25 / 411
黒豚特別非常勤講師
生徒会との対面
しおりを挟む
「エリック、部屋を開けるからもう一休みしてていいぞ?!」
デイビッドはいつものベストを着ると、不機嫌な生徒達についていく。
「お気をつけて!」
(まぁ目は付けられますよね。プライド高々な貴族のお坊ちゃんの集まりですし。どうなることやら…)
緑の廊下が途切れ、廊下も壁も青くなる。
建物は明るいのに、流れる空気は重くあの日の夜会のようだった。
「ここだ、入れ!」
金のプレートに生徒会の文字が刻まれた部屋には、綺羅びやかな集団が集まっていて、デイビッドを睨みつけていた。
デイビッドを立たせたまま、それぞれ席に着くと、正面の金髪が喋り出す。
「デイビッド・デュロック、貴殿は先の授業で生徒を不当に追い出し、生徒の義務と権利を侵害したというのは本当か?」
「(誰だこいつ…?)追い出したりはしてねぇよ。俺の話が必要ない奴は自習してろと言ったんだ。講義の邪魔をする奴にもな。」
「教員でありながら生徒に授業を受けさせないとはどういうつもりだ!?」
「俺の話は成績に関係しない。話の中身も必要な奴にだけ伝わればいい。必要ない奴には関係無い話だ。騎士科で刺繍を教えないのと同じだよ。」
「ならば、意欲のある生徒まで追い出した事はどう説明する?!」
「本当に意欲のある生徒は、他の生徒の時間を奪ったりしない。自分の意見を言いたいだけの奴に割く時間がもったいなかったんでな。それに、追い出したわけじゃない。邪魔するなら出て行けと言ったんだ。それで出てったなら本人もその程度のつもりだったんだろう?」
「それが教師の生徒に対する態度か?!」
「残念だが、俺は教師じゃない。お前達を優しく教え説いて正してやる義理なんざ、これっぽっち無い。俺が教えるのはデュロックの積み上げた歴史と研鑽の賜物だ。やる気の無い連中に、ほいほい与えてやれる程軽くは無い!人生背負って、腹括らなきゃならない奴にこそ伝わるべき知識と技術。王都のお貴族様には不要だろうがよ…」
「なら尚更、フェーラー侯爵子息を外すのはおかしいだろう!?彼は国の穀倉地帯を受け持つフェーラー家の時期当主だ!彼ほど領地経営について学ぶ権利のある者はいないはずだ!!」
「言っただろう?やる気のない奴に、教えてやるつもりは無い!勉強ってのはな、黙って座ってりゃはいどうぞなんて差し出してもらえるもんじゃねぇんだよ。自分の意思で探し出してかき集めて貪欲につかみ取って、初めて自分のモノになるんだ。評価も成績も関係ない。それから、何度も言うが、邪魔する奴には容赦しねぇ!?それとも、お偉い貴族様は他の生徒の貴重な時間を奪っても許されるってのか?」
「くっ……しかたない、今回だけは目をつぶってやろう!ただし、この次問題を起こしたら、直ちに学科長と学園長へ報告の上処罰してもらう!いいな?!」
「(何がしかたないんだ?)学科長も学園長も見てたけどな。特に止められなかったし、今後もこのやり方は変える気ねぇけど、まぁ大人しくしてるなら居ても構わねぇよ。じゃ、話が終わったなら俺はもう行くぞ?」
「待て!まだある!研究室の無駄な設備を今すぐ撤去しろ!我々の学園に、無関係な物を持ち込まれては迷惑だ!」
「何が必要かなんて本人以外に分からんだろう?あの部屋に運んだ物、全部使って結果出してんだよ!王太子殿下と王弟殿下と陛下にも報告は行ってる。これで文句ねぇだろ?!」
デイビッドはベストの内側から、王家の紋章とアーネストの個人印と王印の入った用紙を出して見せた。
「な…な…なんでお前がそんな物を…?」
「ここに来たのも半分はコレのせいだよ。王都なんざ来たくて来たわけじゃない。わかったらこれ以上関わってくるなよ?」
威圧的な雰囲気が一転し、金髪含め全員が一斉にうろたえだした。
「な…なら、これは言わせてもらう!エリック・ラルスル先生を今すぐ解放し、こちらへ返してもらいたい!」
「エリックを…?」
「彼はこの学園の卒業生だ。誰より私達生徒の気持ちを分かって下さっている。新任のため補佐に就くのは仕方がないとしても、授業以外の時間まで拘束するのは規約違反のはずだ!それこそ、エリック先生の権利を侵害していると言えるだろう!?」
これなら言い返せまいと、立ち上がった金髪はデイビッドを指差し、見下ろした。
「いや…あいつ俺の従者なんで、授業の後は普通に仕事してるだけだが…?」
「は…?従…者…?」
「雇ってんのは俺の親父で、そもそも自分の部屋に帰らねぇで居着いてるの本人だしな。俺に言われても困る。他に言いたい事は?無ければ俺はもう行くぞ?!これからもお互い出来るだけ関わらないよう過ごしてこうぜ?!じゃぁな。」
そう言って踵を返すデイビッドを、追いかける声はもう聞こえなかった。
「なんか凄い子達でしたね?!」
「出たな!居座り従者!」
外ではエリックが壁にもたれてデイビッドを待っていた。
「学園なんて狭い箱の中で、てっぺん取った気でいるのかなぁ…かわいそうに…」
「お前、好かれてんじゃん?青い方の住人になった方が良いんじゃねぇの?」
「ご冗談を…関わるのは授業だけで結構ですよ。」
「初日で、あれだけやさぐれてて大丈夫なのか…?」
「分厚いベーコンとポテトサラダとチキンフリットがあれば頑張れます!」
「しれっとリクエストすんなよ…ところで、お前なんでついてきたんだ?」
「デイビッド様がベスト着て行ったからですよ!」
「ズボンのポケットに王印の手紙しまうわけにいかなかったからな…」
「喧嘩でもするのかと思ってひやひやしましたよ…」
「流石に生徒相手に手は出さねぇよ!?」
2人はそのまま事務所に寄ると、大きな箱を受け取りまた緑の廊下を渡り端の研究室へ戻って行った。
デイビッドはいつものベストを着ると、不機嫌な生徒達についていく。
「お気をつけて!」
(まぁ目は付けられますよね。プライド高々な貴族のお坊ちゃんの集まりですし。どうなることやら…)
緑の廊下が途切れ、廊下も壁も青くなる。
建物は明るいのに、流れる空気は重くあの日の夜会のようだった。
「ここだ、入れ!」
金のプレートに生徒会の文字が刻まれた部屋には、綺羅びやかな集団が集まっていて、デイビッドを睨みつけていた。
デイビッドを立たせたまま、それぞれ席に着くと、正面の金髪が喋り出す。
「デイビッド・デュロック、貴殿は先の授業で生徒を不当に追い出し、生徒の義務と権利を侵害したというのは本当か?」
「(誰だこいつ…?)追い出したりはしてねぇよ。俺の話が必要ない奴は自習してろと言ったんだ。講義の邪魔をする奴にもな。」
「教員でありながら生徒に授業を受けさせないとはどういうつもりだ!?」
「俺の話は成績に関係しない。話の中身も必要な奴にだけ伝わればいい。必要ない奴には関係無い話だ。騎士科で刺繍を教えないのと同じだよ。」
「ならば、意欲のある生徒まで追い出した事はどう説明する?!」
「本当に意欲のある生徒は、他の生徒の時間を奪ったりしない。自分の意見を言いたいだけの奴に割く時間がもったいなかったんでな。それに、追い出したわけじゃない。邪魔するなら出て行けと言ったんだ。それで出てったなら本人もその程度のつもりだったんだろう?」
「それが教師の生徒に対する態度か?!」
「残念だが、俺は教師じゃない。お前達を優しく教え説いて正してやる義理なんざ、これっぽっち無い。俺が教えるのはデュロックの積み上げた歴史と研鑽の賜物だ。やる気の無い連中に、ほいほい与えてやれる程軽くは無い!人生背負って、腹括らなきゃならない奴にこそ伝わるべき知識と技術。王都のお貴族様には不要だろうがよ…」
「なら尚更、フェーラー侯爵子息を外すのはおかしいだろう!?彼は国の穀倉地帯を受け持つフェーラー家の時期当主だ!彼ほど領地経営について学ぶ権利のある者はいないはずだ!!」
「言っただろう?やる気のない奴に、教えてやるつもりは無い!勉強ってのはな、黙って座ってりゃはいどうぞなんて差し出してもらえるもんじゃねぇんだよ。自分の意思で探し出してかき集めて貪欲につかみ取って、初めて自分のモノになるんだ。評価も成績も関係ない。それから、何度も言うが、邪魔する奴には容赦しねぇ!?それとも、お偉い貴族様は他の生徒の貴重な時間を奪っても許されるってのか?」
「くっ……しかたない、今回だけは目をつぶってやろう!ただし、この次問題を起こしたら、直ちに学科長と学園長へ報告の上処罰してもらう!いいな?!」
「(何がしかたないんだ?)学科長も学園長も見てたけどな。特に止められなかったし、今後もこのやり方は変える気ねぇけど、まぁ大人しくしてるなら居ても構わねぇよ。じゃ、話が終わったなら俺はもう行くぞ?」
「待て!まだある!研究室の無駄な設備を今すぐ撤去しろ!我々の学園に、無関係な物を持ち込まれては迷惑だ!」
「何が必要かなんて本人以外に分からんだろう?あの部屋に運んだ物、全部使って結果出してんだよ!王太子殿下と王弟殿下と陛下にも報告は行ってる。これで文句ねぇだろ?!」
デイビッドはベストの内側から、王家の紋章とアーネストの個人印と王印の入った用紙を出して見せた。
「な…な…なんでお前がそんな物を…?」
「ここに来たのも半分はコレのせいだよ。王都なんざ来たくて来たわけじゃない。わかったらこれ以上関わってくるなよ?」
威圧的な雰囲気が一転し、金髪含め全員が一斉にうろたえだした。
「な…なら、これは言わせてもらう!エリック・ラルスル先生を今すぐ解放し、こちらへ返してもらいたい!」
「エリックを…?」
「彼はこの学園の卒業生だ。誰より私達生徒の気持ちを分かって下さっている。新任のため補佐に就くのは仕方がないとしても、授業以外の時間まで拘束するのは規約違反のはずだ!それこそ、エリック先生の権利を侵害していると言えるだろう!?」
これなら言い返せまいと、立ち上がった金髪はデイビッドを指差し、見下ろした。
「いや…あいつ俺の従者なんで、授業の後は普通に仕事してるだけだが…?」
「は…?従…者…?」
「雇ってんのは俺の親父で、そもそも自分の部屋に帰らねぇで居着いてるの本人だしな。俺に言われても困る。他に言いたい事は?無ければ俺はもう行くぞ?!これからもお互い出来るだけ関わらないよう過ごしてこうぜ?!じゃぁな。」
そう言って踵を返すデイビッドを、追いかける声はもう聞こえなかった。
「なんか凄い子達でしたね?!」
「出たな!居座り従者!」
外ではエリックが壁にもたれてデイビッドを待っていた。
「学園なんて狭い箱の中で、てっぺん取った気でいるのかなぁ…かわいそうに…」
「お前、好かれてんじゃん?青い方の住人になった方が良いんじゃねぇの?」
「ご冗談を…関わるのは授業だけで結構ですよ。」
「初日で、あれだけやさぐれてて大丈夫なのか…?」
「分厚いベーコンとポテトサラダとチキンフリットがあれば頑張れます!」
「しれっとリクエストすんなよ…ところで、お前なんでついてきたんだ?」
「デイビッド様がベスト着て行ったからですよ!」
「ズボンのポケットに王印の手紙しまうわけにいかなかったからな…」
「喧嘩でもするのかと思ってひやひやしましたよ…」
「流石に生徒相手に手は出さねぇよ!?」
2人はそのまま事務所に寄ると、大きな箱を受け取りまた緑の廊下を渡り端の研究室へ戻って行った。
51
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる