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黒豚特別非常勤講師
生徒会との対面
「エリック、部屋を開けるからもう一休みしてていいぞ?!」
デイビッドはいつものベストを着ると、不機嫌な生徒達についていく。
「お気をつけて!」
(まぁ目は付けられますよね。プライド高々な貴族のお坊ちゃんの集まりですし。どうなることやら…)
緑の廊下が途切れ、廊下も壁も青くなる。
建物は明るいのに、流れる空気は重くあの日の夜会のようだった。
「ここだ、入れ!」
金のプレートに生徒会の文字が刻まれた部屋には、綺羅びやかな集団が集まっていて、デイビッドを睨みつけていた。
デイビッドを立たせたまま、それぞれ席に着くと、正面の金髪が喋り出す。
「デイビッド・デュロック、貴殿は先の授業で生徒を不当に追い出し、生徒の義務と権利を侵害したというのは本当か?」
「(誰だこいつ…?)追い出したりはしてねぇよ。俺の話が必要ない奴は自習してろと言ったんだ。講義の邪魔をする奴にもな。」
「教員でありながら生徒に授業を受けさせないとはどういうつもりだ!?」
「俺の話は成績に関係しない。話の中身も必要な奴にだけ伝わればいい。必要ない奴には関係無い話だ。騎士科で刺繍を教えないのと同じだよ。」
「ならば、意欲のある生徒まで追い出した事はどう説明する?!」
「本当に意欲のある生徒は、他の生徒の時間を奪ったりしない。自分の意見を言いたいだけの奴に割く時間がもったいなかったんでな。それに、追い出したわけじゃない。邪魔するなら出て行けと言ったんだ。それで出てったなら本人もその程度のつもりだったんだろう?」
「それが教師の生徒に対する態度か?!」
「残念だが、俺は教師じゃない。お前達を優しく教え説いて正してやる義理なんざ、これっぽっち無い。俺が教えるのはデュロックの積み上げた歴史と研鑽の賜物だ。やる気の無い連中に、ほいほい与えてやれる程軽くは無い!人生背負って、腹括らなきゃならない奴にこそ伝わるべき知識と技術。王都のお貴族様には不要だろうがよ…」
「なら尚更、フェーラー侯爵子息を外すのはおかしいだろう!?彼は国の穀倉地帯を受け持つフェーラー家の時期当主だ!彼ほど領地経営について学ぶ権利のある者はいないはずだ!!」
「言っただろう?やる気のない奴に、教えてやるつもりは無い!勉強ってのはな、黙って座ってりゃはいどうぞなんて差し出してもらえるもんじゃねぇんだよ。自分の意思で探し出してかき集めて貪欲につかみ取って、初めて自分のモノになるんだ。評価も成績も関係ない。それから、何度も言うが、邪魔する奴には容赦しねぇ!?それとも、お偉い貴族様は他の生徒の貴重な時間を奪っても許されるってのか?」
「くっ……しかたない、今回だけは目をつぶってやろう!ただし、この次問題を起こしたら、直ちに学科長と学園長へ報告の上処罰してもらう!いいな?!」
「(何がしかたないんだ?)学科長も学園長も見てたけどな。特に止められなかったし、今後もこのやり方は変える気ねぇけど、まぁ大人しくしてるなら居ても構わねぇよ。じゃ、話が終わったなら俺はもう行くぞ?」
「待て!まだある!研究室の無駄な設備を今すぐ撤去しろ!我々の学園に、無関係な物を持ち込まれては迷惑だ!」
「何が必要かなんて本人以外に分からんだろう?あの部屋に運んだ物、全部使って結果出してんだよ!王太子殿下と王弟殿下と陛下にも報告は行ってる。これで文句ねぇだろ?!」
デイビッドはベストの内側から、王家の紋章とアーネストの個人印と王印の入った用紙を出して見せた。
「な…な…なんでお前がそんな物を…?」
「ここに来たのも半分はコレのせいだよ。王都なんざ来たくて来たわけじゃない。わかったらこれ以上関わってくるなよ?」
威圧的な雰囲気が一転し、金髪含め全員が一斉にうろたえだした。
「な…なら、これは言わせてもらう!エリック・ラルスル先生を今すぐ解放し、こちらへ返してもらいたい!」
「エリックを…?」
「彼はこの学園の卒業生だ。誰より私達生徒の気持ちを分かって下さっている。新任のため補佐に就くのは仕方がないとしても、授業以外の時間まで拘束するのは規約違反のはずだ!それこそ、エリック先生の権利を侵害していると言えるだろう!?」
これなら言い返せまいと、立ち上がった金髪はデイビッドを指差し、見下ろした。
「いや…あいつ俺の従者なんで、授業の後は普通に仕事してるだけだが…?」
「は…?従…者…?」
「雇ってんのは俺の親父で、そもそも自分の部屋に帰らねぇで居着いてるの本人だしな。俺に言われても困る。他に言いたい事は?無ければ俺はもう行くぞ?!これからもお互い出来るだけ関わらないよう過ごしてこうぜ?!じゃぁな。」
そう言って踵を返すデイビッドを、追いかける声はもう聞こえなかった。
「なんか凄い子達でしたね?!」
「出たな!居座り従者!」
外ではエリックが壁にもたれてデイビッドを待っていた。
「学園なんて狭い箱の中で、てっぺん取った気でいるのかなぁ…かわいそうに…」
「お前、好かれてんじゃん?青い方の住人になった方が良いんじゃねぇの?」
「ご冗談を…関わるのは授業だけで結構ですよ。」
「初日で、あれだけやさぐれてて大丈夫なのか…?」
「分厚いベーコンとポテトサラダとチキンフリットがあれば頑張れます!」
「しれっとリクエストすんなよ…ところで、お前なんでついてきたんだ?」
「デイビッド様がベスト着て行ったからですよ!」
「ズボンのポケットに王印の手紙しまうわけにいかなかったからな…」
「喧嘩でもするのかと思ってひやひやしましたよ…」
「流石に生徒相手に手は出さねぇよ!?」
2人はそのまま事務所に寄ると、大きな箱を受け取りまた緑の廊下を渡り端の研究室へ戻って行った。
デイビッドはいつものベストを着ると、不機嫌な生徒達についていく。
「お気をつけて!」
(まぁ目は付けられますよね。プライド高々な貴族のお坊ちゃんの集まりですし。どうなることやら…)
緑の廊下が途切れ、廊下も壁も青くなる。
建物は明るいのに、流れる空気は重くあの日の夜会のようだった。
「ここだ、入れ!」
金のプレートに生徒会の文字が刻まれた部屋には、綺羅びやかな集団が集まっていて、デイビッドを睨みつけていた。
デイビッドを立たせたまま、それぞれ席に着くと、正面の金髪が喋り出す。
「デイビッド・デュロック、貴殿は先の授業で生徒を不当に追い出し、生徒の義務と権利を侵害したというのは本当か?」
「(誰だこいつ…?)追い出したりはしてねぇよ。俺の話が必要ない奴は自習してろと言ったんだ。講義の邪魔をする奴にもな。」
「教員でありながら生徒に授業を受けさせないとはどういうつもりだ!?」
「俺の話は成績に関係しない。話の中身も必要な奴にだけ伝わればいい。必要ない奴には関係無い話だ。騎士科で刺繍を教えないのと同じだよ。」
「ならば、意欲のある生徒まで追い出した事はどう説明する?!」
「本当に意欲のある生徒は、他の生徒の時間を奪ったりしない。自分の意見を言いたいだけの奴に割く時間がもったいなかったんでな。それに、追い出したわけじゃない。邪魔するなら出て行けと言ったんだ。それで出てったなら本人もその程度のつもりだったんだろう?」
「それが教師の生徒に対する態度か?!」
「残念だが、俺は教師じゃない。お前達を優しく教え説いて正してやる義理なんざ、これっぽっち無い。俺が教えるのはデュロックの積み上げた歴史と研鑽の賜物だ。やる気の無い連中に、ほいほい与えてやれる程軽くは無い!人生背負って、腹括らなきゃならない奴にこそ伝わるべき知識と技術。王都のお貴族様には不要だろうがよ…」
「なら尚更、フェーラー侯爵子息を外すのはおかしいだろう!?彼は国の穀倉地帯を受け持つフェーラー家の時期当主だ!彼ほど領地経営について学ぶ権利のある者はいないはずだ!!」
「言っただろう?やる気のない奴に、教えてやるつもりは無い!勉強ってのはな、黙って座ってりゃはいどうぞなんて差し出してもらえるもんじゃねぇんだよ。自分の意思で探し出してかき集めて貪欲につかみ取って、初めて自分のモノになるんだ。評価も成績も関係ない。それから、何度も言うが、邪魔する奴には容赦しねぇ!?それとも、お偉い貴族様は他の生徒の貴重な時間を奪っても許されるってのか?」
「くっ……しかたない、今回だけは目をつぶってやろう!ただし、この次問題を起こしたら、直ちに学科長と学園長へ報告の上処罰してもらう!いいな?!」
「(何がしかたないんだ?)学科長も学園長も見てたけどな。特に止められなかったし、今後もこのやり方は変える気ねぇけど、まぁ大人しくしてるなら居ても構わねぇよ。じゃ、話が終わったなら俺はもう行くぞ?」
「待て!まだある!研究室の無駄な設備を今すぐ撤去しろ!我々の学園に、無関係な物を持ち込まれては迷惑だ!」
「何が必要かなんて本人以外に分からんだろう?あの部屋に運んだ物、全部使って結果出してんだよ!王太子殿下と王弟殿下と陛下にも報告は行ってる。これで文句ねぇだろ?!」
デイビッドはベストの内側から、王家の紋章とアーネストの個人印と王印の入った用紙を出して見せた。
「な…な…なんでお前がそんな物を…?」
「ここに来たのも半分はコレのせいだよ。王都なんざ来たくて来たわけじゃない。わかったらこれ以上関わってくるなよ?」
威圧的な雰囲気が一転し、金髪含め全員が一斉にうろたえだした。
「な…なら、これは言わせてもらう!エリック・ラルスル先生を今すぐ解放し、こちらへ返してもらいたい!」
「エリックを…?」
「彼はこの学園の卒業生だ。誰より私達生徒の気持ちを分かって下さっている。新任のため補佐に就くのは仕方がないとしても、授業以外の時間まで拘束するのは規約違反のはずだ!それこそ、エリック先生の権利を侵害していると言えるだろう!?」
これなら言い返せまいと、立ち上がった金髪はデイビッドを指差し、見下ろした。
「いや…あいつ俺の従者なんで、授業の後は普通に仕事してるだけだが…?」
「は…?従…者…?」
「雇ってんのは俺の親父で、そもそも自分の部屋に帰らねぇで居着いてるの本人だしな。俺に言われても困る。他に言いたい事は?無ければ俺はもう行くぞ?!これからもお互い出来るだけ関わらないよう過ごしてこうぜ?!じゃぁな。」
そう言って踵を返すデイビッドを、追いかける声はもう聞こえなかった。
「なんか凄い子達でしたね?!」
「出たな!居座り従者!」
外ではエリックが壁にもたれてデイビッドを待っていた。
「学園なんて狭い箱の中で、てっぺん取った気でいるのかなぁ…かわいそうに…」
「お前、好かれてんじゃん?青い方の住人になった方が良いんじゃねぇの?」
「ご冗談を…関わるのは授業だけで結構ですよ。」
「初日で、あれだけやさぐれてて大丈夫なのか…?」
「分厚いベーコンとポテトサラダとチキンフリットがあれば頑張れます!」
「しれっとリクエストすんなよ…ところで、お前なんでついてきたんだ?」
「デイビッド様がベスト着て行ったからですよ!」
「ズボンのポケットに王印の手紙しまうわけにいかなかったからな…」
「喧嘩でもするのかと思ってひやひやしましたよ…」
「流石に生徒相手に手は出さねぇよ!?」
2人はそのまま事務所に寄ると、大きな箱を受け取りまた緑の廊下を渡り端の研究室へ戻って行った。
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