生から質問だって!!」
「酪農に関する事なんだけどよ…」
「はいっ!僕ん家ウシとヤギ飼ってます!」
「なんでも聞いて下さい!!」
領地経営科の新学期は、デイビッドからの質疑に生徒が応え、議論するという形式で進むようだ。
自分の領地で活かせる情報をここで細やかに集めるつもりらしい。
そろそろ本格的な領地経営を自分がしなくてはならず、デイビッドも頭を悩めているところだ。
授業中ヴィオラはいつもの最前列に座り、時折くすくす笑っていた。
「デイビッド先生が“ギャレット・ル・ジャルダン”で踊ってたって!?」
「ホントホント!見たんだよ!!そこのバーに果物降ろしに行ったらさ!」
「嘘じゃないって!僕の兄さんもデート中に3度見したって言ってたもん!」
「婚約者と白コーデのペアでさ、幸せそうだったって!」
「授業前に人が入り辛い話題で盛り上がんな!!」
案の定、商業科は更に大騒ぎになっていた。
公共ダンスホール“ギャレット・ル・ジャルダン”にはバーもカフェもあり、なんなら軽食を売るワゴンや立売りのスタンドも入り放題。
どこかで知り合いに見られるリスクは考えていたが、一番厄介な連中に見られていたようだ。
「南側の商業地区で元教会関係だった店に対して不買い運動が広まってーー」
「すっごい上手なんだって、ダンス!」
「ホントに踊れたんだ!」
「情報が出回る度に意見が左右する王都民に対して、不信感や不満の声も増えてだなぁーー」
「身投げ寸前だった身重の娼婦を助けたなんて話も出ててさ…」
「どこまでが真実だと思う?」
「この女神教会崩壊から聖霊教の騒動まで、宗教事情に振り回されて不安定になった市井の状態をまとめてーー」
「でもさ…婚約破棄して家門から追放されたなんて噂も出てるんだよねぇ?」
「何言ってるのよ!それこそ嘘に決まってるじゃない!」
「ごちゃごちゃうっせぇな!!黙ってハナシ聞いてろよ!!」
ザワつく商業科の勢いはその後も止まらず、デイビッドは人の噂で盛り上がる生徒達にげんなりしながら研究室へ戻った。
(さすがに疲れたな…)
休み中から実家問題、世間の噂騒動に、店の被害の対処、社交デビューに王族の顔合わせ、学園が始まってからは会計係りに授業、これの合間に自身の家事と仕事とライラの世話を片付けなければならなかったのだ。
中々以前の様に体を動かす事もままならず、運動不足に加え頭も身体も疲れ切っていた。
(そろそろ…ライラが帰って…くる…じかん…)
普段からあまり疲れを感じないデイビッドも、遂にソファでウトウトと微睡んだ。
(デイビッド様が寝てる…)
寝息の音すら微弱だが、珍しく昼間からデイビッドが眠りに就いている。
ヴィオラはまじまじとその様子を眺めながら、その隣にポスンと座った。
(大っきくて温かい…)
普段なら気配で気がつくデイビッドが、人がこんなに近くに来ても起きないのは本当に珍しい。
ヴィオラは思い切ってその肩に寄りかかってみた。
「ん…」
「あ、起こしちゃいました?ごめんなさ…」
「よしよし…いいこだ……」
「あう…」
恐らく、寝ぼけてライラと間違えているのだろう。
デイビッドの片腕が、ヴィオラを抱き寄せ頭を撫でる。
されるがまま、ヴィオラが幸せに浸っていると、デイビッドの身体が一瞬だけ大きく跳ね、そっと腕が離れて行った。
「もうおしまいですか?」
「ヴィオラ、その…本当にごめん…ライラかと思って…」
「そうかなぁとは思いました。でも嬉しかったのとよしよしされるの気持ち良かったのでタンノウしてました!」
「あの…忘れてもらったりとか…」
「え~?どうしましょう。私は忘れたくないなぁ~!」
「怒ってるならちゃんと謝るから…」
「怒ってなんてませんよ?!なんならもう1回して下さい!」
「頼むからもう止めてくれ!な?」
ジリジリ追い詰めると、デイビッドは顔を背けて狼狽える。
魔物を目前にしても怯まない男が、少女を前に形無しな様子がなんともおかしく愛おしい。
「なに?今お取り込み中?あとにしよっか?」
「たぁいまぁ~!」
そこへトムティットがニヤニヤしながらライラを抱えて現れた。
「ままー!」
「ぐぇっ!」
駆け寄るライラが、半身を起こした状態のデイビッドの腹に飛び乗り、トドメを刺す。
「お帰りなさいライラちゃん!お手々洗ってオヤツにしましょ!」
「あーい!」
ヴィオラはぽてぽて歩くライラと手を繋ぎながら、ナーサリーの鞄とスモッグを脱がせると、手を洗わせて今日のオヤツを選びに行った。
「なんか進展した?」
「なんもねぇよ!うたた寝してたの見られただけだ…」
「やっぱお疲れっしょ?フツーはさ、契約者がくたびれたら治すのも癒すのも俺等の仕事なんだ。でもその身体にゃ回復とか掛けられねぇの、結構もどかしんだよね。」
「ただの気疲れだろ?」
「わかってないなぁ。その身体、一度精霊に作り変えられてんだってコト!人間の体に馴染んだ魔素を霊質に置き換えるなんざ、ちょっとした人体改造よ?新しい身体の使い方、ちゃんとわかってんの?」
「使い…方?」
「あー!もー!良く平然と生きてんな!」
トムティットは両手で頭を掻きむしると、デイビッドの前に座った。
「その体の中身はな?!もう半分妖精や精霊に近いもんになってんだよ!!俺もうっかりしてたけどさ!やっぱちゃんと使いこなせてない状態なのがよく分かった!今夜レクチャーするから、時間開けとけよ?!」
トムティットはそう言うと、鏡の中へツルリと滑り込み、夕食時にも顔を出さなかった。
「じぇいー!」
「今日はゼリーにする?」
「うーん…けーち…」
「ケーキも美味しそうよね!?」
「うーん…」
「ライラちゃん、半分こにしようか!そしたらどっちも食べられるわよ?」
「ぶんぶんこー!」
キラキラのゼリーとチーズケーキを、ヴィオラと半こにして食べるライラはそれはにこにこしていた。
夕飯は、ユェイと共同開発したカラン風固形調味料を使ったスープと、カラン風の豚肉の薄切りを加えた野菜料理。
既に肉の旨味が凝縮した調味料を加えると、野菜だけでもコクのある肉の風味が広がり、満足感がある。
ユェイに教わった海藻の茎の細切りを使ったサラダに、いつもの葉野菜にもゴマの油を使ったドレッシングを試してみた。
「おいしー!」
「わ!すごい、お野菜なのにこんなに食べ応えがあって、この香りゴマですね!」
「そう、白胡麻の油を手に入れたんだ。“タマリ”との相性がいいって聞いたんで使ってみた。」
そこへエリックとシェルリアーナも顔を出した。
2人して大きな箱を抱えている。
「シェル先輩!学園が始まってからほとんど会えなくて寂しかったです!なんですかその箱?」
「お野菜…」
「お野菜?」
「今日から私が食べるお野菜…」
「お野菜…こんなに…?」
「市場でたくさん仕入れてきたんですよ!新鮮でおいしいお野菜!」
「ウサギにでもなるのか?」
「このまま食べないわよ!ちゃんと調理してもらうの!」
「当然のように俺に丸投げる気だな?!」
「だって!外で食べても美味しくないんだから仕方ないじゃない!!」
「野菜なんてどこで食っても同じだと思うけどな…」
「いやいや。見て下さいよ、今日の食事ひとつ取っても、デイビッド様の手を介してこの食卓に並ぶ料理はみんな絶品になるんですよ!」
「生野菜そのまま出してやろうか…?」
シェルリアーナは今日も制服姿ではない。
既に卒業生であり、資格と妃殿下の護衛の為に登園している事は周知の為、制服は必要ない。
制服の色に寄せたパンツスーツに、ジャケットと言う出で立ちで、女生徒達にキャーキャー言われている。
しかし、長年付き合いのある幼馴染みの目は誤魔化せなかった…
「ねぇ、シェリィ太った?!」
「コラ、リズ!そう言う事は口に出すものじゃないぞ?本人だって気にしてるんだ!それに、少し太ったってアナの美貌は揺るがないさ。そうだろ?」
「健康に障りがなければ問題無いよ。シェルリアーナは元々痩せがち過ぎて心配だったから、僕としてはその方が安心だな。」
ー あと1.5倍は太っても誰も気がつかねぇよ ー
一年前、肉団子にそう言われ、ショック受けたシェルリアーナは、一度はダイエットに成功したものの、その後も食欲が増し続け、この度しっかり1.6倍に太ってしまったのだった。
そんな噂が生徒の間で囁かれた。
昨年は、それまで許されていた購入品が却下され、予算も減らされ、モチベーションが下がり実力を出し切れず散々な目に遭わされた……そう歪んだ逆恨みをしていた特に上流の貴族生徒達は喜び、また自分勝手な予算案を書いて会計の元へ持って行った。
「頑張って書いたのだろうが申し訳ない、今年はこの用紙に必要な箇所だけ明確に記載して提出するように。顧問にもそう伝えたはずだが、行き違いかね?それから、申請された各活動費用は最大上限が銀貨5枚だ。ざっと見る限りこれでは大銀貨に届く金額が記載されているぞ?訂正するように。」
渡された用紙には既に上限額や注意書きが記されていて、要望やいかにその品物の購入が必要かなどの陳述を書く場所はない。
数字に対して下される決定は“可”か“不可”のどちらかのみ。
突ける穴など無い。
では今回だけ…仕方がない…大目に見て…今まではそんな言葉で皆が融通し通してくれた門が閉ざされ、学園側もそれに賛成してしまった。
デイビッドに対し、ここでまたひとつ「金にがめつくケチで狭量な偏屈者」と言う噂が立った。
「デイビッド先生!あの予算の紙作ったの先生ですか?」
「半分は商会、もう半分は俺の思い付き。学生向けだからかなり甘く作ってあるぞ?」
「やっぱり!おかげで作業時間が例年の10分の一で済みました!ありがとうございます!」
「そりゃ良かった。ところで…今日は俺の方からちょっと聞きたい事があるんだ。わかる奴、居たら答えてくれ。」
「わぁぁ!先生から質問だって!!」
「酪農に関する事なんだけどよ…」
「はいっ!僕ん家ウシとヤギ飼ってます!」
「なんでも聞いて下さい!!」
領地経営科の新学期は、デイビッドからの質疑に生徒が応え、議論するという形式で進むようだ。
自分の領地で活かせる情報をここで細やかに集めるつもりらしい。
そろそろ本格的な領地経営を自分がしなくてはならず、デイビッドも頭を悩めているところだ。
授業中ヴィオラはいつもの最前列に座り、時折くすくす笑っていた。
「デイビッド先生が“ギャレット・ル・ジャルダン”で踊ってたって!?」
「ホントホント!見たんだよ!!そこのバーに果物降ろしに行ったらさ!」
「嘘じゃないって!僕の兄さんもデート中に3度見したって言ってたもん!」
「婚約者と白コーデのペアでさ、幸せそうだったって!」
「授業前に人が入り辛い話題で盛り上がんな!!」
案の定、商業科は更に大騒ぎになっていた。
公共ダンスホール“ギャレット・ル・ジャルダン”にはバーもカフェもあり、なんなら軽食を売るワゴンや立売りのスタンドも入り放題。
どこかで知り合いに見られるリスクは考えていたが、一番厄介な連中に見られていたようだ。
「南側の商業地区で元教会関係だった店に対して不買い運動が広まってーー」
「すっごい上手なんだって、ダンス!」
「ホントに踊れたんだ!」
「情報が出回る度に意見が左右する王都民に対して、不信感や不満の声も増えてだなぁーー」
「身投げ寸前だった身重の娼婦を助けたなんて話も出ててさ…」
「どこまでが真実だと思う?」
「この女神教会崩壊から聖霊教の騒動まで、宗教事情に振り回されて不安定になった市井の状態をまとめてーー」
「でもさ…婚約破棄して家門から追放されたなんて噂も出てるんだよねぇ?」
「何言ってるのよ!それこそ嘘に決まってるじゃない!」
「ごちゃごちゃうっせぇな!!黙ってハナシ聞いてろよ!!」
ザワつく商業科の勢いはその後も止まらず、デイビッドは人の噂で盛り上がる生徒達にげんなりしながら研究室へ戻った。
(さすがに疲れたな…)
休み中から実家問題、世間の噂騒動に、店の被害の対処、社交デビューに王族の顔合わせ、学園が始まってからは会計係りに授業、これの合間に自身の家事と仕事とライラの世話を片付けなければならなかったのだ。
中々以前の様に体を動かす事もままならず、運動不足に加え頭も身体も疲れ切っていた。
(そろそろ…ライラが帰って…くる…じかん…)
普段からあまり疲れを感じないデイビッドも、遂にソファでウトウトと微睡んだ。
(デイビッド様が寝てる…)
寝息の音すら微弱だが、珍しく昼間からデイビッドが眠りに就いている。
ヴィオラはまじまじとその様子を眺めながら、その隣にポスンと座った。
(大っきくて温かい…)
普段なら気配で気がつくデイビッドが、人がこんなに近くに来ても起きないのは本当に珍しい。
ヴィオラは思い切ってその肩に寄りかかってみた。
「ん…」
「あ、起こしちゃいました?ごめんなさ…」
「よしよし…いいこだ……」
「あう…」
恐らく、寝ぼけてライラと間違えているのだろう。
デイビッドの片腕が、ヴィオラを抱き寄せ頭を撫でる。
されるがまま、ヴィオラが幸せに浸っていると、デイビッドの身体が一瞬だけ大きく跳ね、そっと腕が離れて行った。
「もうおしまいですか?」
「ヴィオラ、その…本当にごめん…ライラかと思って…」
「そうかなぁとは思いました。でも嬉しかったのとよしよしされるの気持ち良かったのでタンノウしてました!」
「あの…忘れてもらったりとか…」
「え~?どうしましょう。私は忘れたくないなぁ~!」
「怒ってるならちゃんと謝るから…」
「怒ってなんてませんよ?!なんならもう1回して下さい!」
「頼むからもう止めてくれ!な?」
ジリジリ追い詰めると、デイビッドは顔を背けて狼狽える。
魔物を目前にしても怯まない男が、少女を前に形無しな様子がなんともおかしく愛おしい。
「なに?今お取り込み中?あとにしよっか?」
「たぁいまぁ~!」
そこへトムティットがニヤニヤしながらライラを抱えて現れた。
「ままー!」
「ぐぇっ!」
駆け寄るライラが、半身を起こした状態のデイビッドの腹に飛び乗り、トドメを刺す。
「お帰りなさいライラちゃん!お手々洗ってオヤツにしましょ!」
「あーい!」
ヴィオラはぽてぽて歩くライラと手を繋ぎながら、ナーサリーの鞄とスモッグを脱がせると、手を洗わせて今日のオヤツを選びに行った。
「なんか進展した?」
「なんもねぇよ!うたた寝してたの見られただけだ…」
「やっぱお疲れっしょ?フツーはさ、契約者がくたびれたら治すのも癒すのも俺等の仕事なんだ。でもその身体にゃ回復とか掛けられねぇの、結構もどかしんだよね。」
「ただの気疲れだろ?」
「わかってないなぁ。その身体、一度精霊に作り変えられてんだってコト!人間の体に馴染んだ魔素を霊質に置き換えるなんざ、ちょっとした人体改造よ?新しい身体の使い方、ちゃんとわかってんの?」
「使い…方?」
「あー!もー!良く平然と生きてんな!」
トムティットは両手で頭を掻きむしると、デイビッドの前に座った。
「その体の中身はな?!もう半分妖精や精霊に近いもんになってんだよ!!俺もうっかりしてたけどさ!やっぱちゃんと使いこなせてない状態なのがよく分かった!今夜レクチャーするから、時間開けとけよ?!」
トムティットはそう言うと、鏡の中へツルリと滑り込み、夕食時にも顔を出さなかった。
「じぇいー!」
「今日はゼリーにする?」
「うーん…けーち…」
「ケーキも美味しそうよね!?」
「うーん…」
「ライラちゃん、半分こにしようか!そしたらどっちも食べられるわよ?」
「ぶんぶんこー!」
キラキラのゼリーとチーズケーキを、ヴィオラと半こにして食べるライラはそれはにこにこしていた。
夕飯は、ユェイと共同開発したカラン風固形調味料を使ったスープと、カラン風の豚肉の薄切りを加えた野菜料理。
既に肉の旨味が凝縮した調味料を加えると、野菜だけでもコクのある肉の風味が広がり、満足感がある。
ユェイに教わった海藻の茎の細切りを使ったサラダに、いつもの葉野菜にもゴマの油を使ったドレッシングを試してみた。
「おいしー!」
「わ!すごい、お野菜なのにこんなに食べ応えがあって、この香りゴマですね!」
「そう、白胡麻の油を手に入れたんだ。“タマリ”との相性がいいって聞いたんで使ってみた。」
そこへエリックとシェルリアーナも顔を出した。
2人して大きな箱を抱えている。
「シェル先輩!学園が始まってからほとんど会えなくて寂しかったです!なんですかその箱?」
「お野菜…」
「お野菜?」
「今日から私が食べるお野菜…」
「お野菜…こんなに…?」
「市場でたくさん仕入れてきたんですよ!新鮮でおいしいお野菜!」
「ウサギにでもなるのか?」
「このまま食べないわよ!ちゃんと調理してもらうの!」
「当然のように俺に丸投げる気だな?!」
「だって!外で食べても美味しくないんだから仕方ないじゃない!!」
「野菜なんてどこで食っても同じだと思うけどな…」
「いやいや。見て下さいよ、今日の食事ひとつ取っても、デイビッド様の手を介してこの食卓に並ぶ料理はみんな絶品になるんですよ!」
「生野菜そのまま出してやろうか…?」
シェルリアーナは今日も制服姿ではない。
既に卒業生であり、資格と妃殿下の護衛の為に登園している事は周知の為、制服は必要ない。
制服の色に寄せたパンツスーツに、ジャケットと言う出で立ちで、女生徒達にキャーキャー言われている。
しかし、長年付き合いのある幼馴染みの目は誤魔化せなかった…
「ねぇ、シェリィ太った?!」
「コラ、リズ!そう言う事は口に出すものじゃないぞ?本人だって気にしてるんだ!それに、少し太ったってアナの美貌は揺るがないさ。そうだろ?」
「健康に障りがなければ問題無いよ。シェルリアーナは元々痩せがち過ぎて心配だったから、僕としてはその方が安心だな。」
ー あと1.5倍は太っても誰も気がつかねぇよ ー
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